人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市東部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)
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tanko 2020-9-18 10:00
 素粒子実験施設「国際リニアコライダー(ILC)」の誘致に反対姿勢を示している、市民団体「ILC誘致を考える会」(千坂げんぽう※、原田徹郎共同代表)は17日、達増拓也知事に対し、高エネルギー加速器研究機構(KEK、山内正則機構長)と連携し実施しているILC誘致推進事業の停止などを求める要請書を提出した。同会は、文部科学省に提出した「学術研究の大型プロジェクトの推進に関する基本構想ロードマップ(2020)」の申請を取り下げ、5カ月余り公表しなかったKEKの対応を「不誠実」と批判した。
 同会は一関市を拠点に活動。ILC誘致に批判的、あるいは慎重な思いを抱く同市や奥州市、平泉町などの住民で組織している。県への要請書提出は今年2度目。達増知事へは同日郵送したほか、一関市の勝部修市長と大槻隆・同市議会議長には同様の内容の文書を担当部署を通じ提出した。
 ロードマップ2020の申請取り下げについて、KEKは「審査過程は非公開が原則だったため報告が遅れた」と釈明している。
 同会は岩手県南、宮城県北の自治体などで構成する「東北ILC事業推進センター」が8月に立ち上がった時点でも、「各自治体はロードマップ申請を取り下げた事実を知らずにいた」と指摘。「およそ科学者にあるまじき策動。このような不誠実な団体に踊らされることは、一刻も早くやめるべきだ」と厳しく批判し、東北ILC推進協議会、東北ILC事業推進センターからの退会を求めた。
 このほか、「県施策に対する県民意識調査」でILC計画が県民ニーズの低い施策となった結果に触れながら、ILC推進局の廃止やILC誘致関連費用の執行停止を要請。新型コロナウイルス感染症対策などに力を注ぐよう求めた。
 原田共同代表は「学術研究をしているKEKに私自身、敬意を表して接してきた。だが今回の申請取り下げのように、事実を長く公表しなかった姿勢があると大きな不信感を抱く」と不満をもらす。「ILCの県民ニーズの低さが県が自前で行った調査でも明らかになっている。コロナで地域経済が低迷している状況下、ILCに労力を費やしている場合ではない。日本学術会議さえ否定的な見解を示している計画を政府が実現するとは到底思えない」と述べている。

