岩手県奥州市・金ケ崎町をエリアとした地域新聞社による国際リニアコライダー(ILC)関連記事を掲載。 奥州市東部の北上山地は、現時点における世界唯一のILC候補地に選定されました。当サイトにはILCをはじめ、理系分野やILCに関連性のある地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)についての記事を随時アップします。
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tanko 2013-8-7 7:20
 【東京都港区=報道部・児玉直人】北上山地などが有力候補地となっている、国際リニアコライダー(ILC)の国内誘致について検討している日本学術会議(大西隆会長)の検討委員会委員長の家泰弘東京大学教授は6日、ILC国内誘致の政府判断について「数年かけて懸案事項をクリアにしていく必要がある」との個人的見解を示した。学術会議は早くて9月中に、文部科学省から依頼を受けているILC関連の審議結果について回答。政府は国内誘致の判断の参考にするが、慎重な意見が色濃く示されたことで、誘致表明が当面困難になる可能性が強まった。

 家委員長は同日、東京都港区で開かれた同委員会第5回会合(非公開)終了後、報道陣の取材に応じた。
 同日の会合では、論点をまとめる上で、大まかな方向性を確認したという。その中で、巨額予算の捻出方法が具体的に決まっていないことや、参加国からの経費負担に対する確約など、国として誘致のゴーサインを出すには不確定要素があるなどと指摘があった。
 家委員長は個人的な総合所見と前置きした上で「何年かかけて懸案事項をもう少しクリアにし、国際的な合意も詰めた上で、しかるべき時期にもう一度誘致の是非を考えるべきではないか」との考えを示した。「これまでは推進する側の人たちが検討の中心だったが、外部の立場の人たちも入り協議した方が、社会的理解も得られる。こういうものを作るには十分な時間と調整が必要で、最悪なのは『日本に誘致しよう』と突っ走り、途中で断念してしまうことだ」と強調した。
 学術会議とは別に、素粒子研究者間では、北上山地と九州の背振山地の2候補地を一本化する作業が進められ、近く公表するものとみられる。学術会議の協議は候補地選定には一切関与していない。ただ、学術会議が誘致決断に熟慮を求める方針を示した場合、素粒子研究者側が選定結果をどのタイミングで公表するか判断が求められそうだ。

 日本学術会議・ILCに関する検討委員会 文科省からILCの学術的意義、国民生活や社会における意義、建設・運営に必要な予算、人的資源の確保など諸条件などについて審議依頼を受け、6月以降協議を重ねている。

写真=ILCの日本誘致には数年の熟慮が必要、との見解を述べる家泰弘委員長
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tanko 2013-8-6 7:10
 素粒子物理学の大型実験施設・国際リニアコライダー(ILC)の国内誘致について、文部科学省から審議依頼を受けている、日本学術会議(大西隆会長)の「ILC計画に関する検討委員会」(家泰弘委員長)は6日、5回目となる会合を東京都港区で開く。素粒子研究者らによる国内候補地一本化作業も本県の北上山地か、九州の脊振山地かの選定結果の公表が待たれる状況の中、同検討委も早急に意見の取りまとめをしたい考え。これまでの協議では学術的意義に対する賛意はあるものの、巨費投資による他の学術分野への影響などを懸念し慎重な意見も出ている。ILC計画をめぐる動きは、国内候補地一本化と国内誘致そのものの是非判断という、二つの重要局面を迎えようとしている。

