人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市東部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)
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tanko 2021-8-23 9:50

写真=奥州市役所本庁舎に掲げられているILC誘致を訴える横断幕。北上山地周辺の自治体などは早期実現を求めているが、文科省は誘致に慎重な姿勢だ


3年ぶりにILC有識者会議、山積課題を審議
 文部科学省は7月下旬、素粒子実験施設・国際リニアコライダー(ILC)に関する有識者会議を3年ぶりに再開させた。ILC日本誘致に対し、文科省は慎重な姿勢を崩していない。誘致を推進する素粒子物理学者らは6月、ILC準備研究所(プレラボ)開設に関する提案を公表。本県自治体などと連携し、政府に前向きな姿勢を表明するよう働き掛けている。しかし文科省は、課題が山積する現状での誘致判断や投資は「国民理解を得るのは難しい」との考え。有識者会議では準備が整い次第、他分野研究者らを含む同会議委員と推進する研究者らの意見交換を行い、専門的見地から課題解決の進展状況を審議。本年度中に審議結果を取りまとめる。
(児玉直人)

 有識者会議は2014(平成26)年5月に発足。ILC計画に対する課題を指摘した「審議のまとめ」を2018年7月に公表し、一度役割を終えた。
 文科省は有識者会議のほか、日本学術会議からも寄せられた指摘を踏まえ、2019年3月にILC計画に対する公式見解を初めて発表。事務レベルの意見交換は実施するものの、日本への誘致表明をする段階にはないなどとした。
 一方、誘致を推進する研究者らは昨年、高エネルギー物理分野の組織「国際将来加速器委員会(ICFA)」などからの提言に基づき、国際推進チーム(IDT)を設置。プレラボ立ち上げに向けた準備を進め、今年6月には開設提案書を発表した。
 プレラボ提案書の発表とほぼ同時に、有識者会議や学術会議から指摘されていた課題への対応状況を自主的に文科省に報告。対応に当たった高エネルギー加速器研究機構=茨城県つくば市=は「課題解決の活動が進んでおり、残された課題を解決するにはプレラボにおいて、国際協力の下で対応していく必要がある点を関係者に理解してもらうため」と説明している。
 プレラボ開設の前提として、日本政府が誘致に前向きな姿勢を示す必要があると主張。だが文科省は、慎重な姿勢を堅持する。
 文科省は昨年2月、独仏英3カ国の政府機関と意見交換を実施。3カ国からは「ILCに参加する資金的余力はない」「建設コストが巨額で、仮に費用分担をしても(投資は)不可能であり現実的ではない」などの考えが示された。
 さらに今年2月25日の衆議院予算委員会第四分科会(文科省所管)で萩生田光一文科相は、フランスに建設中で日本も参画している国際熱核融合実験炉(ITER)において、当初計画通りの資金を拠出していない国があると答弁。「そういう現実を知っているので、仮に(ILCを)日本に造るとなり、万が一のことがあった場合、日本が全て責任を負えるのかと言われれば、とてつもない金額が後から付いてくることになる」と懸念している。
 推進する研究者サイドは、プレラボ設置によって主要国政府間の国際費用分担協議の体制が整うとの考え。しかし文科省は、プレラボ自体も明確な国際費用分担の下で設置されるべきだとの認識だ。同分科会で萩生田文科相は「極論を言えば、(プレラボは)日本単体の財力、能力でも設置できるが、やはり国際研究施設。欧米の協力見込みを明確にし、財政的裏打ちも含め確立していく必要がある」と述べている。
 3年ぶりに再開した有識者会議の委員14人は、座長を務めていた平野真一氏(名古屋大名誉教授)、学術会議会長に就任した梶田隆章氏(東京大宇宙線研究所長)が退任し、新たな委員2人を補充した以外は、これまでと同じ顔触れ。後任の座長には、元国立天文台長で岐阜聖徳学園大学長の観山正見氏が就いている。
 ILCは振動の影響を受けにくい地下への建設が最適とし、推進する研究者らは2013年に本県南部の北上山地を候補地に選定。岩手・宮城両県の自治体、経済界なども誘致実現を目指している。文科省は、候補地は政府として決定したものではないと強調している。