※…千坂氏の名前の漢字表記は、「げん」が山へんに「諺」のつくり。「ぽう」は「峰」
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tanko 2020-9-17 10:10
 人口3000人足らずの北海道寿都町でこのほど、原発の高レベル放射性廃棄物(核ごみ)の最終処分場文献調査応募を巡る住民説明会があった。当初は、1度だけの予定だったが、町議会全員協議会で「1度では来られない住民がいる」との意見に従って、8回に分け、町内各地で行われるようだ。
 短いニュースの一場面で、説明会の様子を目にしたが、住民の必死さが見て取れた。「こんな資料で説明になるか」とカメラの下で資料をめくる住民。色分けした図のような部分に比して文字は少なく、原発関連という事の大きさとはかけ離れて見えた。
 東日本大震災後の原発汚染土さえ、その取り扱いは難しい。青森県むつ市の使用済み核燃料を一時的に保管する構想も、合格とはなったが、保管後の搬出先は不透明で「永久保管か」との懸念が強い。原発銀座と言われる福井県は「とにかく使用済み核燃料は県外に」と言ってはばからない。
 寿都町の片岡春雄町長は地元も含めた反発に「判断を10月以降に延期する」とトーンダウンしたが、前向きな姿勢に変わりはないようである。「日本の核のごみについて、あまりに無関心。(原子力政策に)どこかで一石を投じないと。勇気を振り絞って提案した」と主張する。
 核ごみの最終処分場建設の流れは文献調査約2年(歴史的文献で過去の地震の調査)。概要調査約4年(ボーリングなどで地下の岩石や地下水の分析)、精密調査約14年(地下深く調査施設を設置、地質や岩盤を直接調査)。その後に最終処分場の建設地を決定する。市町村長や知事が反対すれば次に進めないが、文献調査応募では言ったが勝ちで意見無用である。
 寿都町は周辺の4町から指摘を受けた。「北海道は農業・漁業など1次産業が基本でイメージが損なわれ応募検討だけで実害が出る。文献調査に伴う交付金で町づくりは間違い」と。小さな町の大きな発言。応募の行方が気になる。
(響)
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tanko 2020-9-13 9:50
 私たちの住む地球は、「天の川銀河」の中の太陽系に存在する。地球は約45億年前に生まれた。宇宙は約138億年前にできた。きっかけは「10のマイナス34乗」の大きさの何かが爆発したためだ。
 その宇宙最初の爆発が「ビッグバン」。爆発の影響で宇宙は広がり続けている。宇宙に欠かせないのが「ダークマター(暗黒物質)」と「ダークエネルギー(暗黒エネルギー)」の存在だ。銀河は強い重力でモノをかき集める力を持つ「ダークマター」、宇宙は広がりの力になる「ダークエネルギー」のおかげで成り立っている。
 どちらも、光も電波も発しないナゾの存在だ。宇宙の全容を解明する研究が世界的規模で始まっている。日本では奥州市の「国立天文台水沢VLBI観測所」(本間希樹所長)の活躍が特に目覚ましい。
 2019年4月には、国際プロジェクト「EHT」に参加。世界で初めて巨大ブラックホールの姿を撮影した。今年は、太陽の25倍以上ある大質量星団の「赤ちゃん星」から上下に釣り鐘状に噴き出すガスと周辺を回転するガスを日韓共同観測で明らかにした。大質量星団でも、太陽のような小質量星と同じプロセスで星が形成されることが示された。
 先月末には、同観測所チーム代表の赤堀特任研究員が「ほうおう座銀河団」の中心部から誕生間もないジェットを観測したと発表。ジェットが銀河団のガスの冷却を抑制すると考えられてきたのだが同銀河団のガスは冷えており定説を覆した。
 水沢天文台のVERA望遠鏡は、世界と協力し合い銀河の中の巨大ブラックホールの姿を捕らえる「SKA」計画の貢献装置にも認められた。しかし、来年度の運用のための予算にめどが立たないことが判明。銀河系の立体地図を作る「VERAプロジェクト」に区切りを付けるなど、研究計画の見直しを迫られている。天文台の危機を救おう。現在、地元周辺都市で運用継続を求める署名運動が行われている。
(吉)
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tanko 2020-9-12 18:20
 原発から出る核のごみ(高レベル放射性廃棄物)の最終処分場選定に向けた文献調査に北海道寿都町が応募を検討しているという。道知事や周辺の町村長は拙速過ぎると反発を強めているが、同町の片岡春雄町長は「反対意見は覚悟している。地元以外からの声に耳を貸すつもりはない」と強行姿勢である。
 核のごみは、使用済み核燃料を再処理してプルトニウムやウランを取り出した後の廃棄物で、国は2000年に法律を制定し、地下300mよりも深い地盤に埋める地層処分を決めている。建設までの流れは「文献調査」「概要調査」「精密調査」の3段階で約20年を要する。「施設建設」に10年を見込んでいる。
 文献調査を受け入れると、最大20億円、概要調査は最大70億円の交付金が支給されるなど、寿都町のように人口が3000人にも満たない小さな町などは、悪化する町の財政を支える主要な選択肢であることも理解できないこともない。
 交付金を受け取ることは処分場建設に同意したとする意思表示に等しい。手を上げやすい「文献調査」という、ある意味では作為的で後戻りできない意味合いがあることをしっかりと頭に据え、慎重に検討すべきではないか。
 この町の地下には「核のごみ、高レベル放射性廃棄物が埋まっている」としたら、住民は不安でこの先長く住み続けられないのではないか。若い人たちは去り、やがては誰も住まない町になりはしないか。町の未来をともす光が見えないのだ。
 国は、原発の建設に際し、メリットを提示。実際、立地した町は多大な恩恵を受け、住む人々は原発を切り離すことができないほど生活と密着している。しかし、核ごみ処分場からは町の発展に結び付くようなメリットは思い浮かばない。国は、応募する町と住民のことを真摯に考え、数万年から10万年という管理に向けた安全性の科学的根拠と、町の明るい未来を示す発展構想を提示すべきではないのか。
(紀)
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tanko 2020-9-10 10:00
 茨城県つくば市の高エネルギー加速器研究機構(KEK、山内正則機構長)が、北上山地が有力候補地となっている素粒子実験施設「国際リニアコライダー(ILC)」の実現に関連した「学術研究の大型プロジェクトの推進に関する基本構想ロードマップ(2020)」への計画申請を今年3月に取り下げていたことが分かった。KEKは今月8日、誘致推進で連携している東北や本県の関係先などのほか、報道機関に事実関係を通知。取り下げの理由について、国際協力体制が申請した時点から大きく進展したためとしている。