 同会議は6月に文科省の審議依頼を受けて同検討委を設置。最初の3回はILC計画を推進する素粒子物理学者らを参考人として招き、その意義や想定される課題への対応について聴取した。
 7月30日の第4回会合は非公開で実施。終了後、家委員長による取材応答の場に立ち会った岩手県東京事務所の話によると、他学術分野の予算への影響などが話題に上ったという。
 約8300億円の半分ともされる建設費用を、文科省が持つ既存の科学研究費用の枠内で考えると、他学術分野への影響が大きいという。従来と別の予算枠を設ける手法も考えられるが、家委員長は「(検討委として)そこまでは踏み込めない」と述べたという。
 ILCを推進する素粒子物理学の研究者らは、7月末にという予定で国内2カ所の候補地を選定する作業を進めてきた。8月に入った現段階で公表時期などは依然明らかになっておらず、「学術会議の協議動向などを踏まえ、公表タイミングを見計らっているのでは」という誘致関係者もいる。ただ、県東京事務所によると、家委員長らは「国内候補地決定の動きとの連動や協調はしていない」と述べたという。
 文科省への正式な答申は、学術会議内での査読作業などがある関係上、9月になる見通しであることから、今月中旬にも一定の方向性が示されるものとみられる。
 「北上か背振か」とともに「日本誘致が是か非か」の鍵を握っている学術会議の判断にも注目が集まりそうだ。
(児玉直人)
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tanko 2013-7-26 5:40
 素粒子研究施設・国際リニアコライダー(ILC)の建設国内候補地の一本化が目前に迫る。「やることはやった」「吉報を待つのみ」――。有力候補地の一つ北上山地を有する奥州市の行政や誘致団体の関係者は期待に胸を膨らませながら、「その時」を心待ちにしている。決定時期のめどとされた7月も残すところ1週間足らず。研究者らによる国内候補地決定の発表方法や日時などは、いまだ明らかになっていない。

 ILCの国内候補地は北上山地と北九州の脊振山地の2カ所。日本の素粒子研究者らで組織する「ILC戦略会議」が中心となり、候補地の絞り込み作業を進めている。高エネルギー加速器研究機構の鈴木厚人機構長は今月2日の取材に対し、かねて研究者らが示している7月末までに決定という方針について「変わりはない」と説明している。
 一方、首相所轄の特別機関・日本学術会議は「ILCに関する検討委員会」(家泰弘委員長)を6月に設置。他の学術分野予算への影響や、ILCに携わる人材育成といった課題を中心に意見を交わしている。
 今月30日には第4回会合を開き、議論のポイントを協議。今後の予定についても話し合うといい、場合によっては8月に入っても会合が続くこともあり得る。
 こうした動きに対し、関係者の間では「一本化作業は7月中に完了しても、学術会議の動向を見守る可能性もあり、公表自体は8月前半ではないか」という見方も一部にある。
 北上山地誘致を目指す産学官民の関係者は、「7月の参院選後の決定」に照準を合わせ、さまざまな誘致活動を展開。政府関係者への要望や住民の機運醸成を図る講演会などが、5月から6月にかけて相次いだ。市内には、誘致アピールのステッカーを貼った車も多く見受けられるようになった。
 だが、7月に入ってからは、決定が迫る微妙な時期であることや参院選もあって、目立った誘致活動は少なめに。奥州市ILC推進室の活動は出前講座2件、イベント会場でのPRが1件にとどまった。及川健室長は「公表日がいつなのか分からない微妙な時期にあって、どのような取り組みが可能か対応を練り直している」と話す。
 民間誘致団体いわてILC加速器科学推進会議の亀卦川富夫代表幹事は「決定前までにやるべきことはやったと思う。決定した暁には、さらなる普及活動の充実や地域社会がどうあるべきか考え合う雰囲気を醸成したい」と、静かにその時を待つ。
(児玉直人)

