人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市東部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)
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tanko 2020-10-7 9:10
 テレビを見ていると、5G(ファイブジー)のコマーシャルがよく流れる。5Gは第5世代移動通信システムを意味し、スマホなどは現在の4Gより格段に性能がアップする。アメリカ、韓国では昨年4月から、中国では同年10月末から運用が始まり、日本では今年3月からサービスが開始した。
 5Gに関するネットの検索をして驚いたのは、健康被害を警告する記事が多いことである。共通するのは、ミリ(メートル)波による人体への影響。ミリ波とは、マイクロ波のなかでも高い周波数(30〜300ギガヘルツ)の電磁波(電波)を指す。5Gでは2G〜4Gまで使用されてきたマイクロ波に加え、ミリ波を使用する。
 ミリ波は直進性が強く、大容量のデータを伝送できる。このため衛星通信や電波望遠鏡、車載衝突防止レーダーなど多岐な用途に使われる。一方、アメリカ軍は暴動鎮圧用などの目的で、ADSという電子銃の開発を進めている。5Gの技術はもともと電磁波兵器として開発されたと指摘する記事も。
 ミリ波については「人間の皮膚の数ミリ以内及び角膜の表面層でほとんど吸収され、末梢神経系、免疫系、心血管系などに有害な生理学的影響をもたらす」「生殖能力、脳、心臓機能、遺伝子にも作用を与える」と警鐘を鳴らす専門家が少なくない。電磁波による発がん性の恐れも指摘されている。
 ミリ波を使う5Gでは、100〜200メートルごとにアンテナを設置する必要があるという。そうなると、より強い電磁波を多く浴びることになる。5Gの電磁波の浸透力は強く、ビルの壁などもすり抜ける。5G用の通信衛星が地上の基地局に送電すると、いやおうなしに人間や動物に降り注ぐ。
 なかには、5Gの電磁波で昆虫が絶滅し、環境にも悪影響をもたらすと指摘する専門家も。これらの警告が杞憂に終わればいいのだが、もしも将来的にこれらの警告が現実になったらと思うと、背筋が寒くなる。
(史)
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tanko 2020-10-6 10:00
 菅首相は就任早々、説明責任の追及を受けている。日本学術会議が推薦した会員候補者を任命しなかったことに対する説明だ。報道各社は学者らの見解を引用しながら、学問への政治介入として批判的。首相官邸前では抗議デモが行われるなど、問題視する動きが広がる。
 報道によると、学術会議は3年に一度、半数の105人を改選する。内部での選考を経て、臨時総会で候補者が承認され、時の首相が任命する。今回、内閣府から学術会議の事務局に送られてきた名簿には99人の名前しかなく、6人の名前がなかったことで問題が表面化した。
 学術会議側が内閣府に問い合わせると、「人事上の問題は回答できない」との返答。指摘されているのは、前安倍政権の政策に対して否定的な意見を持つ人たちが任命されなかったことにある。安全保障や組織犯罪処罰法などの法制度に反対の立場を取ったことで、排除されたのではないか、との見方だ。
 学術会議といえば、当地域を含む「国際リニアコライダー(ILC)」誘致問題でも重要な役割を果たす研究者組織として知られる。政府とは独立した立場で提言する「科学者の国会」とも呼ばれているそうだ。任命されなかった6人に、ILC問題などにあたる素粒子物理学の研究者は含まれていないが、前政権の主要政策に批判的な言動を取っている人たちという。
 菅首相は、就任後最初の記者会見で前政権の取り組みを継承することを明言した。安倍政権に非協力的な人材を排除したとの見方が広がっているのは、首相本人も不本意だろう。