 文部科学省が策定するロードマップは、幅広い研究分野の意向を踏まえながら、大型プロジェクトの優先度を明らかにするもの。日本学術会議(山極寿一会長)の「学術の大型施設計画・大規模研究計画に関するマスタープラン」と関連性があり、いずれも3年ごとに策定している。
 KEKは、今年2月末に書面審査の申請書類を提出。書面審査やその後のヒアリング審査は3〜4月にかけて行われる予定だったが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で6〜8月にずれ込んだ。今月8日、文科省は素案を公表し意見募集(パブリックコメント)を開始した。
 ところが、文科省の素案公表と同日、KEKはロードマップへの申請を3月27日の時点で取り下げていた事実を明らかにした。取り下げによりILC計画は審査対象となっていないため、素案の中には記載されていない。
 KEK広報室によると、2月末の申請書提出とほぼ同時期に、国際将来加速器委員会(ICFA)などから新たな国際推進チームの立ち上げと、国際協力体制の枠組みの再構築に関する提言があった。申請書類では、国際協力体制の在り方が若干弱い表現だったが、新体制構築が明確になったことで、「申請書の内容と現状が異なる」と判断。取り下げたという。
 KEK広報室は「ロードマップの審査過程は非公開が原則だったため、報告が遅れた」と謝罪しながら、「国際推進チームが8月に設立され、新たな体制で活動を進めている。KEKは国際研究者コミュニティーと共に、引き続きILC実現に向け鋭意努力していく」とした。取り下げによるスケジュールへの影響はないとしており、「(3年後の)次期ロードマップへ再度申請するかどうかは、状況の推移によって判断することなので現時点では不明」と話している。
 申請取り下げについて、奥州市の小沢昌記市長は9日の定例記者会見で「事実を知ったのは今回の通知や報道を受けてだったが、後ろ向きな理由で取り下げたわけではないので、この時点での通知について特に遺憾に思うようなことではない。大きなハードルを乗り越えていく上で、(取り下げた)今回の判断は手法として良かったのでは」との見解を示している。
 県ILC推進局の高橋勝重局長は「6月の素粒子物理戦略により欧州も協力を表明しており、国際推進チームが立ち上がり動き始めている。その中でKEKが先を見据えて取り下げたと理解している」と話している。

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誤解招きかねない対応
 【解説】ロードマップ2020の審査テーブルに、そもそもILC計画はなかった――。審査委員が「NO」の評価を下したからではなく、KEKが自ら審査を受けずに退いたから「掲載されなかった」のである。一種の通過関門のような位置付けだったロードマップ審査から退いた事実を、5カ月以上も明らかにしていなかったのはなぜか。
 KEKは、審査過程が非公開だから取り下げた事実の公表を控えていたという。だが、そもそも取り下げた計画までも「非公開」の対象なのか。文科省研究振興局は本紙の取材に「『取り下げたことを当事者は明かしてはいけない』という決まりはない」と答えている。非公開はあくまで、KEKの判断にすぎない。
 「非公開」は、公費を投じた誘致活動を展開している候補地の地元自治体に対しても、である。「そんなつもりはなかった」としても、地元軽視や情報隠蔽と誤解されても仕方ないのではないか。
 「審査されているものだと思っていた」。奥州市ILC推進室や東北ILC推進協の職員は、本紙の取材に答えた。誘致に反対姿勢を示している市民団体「ILC誘致を考える会」共同代表の千坂げんぽう(※)氏(75)は、「結局、県も地元自治体もKEK任せ。住民の不安や問題点を指摘する声よりも、研究者側の指示を重視して動いているにすぎない。パターナリズム(父権主義)的構造だ」と指摘する。
 地域の姿が一変するかもしれないILC。そのさまざまな重要判断は、残念ながらわれわれ候補地近傍にいる人間には見えない遠い遠い舞台で行われている。それゆえ、地元対応はより一層丁寧であるべきだ。そして地元の誘致関係者は、時に研究者サイドの問題点を指摘するぐらいの、適度な緊張感と距離感を持つべきだ。
(児玉直人)

