人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市東部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)
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tanko 2016-8-30 12:00
 前沢区の本杉工業団地に本社と前沢工場を構える金属加工業・(株)千田精密工業(千田伏二夫社長)は1979(昭和54)年5月、千田社長(70)の出身地、前沢区白山で創業した。半導体や液晶関連装置、航空機、自動車にかかわる各種精密部品、金型製造などを手掛けており、現在地では移転後の2006年8月から操業している。
 1995年に大槌工場を開設。2012年には子会社だった旧千田精密東和(花巻市東和町)を吸収・合併する形で東和工場も立ち上げた。企業理念の一つに掲げる「確かなものづくりで信頼される企業」を踏まえ、切削加工の技術向上を図る。
 「地域社会への貢献」も企業理念にうたう。東日本大震災の際には、高台にある大槌工場を避難所として開放し、被災者の窮状を和らげた。そして3工場に勤める全ての従業員をそれぞれ地元採用する創業以来の方針を現在も徹底。千田社長は「その地で幸せに暮らしたい人が集まるのがうちの会社」と意図を説明する。
 技術者が腕を磨きやすい職場を労務面の充実で支える。従業員数は現在102人に上るが、歴代の全ての従業員を正社員として雇用してきた。職種を問わず、臨時やパート、アルバイトなどでの採用は、これまでに一切ないという。
 千田社長は「一人一人が技術者であり続けることがものづくりの原点」とし、「その技術者を育成するのも会社の使命」と主張。さらに「取引先からの難題に挑むことで技術力を高め、その技術を先輩から後輩に受け継ぐことでノウハウを蓄積してきた」とし、「われわれは生産集団でなく技術集団。単純な加工の注文は大量発注であっても断ってきた」とも話す。
 技術とノウハウを身に付けた従業員の独立を奨励しており、実際に10人超が起業している。
 大槌工場では昨年1月、高エネルギー加速器研究機構(KEK)向けの素粒子実験装置用アルミ部品「電磁ホーン」を製造した。同工場に備えた摩擦撹拌接合(FSW)専用機などを駆使し、国内初となる同型部品の単独製造に成功した。
 国際リニアコライダー(ILC)の北上山地への誘致に期待がかかる中、千田社長は「ILCが来れば国際的な研究機関にかかわれる。海外に行くだけがグローバル化ではない」と話す。
(若林正人)

【会社データ】
 前沢区字五合田19−1。資本金は8000万円。従業員数は本社・前沢工場36人、大槌工場48人、東和工場18人。同社で加工した部品がF1のエンジンに組み込まれたこともあるなど、「技術は他社に負けないとの自負がある」(千田社長)。従業員の仕事と子育ての両立を支援しているとして今年3月、県の「いわて子育てにやさしい企業等」認証書の交付を受けた。

代表取締役社長 千田伏二夫さん(70)
 「価格競争の中で、いかにして付加価値の高い仕事を生み出すかが課題です。だからこそ基本的な技術をきっちり身に付け、応用の利く社員を育てる必要性が一段と高まっています」
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tanko 2016-8-30 9:40
 北上山地への誘致が期待されている国際リニアコライダー(ILC)の実現を見据え、具体的な地域づくりの計画策定や産業支援、受け入れ態勢の整備などに関する諸活動を取り仕切る「東北ILC準備室」の事務所が29日、仙台市内に開設された。室長を務める鈴木厚人県立大学学長らが看板を掲げたほか、集まった報道陣に同室の活動状況について紹介した。同準備室はILC実現による東北地方の地域将来像を具体化する「広域基本計画」を来年半ばにも策定する考えだ。
(児玉直人)