「誘致判断の状況にない」(ICFA議長へ文科相が書簡返信)
 文部科学省の萩生田光一大臣が今年5月、国際将来加速器委員会(ICFA)のスチュアート・ヘンダーソン議長に対し、現時点で日本がILC誘致を判断する状況にないことを伝える書簡を送っていたことが分かった。
 3月17日付でヘンダーソン議長から萩生田大臣宛てに届いた書簡がきっかけ。ヘンダーソン議長は、2月25日の衆議院予算委員会第四分科会での大臣答弁を「ILCを日本に建設することに好意的であり、必要性を十分理解している」と解釈。書簡には「ILC計画の実現に向けた約束の可能性を議論するため、大臣が外国政府関係者を招待することを期待しています」などと記されていた。
 萩生田大臣は、5月31日付で返信の書簡を送付。「一般論として日本に国際的な研究拠点が形成されることには意義があると考えている」とした上で、「しかしながらILC計画に関しては、国際費用分担や技術的成立性、国民理解などさまざまな課題がある。文科省は、現時点で日本への建設に関する判断をする状況にはない」と強調した。
 また同分科会での答弁は「見通しがない状況での準備研究所(プレラボ)への投資は、国民の理解を得るのが難しい」「プレラボの予算を検討する前に、明確な財政的裏打ちも含めて欧米等のILC本体への協力見込みを確認する必要がある」という考えを話したものだと念押しした。
 両者の書簡を和訳したものは、7月29日に開催されたILC有識者会議第2期の第1回会合で資料の一部として配布された。会議資料は一般公開されており、文科省のホームページ内から入手できる。

会議資料の掲載ページhttps://www.mext.go.jp/kaigisiryo/2021/mext_00253.html
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tanko 2021-8-6 11:40

写真=県議会県政調査会で、地域と天文台との連携について述べる本間希樹所長(左)

 国立天文台水沢VLBI観測所の本間希樹所長は、基礎研究分野の担い手不足や財政問題、地域振興などの課題を解消する上で、産学官連携による人材シェア(共有)や技術協力の必要性などを提唱。地方を舞台とした基礎科学研究や人材育成の推進は、新型コロナウイルス感染拡大に見られるような、都市集中の問題を回避できるモデルケースにもなり得ると強調する。
(児玉直人)

 4日、県議会特別委員会室で開かれた第8回県議会県政調査会で講演した。本間所長は、旧水沢緯度観測所時代からの歴史、ブラックホール研究など現在の活動内容に触れながら、天文台と地域との今後の関わりについて自らの考えを示した。
 少子化や財政難の問題は、基礎科学の分野にも影響を与えており「人材をどう活用していくかが問われている」と強調。人材や技術を地域社会と共有する連携体制、地元大学との研究連携を検討しており、既に一部は実現している。
 人材の共有に関しては、博士号を持つ若手研究者を地元民間企業が雇用する取り組みを紹介。一般従業員の半分程度の勤務日数(時間)と給与を条件に採用してもらい、企業に勤務しない残り半分の時間を研究に費やしてもらう仕組みだ。
 企業にとっては、博士号を有する人材を低コストで雇用でき、学術研究や国際連携など研究者が得た高度なノウハウを製品開発や問題解決に生かせるメリットがある。著名スポーツ選手を雇用している企業のような立場になるため、企業ブランドのイメージアップにもつながる。
 研究者は、安定した収入の下で仕事と研究の両立、継続が可能になり、天文台など研究機関にとっては、研究者の新たな雇用形態を開拓できるという。これらの連携スタイルは、素粒子物理学者が検討し県などが誘致を進めている巨大実験施設「国際リニアコライダー(ILC)」の地ならしにもなるとした。
 このほか地元企業との技術協力、岩手大・県立大・天文台水沢の3者による研究センター設置の可能性なども模索している。本間所長は「都市部に行かなくても基礎科学研究に関する勉強、研究、仕事ができれば新たな魅力創出になる。新型コロナの感染拡大は都市に人が集まり過ぎていることを物語っているとも言える。地域活性化の道具に、天文台が貢献できたら」と自らの考えを述べた。
 議員からは、人材育成の一環として学校教育と天文台との連携の充実などに関する質問が出された。
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tanko 2021-8-5 12:10