※…千坂氏の名前の漢字表記は、「げん」は山へんに「諺」のつくり。「ぽう」は「峰」
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tanko 2020-9-2 10:50

写真=ほうおう座銀河団の中心にある銀河から噴き出すジェットの想像図(国立天文台提供)

 国立天文台三鷹キャンパス=東京都三鷹市=に勤務する同天文台水沢VLBI観測所(本間希樹所長)所属の赤堀卓也・特任研究員らは、銀河団内のガスと、ブラックホール(BH)から噴出されるプラズマ粒子「ジェット」との関係性について、有力説に疑問を投げ掛ける新たな研究成果を発表した。銀河団のガスは、ジェットによって温められていると考えられていたが、赤堀研究員らは冷え続けている銀河団の内部にジェットが存在していることを確認。『日本天文学会欧文報告』8月号に掲載された。
(児玉直人)

 銀河団とは、数多くの星が集まった銀河の集団。これまで確認されている銀河団の中には、水素を主成分とする1000万度を超えるガスが大量に閉じ込められているとされている。
 ガスは、強いX線を放射することにより熱と圧力を失う。圧力低下したガスは、暗黒物質(ダークマター)と呼ばれる正体不明の物質の重力で、銀河団中心部の銀河に引き寄せ集められる。さらにX線放射で冷却が進むと、爆発的に大量の星が作られる。
 一方、地球が属する天の川銀河近くの銀河団では、逆にガスが保温し続けられている例がほとんど。「超大質量BHから噴出されるジェットから熱エネルギーが供給されているため」とする説が有力とされてきた。
 赤堀研究員らの国際チームが今回、観測対象にしたのは、ほうおう座銀河団の中心部。地球からの距離は約59億光年。ほうおう座は南十字星などと同様、主に赤道付近や南半球で確認できる星座で、日本では鹿児島以南で見られる。
 赤堀研究員らはすでに、南米チリのアルマ望遠鏡によって、同銀河団のガス温度が例外的に低くなっている点を突き止めていた。有力説に基づけば「同銀河団にジェットは存在しない」となるが、「従来の観測は解像度や感度が不足しており、ジェットを確認できなかったのでは」との疑問を抱いた。
 そこで同銀河団の長時間観測に適した、オーストラリアの電波望遠鏡を使い観測を実施。その結果、同銀河団中心部の銀河でジェットの存在を確認した。さらに、噴き出した時期が異なっていると思われる、2組で構成されていたことも分かった。うち一つは、同銀河団の年齢よりも非常に若く、誕生から数百万年と推定された。
 赤堀研究員は、南半球に国際プロジェクトとして整備される電波望遠鏡観測網「スクエア・キロメートル・アレイ(SKA)」を活用した観測の継続を望んでいる。「さらに高感度・高解像度でこの天体を観測し、地球近傍の銀河団との違いがなぜ生じているのか解明したい」と抱負を語る。
 電波望遠鏡による天体観測は同観測所の「お家芸」で、本間所長らによるBH撮影などの成果にも表れている。同観測所が運用する天文広域精測望遠鏡(VERA)は、赤堀研究員が活用を望むSKAプロジェクトの「科学技術に貢献する観測装置」として、国際組織のSKA機構から公式認定を受けている。
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tanko 2020-9-1 11:00
 岩手県は31日、奥州保健所管内(胆江地区)に居住する50代の男性が毒キノコを食べ、舌がしびれる症状を訴える食中毒(植物性自然毒)事案があったと発表した。男性は自ら採取した「カエンタケ」と推定される毒キノコを誤って食べたという。県内で毒キノコによる食中毒が発生したのは2018(平成30)年度以来。県環境生活部県民くらしの安全課は注意を呼び掛けている。
 同課によると、男性は8月27日に花巻市内の山を訪問。漢方薬や薬膳料理などに使われるキノコの一種「冬虫夏草」と誤認し、カエンタケと思われるキノコを採取した。同日、自宅で食べたところ深夜に発症した。28日、男性が受診した県央保健所管内の医療機関が奥州保健所に通報。奥州保健所は症状や潜伏時間などから、毒キノコによる食中毒と断定した。男性は31日現在入院中という。
 カエンタケは赤紅色で高さ8〜12cm程度の円柱または棒状。夏から秋にかけて、ブナやコナラなどの広葉樹林の地上に群生する。毒性が非常に強く、食後30分から発熱、悪寒、嘔吐、下痢、腹痛、手足のしびれなどが起こり、2日後に消化器不全、小脳萎縮による運動障害など脳神経障害により死に至るケースもある。
 今後、本格的なキノコ採りシーズンを迎える県内だが、同課は▽食用キノコと確実に判断できない場合は絶対に採らない・食べない・売らない・人にあげない▽食用に混ざって毒キノコが生えている場合があるので1本ずつよく確認する▽キノコにまつわる迷信や言い伝えを信じない――など、注意を呼び掛けている。
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tanko 2020-8-8 10:16

