人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市東部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)
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tanko 2022-7-9 18:30
 素粒子実験施設「国際リニアコライダー(ILC)」の誘致実現を目指す、東北ILC推進協議会の総会は8日、仙台市内で開かれた。総会席上、東北ILC事業推進センター代表を務める岩手県立大学の鈴木厚人学長は、「現状は非常に厳しい」と危機感を示した。研究者側は国際議論の場を構築するため、体制を整え直して取り組みを進めており、同推進協は研究者の取り組みを支援する。
 総会では本年度事業計画などを原案通り可決した。議事後、同推進協役員を務める候補地周辺地域の首長らが誘致実現に向けて決意表明。奥州市の倉成淳市長は「奥州は科学を大切にするまち。市の中期計画でも戦略的プロジェクトとしてILCをうたっており、力強く推進するつもりだ」と述べた。
 鈴木学長は険しい表情で登壇。「海外では日本のILCは当てにならないという雰囲気にある」と危機感をあらわにした。県ILC推進協の谷村邦久会長は「『今年1年が勝負』という言葉を何度言ってきたことか」と切り出し、「今度こそ、この機会を逃せば世界中の科学者からそっぽを向かれる。一丸となって頑張っていこう」と、関係者らを鼓舞するように呼び掛けた。
 総会では役員改選も行われ、共同代表を務めていた東北経済連合会(東経連)名誉会長の高橋宏明氏の後任に、東経連会長で東北電力?代表取締役会長の増子次郎氏が就任した。
 総会後はILCを推進する研究者らで組織するILC―Japan代表で、東京大学の浅井祥仁教授が「ILC日本誘致への取り組みについて」と題し講演した。
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tanko 2022-7-6 10:20

写真=新著『国立天文台教授がおどろいたヤバい科学者図鑑』を手にする本間希樹所長

 国立天文台水沢VLBI観測所の本間希樹所長(50)の新著『国立天文台教授がおどろいたヤバい科学者図鑑』が、扶桑社から出版された。科学史、天文学史に名を残す偉人たちの意外な素顔、裏話を紹介。小中学生でも読みやすい構成になっており、本間所長は「宇宙の謎を追究し続けた科学者たちの素顔から、生きる上でのヒントを得てもらえたら」と話している。
 同社が発行する本間所長の著書としては、『国立天文台教授が教えるブラックホールってすごいやつ』『宇宙の奇跡を科学する』に続く第3弾。紀元前3世紀の科学者アリスタルコスにはじまり、アインシュタインや旧水沢緯度観測所初代所長の木村栄博士、2002(平成14)年にノーベル物理学賞を受賞した小柴昌俊さんら国内外人の科学者や天文学者を取り上げた。それぞれの輝かしい功績とともに、「学生時代に追試を受けさせられた」「学会の論文発表で散々な目に遭った」「子どものころ虫を食べていた」など、仰天エピソードや裏話などをユーモアたっぷりに紹介している。
 東京大学在籍中、同大オーケストラでバイオリンを弾いていた本間所長の一押し人物が、天王星発見者のウィリアム・ハーシェル。もともとプロの作曲家で、交響曲を24作品残した実績もある人物だが、1781年に趣味の一環で天体観測をしていたところ天王星を見つけた。これを機に天文学者へと転職し、自作望遠鏡の量産販売にも成功した。同時代を生きた作曲家ハイドンも、ハーシェルが造った大型望遠鏡で宇宙を見ており、後に作曲したオラトリオ「天地創造」に影響を与えたという。
 子ども向けの内容のため、漢字には全て読み仮名を振っている。気軽に楽しめるよう、楽しいイラストも随所にちりばめた。
 本間所長は「どんな偉人でも完璧なわけではなく、間違ったり他人から厳しく指摘を受けたりすることもあった。それでも大好きな宇宙の謎を解き明かしたいと頑張った彼らの生き方から何か感じてもらえたら」と話している。
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tanko 2022-7-6 10:20