写真=今月中とされるILC国内候補地の一本化。北上山地誘致を目指す関係者は“吉報”を心待ちにしている(奥州市役所本庁1階ロビーのPRコーナー)
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tanko 2013-7-7 13:00
 独マインツ大学の斎藤武彦教授(42)は5日、奥州市など県内22の小中高校で行ってきた国際リニアコライダー(ILC)特別授業を終えた。岩手について「未来がある所」と印象を語り、子どもたちには「世界へ目を向けてほしい。外への発信能力を身に付け、自信と夢を持って」とメッセージを送った。斎藤教授は、10月にも再び東北を訪れる予定だ。
 特別授業は6月26日に始まり、奥州市や一関市、久慈市などの小中高校で実施。北上山地への誘致が期待されているILCの話題など、科学の世界に興味関心を高めてもらおうと、県ILC推進協議会(元持勝利会長)などが主催した。
 斎藤教授は、児童生徒に科学の面白さや科学的な考え方の大切さ、世界が被災地を応援していることなどを語り掛け「岩手は世界一。そこに住んでいる若者たちはかっこいい」と繰り返し伝えた。
 一連の授業を終えて「岩手の子どもたちはすごく素直。素朴で純粋」と斎藤教授。一方で「自分から何かを発信するという力を今後は伸ばしてもらえれば」とアドバイスした。
 教育の重要性を主張する斎藤教授は、特に被災地で地元に残り頑張りたいと考えている子が多いとも感じ、「ILCが岩手に来れば、世界へ目を向けるきっかけになるはず。それが岩手にILCを誘致する一番の意義」と話した。
 沿岸部での活動をライフワークにしていく考えも示し、「沿岸と内陸のネットワークは大切。コミュニケーションを取るきっかけになる存在になりたい」と語った。
 5日は、奥州宇宙遊学館で開かれた市主催の特別講義で、斎藤教授が市民らの疑問や質問に答えた。
(河東田ひかり)
写真=ILC特別講義をする斎藤武彦教授(奥州宇宙遊学館)
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tanko 2013-7-3 5:00
 素粒子研究施設・国際リニアコライダー(ILC)の国内候補地の一本化時期について、ILC国内推進母体である高エネルギー加速器研究機構(KEK、茨城県つくば市)の鈴木厚人機構長は2日、胆江日日新聞社の取材に応じ「7月末までに候補地を決定したいという考えに変わりはない」と答えた。
 鈴木機構長は1日夜、首相所轄の特別機関・日本学術会議(大西隆会長)が設置する「ILCに関する検討委員会」(家泰弘委員長)の第2回会合に参考人として出席した。
 その後、現在検討が進められている国内候補地一本化に関し、鈴木機構長が当初予定の7月末から8月後半にずれ込むと述べたとする見解が一部で報道された。このことについて、鈴木機構長は電話取材で「われわれは7月末に決めたいという思いに変わりない」と強調した。
 ILCの国内候補地は本県の北上山地と北九州の脊振山地の2カ所。日本の素粒子研究者で組織するILC戦略会議が中心となり絞り込み作業を進めている。鈴木機構長によると、研究者間での検討作業が大幅に遅れているわけではなく、選定時期を8月後半に先送りすることを決めた事実もないという。
 鈴木機構長は「学術会議検討委の開催予定が8月下旬まであることを会合の場で初めて知った。われわれの日程との検討をしなくてはとも思ったが、学術会議の検討が終わるまで、決まった事柄の公表を先延ばしするようなこともしたくない。7月末にしたいという考えに変わりはない」と話した。
(児玉直人)
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tanko 2013-6-30 5:40
 独マインツ大学教授の斎藤武彦氏(42)=原子核構造物理学=は29日、盛岡市内のホテルで開かれた岩手県ILC推進協議会(元持勝利会長)主催の国際リニアコライダー(ILC)誘致県民集会で講演。「沿岸被災地を含めた地域の子どもたちが、ILCで行われる国際的な科学研究に興味を持ち、活躍したいという夢をかなえるには、彼らの故郷から近距離にある岩手大学への物理系学部設置が求められる」と持論を展開。さらに「地元と研究施設との連携や協力体制をうまく進める上で、私たち科学者の安全意識があらためて問われている」と述べた。