 かつての国会審議で、首相の任命が「形式的な発令行為」との答弁もあったようだ。学術会議法の条文を読むと、内部の推薦に基づき、内閣総理大臣が任命する、とある。任命権があるということは、任命しない権利もあるということか。ならば、理由を説明する責任はあるというのが、世の中の見方だと思うのだが。
(和)
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tanko 2020-10-4 7:30
 「仕事師内閣」など自画自賛して登場した菅義偉内閣は、高い支持率で始まったが、早くも「馬脚」を現した。安倍内閣の後継とはいえ、そこまで独善的な体質になるようにはみえなかったのだが、政府系機関のありとあらゆる人事に介入し、自分たちに意見する人たちを排除しようとしているらしい。その端的な表れが、日本学術会議への介入である。
 日本学術会議(会員210人、任期6年)は、任命権そのものは内閣にある。しかし、これまでは会議が推薦した会員候補をすべて追認してきた。ところが今回菅内閣は、105の推薦者のうち6人の任命を拒否したのである。どうやら、政府に対する反対意見などを過去に述べたことが原因らしい。
 戦後、学術会議が推薦した学者を政府が拒否した例は一度もなかった。なぜかといえば、政治は学問に介入してはいけないからだ。「学の独立」は、あの明治憲法下でさえ、大学の基本だった。
 学問の何を承知で介入する破廉恥を冒しているのか。いわば総理とその周辺の幼児性による。しょせん「仲間内」に対する異常な執着の裏返しにみえる。政治の世界の感情が、学問、科学の世界にまで踏み込む愚。その罪は大きいといわなければならない。
 たまたま、安倍氏の病気による首相退任が、日本人のやさしさによる「判官びいき」につながり、高い支持率に助けられているこの機に、学術の世界にまで汚い手を入れようとする感覚。これはかなり危険な心根の内閣というほかない。しばらくは「お手並み拝見」と考えていたが、看過できなくなってきた。
 司法に影響を与えようとイエスマン検事を「検事総長」に据えようとして失敗したことと、同一線上にこの問題はあって、国民が知らないうちに、自分たちの「思いのまま」の社会をもたらそうとする、独裁者の危なさを感じる。
 携帯電話料金の引き下げ、行政改革、デジタル化といった、確かに魅力的な「仕事」を強調している。しかしその陰で、けっして行ってはならない「陰謀」が進行していることに、私たちは気づかなければならない。

■日本学術会議
 日本の科学者を代表する組織として、戦後間もない昭和24(1949)年に発足した。法律(日本学術会議法)により「独立した機関」として活動していて、麻生副総理の祖父「ワンマン」といわれた吉田茂は、その発会で「国の機関ではあるけれども、その使命達成のためには、時々の政治的便宜のための掣肘(自由を妨げる干渉)を受けることがないよう、高度の自主性が与えられている」とあいさつした。
 公選制から推薦制に改められた時にも、「推薦を拒否はせず、任命する。政府が干渉したり中傷したりすることはない」というのが政府の公式見解だった。
 日本学術会議は、総会で任命拒否を問題視し、政府に拒否理由開示を請求したが、政府はそれに応えていない。

 学問は、古代ギリシャでプラトンが「アカデメイア」を創設して以来、政治干渉を受けないように発展してきた。政治は、権力闘争の修羅であり、学問は純粋に追求すべき人間学だと考えられてきたからだ。
 中国では、科挙といわれる独特の厳しい官吏登用試験があって、門閥とはべつに官吏が採用された。このため、西洋の「アカデミー」を訳す際「翰林院」という言葉をあてた。
 翰林院は、学問の場というより、学者や高級官僚たちを集めた皇帝の諮問機関のようなもので、皇帝の「勅書」の起草や記述などを行った。学問好きだった唐の玄宗皇帝が設けたことで知られている。この場合には、政治に近い位置にある。しかし、中国でも長く「竹林の七賢人」ではないけれど、賢人は「臥竜」するものなのである。
 西洋のアカデミーは、貴族社会など政治の干渉を受けもしたが、それらの影響を排除する方向で芸術や文化を高めようとしてきた。
