人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市東部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)
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tanko 2022-8-10 11:10

写真=県内14市の首長が顔をそろえた県市長会議

 岩手県市長会(会長・谷藤裕明盛岡市長)の会議は9日、水沢東町の水沢グランドホテルで開かれ、10月19日に山形市で開催される東北市長会総会に提出する議案を決めた。新型コロナウイルス感染症対策や国際リニアコライダー(ILC)誘致実現、東京電力福島第一原発事故による放射性物質汚染対策を特別決議とし、防災・減災対策や社会資本整備など5件を要望する。
 各市が事前に計40件の議案を提案。奥州市は▽ILC実現に向けた取り組み▽米価下落対策等の農業支援▽地域医療の充実――の3件を出した。
 東北市長会総会に提出する議案は1県5件以内とされているため、分野ごとにまとめて複数市から提案があったものを絞り込んだ。県市長会としては特別決議のほか、国土強靱化・減災防災対策や社会資本整備・老朽化、農林業政策、物価高騰対策、子育て支援の5件を選定した。
 県市長会議には、県内14市の首長が出席。冒頭、谷藤市長は「新型コロナ対策だけでなく、国土強靭化と防災の取り組みやDX(デジタル・トランスフォーメーション)の推進、地域産業の振興、医療体制の確保など地方自治体が取り組むべき課題は山積している。諸課題解決のため国や県への要望を積極的に行うなど、行動する市長会として総力で取り組んでいきたい」と呼び掛けた。
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tanko 2022-8-10 11:00

写真=奥州市ILC推進連絡協議会の本年度総会

 奥州市ILC推進連絡協議会(会長・倉成淳市長、会員64団体)の本年度総会は9日、市役所江刺総合支所で開かれた。2021(令和3)年度事業報告を承認したほか、ILC実現に向けた支援や啓発活動を実施する2022年度事業計画などを決めた。
(河東田ひかり)

 あいさつで倉成市長は、ILCを巡る動きを示し「国際的な議論の行方を注視しながら、関係機関とのさらなる連携協力の下、実現に向けた支援と啓発活動を展開していく」と述べた。
 同協議会は本年度、ILC計画に関する情報提供や会員拡大の取り組みなどを推進していく。市は小学校3校と中学校7校への出前授業や市立水沢図書館での企画展、JR東北新幹線水沢江刺駅構内にある南岩手交流プラザのILCコーナーのリニューアルなどを行う。
 出席者からは「ILC計画に疑問を投げ掛ける人や知らない人、反対者もいる。市民らと一緒に、じっくり考えるような場を設けてはどうか」との意見があった。事務局は「引き続き市民の理解が得られるような活動が必要。意見を参考に、今後検討したい」と応じた。
 総会終了後、岩手大学の成田晋也教授が「ILCの最近の動向と東北地方での取り組み」と題して講演した。
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tanko 2022-8-9 11:30

写真=永井栄一局長(右)に要望書を手渡す倉成淳市長(左から2人目)と菅原由和議長

 奥州市から岩手県への要望会は8日、市役所本庁で行われた。市は、地域医療の充実や米価下落対策など21項目を要望。倉成淳市長と菅原由和市議会議長が、達増拓也県知事宛ての要望書を永井栄一・県南広域振興局長に手渡した。
 出席者は市側が倉成市長はじめ小野寺隆夫副市長、担当部長、市議会から菅原議長、加藤清副議長。県南局側は永井局長や副局長、各部長ら。奥州選挙区選出の県議5人も顔をそろえた。
 市の要望は一部新規3項目、継続18項目。▽地域医療の充実▽米価下落対策など農業支援▽ILC実現に向けた取り組み――の3点を重点要望に挙げた。
 倉成市長は「要望は全て市政運営上、避けては通れない重要な課題と位置付けている。市誕生時に13万人いた人口は、2020年国勢調査で11万3000人を割り込んだ。最大の課題である人口減少対策は、分野横断的に取り組む必要がある」と強調。
 重点要望に関しては、「定住促進を視野に入れた地域医療体制の整備や、農業者の生産意欲低下を抑制するための支援を。ILCは実現に向け、国へ強く働き掛けるようあらためて要望する」と述べた。
 永井局長は、地域医療について「医師確保計画に基づき、関係大学への派遣要請や即戦力医師の招聘など積極的に取り組んでいる。妊婦健診を実施する地域の診療所と分娩を取り扱う医療機関が連携し、周産期医療圏内で可能な限り安心安全な出産ができるよう関係機関と確認している」と答えた。
 米価安定化や、水田活用の直接交付金制度の見直し再考を含めた農業支援などは既に国に要望したと説明。「今回の制度見直しに関しては、農業者に丁寧な説明を行うよう強く申し入れた。今後とも機会を捉え、国へ要望していく」と応じた。
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tanko 2022-7-29 11:30