 同準備室の設置は、今年6月の東北ILC推進協議会(事務局・東北経済連合会=東経連)総会の席上で承認されていた。▽岩手大▽岩手県立大▽東北大▽岩手・宮城両県▽仙台市▽岩手県ILC推進協議会――の関係者らで構成する。
 東経連は、東北大学と共に「ILCを契機とした東北・北上エリアグランドデザイン」(基本構想)を策定。「東北ぐらし」をキーワードに、ILC誘致実現による東北地方での質の高い「暮らし」が、地元住民や研究者を問わず実感できるような地域将来像を描いている。
 グランドデザインの考えを反映させた「地域広域基本計画」の策定作業を進めるのが同準備室。鈴木学長によると、同基本計画は来年半ばにも策定させたい考えだ。このほかにも、ILC計画の周知を図る広報活動や、受け入れ時に必要な設備の検討など、四つの部門と二つの専門部会を設置しILC実現に関係するあらゆる準備作業を進める。
 この日は、同準備室の活動を中心にILC誘致に向けた取り組みの進展状況を報道機関に説明。同準備室はILC推進の状況を広く周知する方法の一つとして、報道機関向けのレクチャーや各種周知の依頼などもしていくという。
 報道説明会の前には、準備室の事務所開設セレモニーを実施。事務所は東経連が入る仙台市内のビルの別フロアに設けられ、鈴木学長と大江修・東経連専務理事(準備室事務局長)が看板を掲げた。通常はネット回線などを利用して連絡を取り合うため、事務所には常駐のスタッフは置かないが、関係者が一堂に会する会議がある場合などに使用するという。鈴木学長は「ILC建設にゴーサインが出た時点で『東北は準備万端』と言えるような状況にしたい」と意気込んだ。
 ILCに関する各種取り組みが進められる一方、依然として全国的に計画自体が十分に知られておらず、東北や岩手県内であっても、沿岸被災地や県北などで誘致の意義が知られていない実情もある。鈴木学長は「県の科学ILC推進室が中心となり、関係機関が連携して実施する『ILCキャラバン』をどんどん展開していきたい。県内の外国人市民からも協力したいとの声が出ている。その輪を広げていければ」と願う。
 同準備室で広域基本計画を担当する東京大学の山下了特任教授は「ILCが実現することによってどんなことができるか考え、地域の方々に参加してもらうことによって波及効果が表れる。いかに多くの方々に参加してもらうかが勝負となる。そういう観点からすると、準備室が果たす役割の中でも、広報部門は非常に重要な役割を担うことになる」と話す。

写真=東北ILC準備室の看板を掲げる室長の鈴木厚人・県立大学長(右)と東経連の大江修専務理事
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tanko 2016-8-24 15:35
 奥州市江刺区の(株)ショージック(東海林誉社長)は、多言語案内アプリを開発した。スマートフォン(スマホ)やタブレットによる簡単な操作で、飲食店のメニューや観光案内などを多言語で表示できるもので、外国人旅行客への接客サービス補助として活用可能。現在、世界遺産登録によって多くの外国人客が訪れる平泉町・中尊寺境内のレストランで実用化しており、スタッフ、旅行客双方に好評だという。東海林社長(39)は「当地方の国際的な地域づくりに貢献したい」と話している。
(稲田愛美)


 インバウンド(訪日旅行)の増加に伴い、さまざまな外国人への対応が必要となる中、特に接客の場面でスタッフの負担軽減につなげようとアプリを開発。導入第1弾となる同町のカフェ&レストラン中尊寺かんざん亭では、メニューやアレルギー、オーダー方法などレストランの利用上必要な情報を英語、中国語、韓国語の3カ国語で表示している。
 タブレットやスマホ、パソコンなどで簡単に操作可能。各店舗のニーズに応じたオリジナルのアプリを制作するため、言語の種類やデザインなど自由にカスタマイズできる。掲載情報の更新も、アプリを修正しダウンロードするだけで、迅速に対応できる。
 沿岸地域へのクルーズ客船寄港が増えているほか、奥州市では台湾をターゲットとしたインバウンド戦略が本格化するなど、外国人旅行客向け接客サービスのサポート需要は高まっている。東海林社長は「ILC(国際リニアコライダー)実現も視野に、当地方の国際的な地域づくりに持てる技術で貢献できたら」と意欲をのぞかせる。
 今後は動画や声によるアナウンス機能の搭載なども進めていくという。

