人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市東部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)
投稿者 : 
tanko 2014-2-18 14:00
 奥州商工会議所(千葉龍二郎会頭)は17日、素粒子物理研究施設・国際リニアコライダー(ILC)の受け入れに向けた対応を検討する「ILC推進委員会」を立ち上げた。関係者から情報収集を進めながら地元経済界としての取り組みなどを模索し、同商議所の事業に反映させていく。委員長には千葉会頭が就任した。
(児玉直人)

 委員は同商議所議員らで構成。水沢区の水沢サンパレスホテルで開かれた初会合には、委員26人のうち21人が出席した。
 協議では委員会設置要綱について事務局が説明。委員からは「生活環境や研究者の家族が海外から来ることを考えると、男性だけの委員構成はいかがなものか」と女性委員の登用を求める意見が上がった。ILC誘致に強い関心を示している水沢、江刺両青年会議所(JC)メンバーをオブザーバーに迎えるべきという指摘もあり、検討事項とした。
 千葉委員長は「ILCの受け入れに会議所がどう対応していくべきなのか、会議所事業に反映させるべく委員会を発足させた。的確な情報や知識をしっかり得た上で、今後の進め方を考えていきたい」と話した。
 協議に先立ち、県政策地域部首席ILC推進監の大平尚氏がILC計画の概要と、今後のスケジュールについて講演。県は4月に「科学ILC推進室」を新設し、候補地周辺の環境調査や増加が見込まれる視察への対応、海外研究者向けの情報発信などに力を入れる方針という。

写真=奥州商工会議所ILC推進委員会の初会合
投稿者 : 
tanko 2014-2-17 12:00
 国際リニアコライダー(ILC)建設実現に向けた公開シンポジウム(岩手県ILC推進協議会主催)は15日、盛岡市松尾町の盛岡劇場で開かれた。企業の女性幹部候補生の育成などを手掛けるNPO法人「J-Win」理事長の内永ゆか子氏らが登壇。内永氏は「ILCが誘致され、どんなに最先端の技術が考案されてもビジネスに結び付かなければ非常にもったいない。海外から多様な人材が集まるというILCならではの環境を生かし、グローバル社会に対応した人材を育成し、新ビジネスを生み出すべきだ」と主張した。(児玉直人)

