人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市東部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)
投稿者 : 
tanko 2014-8-8 5:20
費用と人材 国際分担いかに ILCの加速器・測定器(山下 了氏)
 ILCの国内候補地(サイト)については、10年以上かけて絞り込みを進めてきた。最初は国内各地に候補地があったが、2候補地(北上山地と九州の脊振山地)に絞り込まれ、2候補地で詳細な調査と検討をした。
 ILC戦略会議内の立地評価会議が中心となり、最終的に北上サイトが長さを取る意味で優位性があるという結論に至った。社会環境面では脊振サイトが利便性に優れてはいたが、技術的要件を重視し、北上サイトにおいて国際設計作業を進めている。
 ILCは非常に高価な装置で、加速器本体だけで約8300億円。そこに、約400億円の大きな測定器(検出器)を2台用意する。国際分担をどうするかが重要なところだ。
 運営コストは年間300億円から400億円かかる。これも非常に高価。このほか、人材に関してもたくさんの専門知識を持った人間が必要となる。
 悩ましい課題がある一方で、ILCのような最先端加速器を開発し、建設することで、新たな「加速器科学」を生み出すことができる。放射光利用や医学利用などがそれに当たる。超電導加速器を使い、新素材の開発や創薬、核廃棄物の処理などの研究・開発が進んでいる。
 ILCに使う超電導加速器の開発拠点は日本の高エネルギー加速器研究機構(KEK)やドイツの電子シンクロトロン研究所(DESY)、アメリカのフェルミ国立加速器研究所(フェルミラボ)にある。
 すでに大規模な受注が始まっている。3年ぐらい前までは「ちゃんと、加速空洞ができるか?」と言われていたが、今は状況がまるっきり違う。企業や研究所の努力により、仕様を満たしている製品ができるようになっている。加速空洞は実用化の段階まできている。ILCを目指しつつ、ノウハウを応用する状況にまで来た。
 まとめると、ILC実現への主要課題は建設コストと人材、運転経費の国際分担をいかにできるかだ。国際工学設計を数年の間で進めることになるが、そこで、技術選択やコスト削減、精度向上などを詰めることになるだろう。
(今田高俊氏の講演につづく。連載は18日付から再開します)

補足説明=加速器や測定器のほか、受け入れ地域においては関連施設へのアクセス道路整備、住環境や教育施設といった都市機能の強化面まで対応する必要がある。元東北大学大学院教授の故・大村虔一氏は、付随部分の整備費を約2890億円と試算。厳しい財政事情を踏まえ、民間資本の活用を提唱していた)

写真=KEKで開発研究が進められている「クライオモジュール」。断面の下の部分に加速空洞が取り付けられ、電子や陽電子が駆け抜ける。内部はマイナス271度の液体ヘリウムで冷やされ、電気抵抗がゼロになる超電導状態をつくる
投稿者 : 
tanko 2014-8-7 5:50
技術課題に企業と挑む ILCの加速器・測定器(山下 了氏)
 ILCのサイエンスをいかにして実現させるか――。まさに生みの苦しみである。装置は非常に高価であり、運転も何十年にわたって行う。非常に壮大な計画であるILCの技術、そして課題について話したい。
 CERN(欧州原子核合同研究機構)のLHC(大型ハドロン衝突加速器)のような円形の加速器にとって、最大の問題は放射光だ。粒子を加速するとカーブしたときに光が出てしまい、エネルギーを失ってしまうのだ。より高いエネルギーの領域を調べる上で限界がある。
 これに対し、ILCは直線状に掘られた地下トンネル内に主線型加速器(クライオモジュール)がずらりと並んでいる。研究の進み具合などに応じ、トンネルの両端を延長させていくことによって、エネルギーを段階的に上げていくことが可能だ。
 ILCには重要な技術が二つある。一つは、超電導(超伝導)加速装置だ。LHCは超電導磁石を使い粒子を加速させているが、ILCは一気に加速しないといけないので、瞬発力のある加速器が必要だ。二つ目は、ナノメートル単位で電子を絞り込み衝突させる制御技術だ。これらを20年、30年かけ検討してきた。