 斎藤氏は来月5日まで、胆江地区を含む県内小中高校などでILC特別授業を展開。ILCで行われる研究分野の専門ではないものの、東日本大震災被災地に住む子どもたちの教育や、被災地域の将来を考える上で、世界の物理学研究の中心になり得るILCの存在は有意義であると考え、誘致実現に協力している。斎藤氏は特別授業の様子などを紹介しながら、ILCに対する自身の見解を述べた。
 日本国内で物理学を専門とする大学施設の分布を示した斎藤氏は「残念ながら東北は関東以西に比べ、物理系学部は多くない。ILCの中心点から最も近い東北大学でさえ約100kmある」と述べた。
 「沿岸被災地の子どもたちがILCに興味を示し、物理系の道に進みたいと夢を抱いたとしても、地元から遠い場所にしか学ぶ場所がない。結局、夢を諦めてしまう子もいるだろう」と指摘。最先端の研究施設がありながら、地元の人間が活躍できない状態が起きることを懸念した。
 「さまざまな課題はあるだろうが、ILCが誘致できたとしても、教育環境が現状のままなら、岩手にとっては非常に損なこと。ぜひ岩手大学に物理系学部を設置してほしい。世界有数の大学に成長するチャンスだ」と訴えた。
 このほか斎藤氏は、5月23日に茨城県東海村の大強度陽子加速器施設「J−PARC」内で発生した放射能漏れ事故についても触れ、「科学者が安全を軽視し研究ばかりを重視していたら、ILCにおいても地元住民と上手に連携できない」と強調した。
 県民集会に出席した岩手大学の藤井克己学長は、胆江日日新聞社の取材に応じ、斎藤氏の提言について「とても熱意あるありがたい主張だ。地域の子どもたちの学力を確かなものにし、大学機能の強化を進める上でも(物理系学部設置は)重要なこと」と理解を示していた。
(児玉直人)
写真=岩手大学への理系学部設置などを提言した斎藤武彦氏(盛岡市内のホテル)
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tanko 2013-6-30 5:30
 岩手県ILC推進協議会(元持勝利会長)は29日、盛岡市で県民集会を開き、「ILC(国際リニアコライダー)の東北誘致に関する決議文」を採択した。国内候補地の選定を7月末に控え、北上山地誘致実現へ熱意をアピールした。

 集会には小沢昌記奥州市長や高橋由一金ケ崎町長をはじめ、同推進協に加盟する県内の産学官関係者ら約380人が出席した。
 同推進協の谷村邦久副会長は「震災から真の復興を果たしていくには、長期にわたり夢を持って取り組んでいく象徴的なプロジェクトが必要」と指摘。「復興と再生の原動力になり、若者や子どもたちに夢と希望を与えるILC誘致に向け、一丸となって取り組む。国家プロジェクトとして、ILCの東北誘致を推進するよう強く求める」と訴え、満場の拍手で決議文が採択された。
 ILCの国内候補地は東北の北上山地と、北九州の脊振山地の2カ所。海外にも候補地が数カ所あるが、経済情勢や国内事情もあり、日本への建設が有力との見方が強い。
 素粒子研究者らは7月末にも国内候補地の一本化をする予定。参院選後にも北上、脊振のいずれかに決定する見通しだが、本県の誘致関係者らによると具体的な発表や通知スタイル、日程などは現時点で一切明らかになっていないという。
(児玉直人)
写真=ILC東北誘致の決議文を採択した県民集会

訂正…30日付本紙紙面(1面)に掲載した「ILC県民集会」記事中の決議文を読み上げたのは、正しくは県ILC推進協の谷村邦久副会長でした。お詫びして訂正します。
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tanko 2013-6-30 5:10
 吉 岡…私が所属する高エネルギー加速器研究機構(KEK)で長年、評議員としてお世話になっており、ビジネスや人材育成の面でものすごい経験をお持ちの内永さんの見解もお聞きしたい。