 日本では江戸期、学問所が各地にあったが、政治に近い学問、とりわけ朱子学においては、みるべき成果は何もなかった。むしろ、大坂・緒方洪庵の適々斎塾やシーボルトの鳴滝塾といった蘭学の「私塾」に俊英が集まった。
 保守派の論客、西部邁は「アカデミズムは、山の上に住む世捨て人の仙人のようなのものだ。普段は世の中にまったく知られていないことを、ひたすら研究している変わり者たち。それが、里人が何か困ったとき、意見を述べに山から下りてくる。それは里人のために日々に欠かさず考え抜いてきたからだ」
 学問は、アカデミズムは孤高であり、純粋であって政治とは相いれない。ところが、政治はしばしば干渉したがる。今の政治が我欲に落ちている証左と言っていい。

■政治弾圧
 表立った学問に対する政治介入は、「天皇機関説」を掲げていた美濃部達吉博士に向けられた。美濃部の学説は、当時の常識だったが、右翼議員たちが天皇の権威をさらに高め、その玉座の陰に隠れようとする悪意に満ちた工作をした。
 昭和10(1935)年2月、尊王的で貴族院議員だった美濃部は、右翼議員によってつるし上げにあい、それに同調した政友会が政局にしたため、学説そのものが葬られた。美濃部は「起訴猶予」ではあったが、失意のうちに議員を辞任した。
 大学自治に対する干渉は昭和13年、近衛内閣の文部大臣に就任した陸軍大将荒木貞夫によって始まった。それでなくても、数人の学者たちは、政治がらみで大学を追われていたが、皇道派の荒木が主張したのは、大学の学長を教授会が選ぶのは「天皇の官吏任免の大権をおかすものだ」という理屈だった。「帝大総長は官選とする」と荒木は言い出したが、各大学は一斉に反発した。そうなると、今度は、個別の教授をやり玉に挙げる動きが出た。
 大学の教授たちは、個々に持論がある。一枚岩とはいえない。それにあおられて大学に内紛も起きた。そこが政治につけ入るスキを与えた。
 昭和14年、古代日本史の権威津田左右吉が出版法違反で起訴された。神代史研究が政治の逆鱗に触れた。そこで大学の自由も、学問の自由もすべて失われた。そのあとには戦争が待っている。

■歴史への反省
 ひたすら反省と自虐のために歴史があるのではない。が、現代人の私たちが決して間違いをしないよう、先人たちに学ぶことを怠ってはならない。それが歴史であることはいうを待たない。
 政治が学問に介入する世の中が迫っている。私たちはそれを身近に感じる時代に差し掛かっていることを思わなければならない。新型コロナによって、大学はようやく学内での講義が始まったばかりだ。「学の独立」の大切さ、いまの生活に直面する人たちにとってそれは「どうでもいいこと」にみえるかもしれない。が、それを許すことは、普通の人たちの暮らしを息苦しくする第一歩なのである。それを歴史の教訓は教えている。
 日本のアカデミー組織は、日本学術会議だけでなく、学士院もあるが、純粋に、誰からも干渉されることなく研究に没頭してもらう、そのことが日本のためになる。幼い政治はそこに気付かない。
 学問に国が介入することが当然のようになっている国が世界中にはある。とくに、共産国、独裁国家などでは顕著だ。日本はそちらに近づきたいのか。最近、国の羅針盤が怪しくなってきた。

■任命拒否
 日本学術会議の推薦を内閣に拒否された学者は、東京慈恵会医科大小沢隆一教授(憲法学)、早稲田大岡田正則教授(行政法学)、立命館大松宮孝明教授(刑事法学)、東京大加藤陽子教授(歴史学)、京都大葦名定道教授(キリスト教学)、東京大宇野重規(政治学)の各氏。安保法制など、いまの自民党政治に批判的な見解を表明した学者たちは、内閣が率先して排除しようというわけだ。
 3年ごとに半数が改選される日本学術会議の会員。推薦した京都大学の前総長で霊長類学者として知られる山極寿一前会長(総会で退任)は「任命拒否は日本学術会議の歴史になかったことで重大。大変残念だ。首相に説明を求めている」と退任の言葉を述べた。