 (補足説明=LHCは円形の加速器なので、検出器内で粒子が衝突しなくても、衝突するまで粒子を周回させておけばよく、発生させた粒子を無駄なく使用できる。ILCは、一度発生させ加速させた粒子は再利用できず、検出器を通り過ぎた粒子は「ビーム・ダンプ」という装置内で処理される。できるだけ無駄なく衝突現象を起こすためにも、ほぼ光速の状態に近い状態まで一気に加速させる技術と、なるべく粒子同士を一つの集合体にして高い確率で衝突させる技術が必要になってくる)

 研究者は国際協力の下で活動し続けてきた。アメリカ、ヨーロッパ、日本に技術開発の拠点が作られた。日本の場合、研究所の中には装置を実際に作る場がない。企業と一緒になり、設計段階から開発研究を続けてきた。
 その集大成として昨年、TDR(Technical Design Report=技術設計報告書)をまとめた。一つのプロジェクトの準備段階としては、史上最大規模の計画書だ。
(つづく)

 やました・さとる 1965年、千葉県生まれ。1989年、京都大学理学部卒。1995年、同大学で理学博士号取得後、東京大学素粒子物理国際研究センター助手に就任し、欧州合同原子核研究機構(CERN)で国際共同実験に携わる。2007年から同センター准教授。研究分野は素粒子物理実験、加速器科学。ILC戦略会議議長、先端加速器科学技術推進協議会・大型プロジェクト研究部会長なども務める。
投稿者 : 
tanko 2014-8-6 5:40
最大波及効果は人材育成 ILCでのサイエンス(村山 斉氏)
 ヒッグス粒子が見つかったことで「もう素粒子物理をやる必要はない」という人もいた。しかし、われわれは新しい幕が開けたと考えている。正体がよく分からない「暗黒物質(ダークマター)」「暗黒エネルギー(ダークエネルギー)」の存在など、ヒッグス粒子の存在を利用し、調べたいことがたくさんあるからだ。
 つい最近、米国で将来にわたる素粒子物理学研究の方針が出された。「今後の科学を考える上で、ヒッグス粒子を『次の発見』のためのツール(道具)として使う」と、筆頭に書かれている。ヒッグス粒子が未知の物質を知る窓口になり得るという意味だ。
 そのためにも、ヒッグス粒子の性質をより正確に調べなくてはいけない。そこでILCが必要になってくる。
 CERNのLHCは陽子と陽子を円形の加速器を使って加速し、ぶつけている。簡単に言えば、豆大福を2つぶつけるようなものだ。本当は小豆の粒々がぶつかる現象を見たいのに、あんこや皮の成分も一緒にぶつかり、ぐちゃぐちゃに飛び散ってしまう。どれが小豆の衝突だったのか探り当てるのは一苦労だ。
 一方、ILCは素粒子である電子と陽電子をぶつけるので、衝突現象はシンプルで分かりやすい。小豆同士をぶつけるようなものだが、小豆は豆大福より格段に小さく、投げにくいしぶつけにくい。同様に電子と陽電子を超高速で加速し、見事に衝突させるのは難しい。だが、ここ30年ぐらいかけて検証したところ、技術的に実現可能だということが分かっている。
 ILC計画は欧米にも強いインパクトを与えており、日本での動きを興味深く見守っている。まさに、日本の出方待ちという状態だ。
 ヒッグス粒子は、まだ大きな謎に包まれている。それを解き明かし次の謎に迫る上で、ILCは最適、かつ無敵の加速器だ。何より建設前の段階で確実に成果が見える研究装置は非常にまれだ。
 日本人は潜在的に、このような科学分野にすごく興味を持つ能力がある。「何の役に立つんだ」という話は付き物だが、ILCを実現することで得られる最大の波及効果は、次世代を担う人材を創ることではないだろうか。
(山下了氏の講演につづく)

図=LHCとILCにおける衝突現象の違い。LHCで衝突させている陽子には、クォークやグルーオンという素粒子が含まれているため、衝突現象が非常に複雑。調べたい現象を見つけ出すのが大変だという(東京大・山下了氏の資料を基に作成)
投稿者 : 
tanko 2014-8-5 9:30
私たちが存在する理由 ILCでのサイエンス(村山 斉氏)
 「私たち人間はどこから来たのか」という問題は、人類史が始まって以来、宗教や哲学、そして科学でも考えられてきた。
 「昔のこと」を探るために使用してきた道具の一つが、巨大な望遠鏡だ。星の光は遠くから時間をかけて地球に届く。つまり、星を調べれば宇宙の昔の姿が分かる。