写真=多言語メニューアプリを導入したかんざん亭のメニュー表
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tanko 2016-8-19 10:06
 北上山地が有力候補地となっている素粒子研究施設、国際リニアコライダー(ILC)を紹介するシリーズPR動画「ILC科学少年団」のロケが18〜19日、奥州、一関両市で行われている。初日は水沢区内や国立天文台水沢キャンパスなどで撮影を実施。宇宙誕生の謎を解き明かすILCは、天文学とも結びつきが深い研究施設であることにも触れた。動画は今年10月から12月にかけ、全国のケーブルテレビ(CATV)局で放送されるほか、インターネット動画サイト「You Tube」でも配信する予定だ。
(児玉直人)

 同動画シリーズは、ILCの国内誘致に向けた国民意識の向上を図る取り組みの一つとして昨年度から展開。ILCの国内誘致を推進している先端加速器科学技術推進協議会(AAA)と、ケーブルテレビ事業者の東京ケーブルネットワーク(株)が制作している。
 子役タレントの3人が「少年団」として、ILC計画がどのようなものなのか、子どもならではの視点で探る内容。子どもたちにILCや素粒子物理の世界を解説する「おじさん」役として、東北大学大学院の佐貫智行准教授が出演している。
 これまでは首都圏での撮影が中心だったが、実際にILCの誘致に向けた機運の高まりを感じられる場面も取り入れたいと、初めて候補地周辺でロケをすることに。誘致実現をアピールする看板や横断幕、地元の子どもたちが描いたILCのイメージ絵画などを取り上げながら、実現に向けた地元の動きをより具体的な形で伝える狙いがある。
 同天文台水沢キャンパスでは、敷地内の奥州宇宙遊学館の展示物や天文学専用スーパーコンピューター「アテルイ」を見学する様子などを撮影した。少年団の中心メンバーの主人公「ハル君」役を務める島崎青大君(12)は、「初めて岩手に来たけれど、自然がとても奇麗。普段の授業でも理科は好きな教科の一つ」と笑顔。撮影の合間には、共演している同世代の子役2人と仲良く遊んだり、遊学館の窓口で販売している宇宙食を興味深げに眺めたりしていた。

写真=国立天文台水沢キャンパスでの撮影に臨む出演者ら
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tanko 2016-8-4 9:20
 水沢区羽田町のJR水沢江刺駅(寺田亮司駅長)の東口広場に3日、国際リニアコライダー(ILC)の誘致をPRする看板がお目見えした。市が設置準備を進めていたもので、市内外の駅利用者に対し、大型科学プロジェクトの誘致をアピールしていく。同駅は市の玄関口であると同時に、ILCの有力候補地である北上山地の最寄りの新幹線駅。看板設置のほか、駅舎内の「南岩手交流プラザ」にILCのPRコーナーを開設する計画も進行している。
(児玉直人)

 素粒子物理学の国際研究拠点として計画されているILC。研究者らは、北上山地が国内候補地に一本化した際、新幹線沿線への中央キャンパス(国際研究所施設)設置を強く推奨している。市が今年策定した「ILCまちづくりビジョン」には、同駅周辺にイノベーション(技術革新、新たな価値の創造や社会を変化させる活動)拠点を形成する考えが盛り込まれている。ILCとそれに関連する施設の立地において、新幹線駅の存在は非常に重要な要素と言える。
 同駅は胆江地区や沿岸地域からの利用が多いほか、県外のビジネス客や観光客が降り立つ。市はこれまで、同駅正面口(西口)にある既存の広告塔に縦型の看板を設置していた。現在は、いわて国体の看板に隠れている状態だ。
 一方、東口についても無料駐車場やレンタカーを利用する人の出入りが多いことから、新規に看板を設置する作業を進めていた。
 看板の大きさは長さ7・28m、高さ91cm。両面に文字や画像が印刷されている。設置場所は東口広場の生け垣で、駅から出てきた人たちだけでなく、駐車場から駅に向かう人たちにも視認しやすい高さとした。同駅と候補地までの距離や位置関係を記した地図も記されている。
 市は、駅舎内の「南岩手交流プラザ」の一角を利用し、ILC計画の目的や意義、研究概要などを紹介するPRコーナーの整備も進める。いわて国体開催までに、ある程度の形に仕上げたいという。