写真=藤里小学校で行われたILC出前授業の様子。数年前までは強かった「誘致ありき」のトーンは影を潜める

 素粒子実験施設ILC(国際リニアコライダー)に関する出前授業が、本年度も奥州市内小中学校で行われている。教育現場におけるILC普及活動に関しては、ILC誘致に批判的な市民団体のほか、文部科学省ILC有識者会議の中でも問題視されてきた。誘致の見通し自体が不透明になっている中、市ILC推進室は「誘致ありき」の話題提供は控え、科学研究全般の意義を知ってもらう内容に本年度からシフト。国立天文台水沢VLBI観測所やブラックホールなど、既存の施設や研究実績の紹介に時間を多く割いている。
(児玉直人)

 市によるILC出前授業は、市内中学校の2年生向けに2014(平成26)年から実施。翌年は希望する小学校の高学年にも対象を拡大した。開始当初は「ILCができれば奥州市はもっと有名になる」といった切り口で、子どもたちに熱烈アピールした。
 県内では出前授業のほか、ILC実現を願うのぼり旗や看板の製作なども教育現場で行われてきた経過がある。こうした普及方法に、ILC誘致に否定的な市民団体などからは批判の声が出ていた。ILC有識者会議が今年2月に公表した「議論のまとめ」にも、科学教育とプロジェクト推進の取り組みは切り分ける配慮が必要との指摘が盛り込まれた。
 6月27日、江刺の市立藤里小学校(林博文校長、児童29人)の5ー6年生15人が市ILC推進室職員による出前授業を受けた。ILCの話題以上に、宇宙の謎や天文台に関係する内容が中心。宇宙の謎を解く一つの方法として、ILCが簡単に紹介された。
 講師を務めた職員は「北上山地が有力な候補地になっている」「奥州は科学に縁がある地域。宇宙や科学の話に興味を持ってもらえたら」と呼び掛けた。児童からは宇宙に関する質問はあったが、ILCに直接触れた質問はなかった。
 同推進室の二階堂純室長は「市として誘致を目指す姿勢に変わりはないが、出前授業に対しては以前からさまざまな意見をいただいている。かつてはすぐに実現し、地域が良くなるような雰囲気もあったが、誘致を巡る実態も踏まえ、科学の重要性を伝えることを意識してやっている」と話す。
 県ILC推進局では、出前授業などに対する指摘があることを受け止めつつ、「総合的に考えて対応している」と説明。高校生を対象に実施する研究コンテストについても、「一流の研究者の審査を受ける良い機会で、人材育成の面でも意義がある」と強調する。
 こうした行政側の対応姿勢に、中学校理科教諭を長年務めた元小中学校長の阿部恵彦さん(78)=胆沢若柳=は、「自然科学の基礎的な授業ならまだしも、このような出前授業が継続されていること自体ナンセンス。天文台の話題を入れても、単なるすり替えでしかない」と厳しく批判。「教育現場から本質を突いた意見を言う人がいなくなり、上から言われた通りの対応しかできなくなっているのも問題だ」と指摘している。
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tanko 2022-6-19 9:10