写真=本年度事業計画などを決めた奥州市ILC推進連絡協議会の総会

 奥州市ILC推進連絡協議会(会長・小沢昌記市長)の総会は4日、市役所江刺総合支所で開かれ、本年度事業計画を原案通り可決した。昨年度は新型コロナウイルス感染拡大の影響で中止せざるを得ない事業もあったが、本年度は積極的な情報発信などでILC(国際リニアコライダー)建設実現に向けた機運を醸成していく。
 2020(令和2)年度事業報告も行われ、承認された。昨年度、同協議会はILC解説セミナーを中止。各会員団体についても、活動中止や事業の縮小などが目立った。小沢市長は「新型コロナの影響で開催できない事業もあったが、できる範囲で普及啓発に努めた1年だった」と総括した。
 同協議会は本年度、ILC計画の進捗を注視し、2016(平成28)年4月に策定した市ILCまちづくりビジョンに掲げる将来像や行動指針を会員が共有。関係機関と連携しながらそれぞれの取り組みを推進させ、建設実現に向けた支援や啓発活動を展開していく。
 機運醸成や受け入れ環境などを整えるため、会員の拡大策にも力を入れる。地域住民の疑問や不安解消に応じる解説セミナーは、12月にオンラインでの開催を予定している。
 総会後、岩手大学理工学部の成田晋也教授が「ILC計画と最新動向について」と題して講演した。
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tanko 2021-7-25 11:50

写真=模型を使った実験も繰り広げた天文教室

 国立天文台水沢VLBI観測所(本間希樹所長)と市が連携する出前授業「キラリ☆奥州市天文教室」は本年度、市内8小中学校で計画。研究者による授業を通し、市内の児童生徒に科学や宇宙、天文学に興味を持ってもらい、将来の進路選択の一助とする。
 本年度の同教室はこのほど、水沢の市立黒石小学校(小澤則幸校長、児童35人)を皮切りにスタート。同小では5、6年生15人がブラックホールについて学び、宇宙の不思議に心を引き付けられた。
 同小には同観測所の秦和弘助教が出向き、「ブラックホールって何だろう?」と題して授業。何でも吸い込むブラックホールについて模型を活用した実験を行ったほか、秦助教が加わった国際研究プロジェクトによる史上初のブラックホール撮影成功を紹介した。
 世界各地の電波望遠鏡を連動させ、製造不可能な地球規模の電波望遠鏡で観測したのと同等の能力を実現。「視力300万」の精度を生み出し、2019年4月に撮影成功を発表した。
 ブラックホールの姿から明らかになったことを画像を交えて紹介し、「全てが分かったわけではなく、まだまだ謎がいっぱい。天文学者も『宿題』を頑張っている」と秦助教。「宇宙の研究も皆さんの勉強も同じ。わくわくする気持ち、何でだろう?と思う気持ちが大切」などと語り掛けた。
 6年の佐藤慶治朗君(12)は「質問したら、ブラックホールは壊せないことなども知ることができた。宇宙への興味が湧いてわくわくした」と天文教室を楽しんだ。
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tanko 2021-7-25 10:00

写真1=「はやぶさ2」の模型がお目見えしている宇宙パネル展

 江刺岩谷堂字小名丸の歴史公園えさし藤原の郷は、夏休みの自由研究応援企画として、宇宙パネル展「おかえり!小惑星探査機はやぶさ2――地球帰還までの軌跡――」と、奥州藤原氏の黄金文化を支えた「砂金採り体験」を開催している。夏休みに突入した児童や家族連れらが足を運び、体験を通じて夏の思い出を心に刻んでいる。砂金採り体験は8月15日まで、宇宙パネル展は同22日まで。
 宇宙パネル展は、ブラックホールの撮影成功などで宇宙への興味関心が高まる中、児童らに宇宙を知るきっかけにしてもらおうと企画した。昨年10月24日から今年2月1日まで岐阜県の岐阜かかみがはら航空宇宙博物館で繰り広げられた企画展示を、同館のパネル貸し出しサービスを活用し開催。本県では初めて。
 宇宙航空研究開発機構(JAXA)から借りた「はやぶさ2」の8分の1スケールの模型をメインに、地球近傍小惑星「リュウグウ」での探査成果やサンプルリターンなどのパネルも展示。県南広域振興局などの協力を得て、国際リニアコライダー(ILC)のパネルもお目見えしている。
 企画業務部主任の千葉純さん(45)は「奥州市は国立天文台水沢キャンパスがある宇宙のまち。展示を契機に、地元の子どもたちに宇宙に興味を持ってもらえたら」と願う。