 内 永…ILC誘致を取り巻く中で、非常に大事なる問題の一つが人材だ。
 私はIBMで開発製造のトップをしていた。IBMは、世界中の研究所が互いに競争して研究開発の仕事をとってくる。日本にも6000人近くの研究・開発・製造の人間がいる。
 ところが、日本と世界のスタッフを比べたとき、いつも残念なことがある。日本のスタッフは技術力は十分。しかし、新たな概念への対応や統率力に欠けていている。周辺のアジア諸国にもその辺の能力が負けてしまい、仕事のメーン部分を他国に持っていかれてしまうことがある。
 地球規模で物事が進む世界の中では、高いコミュニケーション能力や提案能力を発揮する必要がある。日本という単一的な環境の中ではない場所で、自分たちをいかに認めてもらえるかが大切だ。
 もちろん、単一的環境だからこその強さが日本にはあり、過去には素晴らしい成功を収めてきたこともある。それに、日本のすべての分野がグローバル社会の中で劣っているわけでもない。
 特に日本の物理学者は極めて多様性に富んでいて、国際社会でものすごい統率力を発揮している。例えば、CERN(スイスにある欧州合同原子核研究機構)でも、リーダーシップを発揮している。
 CERNと同じような状況がILC建設地周辺で起きるなら、人材育成の面でもすごい力が生まれ、子供たちに夢を持たせることになる。ILCは経済的効果だけでなく、人材育成という大きな効果も得られる。

 吉 岡…村井知事にもう少し東北の持つ潜在能力を語ってもらいたい。

 村 井…宮城のことをPRすると、一つは民営化を進めている仙台空港には3000mの滑走路がある。欧米の外国人が直行便で宮城に来ることも可能だ。
 二つ目は東北大学を有している点。特許公開件数が国内大学でトップの状態を続けており、素晴らしい成果を出している。ノーベル賞受賞者も東北大から出ている。
 三つ目は、大都市の仙台市を抱えている点。研究者も時には気分転換をしたい。仙台市が持つ素晴らしい地域都市能力が発揮されるだろう。

 吉 岡…達増知事はどうか?

 達 増…岩手は産学官民による連携の取り組みが盛んだ。こうした既存の産学官ネットワークとILC国際研究所との連携により、波及効果を最大化できる。
 交通アクセスも仙台空港が発展するし、東北新幹線も「はやぶさ」で2時間�q分。首都圏とのアクセスも便利になっている。
 周囲には温泉やスキー場、ゴルフ場もあり、豊かな自然がある。研究者にとって頭を空っぽにして、体と心をリフレッシュすることは大事である。

 吉 岡…それでは最後に内永さんから、ILCを核とした東北の将来像についてまとめてほしい。

 内 永…東北大の特許の話題がたまたま出たが、ILCやそれを支える技術の中には当然、特許物件の技術が出てくる。
 日本は特許物件の数は世界で2位。1位はアメリカだ。ところが、特許物件を活用して業績アップに結び付けている企業は、アメリカの10分の1しかない。
 日本は、素晴らしい技術を山ほど生み出しているのに、何故かビジネスにうまくつながらない。私はこれを「技術とビジネスの間の死の谷」と言っている。この「死の谷」にどう橋をかけるかが大きな挑戦となる。この挑戦ができる環境を日本に築く上でも、ILCは非常に役に立つだろう。
 日本の技術力がビジネスと結び付けなければ、何のためにILCを誘致したのか分からなくなる。そういう意味で、日本人にとってILCは新たな挑戦の舞台になる。
 日本はいい意味で、誰かがやったのをうまく組み合わせ、より素晴らしいものを生み出すのが得意なお国柄。日本人の自信と実績に結び付いていくことが、ILCの大きなポイントになる。
 こういう先進的な技術を生み出す取り組みは、海外の場合、軍事産業を舞台として行われてきた。当然、日本ではそれができない。
 そうなると宇宙とか科学的なものでやるしかない。先進的な技術を生みビジネスにもつなげていくことにより、40兆円とも言われる経済効果は決して夢ではない。
写真=聴講する首都圏の企業関係者や東北の誘致推進組織メンバーら
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tanko 2013-6-30 5:00
 国際リニアコライダー(ILC)の北上山地誘致を実現する上で、東北にはどんな強みや潜在能力があるか――。5月30日に東京都千代田区大手町の経団連会館で開いたシンポジウム(東北ILC推進協議会主催)で、行政や都市計画、人材育成にかかわる有識者4人が、首都圏の企業関係者らを前に意見交換。東北の持つ地域性や魅力をアピールした。国内候補地一本化が迫る中、山村が持つ既存機能を生かしたまちづくりや人材育成面への効果などについて持論を展開した。