 (補足説明=光の進む速さは秒速約30万km。太陽と地球の間は約1億5000万kmあるため、太陽光が地球まで届くのに8分余りかかる。夜空に見える星の光は遠い過去に発生した光が地球に届いたものである)

 現在は133億光年の銀河まで調べることができる。宇宙が始まってから、およそ5億年後の姿を見ていることになる。
 しかし、望遠鏡には限界がある。宇宙誕生直後は、熱くて濃いスープのような状態になっていたと言われ、光がまっすぐ進むことができなかった。
 それでも宇宙誕生の瞬間により近い部分を見たい――。素粒子物理学はその思いに挑む学問であり、望遠鏡に代わって加速器を使う。粒子同士を超高速でぶつける実験をして「宇宙の始まりに何が起きたのか」「どのように新しい元素ができてきたのか」を調べられる。
 加速器を使った実験では、星の中で組み立てられた原子が宇宙空間にばらまかれ、その後に人間などをつくる“もと”ができたことも分かった。少しずつではあるが「人間はどこから来たのか」の答えに迫っている。
 原子は中心に原子核があり、その周りを電子が回っている。電子が原子核の周りにとどまっているために必要なのが「ヒッグス粒子」だ。つい最近、CERN(欧州原子核合同研究機構)のLHC(大型ハドロン衝突加速器)で、ヒッグス粒子らしきものが見つかった。
 ヒッグス粒子は、その働き自身が非常に大事。宇宙誕生直後は1000兆度という超高温状態だった。ヒッグス粒子など、素粒子がバラバラに飛び交う無秩序な状態だったと考えられている。
 ところが次第に冷えていき、ヒッグス粒子は空間にびっしりと満たされ凍り付いた。すると、それまで好き勝手に飛び交っていた電子などの素粒子がヒッグス粒子にぶつかり、動きが鈍くなる。電子は原子核の周囲にとどまり、原子が形成され、やがて「私たち」が存在するようにもなった。仮にこの瞬間、ヒッグス粒子が無くなったとすると、われわれは10億分の1秒でバラバラになってしまう。
 ヒッグス粒子の存在を提唱したのは、ピーター・ヒッグスさん(英国エディンバラ大学名誉教授)。彼は50年前「こういう粒子があるはずだ」と言った。それを加速器の実験で確かめようと考えられたのが30年前。実験に必要な加速器の建設が始まったのが15年前だった。大型加速器の研究が実現するまでには、非常に長い時間がかかる。50年前に考えられた理論がようやく証明されたわけだから、感激はひとしおだった。
(つづく)

 むらやま・ひとし 1964年、東京都出身。1991年、東京大学大学院物理学専攻博士課程修了後、東北大学に2年間助手として勤務。2000年から米カリフォルニア大学バークレー校教授、2007年から東京大学カブリ数物連携宇宙研究機構長。ILCを推進する国際組織「リニアコライダー・コラボレーション」の副責任者でもある。難解な素粒子物理の世界を分かりやすく解説するなど、科学の普及に尽力している。
投稿者 : 
tanko 2014-8-4 5:10
 北上山地への誘致が期待される素粒子研究施設・国際リニアコライダー(ILC)。震災復興や経済振興、教育充実の呼び水として地域挙げての誘致活動が繰り広げられている。壮大な夢が描かれている一方で、総額1兆円規模の超大型事業に対する国民理解の形成など、対応すべき諸課題は多岐にわたる。名峰の頂上を目指すアルピニズムのごとく、ILC実現への道のりは決して容易なものではない。日本学術会議が6月23日に開催したILC計画学術フォーラムでは、7人の有識者が「夢と現実」について語った。講演要旨を連載する。 (児玉直人)

写真=奥州市など本県からの参加者もあったILC計画学術フォーラム(東京都港区・日本学術会議講堂)