写真2=砂金採りに挑戦する子どもたち

 奥州藤原氏の黄金文化を顕彰しようと開催する砂金採り体験は、毎年恒例の企画。中に刻みが入った皿を水の中に浸し、左右に振りながら砂金を刻みの部分に集める体験企画で、家族連れらに人気だ。仙台市から訪れた高橋世頼君(11)は「難しかったけれど砂金を一つ見つけることができてラッキー」と笑顔だった。
 体験は1人1回10分で、料金は500円。採取した砂金はカードにして持ち帰ることができる。制限時間内に10個以上採取した人には豪華景品がプレゼントされ、24日現在の最高記録は13個。時間は、平日が午前11時から午後3時、土日祝日と8月13日が午前10時から午後3時まで。
 8月6日から同12日まで、東北デスティネーションキャンペーン特別企画として、真夏のライトアップを実施。夜間特別入場料金として中学生以上400円、小学生200円、未就学児無料。時間は午後6〜9時まで。
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tanko 2021-7-18 9:40

写真=来場者の好奇心を刺激した本間希樹所長によるトークイベント

 金ケ崎町立図書館で17日、国立天文台水沢VLBI研究所の本間希樹所長によるトークイベント「宇宙の歩き方」が開催された。来場した約30人を前に、本間所長が分かりやすくかみ砕いた表現で宇宙に関する講話を展開。天文学の知識を深めるとともに、好奇心や創造性を育む機会とした。
 県南広域振興局と同天文台が取り組む「宇宙×ILC」事業の一環。ブラックホールなど、独創的かつ世界的な研究に取り組んでいる本間所長の講話を通して利用者の好奇心を刺激し、科学への興味関心を喚起することを目的とした。
 本間所長はまず、自身が所長を務める研究所を紹介。VLBIという言葉を解説する際には視力検査を例に用いた。「VLBIとは離れたところに設置した電波望遠鏡を複数使い、望遠鏡の視力を大きく上げようという仕組み。日本にある4カ所の望遠鏡を用いるとその視力は約10万という数値になる。視力1の人が見える視力検査の記号を、10万分の1に縮めても見えるということ」と分かりやすく解説した。
 その後「宇宙の歩き方」という題に合わせて、家の中にいても楽しめる宇宙旅行を紹介した。国立天文台ホームページから無料でダウンロードできる「MITAKA」というソフトを活用。プラネタリウムと同じように星空を見ることができるほか、宇宙旅行の名の通り地球を飛び出してさまざまな視点から天体を観測できる。
 ブラックホールの研究や今後の課題についても解説した。ブラックホールの写真を見せたあとで奥州市内で作られているお菓子の画像を映し「ブラックホールはドーナツに例えられることが多いが、自分はイチゴ大福の方がふさわしいと思う」などユーモアあるトークを展開して来場者を楽しませた。
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tanko 2021-6-21 11:10

写真=新著「宇宙の奇跡を科学する」を手にする本間希樹所長

 国立天文台水沢VLBI観測所の本間希樹所長(49)による新著『宇宙の奇跡を科学する』がこのほど、扶桑社から出版された。宇宙の誕生から現在、そして未来について最新の科学的知見に基づき解説。さまざまな奇跡を経て、私たち人類が存在している点を伝えている。255ページ、定価946円(税込み)。
 本間所長単独による著書は『巨大ブラックホールの謎 宇宙最大の「時空の穴」に迫る』(ブルーバックス)、『国立天文台教授が教えるブラックホールってすごいやつ』(扶桑社)に次ぐ3作目となる。
 『巨大ブラックホールの謎』は、本間所長が専門とするブラックホール研究をメインに解説。『ブラックホールってすごいやつ』は水沢出身の漫画家で、本間所長も大ファンだという吉田戦車氏のイラストをふんだんに交え、ブラックホールや宇宙の謎をコミカルに、分かりやすく伝えている。
 今回の新著は宇宙誕生から今後について、より深く解説。内容は中高生以上向けで、専門的な文脈もあるが、写真や図などを入れて、これまで解明されている宇宙の姿をあらためて整理している。特に最終章「これからの宇宙像と人類の未来」は、宇宙人の存在など空想科学小説(SF)のような世界や、国連が定める持続可能な開発目標(SDGs)にも関連する内容だという。
 「これだけの星が存在しているのだから、私たち人類以外の『宇宙人』が存在するというのは、決して雲をつかむような話ではない」と本間所長。「もし宇宙人に会えるとしたら、どうすれば文明は持続できるのかなど、見習うべき点はたくさんあるはず。ロマンのような話に見えて、実は人間の未来を占うことでもある。これからの天文学で『こんな研究が面白くなる』という夢を若い世代に提供できたら」と話している。
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tanko 2021-6-19 11:00