写真=JR水沢江刺駅東口の生け垣にお目見えしたILCのPR看板
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tanko 2016-8-4 9:10
 県南広域振興局(堀江淳局長)は、児童を対象にした2016(平成28)年度ILC絵画コンクールを実施する。締め切りは10月31日。初回の昨年度は、候補地の地元・奥州市からの出品がゼロだったことなどの反省を踏まえ、今回は募集期間を長めに取って参加を呼び掛ける。
 国際リニアコライダー(ILC)の普及啓発の一環として、県南地域や宮城県気仙沼市の児童に、ILCに関連した絵画を制作してもらう企画。胆江2市町を含む同振興局管内の8市町と、8市町教育委員会、気仙沼市と同市教委が共催する。
 作品はILCの研究や実現した際のまちの様子など。ポスター形式で描いても良い。完成した作品は通学している学校に提出。学校から市町教委、またはILC担当課を経由して県南局に送付される。
 年内に審査を行い、低学年、高学年の各部門で最優秀賞、優秀賞、佳作、審査員特別賞を決める。来年1月には作品の展示を行うほか、入賞作品はILCの啓発活動の中で使用するという。
 前回は冬休み期間を利用し応募を呼び掛け。96点が寄せられたが、胆江地区からは金ケ崎町の1点のみで、候補地の地元である奥州市からの応募が無かった。原因については、冬休みが間近の12月に募集を呼び掛けたことで、周知の時間が短かったことのほか、多くの小学生にとって、十分な事前学習なしにILCを理解するのが難しかったなどの理由が考えられている。
 同振興局経営企画部は前回の反省を踏まえ、夏休みが始まる前に共催自治体の教育委員会などを通じ、各学校へ募集を呼び掛けている。応募期間も7月中旬から10月31日までと長めに設定した。
 コンクールに関する問い合わせは、同部企画推進課(電話0197・22・2812)へ。
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tanko 2016-7-31 21:41
 北上山地が有力候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)は、国民の認知の低さに直面している。日本初の本格的な国際研究拠点が構築される大型事業でありながら、計画の存在すらほとんど知られていない。その打開策の一つとして、日本生まれの人気キャラクター「ハローキティ」を用いたPR商品が登場。キャラクターの高い知名度と親しみやすさを生かし、浸透を図りたいというが、国民理解や世論の盛り上がりにしっかりつながるのか懸念する声もある。
(児玉直人)

■正攻法とは違った入り口
 キティとILCのグッズを販売するのは、産学連携のILC誘致組織である先端加速器科学技術推進協議会(AAA、東京都港区)。キティの著作権や商標権を持つサンリオ(東京都品川区)の協力を得て開発。めがねをかけた研究者コスチュームのキティがILCの加速器(クライオモジュール)に座り、背後には物理の数式を配した。Tシャツやクリアファイル、ボールペンなどにして8月15日に本県で先行販売する。
 AAAや研究者の国際組織リニアコライダー・コラボレーション(LCC)で広報業務を担当する、高エネルギー加速器研究機構(KEK)の高橋理佳氏は「ILCで行う素粒子物理の研究は、どうしても『難しい』とみられてしまう。正攻法で理解してもらうだけでなく、違う入り口からILCを知ってもらおうと考えた」と経緯を話す。
 数ある日本のキャラクターの中でも、キティは海外認知度が高く「むしろ大喜びされる」と高橋氏。「いつもと異なるキティの姿に『何これ? でもかわいい』と飛びついてもらい、そこからILC計画を知ってもらえたら」と強調する。