 内永氏は東京大学理学部卒業後、日本IBMに入社。同社初の女性取締役に就任し、退職後はベネッセホールディングス副社長を務めるなどの経歴を持つ。理系出身であり、グローバルな視点で企業経営支援や人材育成に取り組んでいることもあって、ILC関連のシンポジウムで発言する機会が増えている。
 この日は「ILCが秘める“内なるグローバル化”」と題し、ILCの建設や研究成果から導き出される先端技術、波及効果をどうビジネスに展開していくかを論じた。
 ILC実現によって70兆円のビジネスチャンスが生まれるとの試算を示しながらも、内永氏は「このような話は、これまでもよくあった。だが、うまく成し得た例がない」と言い放った。実際、日本は最先端技術を生み出す能力はあるが、その8〜9割が実用化に結び付いていないという。
 「開発と実用化の間には『死の谷』と呼ばれるものができ、日本は特にこの谷が深い。長い時間とお金をかけて生み出された先端技術も、市場ニーズとの不適合やコスト面で分が悪いとしていつの間にか忘れ去られ、ビジネスに結び付かない」と指摘した。
 原因として内永氏は、日本人という同じ考えと文化、価値観を持つ集団の中だけで過ごすことが多かったことを示した。過去の実例を重視する傾向が強くなり、将来を見据えた新たな発想が出にくいという。
 内永氏は「多様な考え方、文化、宗教、価値観を持った人同士が集まることで『死の谷』は乗り越えられる。普通ならば、海外から人を呼び寄せたり、こちらから海外へ出向いたりする必要があった。しかし岩手にILCができれば、自然と優秀な人材が海外からやってくる。このチャンスをしっかり生かし、グローバル社会に対応できる人材をまずは育ててほしい」と訴えた。
 シンポジウムでは内永氏のほか、東北大学大学院の佐貫智行准教授も登壇。ILCの概要や今後のスケジュールなどについて説明した。
写真=ILC誘致とグローバル化に対応した人材育成との関連性について講演する内永ゆか子氏(盛岡劇場)
投稿者 : 
tanko 2014-2-17 11:50
 NPO法人いわて未来政策・政経研究会(相原正明会長)主催の「奥州市議選立候補予定者の政見を聴く会」は16日、水沢区聖天の水沢地区センターで開かれた。登壇した立候補予定者たちは集まった市民約50人に向け、市政課題に対する考えや議員としての在るべき姿などを熱く語った。
 市長選と同じ3月2日告示、同9日投開票となる市議選(定数28)には、これまでに現職と新人合わせて32人の出馬が見込まれている。「聴く会」には当初、現新合わせ25人が参加する予定だったが、開催当日までに立候補見送りや所用のため2人が欠席し、23人が参加した。
 立候補予定者は、事前に行った公開抽選で三つのグループに分かれた。1グループずつ順番に同じ進行内容で政見を発表。司会は元県南広域振興局長の酒井俊巳氏が務めた。
 立候補予定者は一人ずつ、5分の持ち時間で政策や意気込みを発表。次いで3分の持ち時間で特に力を入れたい事柄を述べた。
 市町村合併後の状況を振り返りながら、医療・福祉問題や教育施策、産業、若者の定住化、国際リニアコライダー(ILC)誘致など分野ごとの課題や打開策などを語った。議員の在るべき姿や議会改革に触れる候補予定者もいた。
 国政選挙や知事、市町村長といった首長選挙では、各地の青年会議所(JC)などが主催する公開討論会が開催されているが、立候補者数が多い議員選挙レベルでの開催例はあまりない。
 相原会長は「来場した有権者の皆さんは、投票する人を選ぶ際のポイントをつかめたと思うし、立候補予定者の皆さんにも刺激になったはず。4年後の市議選はもちろん、今後の県議選などでもこのような場を設けたい。他市町村でもぜひ開催してほしいし、私どもも手伝うことができたら」と話していた。
(児玉直人)
写真=市議選立候補予定者の政見に耳を傾ける市民ら
投稿者 : 
tanko 2014-2-16 12:30
 水沢地区防犯協会連合会(会長・小沢昌記市長)と水沢署(中村一雄署長)などは14日、水沢区横町のメイプルで特殊詐欺被害を未然に防ごうと広報活動を展開した。昨年12月から1月にかけて、市内で1人暮らしの高齢女性が息子の名をかたる男に現金1千数百万円をだまし取られる詐欺被害が発生。被害防止を訴えるチラシを配りながら、新たな手口で増え続ける詐欺の対処法を買い物客らに周知した。
 水沢地区防犯協会(戸田陽一会長)や水沢地区少年警察ボランティア協会(朝日田恭博会長)なども協力。会員ら合わせて約20人が活動に参加した。
 近年、東京オリンピックや国際リニアコライダー(ILC)建設計画などに関する投資話やもうけ話を持ち掛ける詐欺被害が増加。1人暮らしの高齢者が狙われやすい傾向にあり、あの手この手で話を信じ込ませて現金を振り込ませるという。
 啓発活動に参加した会員らは、「うまい話に乗らないように」「不安に感じたら信頼できる人に相談を」などと買い物客らに呼び掛け注意を喚起。同署駅前交番の古川剛所長は「特殊詐欺の知名度はまだまだ低く、犯人グループもいろいろな手法で誘ってくる。今日のような地道な活動が犯罪を防ぐ一助となる」と話していた。
写真=買い物客に特殊詐欺への注意を促す防犯関係者ら
投稿者 : 
tanko 2014-2-13 18:50
 岩手県は12日、2014年度一般会計当初予算案を発表した。東日本大震災による津波で被災した沿岸地域のがれき処理完了に伴い、歳入歳出の総額は過去最大規模だった2013年度当初より11.7%少ない1兆167億円となった。「本格復興推進予算」と位置付け、沿岸被災地では災害に強いまちづくりを展開。さらに復興後の未来を見据えた長期的な事業の一つとして、国際リニアコライダー(ILC)誘致に係る研究調査費に3000万円を計上した。県南広域振興局管内は、新規学卒者の早期離職防止対策など若者の雇用改善策などに力を注ぐ。同予算案は18日に招集する県議会2月定例会に上程し、審議される。