 会員の中からは「政府が学問にも口を出すという宣言だ」との声が上がった。この国の政治は、本当に大丈夫なのか。
 経済の自民党と言われながらも、コロナ禍で先行きは不透明だ。いまはただ、財政出動だけで株価を維持しているだけで、失業率も高くなってきた。安定感も自由も失われたら、自民党の取り柄はどこにあるだろう。
 「ものいわば唇寒し」に向かおうとしているようで、何やら背筋が寒くなる。それが、中国、台湾、南沙などの極東の不安定要素とリンクしていそうな気がするのは、思い過ごしだろうか。
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tanko 2020-9-27 9:40
千坂 げんぽう(一関市、僧侶)
 世界中を恐怖に陥らせているコロナ禍は、GDP(国内総生産)を重視する経済成長優先の社会に反省を投げ掛けている。しかし、政府、岩手県などは世界的な課題に真剣に向き合いながら国民、県民の生命を重視した施策を行っているだろうか。
 日本においては、東日本大震災以降、台風などによる風水害や地震被害が続いている中でのコロナ禍、政府はコロナ禍から国民の生命と産業を守るとして2次にわたる補正予算を繰り出した。国民の生命を守るという「錦の御旗」は、誰もが異議を唱えにくいので補正予算は通過したが、東日本大震災と同様「錦の御旗」に便乗した各省庁の無駄遣いは著しい。今や国民一人当たりの借金は900万円を超えんとする勢いなのにである。
 国に比べスケールは小さいが、岩手県のILC(国際リニアコライダー)誘致運動も似たような構図が見られる。ILC誘致が実現すれば、「国際科学都市ができる」とか「多くの雇用が生み出される」などの「錦の御旗」で、岩手県を中心とする推進側は県議会や各市議会でのいち早い同意を取り付け、反対を許さない戦前の「大政翼賛会」的な体制をつくり上げた。
 私は7年前からILC誘致反対の意見を県内他紙のオピニオン欄で述べていた。当初は「雇用が増えるのになぜ反対するの?」と非国民的な目で見られていた。欧米、日本の財政難や日本政府の科学予算の在り方を勘案すれば、国際事業であるILCのような巨大プロジェクト誘致を本気で考えること自体、高度経済成長期やバブル経済の再来を夢見る「愚かな考え」と思っていた。投げ掛ける冷ややかな視線も「どうせ実現しないのだから」と気に掛けることもなかったし、あえて反対運動を呼び掛けるつもりもなかった。
 しかし、岩手県や一関市が出前授業と称して、小学生から高校生、高専の学生まで「1万人の国際科学都市ができる」という確約されてもいない夢を語っていた。将来世代に悪影響を与えつつあると感じた。そんな中、請われて市民団体「ILCを考える会」の共同代表になった。
 日本学術会議が2018(平成30)年12月19日に公表した「ILC計画の見直し案に関する所見」には、『純学術的意義以外の技術的・経済的波及効果については、ILCによるそれらの誘発効果は現状では不透明な部分があり、限定的と考えられる』と、否定的な見解が記されている。
 学術会議は人文科学、社会科学、情報科学、医学、農学、工学、理学など科学者約87万人の中から選ばれた会員、連携会員で構成され活動している。その会員が長時間検討して「日本誘致を支持するに至らない」とした。いくら「岩手県民が一致してILC誘致を希望している」と繕ってアピールしても、学術会議の結論は重い。
 この学術会議の所見について、東北ILC準備室長(当時)の鈴木厚人・岩手県立大学長(素粒子物理学)は講演で「事実誤認に知識不足ばかり。時間をロスしてばっかりだ」と発言。学術会議の組織・運営にも疑問を呈したという。
 このような発言が研究者からなされることは信じがたいし、許されるべきではない。八つ当たりの発言は、自分が科学者であることを忘れた恥ずべき行為なのである。誘致関連費用を出している岩手県は何を考えているのだろう。