写真=パソコンの画面越しに寄付者と交流を深める本間希樹所長

 国立天文台水沢VLBI観測所の本間希樹所長は27日夜、同観測所が実施したクラウドファンディング(CF、資金調達活動)の返礼の一つである「オンライン講演」に臨んだ。予想を上回る多くの協力にあらためて感謝の意を伝えながら、ブラックホール(BH)研究について解説したほか、聴講者からの質問も受け付け交流を深めた。
 CFは4月20日から6月17日まで実施。若手研究者らの研究資金等を調達するのが目的で、同天文台が公式にCFを行うのは初めてだった。当初目標は1000万円としていたが、5月12日に達成。最終的には3023万円余りの協力を得て終了した。
 希望者に対して贈られる返礼品は、寄付額によって内容が異なる。所長講演は5万円以上を寄付した70人余りが対象。対象者にはあらかじめ日時が伝えられ、オンライン講演を行う会議システムのアドレスが送付されていた。
 本間所長は「皆さんの強力なサポートに感謝している」と謝辞。BH研究について分かりやすく解説した。オンライン講演は8月7日も同一内容で行う。
 一部返礼品は特注生産のため、製品が完成次第発送。50万円以上を寄付した人が対象の本間所長による観測所案内ツアーは秋ごろに予定している。
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tanko 2022-7-26 11:20

写真=銀河ゴマ作りなどが行われた胆沢図書館のイベント

 奥州市立胆沢図書館(千田布美夫館長)の夏休みワークショップイベントはこのほど、胆沢文化創造センターのエントランスホールで開かれた。講師は、ブラックホール(BH)撮影の国際プロジェクトメンバーで天文学者の田崎文得さん(36)。市内小学生が銀河の話を聞き、田崎さん考案の「銀河ゴマ」作りを楽しみながら、宇宙への好奇心を高めた。
(千葉伸一郎)