 震災対応分の予算は3813億円で、2013年度当初比26.1%の大幅減。一般会計全体に占める割合も2013年度当初の44.8%から37.5%になった。
 2014年度は県の第2期復興実施計画の初年度。被災者の生活・住宅再建や災害に強いまちづくりなど、本格的な沿岸被災地の復興への移行を意識した予算配分とした。
 また、復興後を見据えた岩手全体の発展を意識し、戦略的な経費を確保。その一つとして、江刺区東部を含む北上山地が建設候補地となっているILCに関して、プロジェクト研究調査事業費3000万円が計上された。同事業費は2013年度も3400万円計上されているが、新年度は新たに加速器関連産業への地元企業参入の可能性を探る。
 震災対応分を除いた通常分予算は6353億9300万円。2013年度当初比2億3200万円減で、ほぼ前年並みとなった。
 歳入のうち自主財源は2479億6900万円で、県税や基金からの繰入金が増え、同比0.4%の微増。依存財源は県債発行額や地方交付税の減少などにより、3874億2500万円(同比0.3%減)となった。自主財源の割合は39.0%で、同比0.1ポイント上昇した。
 歳出は、義務的経費が3194億1700万円(同比0.5%増)。投資的経費が700億4000万円で、同比0.2%減となった。
 義務的経費の割合は50.3%で同比0.3ポイント上昇。内訳をみると、借金の返済に充てる公債費が1323億8300万円で、依然として高い水準にある。
 投資的経費のほとんどを占める普通建設事業費は、630億1200万円(同比1.0%減)となっている。
 胆江2市町などが管轄の県南広域振興局では▽県南広域圏ものづくり力強化対策事業(600万円)▽世界遺産平泉魅力向上・誘客拡大事業(2200万円)▽県南広域圏「食」の戦略的産業育成事業(600万円)▽新規学卒者ミスマッチ解消モデル事業(1100万円)――を盛り込んだ。
 「ミスマッチ解消――」は、新規高卒者など、若者を対象とした雇用対策。新卒者と企業側とのミスマッチが引き起こす早期離職を防止し、若者の地元定着を図る。
 達増拓也知事は12日の会見で、「本格復興期間ということで、被災者の生活を支えながら岩手全体が復興の先を見据え、未来へ向かえるような事業を盛り込んだ」と説明。ILCについては「これまでは計画自体を知ってもらうことに軸足を置いていたが、だいぶ周知が図られている。今後は、地域はどう変わるべきなのかなど、より具体的なビジョンを共有していくことに軸足は移っていくだろう」と話していた。
投稿者 : 
tanko 2014-2-8 18:50