パネルディスカッション
「ILCを核とした科学技術創造立国と東北のポテンシャル」
【発言者】
達増拓也氏…岩手県知事
村井嘉浩氏…宮城県知事
大村虔一氏…NPO法人とうほくPPP・PFI協議会長(元東北大学大学院教授)
内永ゆか子氏…(株)ベネッセホールディングス取締役副社長兼ベルリッツコーポレーション名誉会長
【司会進行】
吉岡正和氏…東北大学・岩手大学客員教授

5月30日 経団連会館「ダイヤモンドルーム」東京都千代田区大手町)にて

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 吉 岡…ILCのように非常に魅力的な要素を含んだ国際計画の場合、普通はいくつかの国や地域が奪い合うはずだ。しかし、欧米やアジアにおいても日本誘致を支援してくれるという、誠に希有な状況が生まれている。今日のテーマはILCと日本再生だが、初めに北上山地がある岩手県の達増知事からご発言いただきたい。

 達 増…日本の各地で、地域資源の発掘が模索されている。岩手の久慈市が舞台となっているNHK連続テレビ小説「あまちゃん」が人気を集めている。北限の海女が登場するあのドラマは、地域に“潜り”、地域資源を掘り出すことの素晴らしさ、その人材の必要性を描いている。
 ILCは北上山地の固い岩盤という地域資源を活用し、地域を世界に向けて開いていくプロジェクト。地域の進むべき方向性に合致している。地下に“潜り”、人類の英知という宝を掘ってくるとも言えるだろう。
 世界遺産の平泉は、藤原清衡氏が戦乱のない平和な社会を実現するため、この世に浄土を築こうとした。国際社会の協力の下に作られるILCは、平泉の理念の延長線上にあると言っても過言ではない。
 具体的な話としては、関係地域の産学官と研究所が有機的に連携し、波及効果を確かなものにしていく必要がある。
 また、ILC周辺には外国人研究者と家族が居住し、地元住民も彼らと接触交流する機会が増え、地域の国際化が進む。このことは、東北から国際化社会に適した人材を生み出すことにもつながる。
 一連の対応は行政だけでは不可能だ。しかし、東北の場合は大学や経済団体、行政などで構成する東北ILC推進協議会が存在する。産学官民一体の推進組織が機能していることは、今の東北にとって強みであろう。

 吉 岡…ILCトンネルが最大の長さになった時、その南端部は宮城県の気仙沼市に達する。宮城には研究を支える東北大学や、東北一の都市である仙台市がある。次はその宮城県の村井知事にお願いしたい。

 村 井…東日本大震災以降、宮城県も世界中から物心両面の支援をいただいた。ILCが東北に来るとなれば、震災支援に対する大変な恩返しになる。
 その前に、候補地選定については客観的、科学的に日本のどこがいいのか、しっかり検証してもらいたい。もし「東北がいい」となれば、政治力が介入して覆されるようなことがないようブロックする。もちろん、東北とは別な場所に決まったら、私たちはそちらを応援しなければいけない。ゆえに、研究者の皆さんには、しっかりとした評価によって候補地を決めてもらいたい。
 ILCでは、単にヒッグス粒子やダークマター(暗黒物質)の謎を解くばかりではなく、いろいろな分野に効果が派生する。米国のシリコンバレーのような姿になれるよう、東北全体で一生懸命にILCを支えたい。