リスク明確化が重要 学術会議の検討経緯(家 泰弘氏)
 多くの皆さんがフォーラムに参加していただいたことは、ILC計画に対する関心の高さをうかがわせる。学問の分野を越え、忌憚のない意見を――というのがこのフォーラムの趣旨だ。
 日本学術会議は昨年5月24日、文部科学省からILC計画に関する審議依頼を受け「ILC計画に関する検討委員会」を設置。私が委員長を務めた。
 当時はILCの技術設計報告書(TDR)が完成。並行して、日本国内の候補地選定作業も進められていた。
 このような状況もあり、速やかに返答するため計7回の会合を短期間で開催。専門家の方々の意見も聞かせていただき、8月末に回答案をまとめた。査読(回答文提出前に行われるチェック作業)を経て、9月30日に文科省へ手交し一般公表もした。回答の大まかな中身を見てみたい。
 ILCは、CERN(欧州原子核合同研究機構)にあるLHC(大型ハドロン衝突加速器)と相互的役割を果たす素粒子実験施設だ。現時点で最も検討が進められており、国際チームによる詳細設計にも着手している。学術的意義も高いと評価した。
 一方で巨額投資に見合うよう、明確で説得力のある説明が望まれる。ILCは、その経費や人的資源の規模からいって、単独の国や地域だけで実施できない。参加国・地域による持続的な協力が必要だ。
 日本誘致を想定した場合、現時点では実施体制や外国人研究者の参加見通し、必要経費の分担見通しなど、重要事項について不確定な部分がある。科学技術に対する予算配分は限られている。国家的諸課題に深刻な影響を与えたり、科学技術創造立国を支える諸学術分野の研究に停滞を招いたりすることがあってはならない。
 これら学術会議からの提言を受け、文科省は今年5月に有識者会議を設置している。
 ここからは私見も入る話だが、大きなプロジェクトをやる上では、さまざまな不確定要素やリスクは付きものだと思う。
 CERNのLHCでは、実験性能をアップする取り組みが始まろうとしている。これによって、素粒子物理研究のめぼしいところをCERNでやってしまうのでは――と素人なりに感じてしまう。
 このほか▽陽電子の生成が期待通りできるか▽1万7000台もの加速器空洞(クライオモジュール)の品質確保とコスト削減が本当に可能なのか▽大規模な地震への備えは大丈夫か▽コストオーバーラン(経費が想定以上に膨れ上がること)に対しどう考えているか――などILCに対する心配は尽きない。
 何よりも大きなリスクが「国際協力」の関係だ。経費負担をするからには、それ以上の便宜享受を参加各国は期待するだろう。また、科学的に面白い部分には目を向けるかもしれないが、インフラの出資については渋るのではないだろうかとも想像してしまう。
 無事に運用が始まったとしても、各国の財政状況の変化や為替変動もあり得る。脱退希望や分担金の減額要請に対し、どう対応するかという問題もある。
 以上、素人なりに考えてみたものではあるが、これらの懸念の解消を願っている。
 学術会議としては今後、文科省の有識者会議の審議検討の推移を見守る。もし必要があれば、学術全体の立場から適宜関与していきたい。
 最後にILCを推進する立場の皆さんにお願いがある。長期にビッグプロジェクトを進める上では「想定外を想定する」ことが大事だ。考えられるあらゆるリスクをできるだけ明らかにし、複数のプランを示していくのが一つの手順だと思う。
 ILCを進める研究者の皆さんはこれまで一般市民や青少年、産業界、政界、建設候補地への働きかけを一生懸命やられてきた。だが、ややもすれば当該分野以外の研究者への働きかけはやや希薄だったのではないかと感じる。
 そういう意味で今回のフォーラムが一つのきっかけとなり、広く学術コミュニティーの理解を得る機会にしてもらいたいと願っている。