茨城県つくば市の大学共同利用機関法人・高エネルギー加速器研究機構(KEK)は7日までに、国際リニアコライダー(ILC)計画に対応する「ILC推進準備室」を設置した。室長は鈴木厚人機構長が兼務。現推進体制を見直し、計画の具体化に向けた準備を加速させる。
 素粒子物理学の国内研究拠点であるKEKは、ILCの国内推進母体としての役割を担っている。つくば市内のKEK敷地内では現在、「先端加速器推進部・リニアコライダー計画推進室」が中心となり、国内外の研究機関・大学と共にILCに使用する加速器や実験用測定器の技術検討、開発を行っている。
 新設する準備室では、ILC計画をより具体化するため、従来の技術検討・開発に加え、さまざまな推進事項に関する準備業務を進める。室長、副室長の下に「ILCプロジェクトユニット」と「推進統括ユニット」の2部門を設置する。
 プロジェクトユニットでは、装置などの最終設計や技術文書の管理などを担当。推進統括ユニットでは、計画の進捗や運営管理、国内外組織との連絡調整などを担当する。
 KEKは「既存の『リニアコライダー計画推進室』の機能を漸次統合し、国内外の研究者と共にILCの具体化に向けた国際的な準備研究組織の設立を目指していく」としている。
写真=KEKで実施しているILC関連装置開発の様子(資料)
投稿者 : 
tanko 2014-2-5 12:20
 国際リニアコライダー(ILC)などの広報事務を担当している国内外のスタッフ3人が4日、水沢区星ガ丘町の国立天文台水沢VLBI観測所(川口則幸所長)などを視察した。一行は同観測所敷地内の奥州宇宙遊学館で、地元のILC誘致関係者らと懇談。国際会議やシンポジウムを北上山地周辺で開催し、研究者らに候補地周辺の様子を直接見てもらう機会にできるといったアイデアも示された。(児玉直人)

 視察に訪れたのはバーバラ・ワームベインさん(ドイツ電子シンクロトロン研究所)、ペイン・ロワイヤドゥジュさん(フランス国立核物理素粒子物理研究所)、高橋理佳さん(高エネルギー加速器研究機構)。各国を代表する物理研究施設の広報担当者でもある3人は、ILCなど直線衝突型加速器を利用した研究事業を周知する「LC(リニアコライダー)コミュニケーター」を務めている。
 3人は3日に一関市や気仙沼市を視察し、4日は同観測所などを訪問。敷地内の天文観測用アンテナやスーパーコンピューターなどを見学したほか、宇宙遊学館では奥州、一関両市のILC誘致関係者らと懇談した。
 視察全体を振り返り、ワームベインさんは「誘致を求める看板などを目にし、ILCを迎えたいという情熱が感じられた」と笑顔で話した。
 だが、言葉の壁で不安になる場面もあった。3人が宿泊した一関市内のホテルで、建物内に煙が充満するトラブルが発生。大事には至らなかったが、ロワイヤドゥジュさんは「館内の緊急放送が日本語だけで非常に焦った。慌てた口調で話していたので、緊急事態であることは認識できたが、日本人の高橋さんと一緒だからよかったが……」と打ち明けた。
 地域の様子をがらりと変えるような対応はしなくてもよい、と前置きしながら「こうした基本的で重要な情報に関しては、外国語で伝えることを考慮した方がいい」と述べた。
 このほか、ILC誘致に関するパンフレットについて3人は「日本や岩手を知らない人にとって、そもそも何を意味する写真かが分からないし、小さい写真だとなおさら。デザインも隅から隅まで文字と写真で埋める傾向にあるが、欧米人は余白の取り方など“間合いの美学”を求める。日本人向けに作ったパンフレットの文章を英訳しただけでは伝わらない」などと指摘した。
 世界中の研究施設の広報担当者らは年2回、一堂に集まり会議を開催しているという。高橋さんは、このような国内外の関係者が集まる会合やILC関連の国際シンポジウムなどを北上山地周辺で開催すれば、地域の様子をより多くの外国人研究者や関係者に伝えることが可能だと主張。「広報担当者の会議をこの地域で開催できれば、日本の候補地のやる気が伝わると思う」と話していた。
写真=ILC誘致関係者と懇談するバーバラ・ワームベインさん、ペリン・ロワイヤドゥジュさん、高橋理佳さん(左から)……奥州宇宙遊学館
投稿者 : 
tanko 2014-2-5 12:10
 金ケ崎町中学生議会は4日、町役場議場で行われた。町立金ケ崎中学校1、2年生18人が登壇。除雪対策や学校教育、医療福祉、国際リニアコライダー(ILC)誘致などに関する質問や提言を堂々と町当局にぶつけた。取り上げた内容の中には町全体に関わる課題もあり、生徒なりの視点で新たな対応を求めた。
(河東田ひかり)

