人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市東部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)
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tanko 2017-3-5 10:20
 空想科学(SF)小説を通じて国際リニアコライダー(ILC)計画を身近に――。ILCを舞台に日本のSF作家3人が書き下ろした小説単行本「ILC/TOHOKU」がこのほど、早川書房=東京都千代田区=から出版された。大型研究施設の姿やそこに息づく人間ドラマをユニークな視点で描き、読む側の想像力をかき立てる。定価1500円(税別)。

 北上山地への誘致が期待される素粒子物理学研究施設ILC。これまでは研究の意義や施設概要を解説する文庫本などが中心だったが、本書ではSF小説の形でILCを取り上げている。野尻抱介作「新しい塔からの眺め」、柴田勝家作「鏡石異譚(きょうせきいたん)」、小川一水作「陸(くが)の奥より申し上げる」の3作を収録している。
 「新しい塔│」は、ILCに憧れ米国から訪れた若手女性研究者が主人公。ILC一般公開日、一人の少年とその母親と知り合った彼女は、少年の自宅近くの記念館に案内され、ある人物の名前を知り影響を受ける。
 「鏡石異譚」は、未来の自分に遭遇する奇妙な体験をした少女が、ILCのベテラン研究者と出会う物語。「陸の奥より│」は、ILC建設中止を要求する謎の老人と対峙する工事現場監督を中心としたストーリー。歴史ミステリーの要素も織り交ぜながら展開していく。
 あくまで登場人物や作中で起きる出来事は「空想」だが、研究施設や周辺地域の雰囲気、物理に関するキーワードが随所にちりばめられており、ILCが実現した際のイメージと重ね合わせながら読み進めることができる。物理の専門用語もたくさん登場するが、欄外に解説が記されている。
 県ILC推進協議会は「県内書店でも取り扱っているので、ぜひお買い求めいただき、ILCへの理解を深め、広げてもらえれば」と呼び掛ける。

写真=SF作家3人の作品を収録した単行本「ILC/TOHOKU」
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tanko 2017-3-5 10:10

写真=自身の肖像画を前にする木村栄博士(前列左から2人目)と画家の橋本八百二氏(同3中央)

 緯度観測所(現・国立天文台水沢VLBI観測所)で明治―昭和初期にかけて撮影されたガラス乾板写真の展示会が4日、同観測所=水沢区星ガ丘町=敷地内の奥州宇宙遊学館で始まった。訪れた市民らの中には、写真に写っている人物の家族や知人も。モノクロながらも表情が鮮明に分かる一枚一枚を食い入るように見つめ、思いをはせた。県議会議長などの要職も務めた紫波町出身の画家・橋本八百二(やおじ)氏が、木村栄(ひさし)初代所長らと写っている写真もあり、どのような人物が天文台の関係者と接していたか、垣間見ることができる。展示は5日まで。
(児玉直人)

 同写真展は、国の科学研究費(科研費)事業「国立天文台水沢収蔵資料から読み解く緯度観測所120周年」を推進している国立民族学博物館=大阪府=文化史料研究センターでプロジェクト研究員を務める馬場幸栄さんが中心となり開催。同観測所の一室に保管されていたガラス乾板を復元し、地元住民に公開しながら、当時の観測所の様子を記録する狙いがある。
 昨年3月、同館で初めて写真展を開いたが、今回は観測所を支えた人々にスポットを当て展示。初日は馬場さんによる講演もあり、展示写真に写っている人物について解説した。
 初代所長で「Z項」を発見した木村博士は1930(昭和5)年、還暦祝いとして職員から自身の肖像画を贈られている。復元した写真には、肖像画の作者・橋本氏を中心に木村博士らが写っているものもあった。肖像画は現在、同観測所敷地内の木村栄記念館に展示している。
 数々の集合写真の中で目につくのが、はかま姿の女性たち。計算業務などを担当していたと思われる。当時としては女性の割合が高い職場だった。しかし、管理職でないことや存命の天文台OBに聞いても名前まで覚えている人は少ないといい、詳細な情報は乏しい。
 写真展には、天文台OBや関係者の家族らも駆け付けた。元小中学校長の平京子さん(78)もその一人。当時、技師を務めていた平三郎氏が義父に当たる。
 三郎氏は、緯度観測用装置「眼視天頂儀」の接眼レンズに、天体位置基準線となるクモの糸を張り付ける名人として知られているが、機械関係に詳しいことから、観測所内での写真撮影も手掛けていた。今回復元した写真にも、三郎氏が撮影したと思われるものが多い。
 京子さんによると、亡夫の平芳治さんと一緒に、テニスをよくしていたという。「緯度観測所の仕事とテニスをしている姿が今も記憶に残っている。本などに載っている写真ぐらいしか見たことがなく、このような形で当時の様子を見させていただき、とてもうれしい」と感慨深げに話していた。
 5日は午前10時から午後5時まで開催(入場は午後4時半まで)。入場無料だが、常設展示を見学する場合は別途入館料(大人200円、子ども100円)が必要。問い合わせは同遊学館(電話0197・24・2020)へ。