写真=CF活動を通じ水沢地域の伝統産業、鋳物のPRにも一役買った本間希樹所長(右) 提供:国立天文台水沢VLBI観測所

 国立天文台水沢VLBI観測所(本間希樹所長)が4月20日から続けてきたクラウドファンディング(CF、資金調達活動)が17日深夜終了した。寄付総額は初期目標の1000万円を大幅に上回り、現時点で決済が完了した分だけで3022万7000円。今後、金融機関振り込みで受理した分の金額が加算され、今月下旬には最終金額がまとまる見通し。集まった資金は若手研究者の育成などに活用。記念品付き寄付を選択した人には、金額に応じた特製グッズが贈られる。
 同天文台の観測所施設が公式にCFを行ったのは今回が初めて。1000万円の目標金額を設定し、期日までに達した場合のみ支援金を受けられる「All or Nothing型」で実施した。
 5月12日に目標の1000万円を達成。偶然にもこの日は、天の川銀河(銀河系)の中心部にある巨大ブラックホール(BH)「いて座A*」の撮影成功を発表する記者会見があり、会見が始まる2時間前に目標に達した。
 約3週間で目標に届いたが、BH撮影成功の話題などが追い風となり、その後も寄付を申し出る人が相次いだ。さらに、動画投稿サイト「ユーチューブ」で科学系情報を紹介している複数の動画制作者が、BH撮影成功と本間所長のインタビューを発信。大きな宣伝効果をもたらし、第2目標の2000万円も突破した。CFが終了する17日午後11時の約1時間前には第3目標の3000万円も超えた。
 寄付件数(個人、企業・団体)は延べ1255件。最高額の300万円コースの申し込みはなかったが、100万円コースは5件あった。最多の申し込みは1万円コースで778件だった。
 記念品を希望した寄付者には、寄付額に応じた記念品が贈られる。本間所長はこのほど、鋳物の記念品製造を担当する水沢羽田町の?及富(及川一郎社長)を訪問し、自ら鋳造作業を体験。CF応募サイトでその様子を紹介し、鉄と天文学との科学的な関係について解説しながら、観測所がある水沢で育まれた伝統産業のPRにも一役買った。
 CFの終了を受け本間所長は、「予想をはるかに超える多くの方々からのご支援により、大成功で終えることができた。驚きとともに感謝の気持ちでいっぱい。皆さまの応援を私たちの力にして、今後の研究をさらに進めていきたいと思います」とコメントしている。
(児玉直人)
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tanko 2022-6-18 6:40

写真=誘致前提のILC計画推進は困難だと指摘する横山広美教授

 東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構副機構長の横山広美教授(科学技術社会論)は17日、仙台市内で講演した。北上山地が有力候補地とされる素粒子実験施設「国際リニアコライダー(ILC)」の誘致活動について、これまでの大型科学プロジェクトよりも規模が大きく、国際費用分担の議論をせず誘致を前提に話を進めるのは難しいと指摘。「研究者側が対応する国際議論の状況を気を付けて見ていくことが今は大事」と主張した。児童生徒への周知活動に関しても「慎重にやるべきだ」と警鐘を鳴らした。
(児玉直人)

 横山教授は素粒子物理分野で博士号を取得。科学と社会のかかわりに関心を抱くようになり、現在は科学技術社会論が専門。科学と政治、社会との関係などをテーマに、研究活動や学生の指導をしている。文部科学省が担当する各種審議会の委員も歴任。ILC有識者会議委員も2期連続で務めている。
 同日は、東北ILC推進協議会(代表・高橋宏明東北経済連合会名誉会長)主催の講演会で登壇。「Big Science(ビッグサイエンス)と社会」と題し、大型科学プロジェクトの歴史に触れながら、ILCを取り巻く状況と課題を語った。
 講演で横山教授は、岩手、東京、大阪、福岡、佐賀の住民を対象に自身が実施したILCに関する調査の結果を紹介。認知度の高さは岩手が突出して高かった。認知度では大差が生じたものの「ILC計画の議論で何が重要か」を尋ねたところ、どの地域も「税金や国際費用分担に関すること」が最多。科学的意義、地域経済への波及効果などが続いた。
 横山教授は「ILCはビッグサイエンスの中でも規模が大きく、従来通りに事が進まないというのが率直な感想。計画が公になって10年以上経過しているが、周辺状況が変わってきている。世界全体で本当に次の加速器が造れるのか――という議論を真剣に行う時期に研究者たちは立たされている。皆さんが素粒子物理学を支援してくださることは非常にありがたいが、国際分担の議論なしに誘致前提で事を進めるのは難しい」と主張した。
 このほか「ビッグサイエンスは社会と一緒に推進し、互いに情報共有していくことが大切になるが、そのやり方には注意が必要。誘致がはっきり決まっていない段階で子どもたちにアピールすることは、慎重に考えなくてはいけない。サイエンスの普及程度ならよいが、来ることを前提に話をしてしまうと、場合によっては期待を裏切ってしまう可能性すらある」と指摘。「期待の高まりが社会を駆動させるという考え方があるが、一方で現実社会との乖離が生じる危険性もある。ハイプ(熱狂)と呼ばれる状況で、結果として議論や予算も続かなくなる」とし、期待を高めすぎず冷静に状況を注視する必要性を訴えた。
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tanko 2022-6-12 10:00