 いえ・やすひろ……1951年、京都府出身。1979年3月、東京大学理学系大学院物理学専攻博士課程修了。米国IBMトーマス・J・ワトソン研究所客員研究員などを経て、現在は東京大学物性研究所教授。日本学術会議副会長でもあり、同会議が2013年に設置した「ILCに関する検討委員会」の委員長を務めた。
投稿者 : 
tanko 2014-8-2 18:10
 市内の企業人を対象にした英語研修会が1日、奥州商工会議所5階中ホールで開かれた。国際リニアコライダー(ILC)誘致を見据え、国際都市にふさわしい接客を意識してもらおうと企画。市内在住外国人らは「最初から完璧な会話は難しい。それよりも、心の通ったコミュニケーションを大切にしてほしい」と呼び掛けていた。
 奥州市国際交流協会(佐藤剛会長)が主催。奥州商工会議所やILCサポート委員会が共催した。宿泊施設や金融業、飲食店の従業員や経営者ら約20人が参加した。
 実践的な研修を前に、同委員会委員で胆沢区小山に住む、遠藤ペルリタさん=フィリピン・マニラ出身=が「まちの国際化のために必要なこと」と題し講演。辞書に載っていない方言の意味を理解するのに苦労したことなど、自身の体験談を交え話した。
 来日した際、東京駅で知人を探すため駅員に案内放送をしてもらえる場所を訪ねたところ、乱暴な口調で「あっち!」と言われ、ショックを受けた。一方で成田空港ではスタッフが外国人、日本人問わず同じ目線で対応。たとえ外国語が話せなくても、困った人を見つければ積極的に手を差し伸べるスタッフもいて「とても親切」と感動したという。
 ペルリタさんは「外国人と話すことは難しいと思われがちだが、完璧な会話である必要はない。気持ちが通い合うことが大事。分かり合ってもらえる気持ちこそが一番うれしい」と訴えた。
 講演後は、参加者の業種ごとに研修。銀行や郵便局など金融機関に勤めている参加者たちは「残高」や「自動引き落とし」など、接客でよく使う単語を身に付けた。
 
写真=金融機関の接客でよく使う英単語を学ぶ受講者たち
投稿者 : 
tanko 2014-7-30 18:00

 奥州市議会(佐藤修孝議長)の「ILC誘致及び国際科学技術研究圏域調査特別委員会」(渡辺忠委員長、議長除く全議員27人で構成)は29日、初会合を開いた。活動計画について協議し、当面の調査研究課題にILC(国際リニアコライダー)誘致と、ILCを核とした新たなまちづくりを視野に入れた国際科学技術研究圏域の構築に向けた取り組みの2項目を掲げた。市議会は今後、誘致実現を目指した各種活動を本格化させる。
 同特別委は、調査研究項目に基づき近隣議会との意見交換のほか、市の担当職員を交えたり外部有識者を招いたりする勉強会を開く。関連講演会やシンポジウムへの参加に加え、ILC建設予定地や茨城県つくば市の高エネルギー加速器研究機構(KEK)など関係施設の視察も行う計画。
 初会合では佐藤邦夫氏(市民クラブ)が「国や関係機関への運動も活動計画に加えるべきだ」と提言したのに対し、渡辺委員長は「まずは誘致をめぐる活動が中心となるが、詳細は幹事会で話し合いたい」と述べた。
 県内では盛岡、一関両市議会もILC関連の特別委を既に設置した。渡辺委員長は「周辺の議会とも交流しながら活動を進めていきたい」と話した。
 会合では、ILC誘致をめぐる市議会有志の議員連盟を設立するかどうかについて検討することも申し合わせた。
 同特別委は直近の活動として、8月23日に市文化会館(Zホール)で開かれる「先端加速器科学技術推進シンポジウム2014in東北」(いわてILC加速器科学推進会議など主催)への参加を予定している。

写真=活動計画について協議した市議会ILC調査特別委の初会合であいさつする渡辺忠委員長
投稿者 : 
tanko 2014-7-29 10:20

 企画展「ILCをもっとよく知ろう!」は、江刺区大通りの江刺図書館(佐賀克也館長)で開かれている。ILC(国際リニアコライダー)の内部イメージ巨大パネルのほか、関連図書など30点をそろえ、北上山地に建設が期待される国際研究施設を身近に感じてもらう。8月20日まで。
 奥州市などが建設実現を目指すILC。候補地にあたる江刺の住民に一層興味を深めてもらおうと、市内図書館では初めて市ILC推進室と共催した。
 会場には、ILCによる研究で解明される科学的成果などを分かりやすく記したパネルや、素粒子物理学の関連図書を並べた。圧巻なのが、全長4mの建設候補地の江刺区〜一関市大東町間の北上山地の3D立体地図。専用の眼鏡を掛けて見ると、山地の様子が立体的に浮かび上がる。ロビーでは関連DVDも上映している。
 同館の菊池正由副主幹は「夏休みなので、ぜひ多くの子どもたちに見てもらい、建設が期待されているILCに興味を持ってもらえたら。夏休みの課題研究にも役立ててほしい」と話す。
 関連イベントとして、同1、7日には同推進室職員による解説会も開催。時間は両日とも午後3〜5時を予定している。