写真=大江昌嗣理事長(左)考案の水準器で傾斜の測定に挑戦する水沢第一高校の生徒たち(手前)

 水沢第一高校(大内誠光校長、生徒363人)の3年生3人は、胆沢扇状地の開拓史を語る上で欠かせない堰(農業用水路)の謎に迫る研究に取り組んでいる。水を流すのが困難な地形を400年以上前の人々はどのように克服し、農業用水を供給したのか――。当時、使われていたと思われる測量技術を用いながら、測地と研究を行い、扇状地の模型を粘土で製作。10月開催予定の同校文化祭での披露を目指す。
(松川歩基)

 6月に水沢星ガ丘町の奥州宇宙遊学館(中東重雄館長)で開かれた、「サイエンスカフェ」に同校を運営する学校法人協和学院の伊藤勝理事長が出席したのがきっかけ。同館の指定管理者、NPO法人イーハトーブ宇宙実践センターの大江昌嗣理事長=国立天文台名誉教授=が「胆沢扇状地の昔」と題し講演。同扇状地の地形と農業用水整備の歩みについて、科学技術の観点から解説した。
 講演後、同校の生徒に当時の測量を体験させられないかという話に。偶然にも同校体育科の千田一馬教諭が、胆沢平野開拓の祖として知られる後藤寿庵(じゅあん)の意志を継ぎ、水路開削を進めた千田左馬(さま)の子孫に当たり、千田教諭の声掛けで生徒3人が集まった。
 今月5日には、胆沢若柳周辺の堰跡地や用水路を巡る調査が行われた。生徒3人は伊藤理事長、大江理事長、中東館長とともに胆沢扇状地に広がる水路網構築の秘密に迫った。
 生徒たちは大江理事長が考案した手作り水準器や、スマートフォンのアプリを使って堰周辺の傾斜や標高を調査した。大江理事長の水準器は、長さ130cmほどの細長い木製の筒の内部に水をためる構造。水平に設置した筒を望遠鏡のようにのぞき、離れた位置に置いた測定棒を見て傾斜を測る。大江理事長によると、水を使って水平基準を判断する技法は、胆沢平野の堰掘削が行われた約400年前にも使われていたと推察される。
 一般に水はけの良い扇状地は果樹園などの栽培に向くと考えられている。しかし、胆沢扇状地には水田が広がり、日本でも有数の穀倉地帯として知られている。
 現在の胆沢川は、同扇状地の北側を流れている。南にいくほど標高が高くなり、北側の胆沢川から普通に水を引くのは難しい地形にある。
 400年以上前の人々がどのように地面の傾斜を正確にとらえ、扇状地の南側にまで農業用水を届けたのか――。生徒たちは自ら測量しながら先人の知恵に触れ、研究成果を扇状地の模型という形で再現する。
 参加している生徒の一人、本間大輝君(17)は「実際歩いてみると大変な作業だということがよくわかる。当時はすべて手探りの状態だったと思うし、近くに整った道もなかった。それを考えると本当にすごい。模型で再現するのが楽しみ」と意欲を燃やしていた。
 大江理事長は「自分たちの足で歩き、具体的な数字を見ることで当時の人の苦労やその技術の高さを感じられる。若い子たちにとって少しでも何か感じるものがあればうれしい」と話し、真剣に測定する生徒たちを見守った。
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tanko 2020-8-8 10:09

写真=佐々木隆局長に要望書を手渡す小沢昌記市長(左)