 吉 岡…今まさに、日本のILC立地評価会議(研究者が責任主体)で、技術や社会環境を含めて協議している。その社会環境について、東北における検討作業を中心的にやっているのは大村さんだ。今までの調査結果などを含めた見解を示してほしい。

 大 村…ILC建設候補地のほとんどが、奥州市と一関市。南の一部が気仙沼市までいく。この3市はかつて、小さな村々だった。それが、市町村合併を繰り返し今の姿になっている。
 このエリアに、どのような形で人が住んでいるか見てみると、「山地」とはいえ、標高200m以下の場所を中心に、昔の基礎自治体(町村時代の中心部)の名残を知ることができる。特にJR大船渡線沿いには、摺沢や千厩といった特にしっかりとした町ができている。こうしたかつての基礎自治体の姿を壊さずに、まちづくりの基盤にできないか考えている。
 「東北には大都市並のまちは形成できない」と思われている。だが、調べてみると、北上山地に点在する基礎自治体があった場所には、学校がちゃんとある。もちろん、人口が減少し続けているという現実問題はあるが、公的な施設の存在がある程度維持されている。これら既存の施設をどう生かすかが大事だ。
 ILCが実現した場合、外国人の子どもたちも多くなると考えられる。既存の施設を使い、どんな教育をしていくのか――ということも考える必要が出てくる。地域にとってはもちろん、文部科学省にとっても大きなテーマだ。
 同じことは医療施設にも言える。学校同様、各地に点在している。今、地域の医療施設をどう持続させるかが課題となっている。こういう施設を維持する上で、人が増えることは大歓迎だ。ただ、一方で外国人も一緒に使ってもらうのか、それとも新たに別な施設を設置するのかという問題も出てくるだろう。
 私はILCが来るからと言って、何でも新たに構築する必要はないと感じる。山村が保ってきた地域基盤を用いて、おおらかな研究環境を築くことに利点があると思う。研究者らはメーンキャンパスに近い場所に住むだろうが、将来的には既存の集落にも溶け込むことが実現できるようにしたほうがいい。
 単純に「国際研究都市をつくる」というのではなく、人口減少が著しい地域を再生させること、そして震災復興などの課題とが、ILC建設の過程の中にうまく合致させる必要がある。
 そのためには、民間と協力していくやり方を全面的に出していくべきだ。そのことによって、日本再生の東北モデルができると思う。

写真=発言者の達増拓也氏、村井嘉浩氏、大村虔一氏、内永ゆか子氏(右から)
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tanko 2013-6-29 18:50
 水沢地区の国際リニアコライダー(ILC)講演会は27日、水沢地区センターで開かれた。市総務企画部政策企画課ILC推進室の及川健室長を講師に迎え、市民25人がILCの概要や波及効果などに理解を深めた。
 市と水沢地区町内会連絡協議会が主催した。及川室長は「ILCって何? ILCができると何かが変わるの?」と題して▽ILCを使って調べる宇宙の謎、物質の謎▽なぜ北上山地なのか▽危険性の有無――など11点を取り上げ、市民の視点から分かりやすく解説した。
 ILCが建設されると東北は世界の最先端科学研究の拠点となり、新産業の創出も期待できるという。「ILCが実現すると地域を誇りに思い、子どもたちが古里で学んだ力を存分に発揮できる。ILCがみんなの夢になる」と結んだ。
 市はILC東北誘致の機運を高めるため、10人以上の団体を対象に出前講座を実施している。7月2日には、胆沢区の胆沢愛宕地区センターで開かれる。
写真=ILCの概要などに理解を深める参加者たち

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