写真=江刺図書館のILC企画展。解説パネルや関連図書のほか、北上山地3D立体地図が並ぶ
投稿者 : 
tanko 2014-7-28 19:40
 素粒子研究の協力体制などを検討する「国際将来加速器委員会(ICFA)」は、国際リニアコライダー(ILC)計画を支持する声明を発表した。高エネルギー加速器研究機構(つくば市、KEK)は27日までに声明文の概要を日本語に訳して公表。ILCはヒッグス粒子の研究を深める「千載一遇の機会」と位置づけ、建設計画への賛意をあらためて示した。今回の声明で、世界の素粒子物理学界がILC実現へ足並みをそろえていることを明確にした。
(児玉直人)

 世界の加速器研究所の長らで構成するICFAは、1976(昭和51)年に発足。加速器の建設や技術的問題、共同利用について検討している。ILCを推進するさまざまな国際組織、検討チームの上部組織に当たる。
 今回の声明は、スペインのバレンシアで開かれたICFAの会合で採択された。ILC計画への強い支持を明記した米国の素粒子物理将来戦略(通称・P5)の発表後、初めての会合となった。
 国レベルの科学政策立案の指針にもなるP5と同様の戦略計画は、アジアとヨーロッパでもまとめられており、いずれの戦略もILC建設で期待される素粒子分野の研究を優先課題としている。
 ICFAは声明文で「3地域で発表した戦略を支持する」とした上で、「ILCはヒッグス粒子(物質に質量を与える素粒子)の精密測定実現という千載一遇の機会を提供する。ILC計画への賛意をあらためて確認する」とした。
 ICFAのナイジェル・ロッキアー議長(米フェルミラボ国立加速器研究所長)は「3地域が目指す研究と、世界の素粒子研究の方向性が一致していることを喜ばしく思う。素粒子物理研究は、より一層グローバルな活動になっていくだろう」とコメントしている。
 素粒子実験施設のILCは、江刺区東部を含む北上山地への誘致が期待されており、文部科学省内で誘致の是非を判断する検討作業が進められている。
投稿者 : 
tanko 2014-7-23 19:50

 国際リニアコライダー(ILC)誘致実現に向けた機運を高める「先端加速器科学技術推進シンポジウム2014in東北・ILCの日本実現に向けて」は、8月23日午後1時半から市文化会館(Zホール)で開かれる。3人の講師が登壇。このうち前県知事の増田寛也氏は、人口減問題と絡めILCに対する期待を語る。入場無料。

 いわてILC加速器科学推進会議(亀卦川富夫代表幹事)や国際経済政策調査会(高橋佑理事長)、先端加速器科学技術推進協議会(西岡喬会長)などが主催。KEKや胆江2市町、胆江日日新聞社などが後援する。
 昨年のILC国内候補地決定と同じ日に開催日を設定。文部科学省内で国内誘致の是非に向けた諸課題検討が始まった中、東北の熱意を国内外に発信し、国民機運を盛り上げる機会として位置付けている。
 講師は増田氏のほか、高エネルギー加速器研究機構(KEK)の鈴木厚人機構長と、東京大学素粒子物理国際研究センターの山下了准教授の3人。増田氏は、自身が座長を務める日本創世会議・人口減少問題検討分科会でとりまとめた、人口減少による地域崩壊や自治体運営の行き詰まりに関する調査結果を基に、人口減問題にILC計画を絡めて話題を提供する。
 KEKの鈴木機構長による奥州市内での講演は今回が初めて。「ILCが目指すもの」と題し、研究意義や波及効果などについて解説する予定だ。山下准教授は今後の見通しなどについて触れる。
 問い合わせは市役所ILC推進室(電話24・2111、内線415)へ。

写真=(左から)鈴木厚人氏、増田寛也氏、山下了氏

当ホームページに掲載の記事・写真の無断転載を禁じます。すべての著作権は胆江日日新聞社に帰属します。
〒023-0042 岩手県奥州市水沢柳町8 TEL:0197-24-2244 FAX:0197-24-1281

ページの先頭へ移動