写真=シミュレーションで再現した形成途中の星団 (c)藤井通子、武田隆顕、国立天文台4次元デジタル宇宙プロジェクト

 星団が形成される現場を再現するシミュレーションに、東京大学大学院理学系研究科の藤井通子准教授らの研究チームが成功した。星が生まれる領域の進化に大質量星が重要な役割を果たしていることを確認。研究には水沢星ガ丘町の国立天文台水沢キャンパス内にあるスーパーコンピューター、「アテルイ2」が活用された。研究成果は8日付で、英国の『王立天文学会誌』に掲載された。
 星団とは数十から数百万個の星が集まっている天体。一つ一つの星の重力で互いが束縛された状態になっている。
 藤井准教授らのチームが研究対象にしたのは「オリオン大星雲」。冬の代表星座「オリオン座」の中央に三つ並んだ2等星の下方に位置する。太陽の8倍以上の質量を持つ大質量星が多数生まれ、星団が形成されている。地球からの距離は1300光年。双眼鏡でも気軽に観察できる。
 天文学者の間では大星雲内の星団形成過程についての研究が進められていたが、従来の手法では正確な解明に限界があった。藤井准教授らのチームは、星の動きを正確に求める計算手法を独自に開発。「アテルイ2」で実行させた。
 研究チームは「オリオン大星雲で形成される星団は中規模だが、今回の研究で開発された計算手法を使い、大規模な星団や銀河の形成過程などを明らかにしていきたい」としている。

※…正式には「アテルイ2」の「2」はローマ数字の2ですが、環境依存文字のためアラビア数字の2を当てました。
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tanko 2022-6-10 19:30
 岩手県がまとめた最新の「県施策に対する県民意識調査」によると、新型コロナウイルス感染症の直接的な健康影響に加え、余暇の充実や所得面など間接的な部分への影響も強く感じている人が多いことが分かった。「いわて県民計画」に基づく施策については、雇用や産業、いじめ問題に関するニーズ(必要性)が高く、文化芸術やスポーツ、素粒子実験施設「国際リニアコライダー(ILC)」誘致に関連した取り組みは低調。昨年と同様の傾向となった。
(児玉直人)

 調査は今年1月から2月にかけ、県内に住む18歳以上の男女5000人を選挙人名簿の中から無作為に抽出し実施。有効回収率は66.5%(3324人)だった。
 新型コロナに関する質問は、前回調査から取り入れた。「よくない」と感じる影響で最も多かったのが「こころの健康」で43.2%。余暇の充実(43.0%)、必要な収入や所得(37.1%)など間接的な影響を感じた人の割合も高かった。
 現在の生活全般に対しては、満足(やや満足含む)が36.7%(前年比2.1ポイント増)、不満(やや不満含む)は33.0%(同5.2ポイント増)だった。満足と不満の差は3.7ポイントで、前年の6.8ポイント差より縮まっている。胆江2市町を含む県南広域振興局管内8市町では、満足が35.8%(同4.8ポイント増)、不満が34.8%(同3.2ポイント増)だった。
 「いわて県民計画」に掲げられた施策に関する質問では、施策ごとに重要度と満足度を尋ね数値化。重要度と満足度の差が大きい場合は「ニーズが高い」、小さい場合は「ニーズが低い」と判断した。
 ニーズが高かった上位5施策は?安定した就職環境?農林水産業の担い手確保?商店街のにぎわい?いじめや不登校への適切な対処?生活基盤整備などが進んだ生活環境。上位に入った施策は、重要度が高いと認識されているが、現状に不満や満足度を感じられない人が多く、改善が強く求められている事柄と推察できる。
 ニーズが低かったのは?県ゆかりの芸術家やスポーツ選手の活躍?日常的に文化芸術に親しむ機会?身近な地域でスポーツを楽しむ機会?心身の健康に関する相談・指導?外国人研究者等の受け入れ環境整備や新たな産業振興――だった。
 いずれも満足度と重要度の差が小さい施策だが、「県ゆかりの芸術家やスポーツ選手の活躍」に関しては、本県出身アスリートの活躍で、満足度が全57施策の中で飛び抜けて高く、重要度との差も小さかった。一方で、文化芸術やスポーツを楽しむ機会、ILC誘致を見込んだ外国人研究者受け入れに関しては、重要度が他施策より大幅に低く、満足度も平均以下という結果となった。
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tanko 2022-6-6 12:40