 4年目となる中学生議会は、町と町議会、町教育委員会が主催。議員を務める金ケ崎中生は、3人一組で質問する特別ルールが設定されている。傍聴席には約30人が集まり、緊張した面持ちで入場する生徒たちを温かい拍手で迎えた。
 一般質問は震災対応や除雪対策、学校制度・教育、スクールバス運行、医療福祉、バリアフリー・ユニバーサルデザインの6項目。及川恵理さん(2年)は、土曜日の午前授業導入が「学力向上につながるので良い制度」と述べた。
 新田章教育長は、教諭確保などの面から難しいとの見解を示し「文武両道を目指して頑張る生徒になってほしい。そのための環境整備に努めたい」と答えた。
 森楓さん(1年)は、総合病院の建設を質問。高橋由一町長は、旧国保金ケ崎病院が入院施設を廃止した経緯に触れ「医師確保の見通しが立たず、現在いる医師の負担が増え、医療サービスの低下を招くことから建設計画はない」とした。
 議長の金子瞬君(2年)は、国際リニアコライダー(ILC)に関連して「外国人観光客向けの案内板やアナウンスを検討してみてはどうか」と提案した。高橋町長は「外国人訪問数の推移を見ながら、全町的な取り組みが必要な時がくると思う」と回答。外国人向けガイドなどが今後の課題とし「グローバル化が進む中、歓迎の気持ちが伝わるおもてなしをしていきたい」と前向きにとらえた。
 昨年も議員となり、2学期制から3学期制への移行を質問した副議長の斎藤優理さん(2年)。今回は町の教育姿勢を問い、新田教育長から「メリットを考え、3学期制に戻すことにした。可能性を発揮し、目標に向かって挑戦する人になって」との答弁を得た。
 議会後「昨年は意見が通り、うれしかった。町の皆さんに感謝したい。今年はさらに緊張したが、教育長の言葉一つ一つに重みを感じ心に響いた」と感慨深げ。「議会は、金ケ崎をより良くしていくためになくてはならないもの。すごくいい体験ができた」と充実の表情をみせていた。
写真=中学生議会で堂々と質問する金ケ崎中生
投稿者 : 
tanko 2014-2-4 9:30
 東日本大震災による津波被害などからの復興を進める岩手県の「復興実施計画」は、2014(平成26)年度から「本格復興期間」と位置付けられた第2期へと移行。地域合意と協力を基本にした、暮らしとなりわいを支える安全なまちづくりなどを進める。県復興局は、第2期計画1次案の地域説明会を10日まで県内各地で実施しており、3日は水沢区大手町の奥州地区合同庁舎分庁舎3階大会議室で開かれた。

 県復興計画は基本計画と実施計画の2本立て。うち、実施計画は3期間に区分しており、2011(同23)年度から本年度までは第1期「基盤復興期間」として、応急仮設住宅の整備や災害廃棄物の除去など緊急性の高い取り組みを推進した。
 2014年度から3カ年の第2期は「本格復興期間」とし、災害に強いまちづくりを進め災害公営住宅の供給や住宅再建支援をより強力に進めるなど、327事業(うち新規32事業)を盛り込んだ。
 基本的に津波で被災した沿岸市町村に関係する事業が中心。胆江地方など内陸部に関連する事業の一つとして、原発事故由来の放射性物質に係る安全対策、風評被害の払拭などに取り組む「原発放射線影響対策事業」を第1期に引き続き実施する。
 このほか、長期的な観点から地域づくりを目指す対策として第2期計画から「三陸創造プロジェクト」を展開。国際リニアコライダー(ILC)の誘致と連動させる形で、三陸の豊かな海洋資源や地理的環境を活用した海洋生態系や水産技術の研究など、幅広い学術分野に対応した国際研究交流拠点の形成を目指す。
 第2期計画の1次案は県ホームページ、または奥州合同庁舎1階行政情報サブセンターで閲覧できる。今月23日まで計画に対する意見を受け付けているほか、要請があれば出前説明会にも対応する。問い合わせは県庁復興局総務企画課(電話019・629・6944)へ。