 イベントは「回れ回れ銀河ゴマ!!宇宙のしくみを知ろう〜ブラックホールと天の川〜」と銘打ち開催。市内小学生と保護者ら25人が参加した。
 田崎さんは千葉県出身で、BH撮影に成功した国際プロジェクト「イベント・ホライズン・テレスコープ」のメンバーで、国立天文台水沢VLBI観測所の電波望遠鏡などを活用した東アジアVLBI観測網プロジェクトにも参加している。
 現在は半導体製造装置メーカー・東京エレクトロンテクノロジーソリューションズ(株)(本社・山梨県)に所属。江刺岩谷堂の同社東北事業所などで装置開発に携わりながら、業務の一環として同観測所で天文学研究も行っている。
 イベントでは田崎さんが、銀河にまつわるクイズも織り交ぜながら講話。太陽系が属する天の川銀河の中心部にあり、今年5月に撮影成功を発表した巨大BH「いて座A*」についても紹介した。
 講話に続き、CDやボルトねじ、画用紙などを使い銀河をイメージした「銀河ゴマ」作りを指導。児童たちは、思い思いに色付けしたりシールを貼ったりしてカラフルに仕上げた。
 胆沢の市立南都田小2年の藤田楓さん(7)は「楽しかった。銀河ゴマはピンクや紫、水色や黄色に塗り、回したらきれいだった」と笑顔を見せた。
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tanko 2022-7-9 18:30
 素粒子実験施設「国際リニアコライダー(ILC)」の誘致実現を目指す、東北ILC推進協議会の総会は8日、仙台市内で開かれた。総会席上、東北ILC事業推進センター代表を務める岩手県立大学の鈴木厚人学長は、「現状は非常に厳しい」と危機感を示した。研究者側は国際議論の場を構築するため、体制を整え直して取り組みを進めており、同推進協は研究者の取り組みを支援する。
 総会では本年度事業計画などを原案通り可決した。議事後、同推進協役員を務める候補地周辺地域の首長らが誘致実現に向けて決意表明。奥州市の倉成淳市長は「奥州は科学を大切にするまち。市の中期計画でも戦略的プロジェクトとしてILCをうたっており、力強く推進するつもりだ」と述べた。
 鈴木学長は険しい表情で登壇。「海外では日本のILCは当てにならないという雰囲気にある」と危機感をあらわにした。県ILC推進協の谷村邦久会長は「『今年1年が勝負』という言葉を何度言ってきたことか」と切り出し、「今度こそ、この機会を逃せば世界中の科学者からそっぽを向かれる。一丸となって頑張っていこう」と、関係者らを鼓舞するように呼び掛けた。
 総会では役員改選も行われ、共同代表を務めていた東北経済連合会(東経連)名誉会長の高橋宏明氏の後任に、東経連会長で東北電力?代表取締役会長の増子次郎氏が就任した。
 総会後はILCを推進する研究者らで組織するILC―Japan代表で、東京大学の浅井祥仁教授が「ILC日本誘致への取り組みについて」と題し講演した。
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tanko 2022-7-6 10:20

写真=新著『国立天文台教授がおどろいたヤバい科学者図鑑』を手にする本間希樹所長

 国立天文台水沢VLBI観測所の本間希樹所長(50)の新著『国立天文台教授がおどろいたヤバい科学者図鑑』が、扶桑社から出版された。科学史、天文学史に名を残す偉人たちの意外な素顔、裏話を紹介。小中学生でも読みやすい構成になっており、本間所長は「宇宙の謎を追究し続けた科学者たちの素顔から、生きる上でのヒントを得てもらえたら」と話している。
 同社が発行する本間所長の著書としては、『国立天文台教授が教えるブラックホールってすごいやつ』『宇宙の奇跡を科学する』に続く第3弾。紀元前3世紀の科学者アリスタルコスにはじまり、アインシュタインや旧水沢緯度観測所初代所長の木村栄博士、2002(平成14)年にノーベル物理学賞を受賞した小柴昌俊さんら国内外人の科学者や天文学者を取り上げた。それぞれの輝かしい功績とともに、「学生時代に追試を受けさせられた」「学会の論文発表で散々な目に遭った」「子どものころ虫を食べていた」など、仰天エピソードや裏話などをユーモアたっぷりに紹介している。
 東京大学在籍中、同大オーケストラでバイオリンを弾いていた本間所長の一押し人物が、天王星発見者のウィリアム・ハーシェル。もともとプロの作曲家で、交響曲を24作品残した実績もある人物だが、1781年に趣味の一環で天体観測をしていたところ天王星を見つけた。これを機に天文学者へと転職し、自作望遠鏡の量産販売にも成功した。同時代を生きた作曲家ハイドンも、ハーシェルが造った大型望遠鏡で宇宙を見ており、後に作曲したオラトリオ「天地創造」に影響を与えたという。
 子ども向けの内容のため、漢字には全て読み仮名を振っている。気軽に楽しめるよう、楽しいイラストも随所にちりばめた。
 本間所長は「どんな偉人でも完璧なわけではなく、間違ったり他人から厳しく指摘を受けたりすることもあった。それでも大好きな宇宙の謎を解き明かしたいと頑張った彼らの生き方から何か感じてもらえたら」と話している。
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tanko 2022-7-6 10:20