写真=各店自慢のBHスイーツなどが並んだお菓子フェスティバル

 「奥州ブラックホールお菓子フェスティバル」は5日、水沢西町のみずさわ観光物産センター(Zプラザアテルイ)で開かれた。ブラックホール(BH)をイメージしたスイーツなどを販売したほか、BH撮影に携わった研究者らによるトークショーも行われ、多くの市民でにぎわった。
(児玉直人)

 今年5月、天の川銀河(銀河系)中心部にある巨大BH撮影に、国立天文台水沢VLBI観測所の本間希樹所長らが参加する国際研究チームが成功した。
 この研究チームは3年前に別のBHの撮影を成功させ、人類史上初の快挙として注目を集めた。その際に本間所長の提案を受け、水沢地域の菓子店舗がBHスイーツを製造、販売し続けてきた経過がある。
 2度目の快挙を市民みんなで祝おうと企画された同フェスティバル。県菓子工業組合奥州支部(菊地清支部長)と水沢菓子組合(千葉亮組合長)の会員をはじめ、企画に賛同した市内外13店舗・事業所が出店した。
 晴天に恵まれたこの日、開幕前から多くの人が列を成し、一部店舗の商品は即完売する人気ぶり。2回にわたり、同プラザ2階で開催した本間所長と秦和弘助教によるトークセッションは、立ち見の人が出るほどだった。
 本間所長は、BHの画像化に時間を要した理由などを分かりやすく解説。「天文学は謎だらけで研究も時間がかかる。今日の来場者に『この問題は自分が将来解決してやる』というお子さんがいたらとてもうれしい」と期待を込めた。
 初代観測所長の木村栄氏が発見したZ項にあやかり、市内には「Z」を冠した施設が点在。BHから噴き出すジェットの研究に取り組んでいる秦助教は、「もし自分が大きな成果を打ち出したら、ぜひ『ジェットホール』の建設を」とジョークを飛ばし、来場者の笑いを誘った。
 水沢菓子組合の高橋一隆副組合長は「好天に恵まれ各出店者の皆さんも協力的でありがたかった。今後もBHスイーツを売り込み、さらにすそ野を広げていけたら」と話している。
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tanko 2022-6-5 18:40

写真=半導体製造装置メーカーの正社員に採用された後も、BH研究に携わることになる田崎文得さん

 国立天文台水沢VLBI観測所(本間希樹所長)で巨大ブラックホール(BH)解明に挑んでいる研究者の田崎文得さん(36)が今年4月、江刺に事業所を置く半導体製造装置メーカー、東京エレクトロンテクノロジーソリューションズ(株)(本社山梨県韮崎市、佐々木貞夫社長)に正社員として採用された。全国の研究機関などでは、優秀な人材が不安定な雇用形態に置かれ続ける「ポスドク問題」が深刻化。同観測所も頭を悩ませており、若手が安心して活躍できる環境を確保しようと、同社と検討を進めてきた。田崎さんは引き続きBH研究にも携わるといい、「半導体製造装置が安定して稼働し、最高のパフォーマンスを出せるかどうか、BH撮影の画像解析で培ったノウハウを生かして取り組みたい」と意気込んでいる。
(児玉直人)