電波望遠鏡を背に、北緯度8分線を横切る聖火ランナーの本間希樹さん=水沢星ガ丘町

 東京五輪の県内聖火リレーが18日、胆江2市町をはじめとする本県内陸部の自治体で行われた。奥州市では水沢市街地で公道も使って実施。沿道には多くの市民や小中学生、幼児らが詰め掛け、ランナーを応援した。金ケ崎町では、トヨタ自動車東日本岩手工場のほか森山総合公園陸上競技場を1周。地元の児童生徒がエールを送った。新型コロナウイルスの広がりが深刻な盛岡市では公道を使ったリレーが中止されるなど、感染症対策を優先した今大会の聖火リレー。県内での全日程を終えた。

 奥州市内のリレーは、水沢星ガ丘町の国立天文台水沢キャンパスの電波望遠鏡前が始点。同キャンパスを拠点としている水沢VLBI観測所の所長、本間希樹さん(49)が第1走を務めた。
 和太鼓が鳴り響く中、午前10時42分にスタート。120年前、国際緯度観測のために設定された北緯39度8分のラインを横切り、奥州宇宙遊学館前を目指した。
 初代所長・木村栄の胸像が見守る前で、第2走の村岡康仁さん(39)=奥州市=が持つトーチに聖火を移す「トーチキス」が行われた。さらにトーチを天体望遠鏡に見立てて空を眺めるポーズを取るなど、天文台ならではの演出も見せた。
 県外在住のランナーも交えながら、聖火は市役所前の大手通りへ。第7走者の並木徳仁さん(48)=川崎市=から聖火を引き継いだのは、今リレー本県最高齢ランナーの大崎ミオさん(90)=奥州市。両目に障害があるため、孫の青木望実さん(29)=埼玉県=が伴走役を務めた。
 JA岩手ふるさと大手通り支店南側の路上から後藤伯記念公民館前まで、250m余りの道のりをしっかりとした足取りで進み、5分足らずで走破。笑顔でゴールに到着した大崎さんは「恥ずかしいけれど頑張りました。ありがとうございました」と沿道に集まった市民らに応えた。
 福島県郡山市から駆け付けた大崎さんの孫、新沼丈さん(26)は「元気に完走してくれれば、それだけでありがたいこと」。小沢昌記市長は「大崎さんの健脚がしっかりと聖火をつないでくれた。市民の皆さんも大崎さんにならい、笑顔で長生きしてほしい。コロナ対策を万全にし、五輪を楽しんで」と呼び掛けた。
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tanko 2021-6-4 12:30
 素粒子実験施設「国際リニアコライダー(ILC)」計画に関連し、高エネルギー加速器研究機構(KEK、山内正則)と高エネルギー物理学研究者会議は2日付で、ILCを取り巻く主要課題への対策をまとめた回答を文部科学省に提出した。装置運用時に発生する放射線の防護策については「住民理解を得るため、継続して説明会を実施する」などとしている。一方、KEKを拠点に活動しているILC国際推進チーム(IDT)は、ILC準備研究所(通称=プレラボ)に関する提案書を公表した。(児玉直人)

 ILC計画は、国内外の素粒子物理学者らが中心となって推進している。当該分野の研究者らは昨年、IDTを立ち上げプレラボの設立準備に着手。今月1日付で「プレラボ提案書」を公表し、プレラボの役割や作業計画の概要を示した。
 プレラボで行う作業には、2018(平成30)年に文科省有識者会議や日本学術会議から指摘されていた課題への取り組みも少なくない。研究者側の対応状況や見解、今後の方針を明確にするため、KEKなどは同提案書とほぼ同時に「回答」もまとめた。
 回答の提出は「文科省が特に求めていたものではない」(同省素粒子・原子核研究推進室)という。KEKなどは「課題解決の活動が進んでおり、残された課題を解決するにはプレラボにおいて、国際協力の下で対応していく必要がある点を関係者に理解してもらいたい」と趣旨を説明。▽国際的な研究協力・費用分担の見通し▽学術的意義や国民・科学コミュニティーの理解▽技術的成立性の明確化▽コスト見積もりの妥当性▽人材の育成・確保の見通し▽その他――に大別し、取りまとめた。
 費用分担に関しては「最終的には政府間協議で決定される事項」とした上で、「協議に必要な研究者側の支援は、プレラボの主要任務。政府間分担協議に必要な研究者側の体制は、プレラボの設立によって整う見通しだ」とした。
 2015年以降、延べ約19万人がILC講演会や関連施設の見学に参加した実績を示しつつも「他分野や国民理解を得る努力はまだ十分ではない」と認識。対外的な広報や理解周知活動は、プレラボの重要任務の一つだとし「さらなる理解促進に努める」とした。
 放射線防護や放射性物質の長期管理に関する課題は有識者会議、学術会議双方から指摘があり、有力候補地である北上山地周辺の地元住民からも懸念の声が出ている。回答では「プレラボで関連施設・設備の詳細設計を完了させる」「住民理解を得るため、継続して説明会を実施する」との考えを示した。
 回答提出に先立ち公表された「プレラボ提案書」に関し、IDTの中田達也議長(スイス連邦工科大学ローザンヌ校教授)は「マイルストーン(中間目標)の達成だ」と強調。「ILCに関心を持つ研究所の経営陣が、プレラボ活動の責任分担について本格的に議論するためには、日本政府から何らかのシグナル(意思表示)が必要」とコメントしている。
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tanko 2021-5-13 13:20