 奥州市から岩手県への要望会は7日、市役所本庁で開かれ、小沢昌記市長が達増拓也知事宛ての要望書を佐々木隆県南広域振興局長に手渡した。要望内容は、国際リニアコライダー(ILC)実現に向けた取り組みなど28項目。小沢市長は「内容を十分検討し、一つでも実現してもらえるようお願いしたい」と求めた。
 市側は小沢市長や及川新太、新田伸幸両副市長、田面木茂樹教育長、各部長らが出席。要望書共同提出者の市議会から、小野寺隆夫議長ら市議6人が同席した。県南局側は佐々木局長のほか副局長や各部長らが参加し、奥州選挙区選出の県議も顔をそろえた。
 市の本年度県統一要望は、28項目のうち新規が6項目、継続が22項目。ILCをはじめ、▽地域医療の充実と公立病院における医師確保▽地方財政基盤の充実強化▽路線バス事業に対する支援事業の拡充――の4項目を重点要望に掲げた。
 小沢市長は医師確保について「県立病院でも厳しいことは承知しているが、市にとって極めて重要な課題。スクラムを組み、より良い方向へ進みたい」と述べた。バス事業に関しては「人を呼び込み住みやすい地域をつくるため、公共交通の整備は大きな力になる。特段の配慮を」と求めた。
 佐々木局長は「ILC実現に向けて関係機関との連携を強化し国へ働き掛けながら、受け入れ環境の整備などに取り組む」と強調。感染症病床を備える市総合水沢病院への呼吸器内科医の継続的な配置を市が要望していることから、「引き続き協議し調整に努める」と答えた。
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tanko 2020-8-7 11:20

写真=規約や本年度事業などを決めた東北ILC事業推進センターの総会(一関市内)

 素粒子実験施設・国際リニアコライダー(ILC)の受け入れ環境整備を具体検討する組織「東北ILC事業推進センター」が6日、発足した。胆江2市町を含むILC建設の有力候補地・北上山地周辺の16市町などで構成。センター代表には、岩手県立大学長で素粒子物理学者の鈴木厚人氏が就任した。今月2日には、素粒子分野の研究者組織・国際将来加速器委員会(ICFA)が「国際推進チーム(IDT=International Development Team)」を立ち上げている。同センターはIDTの動きと歩調を合わせながら、地元が主体となり有力候補地周辺の地質調査や研究者らの定住に対応したまづくり、ILC建設に対する地域住民の理解促進活動などを進める。
(児玉直人)

 同センターは、東北ILC推進協議会(共同代表=大野英男・東北大学総長、高橋宏明・東北経済連合会名誉会長)の内部組織だった東北ILC準備室(室長・鈴木学長)を発展解消し設立された。16市町のほか、岩手・宮城両県、東北大、岩手大、岩手県立大、岩手県ILC推進協議会(会長・谷村邦久県商工会議所連合会長)の22団体から成る。16市町の中には、宮城県栗原市など宮城県北の4市も含まれている。
 同センターが検討する事柄は仝補地周辺の環境整備など地域主導で取り組むべき課題研究者や家族の定住に対応したまちづくりC楼莉嗣韻陵解促進ぜ然環境や社会、経済への影響ッ楼荵餮擦粒萢僂篆橋臭Σ誕器関連産業の振興――など。
 研究者界からの助言を得られる組織体制とし、候補地の地元と研究者界が密接に連携しながら検討作業を進める。協議内容は候補地の地元に関する事柄が多くを占めるが、広域の受け入れに関して協議するため、東北6県に新潟県を加えた「東北七県ILC推進会議」を内部に設置する。
 一関市内のホテルで開かれた設立総会には、構成団体市町の担当職員ら36人が出席。設立経過や規約、本年度事業計画などを決めた。本年度は組織基盤強化のほか、早急に取り組むべき課題を整理し検討に入る。
 本年度の具体的事業と予算額は仝補地周辺の地形・地質調査(1300万円)港湾活用による物流の研究・検討(200万円)まちづくり、受け入れ環境に向けた検討(250万円)っ楼莉嗣韻陵解促進活動(230万円)ッ楼茲某雄爐鮓討唸む方策の検討(100万円)Σ誕器関連産業の振興方策の検討(50万円)――などとなっている。費用は構成団体の負担金で賄う。
 総会後は、鈴木学長がこれまでのILC計画の流れについて講演した。

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