写真=復元したガラス乾板写真に見入る人たち
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tanko 2017-3-3 20:50

写真=緯度観測所本館(現・奥州宇宙遊学館)前で撮影された集合写真(A…木村栄初代所長、B…川崎俊一2代目所長、C…山崎正光技師、D…池田徹郎3代目所長、E…平三郎技師)

 奥州市水沢区星ガ丘町の国立天文台水沢VLBI観測所(本間希樹所長)で保管されていたガラス乾板写真を復元し、地域住民らに公開する特別写真展「ガラス乾板写真とともに語り継ぐ緯度観測所を支えた人々」は、4日から同観測所に隣接する奥州宇宙遊学館で開かれる。昨年実施した展示会の第2弾。同観測所の前身「緯度観測所」で働いていた人物に注目し、来場した地域住民から情報を得ながら、どのような人たちが観測を支えていたのかを解き明かしていく。5日まで。

 国の科学研究費(科研費)を活用した「国立天文台水沢収蔵史料から読み解く緯度観測所120周年」と銘打った事業。国立民族学博物館=大阪府=の文化史料研究センターでプロジェクト研究員を務める馬場幸栄さんが中心となり、同天文台と同遊学館の協力を得て推進している。
 ガラス乾板は、ガラス板表面に写真乳剤(感光物質)を塗ったもので、フィルム写真やデジタルカメラの登場でほとんど見る機会がなくなった。明治から昭和初期の同観測所では、天体写真のほか、周囲の景色や職員なども一緒に記録していた。
 馬場さんらによって見つけられたガラス乾板は550枚。前回は敷地内の建物や景色も紹介したが、今回は人物写真にスポットを当てる。乾板は劣化が進むため早期に復元保存する必要がある一方、撮影されたのが明治から昭和初期とあって、当時を知る人が存命のうちに聞き取り調査をしなければ記録する意味がないという。
 復元したものの中には、初代所長でZ項発見に貢献した木村栄博士と研究者、技師、着物姿の女性職員の集合写真がある。その中には2代目所長の川崎俊一氏、3代目所長の池田徹郎氏、技師の平三郎氏と山崎正光氏も写っている。平氏は、緯度観測用眼視天頂儀の接眼レンズに天体位置基準線となるクモの糸を張り付ける名人として知られており、高知出身の山崎氏は日本初の彗星発見者として天文学史に名を残している。
 「このほかにも『これはうちのおじいちゃん、おばあちゃんだ』という人もいるかもしれない」と馬場さん。それぞれの人物を解き明かしていくことで、「緯度観測所がどんな立場の人たちによって支えられていたのかを記録してきたい」としている。
 展示会は4日が午後1時から同5時、5日は午前10時から午後5時まで。初日の午後1時から馬場さんによる講演も行う。展示会の観賞は無料だが、館内の常設展示コーナーに入る際は入館料が必要。
 問い合わせは同遊学館(電話0197・24・2020)へ。
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tanko 2017-3-3 20:40
「異」の壁越え 心通わす