 所見は「所要経費が格段に大きく、長期にわたる超大型計画」だとし、「国民に提案するには学術界における広い理解と支持が必要」と指摘する。さらに「地域振興の文脈で語られている事項、土木工事、放射化物生成の環境への影響に関する事項等について、国民、特に建設候補地と目されている地域の住民に対して、科学者コミュニティーからの正確な情報提供に基づく一層充実した対話がなされることが肝要」とある。
 ところが誘致推進側は、ILC計画に携わる高エネルギー加速器研究機構(KEK)の研究者らを岩手県に招いたPRしか行っていない。漫画や芸能人を利用したPRもしているが、他分野の科学者コミュニティーの理解を得る実践は皆無と言ってもよいほどだ。一関市、奥州市でのリスク説明会も、私たちが反対の決議文を学術会議や文科省に提出してから、形だけ行ったに過ぎない。
 KEKでは「Belle?(ベル・ツー)」実験のように、素粒子の謎に迫る良い結果を出していると聞く。素粒子物理研究の進展は喜ばしいが、可能性のない計画を展望があるかの如く引き延ばし、県民の税金を無駄に使わせることは、県民を軽視していることに他ならない。彼らの「岩手県民は私たちの言うことを聞いていればよい」とでも考えているようなパターナリズム(父権主義)的な姿勢は、民主主義と相容れるものではない。
 ロードマップ2020に申請していたILC計画だったが、今年3月27日に取り下げていた。KEKは国際協力体制が確立されたためなどと理由を述べてはいる。だが私は、審査の結果、ロードマップに掲載されなかった時のことを恐れたのではないかと感じた。不掲載は、予算化への道が明確に否定されたことになるからだ。
 なにより、9月8日からパブリックコメントが開始されるまで発表せず隠していたことには、「県民をばかにした行為」という印象を受けた。一部報道では、まだILC計画に見込みがあるというKEKの一方的な発表をそのまま記事にした。どうしてこうも客観性を欠くようになったのか、KEKと地元自治体、一部マスコミとの関係の究明も必要ではないか。
 財政難の日本の現状、経済力が弱い岩手県……。これらの状況を冷静に見つめ、地域づくりには王道はないことを知るべきである。巨大プロジェクト誘致などではなく、地道に岩手の農林水産業や観光などの振興に取り組むことが大事ではないだろうか。

※投稿者の名前の漢字表記は、「げん」が山へんに「諺」のつくり、「ぽう」は峰
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tanko 2020-9-25 9:50
 国際リニアコライダー(ILC)計画に関する文部科学省への審査申請を取り下げ、その事実が約半年にわたり公表されなかった件について、東京大学素粒子物理国際研究センターの森俊則教授は24日、インターネットを通じた「ウェブ講演会」で陳謝した。申請書の提出や取り下げ、公表を巡る対応は高エネルギー加速器研究機構(KEK、山内正則機構長)が担当。KEKはホームページで「おわび」を表明しているが、高エネルギー物理分野の国際組織に所属している森教授は「ILCを推進するコミュニティーの代表として申し訳なく思う」と述べ、ILC有力候補地の本県関係者らに向け直接謝罪した。(児玉直人)

 森教授は「国際将来加速器委員会(ICFA)」の委員。国内では、高エネルギー物理学研究者会議委員長などを務めている。同日は県ILC推進協議会(会長・谷村邦久県商工会議所連合会長)が主催するILCウェブ講演会の講師の一人として、直近の動向を紹介した。
 ICFAは今年2月、ILC計画推進に当たり、国際協力体制の枠組みを再構築するよう提言した。これとほぼ同時期、KEKは文科省が策定する「学術研究の大型プロジェクトの推進に関する基本構想ロードマップ(2020)」に係る申請書類を提出。計画登載に向けた審査を受ける流れだったが、ICFAの提言に基づき体制構築が進めば「申請書に示した内容とは異なる」とし、KEKは3月27日に申請を取り下げた。
 ところが、KEKはロードマップの素案公表日と同じ9月8日になって、取り下げた事実を明かした。計画実現へ密接に協力してきたはずの東北の誘致団体、候補地周辺の自治体首長らにも知らせていなかった。KEK広報室は「ロードマップの審査過程は非公開が原則だったため、報告が遅れた」としている。