写真=藤里小学校で行われたILC出前授業の様子。数年前までは強かった「誘致ありき」のトーンは影を潜める

 素粒子実験施設ILC(国際リニアコライダー)に関する出前授業が、本年度も奥州市内小中学校で行われている。教育現場におけるILC普及活動に関しては、ILC誘致に批判的な市民団体のほか、文部科学省ILC有識者会議の中でも問題視されてきた。誘致の見通し自体が不透明になっている中、市ILC推進室は「誘致ありき」の話題提供は控え、科学研究全般の意義を知ってもらう内容に本年度からシフト。国立天文台水沢VLBI観測所やブラックホールなど、既存の施設や研究実績の紹介に時間を多く割いている。
(児玉直人)

 市によるILC出前授業は、市内中学校の2年生向けに2014(平成26)年から実施。翌年は希望する小学校の高学年にも対象を拡大した。開始当初は「ILCができれば奥州市はもっと有名になる」といった切り口で、子どもたちに熱烈アピールした。
 県内では出前授業のほか、ILC実現を願うのぼり旗や看板の製作なども教育現場で行われてきた経過がある。こうした普及方法に、ILC誘致に否定的な市民団体などからは批判の声が出ていた。ILC有識者会議が今年2月に公表した「議論のまとめ」にも、科学教育とプロジェクト推進の取り組みは切り分ける配慮が必要との指摘が盛り込まれた。
 6月27日、江刺の市立藤里小学校(林博文校長、児童29人)の5ー6年生15人が市ILC推進室職員による出前授業を受けた。ILCの話題以上に、宇宙の謎や天文台に関係する内容が中心。宇宙の謎を解く一つの方法として、ILCが簡単に紹介された。
 講師を務めた職員は「北上山地が有力な候補地になっている」「奥州は科学に縁がある地域。宇宙や科学の話に興味を持ってもらえたら」と呼び掛けた。児童からは宇宙に関する質問はあったが、ILCに直接触れた質問はなかった。
 同推進室の二階堂純室長は「市として誘致を目指す姿勢に変わりはないが、出前授業に対しては以前からさまざまな意見をいただいている。かつてはすぐに実現し、地域が良くなるような雰囲気もあったが、誘致を巡る実態も踏まえ、科学の重要性を伝えることを意識してやっている」と話す。
 県ILC推進局では、出前授業などに対する指摘があることを受け止めつつ、「総合的に考えて対応している」と説明。高校生を対象に実施する研究コンテストについても、「一流の研究者の審査を受ける良い機会で、人材育成の面でも意義がある」と強調する。
 こうした行政側の対応姿勢に、中学校理科教諭を長年務めた元小中学校長の阿部恵彦さん(78)=胆沢若柳=は、「自然科学の基礎的な授業ならまだしも、このような出前授業が継続されていること自体ナンセンス。天文台の話題を入れても、単なるすり替えでしかない」と厳しく批判。「教育現場から本質を突いた意見を言う人がいなくなり、上から言われた通りの対応しかできなくなっているのも問題だ」と指摘している。
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tanko 2022-6-19 9:10