 2019年、巨大BHの撮影成功を初めて公表した直後、同社関係者が観測所を訪問。本間所長(50)と交流を重ねるうちに、若手研究者の活躍と安定雇用を確保する策の一つとして、同社が田崎さんを採用する方針がまとまった。
 田崎さんは京都大学大学院博士課程修了後、2014年4月から同観測所の研究支援員、特任研究員としてBH研究に従事。いずれもポストドクター(博士研究員、ポスドク)と呼ばれる任期付きの職だった。
 博士課程修了者には就職のほか、ポスドクとして大学や研究機関に所属し、教授職や民間就職へのステップアップを狙う道がある。
 ところが、科学技術・学術政策研究所(NISTEP)の調査によると、国内のポスドク延べ1万5590人(2018年度現在)のうち、7割超の1万1101人が次年度もポスドクを継続。大学や研究機関の正職員ポストに空きが生まれず、民間企業もポスドク採用に消極的という実態があり、雇用形態的に身分が不安定なポスドクを続けている。NISTEPによると、2020年度にポスドクを採用した企業は、回答した1891社の0.6%にとどまった。
 同観測所では、国内外の研究機関と共同利用している観測装置の維持管理を最優先に予算投入。巨大ブラックホール(BH)撮影の成功で脚光を浴びている同観測所だが、国の基礎研究予算が頭打ち状態にある中では、若手研究者を安定雇用する余裕がない。
 日常的な経費削減のほか、市民から寄付を募るなどあらゆる策を講じている。今回の田崎さんの民間雇用もその一環だ。
 田崎さんは2020年から嘱託社員として月12日は同社に勤務し、それ以外の日を研究などに充てていた。昨年末、同社の長谷部一秀・常務執行役員(52)が中心となり、正社員としての採用を推挙。BH研究も業務の一つとして認めるようにした。同観測所と同社は共同研究契約を年内にも締結する。
 長谷部常務は「大学との共同研究はあるが、天文学という異分野とのコラボレーションは初めての試み。東北事業所の近くに天文台があったというロケーションと、人と人とのつながりがあって実現できたこと」と語る。
 本間所長は「われわれの業界では、企業に就職するということは研究者としての道を諦めるのに等しかった。天文学の知識が社会に役立ち、優秀な研究者が活躍できるといういいモデルケースになれば」と期待を込める。
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tanko 2022-6-1 9:00
 県菓子工業組合奥州支部(菊地清支部長)と水沢菓子組合(千葉亮組合長)は、6月5日午前9時半から水沢西町のみずさわ観光物産センター(Zプラザアテルイ)で「奥州ブラックホールお菓子フェスティバル」を開催する。国立天文台水沢VLBI観測所(本間希樹所長)の研究者らが携わった国際研究チームが、2度目の巨大ブラックホール(BH)撮影を成功させた快挙を祝うイベント。市内菓子業者がBHをイメージし考案した菓子を中心に、市内外の業者10店舗余りが自慢の商品を販売する。当日は、本間所長ら研究者によるトークショーも予定されている。
(児玉直人)

 2019年に人類史上初となる巨大BH撮影成功が公表された際、研究チームの日本代表を務めた本間所長が「BHをイメージしたお菓子があれば地域振興にもつながるのでは」と提案。水沢菓子組合は同年、「オウシュウ・ブラックホール・プロジェクト」と銘打ち、加盟7店舗がBH菓子を開発した。共通デザインのパッケージに商品を入れ、現在も各店舗などで販売している。
 商品開発から約3年、今度は地球から最も近い巨大BHの撮影に成功。2度目の快挙を市民と一緒に祝福する場を設けようと、両団体が共催イベントを企画した。
 当日はBH菓子を製造・販売する水沢地域の7店舗のほか、水沢地域外の菓子店の商品、ドリンクや雑貨、カレーパンなども販売する。午前9時半の開場の際には、先着30人にあんぱんのプレゼントもある。
 同観測所の本間所長と秦和弘助教によるトークショーは午前10時半と正午の2回、Zプラザの2階で行われる。
 共催2団体の関係者は5月30日、市役所本庁に倉成淳市長を表敬訪問。これまでの経緯を説明しながら、イベント開催を報告した。
 倉成市長は「新型コロナウイルスの影響で落ち込んだ観光客の入り込みが回復しようとしている中、ブラックホールに関連したこのような商品があることをうまくPRしていけたら」と話していた。

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