左は、観測で得られた直角に折れ曲がるジェットの様子。右は、ジェットが磁場の影響を受け折れ曲がった様子をアテルイ兇能萢し再現した画像で、実際には見えない磁力線を黄色い線で示している(国立天文台など提供)

 国立天文台や南アフリカのノースウエスト大学の天文学者らによる国際研究チームはこのほど、ブラックホール(BH)から噴出されるプラズマ粒子「ジェット」が、左右両方向に直角に折れ曲がる現象を初めてとらえた。さらに、同天文台水沢キャンパス=水沢星ガ丘町=にあるスーパーコンピューター「アテルイ」を使った検証の結果、折れ曲がる理由が磁力が及ぶ空間「磁場」によるものであることも判明した。(児玉直人)

 研究チームが観測対象としたのは、地球から6.4億光年(1光年=約9.5兆km)離れた銀河団「エイベル3376」。オリオン座の南側に見える「はと座」の方向に位置する。
 銀河団は、数十から数千個ほどの銀河の集合体。エイベル3376では、大小二つの銀河団の衝突が起きている。小さい銀河団の中にある銀河の中心部に、今回観測したジェットを噴出している巨大BHがある。
 BHのジェットは、上下両方向に一直線に噴出されるのが一般的。しかし今回観測したジェットは、上下とも途中で左右に折れ曲がる奇妙な姿を見せていた。南アフリカ天文台の電波干渉計「MeerKAT(ミーアキャット)」を使用し観測したところ、大きい銀河団と小さい銀河団の衝突境界面(コールドフロント)に沿って、ジェットが折れ曲がっていることが分かった。
 研究チームは、境界面に沿って生じている磁場がジェットの直進運動を妨げていると考察。天文学専用スパコン「アテルイ供廚砲茲辰謄轡潺絅譟璽轡腑鵑靴燭箸海蹇考察通りの現象が再現でき、地場によって曲げられたことを強く示唆した。ジェットの姿をとらえることで、直接観測が難しい銀河団の磁場構造を間接的に知る新手法を得ることにもなった。
 一連の研究成果は今月6日、英国の科学雑誌『ネイチャー』に掲載された。



水沢運用のVERA、ノウハウや人材のつながりに期待

 今回の観測に使用したMeerKATは、南アフリカのカルー砂漠に直径13.5mの電波望遠鏡(パラボラアンテナ)を8kmの範囲に64台設置している。これらを連動させることで、直径8kmの電波望遠鏡と同等の性能を発揮する。名称は、砂漠地帯などに生息する動物「ミーアキャット」にあやかった。
 MeerKATの仕組みは、国立天文台水沢VLBI観測所(本間希樹所長)が運用する天文広域精測望遠鏡(VERA)とほぼ同じ。南アフリカとオーストラリアに建設される電波望遠鏡観測網「スクエア・キロメートル・アレイ(SKA)」の試作機的な存在だ。同観測網には水沢のVERAが「科学技術に貢献する観測装置」として公式認定を受けている。VERAで得られたノウハウが、新たな国際プロジェクトに生かされる。
 技術だけでなく、人材面での貢献も大きい。今回の研究をリードした一人、ノースウエスト大学(南アフリカ)のジェームズ・チブエゼ准教授は、鹿児島大学でVERAを用いた研究を行い博士号を取得している。水沢VLBI観測所の赤堀卓也・特任研究員(41)=同天文台三鷹キャンパス勤務=は「日本と南アフリカの研究者間の連携は地理的にも難しいこともあったが、うまくいった。VERAからSKAへと人のつながりもできてうれしい」とコメントしている。

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