写真=CF活動を通じ水沢地域の伝統産業、鋳物のPRにも一役買った本間希樹所長(右) 提供:国立天文台水沢VLBI観測所

 国立天文台水沢VLBI観測所(本間希樹所長)が4月20日から続けてきたクラウドファンディング(CF、資金調達活動)が17日深夜終了した。寄付総額は初期目標の1000万円を大幅に上回り、現時点で決済が完了した分だけで3022万7000円。今後、金融機関振り込みで受理した分の金額が加算され、今月下旬には最終金額がまとまる見通し。集まった資金は若手研究者の育成などに活用。記念品付き寄付を選択した人には、金額に応じた特製グッズが贈られる。
 同天文台の観測所施設が公式にCFを行ったのは今回が初めて。1000万円の目標金額を設定し、期日までに達した場合のみ支援金を受けられる「All or Nothing型」で実施した。
 5月12日に目標の1000万円を達成。偶然にもこの日は、天の川銀河(銀河系)の中心部にある巨大ブラックホール(BH)「いて座A*」の撮影成功を発表する記者会見があり、会見が始まる2時間前に目標に達した。
 約3週間で目標に届いたが、BH撮影成功の話題などが追い風となり、その後も寄付を申し出る人が相次いだ。さらに、動画投稿サイト「ユーチューブ」で科学系情報を紹介している複数の動画制作者が、BH撮影成功と本間所長のインタビューを発信。大きな宣伝効果をもたらし、第2目標の2000万円も突破した。CFが終了する17日午後11時の約1時間前には第3目標の3000万円も超えた。
 寄付件数(個人、企業・団体)は延べ1255件。最高額の300万円コースの申し込みはなかったが、100万円コースは5件あった。最多の申し込みは1万円コースで778件だった。
 記念品を希望した寄付者には、寄付額に応じた記念品が贈られる。本間所長はこのほど、鋳物の記念品製造を担当する水沢羽田町の?及富(及川一郎社長)を訪問し、自ら鋳造作業を体験。CF応募サイトでその様子を紹介し、鉄と天文学との科学的な関係について解説しながら、観測所がある水沢で育まれた伝統産業のPRにも一役買った。
 CFの終了を受け本間所長は、「予想をはるかに超える多くの方々からのご支援により、大成功で終えることができた。驚きとともに感謝の気持ちでいっぱい。皆さまの応援を私たちの力にして、今後の研究をさらに進めていきたいと思います」とコメントしている。
(児玉直人)
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tanko 2022-6-18 6:40

写真=誘致前提のILC計画推進は困難だと指摘する横山広美教授

 東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構副機構長の横山広美教授(科学技術社会論)は17日、仙台市内で講演した。北上山地が有力候補地とされる素粒子実験施設「国際リニアコライダー(ILC)」の誘致活動について、これまでの大型科学プロジェクトよりも規模が大きく、国際費用分担の議論をせず誘致を前提に話を進めるのは難しいと指摘。「研究者側が対応する国際議論の状況を気を付けて見ていくことが今は大事」と主張した。児童生徒への周知活動に関しても「慎重にやるべきだ」と警鐘を鳴らした。
(児玉直人)

 横山教授は素粒子物理分野で博士号を取得。科学と社会のかかわりに関心を抱くようになり、現在は科学技術社会論が専門。科学と政治、社会との関係などをテーマに、研究活動や学生の指導をしている。文部科学省が担当する各種審議会の委員も歴任。ILC有識者会議委員も2期連続で務めている。
 同日は、東北ILC推進協議会(代表・高橋宏明東北経済連合会名誉会長)主催の講演会で登壇。「Big Science(ビッグサイエンス)と社会」と題し、大型科学プロジェクトの歴史に触れながら、ILCを取り巻く状況と課題を語った。
 講演で横山教授は、岩手、東京、大阪、福岡、佐賀の住民を対象に自身が実施したILCに関する調査の結果を紹介。認知度の高さは岩手が突出して高かった。認知度では大差が生じたものの「ILC計画の議論で何が重要か」を尋ねたところ、どの地域も「税金や国際費用分担に関すること」が最多。科学的意義、地域経済への波及効果などが続いた。
 横山教授は「ILCはビッグサイエンスの中でも規模が大きく、従来通りに事が進まないというのが率直な感想。計画が公になって10年以上経過しているが、周辺状況が変わってきている。世界全体で本当に次の加速器が造れるのか――という議論を真剣に行う時期に研究者たちは立たされている。皆さんが素粒子物理学を支援してくださることは非常にありがたいが、国際分担の議論なしに誘致前提で事を進めるのは難しい」と主張した。
 このほか「ビッグサイエンスは社会と一緒に推進し、互いに情報共有していくことが大切になるが、そのやり方には注意が必要。誘致がはっきり決まっていない段階で子どもたちにアピールすることは、慎重に考えなくてはいけない。サイエンスの普及程度ならよいが、来ることを前提に話をしてしまうと、場合によっては期待を裏切ってしまう可能性すらある」と指摘。「期待の高まりが社会を駆動させるという考え方があるが、一方で現実社会との乖離が生じる危険性もある。ハイプ(熱狂)と呼ばれる状況で、結果として議論や予算も続かなくなる」とし、期待を高めすぎず冷静に状況を注視する必要性を訴えた。

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