■異分野との交流も展開
 ILCの国民理解の必要性は、文部科学省の有識者会議においても指摘されている。巨額な事業費が必要なプロジェクトだけに、一部の声だけで推進するわけにはいかない。
 研究者らは、ノーベル賞級の研究成果が得られると訴える。ところが、ILC計画そのものがほとんど知られておらず、全国紙やテレビなど主要メディアで取り上げられる場面は少ない。
 AAAやLCCは、今回のPRグッズ発表に合わせ、芸術関係やファッション雑誌など、これまで素粒子物理学界とは接点が薄かった分野の関係者を招いたイベントを都内で開催。LCCの最高責任者のリン・エバンス氏、副代表の村山斉氏がILCの意義を説明し、交流を深めた。
 人気キャラクターの活用など、新たな切り口で周知が始まったが、プロジェクトを推進する中では真摯な対応も求められる。建設に伴う自然環境への影響、都市整備、人材確保など候補地の地元と膝を交え協議しなければいけない事柄は多岐にわたる。高橋氏は「候補地の皆さまとの対応についてはこれまで同様、しっかり取り組んでいく」と話している。

■「かわいい」だけで終わらないか
 海外に拠点を置く日本人研究者も、日本国内の周知不足を懸念している。東日本大震災被災地を中心に、科学やILCに関する講演活動を展開している斎藤武彦氏(ドイツ・マインツ大学教授)だ。
 今年6月、水沢区多賀の水沢学苑看護専門学校で講演。学生たちに「ILCの候補地は皆さんが今いる岩手、奥州なんです」と伝えると、「えー、知らなかった」「すごい」と驚きの声が飛び交った。
 斎藤氏は2013年、県内の大学に理系学部を設置すべきだと提言。今春、岩手大学の工学部が理工学部に生まれ変わった。自身とは異なる研究分野を扱うILCだが「被災地の子どもたちの将来のためになる」との思いで、ILCの意義を伝え続けている。
 「同じ岩手であっても、沿岸被災地に至ってはILCの認知度はまだまだ低く、地域のさまざまな取り組みと関連付けるような動きも目に見えてあるわけではない」と斎藤氏。「復興の象徴」と大々的に打ち出されているが、それを実感させるような雰囲気が乏しい。
 KEKの高橋氏と同様、周知不足を懸念している斎藤氏。だが、今回のPRグッズについては「違和感を覚える」という。
 「私の勤務する研究所もだが、ヨーロッパでは大型プロジェクトを進める際に、キャラクターやグッズを使って関心を呼び起こすようなことはしない。科学そのものの面白さを市民に伝えることに力を入れる」。正攻法で理解を求めているという。
 「聞き手である子どもたちや市民が一体どんなことを知りたいのか、何を伝えればそのプロジェクトを楽しいと感じるのかを重視してアピールする。科学者がそういう視点を持てば、理解も深まり周知されるはずだ。キャラクターグッズを用いたら、そのキャラクターへの関心だけで終わってしまう可能性もある」と指摘する。
 さらに斎藤氏は「周知活動はもちろん大切だが、沿岸復興への貢献をしっかり考えていくべきだ。東北の人たちが主人公として活躍できる体制づくりに一番力を入れてほしい」と切望している。

写真=ILCの一般周知を図るために売り出されるグッズ。Tシャツを着用しているのは、LCCのリン・エバンス最高責任者(左)と村山斉副代表(LCC提供)
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tanko 2016-7-25 11:30
 北上山地が有力候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の研究や装置開発に携わっている研究者と地元中高生との交流会が24日、一関市大手町の同市図書館で開かれた。県立水沢高校の生徒ら8人が、第一線で活躍する研究者からILCの概要のみならず、研究者に求められる素質などについて興味深く聴き入っていた。
(児玉直人)