 森教授は「サポートを頂いている地元の方々、産業界の方々にすら伝えていなかった。どんなに必要な理由があったにせよ、非常に大きな間違いであり、(誤った)判断だった」と述べ、陳謝した。
 その上で「8月には国際準備研究所を立ち上げる『国際推進チーム』が発足した。1年から1年半後には準備研究所ができ、4年間にわたり細かい設計や地質調査などを行う。並行して政府間の協議を行うが、ここで各国の分担を話し合い、本当に(?LC計画を)やるかどうかが決まってくる」と説明。「今は(政府が)やる、やらないを判断するタイミングではない。今後の進展を見て判断していくだろう」と述べた。
 同日は東京大学の山下了特任教授、元国土交通省国土政策局長の藤井健氏らも講演。ILC計画などが反映された国土計画協会の「地球村創生ビジョン」策定に携わった藤井氏は、「新型コロナウイルス対策は最優先すべき課題ではあるが、だからと言って宇宙の真理を探究するような研究の積み重ねを止めていいわけではない。地球温暖化対策と同様、われわれの世代だけでなく、次の世代にも積み上げバトンを渡していくもの。そのためにも、ILCは取り組まなければいけない」などと述べた。
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tanko 2020-9-21 9:50

写真=署名に応じる奥州宇宙遊学館の来館者。左は木村隆代表

 天文広域精測望遠鏡(VERA)の運用継続を求める署名活動が20日、水沢星ガ丘町の奥州宇宙遊学館(中東重雄館長)前で行われた。天文ファンらで組織する「VERAサポーターズクラブ」代表の木村隆さん(48)=金ケ崎町三ケ尻中荒巻=が来館者に署名への協力を呼び掛けた。
 国立天文台水沢VLBI観測所(本間希樹所長)が運用するVERA観測網は、水沢や石垣島、小笠原諸島・父島、鹿児島県の入来の4カ所に同一仕様の電波望遠鏡を設置。4局を連動させて高精度な天体観測を行ってきた。近年は韓国や中国など東アジアの電波望遠鏡群と連動させ、ブラックホール関係の観測など、より精度の高い観測を実施している。
 しかし昨年12月、同天文台執行部がVERAの運用終了と同観測所の予算半減の方針を急きょ提示。現場と執行部との協議で本年度予算は確保されたものの、2003(平成15)年から続けてきた「銀河系の地図作り」は当初予定よりも早く終了。研究プロジェクトの見直しを余儀なくされているほか、来年度以降の予算確保の見通し、若手研究者の育成にも暗い影を落としている。
 署名は、11月ごろの提出を目指しネット上などで既に行われていたが、より多くの賛同を得ようと、同観測所敷地内にある遊学館来館者に協力を求めた。
 4連休2日目とあって、この日は市内外から家族連れらが次々と来館。木村代表の呼び掛けに応じ、署名に協力していた。
 目標は1万筆。木村代表は「花巻ロータリークラブの働き掛けのほか、石垣局がある沖縄県石垣市の高校生たちも署名を集めている。集計途中ではあるが、5000筆近くは集まっているのではないか。地元、水沢や金ケ崎の方にもさらに協力をお願いしたい」と話している。
 同館前での署名活動は、27日も午前11時から午後4時まで実施する。署名サイトでは常時受け付けている。

署名サイト → http://chng.it/6kS5snj6
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tanko 2020-9-18 10:00
 素粒子実験施設「国際リニアコライダー(ILC)」の誘致に反対姿勢を示している、市民団体「ILC誘致を考える会」(千坂げんぽう※、原田徹郎共同代表)は17日、達増拓也知事に対し、高エネルギー加速器研究機構(KEK、山内正則機構長)と連携し実施しているILC誘致推進事業の停止などを求める要請書を提出した。同会は、文部科学省に提出した「学術研究の大型プロジェクトの推進に関する基本構想ロードマップ(2020)」の申請を取り下げ、5カ月余り公表しなかったKEKの対応を「不誠実」と批判した。