「戻りたい。古里だから」 欲しいのは具体情報(内陸部に避難夫婦)
 古里に戻りたい――。県復興局が奥州地区合庁で3日に開いた復興実施計画の説明会終了後、内陸部で避難生活を送っているという高齢の夫婦は、同局の職員らと談話する中で切なる願いを語っていた。
 この日の説明会参加者は18人。夫婦以外は奥州市などの行政職員だった。一般参加者が少なかったことや、計画に盛り込まれた事業のほとんどが沿岸関連ということもあってか、質疑応答はゼロ。予定より30分以上短い1時間足らずで終了した。
 行政職員らが次々と会場を後にする中、復興局の岩間隆副局長は夫婦に声を掛けた。
 山田町に住んでいたという二人。現地の情報がなかなか収集できていないことや、住宅再建の見通しが立たないこと、長引く避難生活での思いなど、ざっくばらんに岩間副局長ら周囲にいた復興局職員に打ち明けた。
 説明会は、どうしても全体的な事業の概要が中心となる。しかし被災住民が何より聞きたいのは「かつて住んでいた地域はどうなるか」「住宅再建するにはどれだけの出費が必要か」など、生活に直結する話題と具体的な見通し。計画の概要や公的な事業方針以上に「自分たち」に関する情報を強く望んでいるように思えた。
 大震災から間もなく3年。夫は「山田に行くには3時間。国道45号が壊れてしまえば終わり。こっちには立派な県道が何本も走っている。道路は重要だなって思ったよ」と、うらやましげに言いながらも、こう続けた。
 「でも山田に戻るよ。だって古里だもん」
(児玉直人)
写真=説明会終了後、復興局職員に思いを語る内陸部に避難中の夫婦
投稿者 : 
tanko 2014-2-1 14:30
 奥州市主催の「未来の活力!地域産業交流会&みちのく奥州イブニングサロン」は30日、水沢区佐倉河のプラザイン水沢で開かれた。国際リニアコライダー(ILC)の国内候補地が北上山地に決定したことを受け、市内の中小企業の経営者らに関連部品調達など、新しいビジネスチャンスの創出への機運を高めるよう、基調講演などを通して呼び掛けた。
 企業経営者や行政関係者ら約100人が参加。東北大学や岩手大学で客員教授を務める吉岡正和氏と、宮城県の「ILC研究会」で会長を務める斎藤一彦氏(仙台市、丸繁?社長)が登壇した。
 吉岡氏は、地元企業がILC関連の部品製造に関わっていくためには、何が求められ、どのようにアプローチすべきかについて説いた。
 吉岡氏は、ILC建設が北上山地に決定した要因などに触れながら、東北地方で既に建設が進められている加速器施設を紹介。福島県のがん治療に使う「ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)施設」などを例に挙げ、「東北地方には既に建設が始まっている施設もある。ILCの建設前に完成する見通し。ILCの前哨戦と捉え、是非足を運んで仕事を見つけてほしい」などと、参入の実現を呼び掛けた。
 さらに、ILCの建設には幅広いもの作りの技術や情報処理・制御技術などが必要と説明。「建設にあたり、さまざまなビジネスチャンスがある。誘致を契機に産学官が一致団結して新産業の創出をするべきだ」とも訴えた。
 吉岡氏に続き登壇した斎藤氏は、ILC研究会が進める「K―プロジェクト」の概要などを説明。このほか、東北経済産業局が実施する中小企業向けの補助金制度や支援制度の紹介なども繰り広げられた。
写真=ILC建設に関わるビジネスチャンスを説いた吉岡正和氏

当ホームページに掲載の記事・写真の無断転載を禁じます。すべての著作権は胆江日日新聞社に帰属します。
〒023-0042 岩手県奥州市水沢柳町8 TEL:0197-24-2244 FAX:0197-24-1281

ページの先頭へ移動