 交流会は、同市内で23日から26日まで開催している「加速器・物理合同ILC夏の合宿2016」に合わせ企画。全国の大学や関係機関から約60人の研究者が集まり、情報共有や共通認識の醸成を図っている。候補地の地元で開催するのは初めてで、多くの研究者が集まるせっかくの機会にと、県科学ILC推進室や研究者組織などが連携し、地元の中高生と研究者が語り合える場を設けた。
 研究者に求められる素質について講演した広島大学大学院の栗木雅夫教授は、「成績が良く公式を丸暗記している人が、研究者に向いているとは限らない。この公式はどうやって考えられたのか、本当に正しいのかと考えるような人が向いている」と指摘。「教科書は覚えるものではなく、理解するもの。考えることが快感になれば、研究者になれる」と持論を展開した。
 引き続き生徒たちは、5人の研究者とグループ形式で対話。水沢高校理数科2年の遠藤咲季さん(17)は、九州大学大学院の川越清以教授から、研究者になる上での学習や進路のポイントなどについて助言を受けた。「身近に研究者の仕事をしている人がいないので、遠い存在というイメージがあったが、たくさんの話を聞くことができて将来の進路を考える上で参考になった」と笑顔で話していた。
 当初、水沢高校からは5人の生徒が参加予定だったが、北上市内の東北本線で発生した踏切事故の影響で3人が会場入りできず、参加を断念した。

写真=九州大の川越清以教授からアドバイスを受ける生徒たち
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tanko 2016-7-22 11:50
 国際リニアコライダー(ILC)の実現を目指し、国内の若手研究者らが交流する「加速器・物理合同ILC夏の合宿2016」が、23日から4日間の日程で一関市内を会場に開かれる。24日には、県立水沢高校をはじめとする県内の理数系学科設置高校の生徒らが、合宿に参加する研究者や技術者と交流する場も設定。講演やグループ対話を通じ、科学と研究職を身近に感じてもらう。
 県科学ILC推進室などによると、同合宿は2011(平成23)年から毎年この時期、国内で会場を変えながら実施。加速器科学者と素粒子物理学者間の情報共有や共通認識の醸成、ILC実現を見据えた若手研究者間の交流を促す目的で、関係研究機関や大学の教授らが組織委員会をつくり開催している。
 今年は、ILC建設候補地の北上山地周辺での開催に向け準備を進めていた。約60人の研究者らが参加を予定。県立大学の鈴木厚人学長がILCに対する地方の取り組みについて紹介するなど、ILC実現に向けた動向や関係する技術について理解を深める。
 24日には、合宿に参加する研究者や技術者と県内の高校生らとの交流会が一関図書館で開かれる。ILCに対して理解を深めるだけでなく、研究者や技術者になぜなったか、なるために必要な努力は何かなど、進路選択の参考になる話題にも触れる。参加生徒の募集は既に締め切られている。
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tanko 2016-7-18 11:50
 英国の国民投票で欧州連合(EU)からの離脱派が勝利したことと、国際リニアコライダー(ILC)など素粒子物理学の大型プロジェクトに与える影響についての解説記事がこのほど、国際研究者組織「リニアコライダー・コラボレーション」(LCC)に掲載された。記事では「英国の研究機関にとっては明るい話題ではない」としながら、ILCなど線形加速器の国際プロジェクトに、英国は今後も貢献していくだろうとしている。
 記事を執筆したのは、オックスフォード大学ジーザス・カレッジのフィリップ・バロウズ教授。バロウズ教授は、欧州合同原子核研究機構(CERN)が中心となり計画している小型線形加速器実験施設「CLIC」の調査副責任者などを務めている。
 バロウズ教授は「CERNは独立した国際組織で、欧州経済共同体(EUに機能継承し2009年廃止)が発足する3年前に誕生した。英国は創設時からのメンバーで、今回のEU離脱の投票結果と、CERNに参加し続けることに影響はない。CERNのメンバーになっていないEU加盟国もあるし、その逆もある」と説明。欧州内だけでなく、日本や米国などの国々とも連携していることも紹介した。
 その上で「確かに英国の研究者たちはEUを通じ、毎年多額の研究資金を調達している。EU離脱が現実のものとなるかどうか、今後もEUの研究基金から資金を得られるのかどうかについては、まだ疑問の余地がある」とした。
 EUに加盟していないノルウェーやスイスは、EUが実施している科学研究事業に対し、資金拠出を含めた協力をしているという。「英国も同じような道を歩むかもしれない」とバロウズ教授。「英国の研究者界にとって、EU離脱は決して明るい話題ではないが、これからも国際的な連携をとり貢献したい。この貢献の中には、(ILCやCLICなどの)線形加速器プロジェクトも含まれる」と強調した。

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