 同会は一関市を拠点に活動。ILC誘致に批判的、あるいは慎重な思いを抱く同市や奥州市、平泉町などの住民で組織している。県への要請書提出は今年2度目。達増知事へは同日郵送したほか、一関市の勝部修市長と大槻隆・同市議会議長には同様の内容の文書を担当部署を通じ提出した。
 ロードマップ2020の申請取り下げについて、KEKは「審査過程は非公開が原則だったため報告が遅れた」と釈明している。
 同会は岩手県南、宮城県北の自治体などで構成する「東北ILC事業推進センター」が8月に立ち上がった時点でも、「各自治体はロードマップ申請を取り下げた事実を知らずにいた」と指摘。「およそ科学者にあるまじき策動。このような不誠実な団体に踊らされることは、一刻も早くやめるべきだ」と厳しく批判し、東北ILC推進協議会、東北ILC事業推進センターからの退会を求めた。
 このほか、「県施策に対する県民意識調査」でILC計画が県民ニーズの低い施策となった結果に触れながら、ILC推進局の廃止やILC誘致関連費用の執行停止を要請。新型コロナウイルス感染症対策などに力を注ぐよう求めた。
 原田共同代表は「学術研究をしているKEKに私自身、敬意を表して接してきた。だが今回の申請取り下げのように、事実を長く公表しなかった姿勢があると大きな不信感を抱く」と不満をもらす。「ILCの県民ニーズの低さが県が自前で行った調査でも明らかになっている。コロナで地域経済が低迷している状況下、ILCに労力を費やしている場合ではない。日本学術会議さえ否定的な見解を示している計画を政府が実現するとは到底思えない」と述べている。

※…千坂氏の名前の漢字表記は、「げん」が山へんに「諺」のつくり。「ぽう」は「峰」
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tanko 2020-9-17 10:10
 人口3000人足らずの北海道寿都町でこのほど、原発の高レベル放射性廃棄物(核ごみ)の最終処分場文献調査応募を巡る住民説明会があった。当初は、1度だけの予定だったが、町議会全員協議会で「1度では来られない住民がいる」との意見に従って、8回に分け、町内各地で行われるようだ。
 短いニュースの一場面で、説明会の様子を目にしたが、住民の必死さが見て取れた。「こんな資料で説明になるか」とカメラの下で資料をめくる住民。色分けした図のような部分に比して文字は少なく、原発関連という事の大きさとはかけ離れて見えた。
 東日本大震災後の原発汚染土さえ、その取り扱いは難しい。青森県むつ市の使用済み核燃料を一時的に保管する構想も、合格とはなったが、保管後の搬出先は不透明で「永久保管か」との懸念が強い。原発銀座と言われる福井県は「とにかく使用済み核燃料は県外に」と言ってはばからない。
 寿都町の片岡春雄町長は地元も含めた反発に「判断を10月以降に延期する」とトーンダウンしたが、前向きな姿勢に変わりはないようである。「日本の核のごみについて、あまりに無関心。(原子力政策に)どこかで一石を投じないと。勇気を振り絞って提案した」と主張する。
 核ごみの最終処分場建設の流れは文献調査約2年(歴史的文献で過去の地震の調査)。概要調査約4年(ボーリングなどで地下の岩石や地下水の分析)、精密調査約14年(地下深く調査施設を設置、地質や岩盤を直接調査)。その後に最終処分場の建設地を決定する。市町村長や知事が反対すれば次に進めないが、文献調査応募では言ったが勝ちで意見無用である。
 寿都町は周辺の4町から指摘を受けた。「北海道は農業・漁業など1次産業が基本でイメージが損なわれ応募検討だけで実害が出る。文献調査に伴う交付金で町づくりは間違い」と。小さな町の大きな発言。応募の行方が気になる。
(響)
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tanko 2020-9-13 9:50
 私たちの住む地球は、「天の川銀河」の中の太陽系に存在する。地球は約45億年前に生まれた。宇宙は約138億年前にできた。きっかけは「10のマイナス34乗」の大きさの何かが爆発したためだ。
 その宇宙最初の爆発が「ビッグバン」。爆発の影響で宇宙は広がり続けている。宇宙に欠かせないのが「ダークマター(暗黒物質)」と「ダークエネルギー(暗黒エネルギー)」の存在だ。銀河は強い重力でモノをかき集める力を持つ「ダークマター」、宇宙は広がりの力になる「ダークエネルギー」のおかげで成り立っている。
 どちらも、光も電波も発しないナゾの存在だ。宇宙の全容を解明する研究が世界的規模で始まっている。日本では奥州市の「国立天文台水沢VLBI観測所」(本間希樹所長)の活躍が特に目覚ましい。
 2019年4月には、国際プロジェクト「EHT」に参加。世界で初めて巨大ブラックホールの姿を撮影した。今年は、太陽の25倍以上ある大質量星団の「赤ちゃん星」から上下に釣り鐘状に噴き出すガスと周辺を回転するガスを日韓共同観測で明らかにした。大質量星団でも、太陽のような小質量星と同じプロセスで星が形成されることが示された。
 先月末には、同観測所チーム代表の赤堀特任研究員が「ほうおう座銀河団」の中心部から誕生間もないジェットを観測したと発表。ジェットが銀河団のガスの冷却を抑制すると考えられてきたのだが同銀河団のガスは冷えており定説を覆した。
 水沢天文台のVERA望遠鏡は、世界と協力し合い銀河の中の巨大ブラックホールの姿を捕らえる「SKA」計画の貢献装置にも認められた。しかし、来年度の運用のための予算にめどが立たないことが判明。銀河系の立体地図を作る「VERAプロジェクト」に区切りを付けるなど、研究計画の見直しを迫られている。天文台の危機を救おう。現在、地元周辺都市で運用継続を求める署名運動が行われている。
(吉)
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tanko 2020-9-12 18:20
 原発から出る核のごみ(高レベル放射性廃棄物)の最終処分場選定に向けた文献調査に北海道寿都町が応募を検討しているという。道知事や周辺の町村長は拙速過ぎると反発を強めているが、同町の片岡春雄町長は「反対意見は覚悟している。地元以外からの声に耳を貸すつもりはない」と強行姿勢である。
 核のごみは、使用済み核燃料を再処理してプルトニウムやウランを取り出した後の廃棄物で、国は2000年に法律を制定し、地下300mよりも深い地盤に埋める地層処分を決めている。建設までの流れは「文献調査」「概要調査」「精密調査」の3段階で約20年を要する。「施設建設」に10年を見込んでいる。
 文献調査を受け入れると、最大20億円、概要調査は最大70億円の交付金が支給されるなど、寿都町のように人口が3000人にも満たない小さな町などは、悪化する町の財政を支える主要な選択肢であることも理解できないこともない。
 交付金を受け取ることは処分場建設に同意したとする意思表示に等しい。手を上げやすい「文献調査」という、ある意味では作為的で後戻りできない意味合いがあることをしっかりと頭に据え、慎重に検討すべきではないか。
 この町の地下には「核のごみ、高レベル放射性廃棄物が埋まっている」としたら、住民は不安でこの先長く住み続けられないのではないか。若い人たちは去り、やがては誰も住まない町になりはしないか。町の未来をともす光が見えないのだ。
 国は、原発の建設に際し、メリットを提示。実際、立地した町は多大な恩恵を受け、住む人々は原発を切り離すことができないほど生活と密着している。しかし、核ごみ処分場からは町の発展に結び付くようなメリットは思い浮かばない。国は、応募する町と住民のことを真摯に考え、数万年から10万年という管理に向けた安全性の科学的根拠と、町の明るい未来を示す発展構想を提示すべきではないのか。
(紀)

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