 高エネルギー加速器研究機構(KEK)での研修に加え、宇宙航空研究開発機構(JAXA)筑波宇宙センター、つくばエキスポセンターを見学し終えた生徒たちは、1月6日に奥州市へと無事戻ってきた。それから2週間余り過ぎた同25日、奥州市役所江刺総合支所多目的ホールで研修報告会が開かれた。保護者や学校関係者、市議会議員らが見守る中、3日間の様子を堂々と発表。緊張の報告を終えた生徒たちの表情からは自然と笑みがこぼれた。
 水沢中の菊池円さん(14)は、KEKの放射光実験施設「フォトンファクトリー」で行われたチョコレートの食味改善が印象に残ったという。「チョコレートと科学が関係あるとは思っていなかったので驚いた。(KEKでは)スケールの大きな話がたくさんあったが、自分たちの生活もどこかで関係しているのが分かった」と振り返る。同じように、それまで非日常的なものと受け止めていた科学研究や実験が、何らかの形で身近に関わっていることを実感した生徒たちは多い。
 科学的な知識に加え、生徒たちが知らず知らずに身に付けたのは、仲間同士が互いに認め合い、協力することの大切さであろう。
 今回訪問した研究機関には、国内外さまざまな所から人材が集まっている。生まれも育ちも、接してきた文化、価値観、宗教観、そして言葉も異なる。研究者や技術者ばかりでなく、事務職や広報業務、警備、食堂・物販などそこで働く人の職種も多種多様だ。
 これと同じような構図が、参加した生徒たちにも当てはまっていたような気がする。それまで異なる地域で育ち、異なる規模の学校で勉強してきた31人。学年と使用言語は同じであっても、やはり「異」に接する時の遠慮、もどかしさみたいなものがあったと察する。思春期のまっただ中であれば、なおさらかもしれない。3回の事前研修を経て本番に臨んだとはいえ、研修初日はどこかよそよそしい雰囲気があった。
 ところが、各研修先で科学研究の現場を目の当たりにする時間を共有すると、そこはやはり同じような志を持って集まった者同士。気が付けば互いに打ち解け合い、帰りのバス車内は初日とは真逆のように会話が弾んだという。
 国際リニアコライダー(ILC)誘致運動の中では「波及効果」に対する関心が高く、プロジェクト実現を呼び寄せるための説得材料としても使われる。この場合、経済効果や地域振興効果を指す割合が大きいが、金額や雇用、交流人口の増減といった数字だけでは捉えきれない効果も存在する。その一例を挙げるとすれば、今回の中学生たちが経験したような精神面に与える好影響かもしれない。
 本連載のタイトルにもなっている「科学する心」について、旧水沢緯度観測所初代所長の木村栄博士(1870〜1943)が、晩年に論じたことがある。木村博士は「星の研究をしなければ『科学する心』じゃないというのは間違っている」と例示し、物事をわきまえる上では「これは何か」と、常に疑問や好奇心を持ち続けることが大切で、それが「科学する心」だと強調した。
 研修参加生徒が、必ずしも物理や宇宙科学の道に進むとは限らないにしても、「科学する心」はどのような場面にあっても必要な視点となるだろう。
 「商売ひとつするにも、難しい施設をつくるにしても、何をするにも必ず『科学する心』を持ってやらなければいけない。それだけです」と、木村博士は語っている。
(つづく)

写真上=報告会を終えほっとした表情を見せる生徒たち=市役所江刺総合支所
写真下=木村栄博士の「科学する心」。1941年に録音された肉声が、国立天文台水沢キャンパス内の木村栄記念館で聞くことができる
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tanko 2017-3-1 20:40
 奥州市議会3月定例会は28日、2017(平成29)年度の施政方針と教育行政方針に対する質問で再開した。北上山地が有力候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)について、小沢昌記市長は「市は熱望しているし協力は惜しまない」とし、実現に向けて「働き掛けをしていく年にしなければならない。関係者の足並みがそろい始めているのでリードする覚悟を持って進めたい」と新年度の決意を述べた。佐藤郁夫氏(市民クラブ)の質問に答えた。
 2017年度は第2次市総合計画がスタート。中長期的取り組みとして2戦略プロジェクト(人口減対策、ILC)を掲げる。4月から「人口プロジェクト推進室」を設置し、「ILC推進室」を課内室から部内室に格上げし、プロジェクトの着実な推進を図る。
 ILCプロジェクトの具体の取り組みは「市ILCまちづくりビジョン」が基本。施政方針では「ILCをさまざまな施策に取り入れ、国際科学技術イノベーション拠点の実現や、文化・居住・就業・教育・医療などの充実を関係団体と連携し進める」とした。
 小沢市長は答弁で、ILC誘致のPR看板設置といった市民の活動を例に「このような一つ一つの思いを大きな形に変えるようにしなければならない」とし、「ILC推進室を原動力に私がその先頭に立ち頑張っていく」と力を込めた。
 人口プロジェクトについては、昨年3月策定の「市まち・ひと・しごと創生総合戦略」を基に、人口減少の食い止めへ推進室を設置し具体施策を実施していく考えを示した。
 1日は一般質問で再開し、5氏が登壇する。
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tanko 2017-3-1 20:40
 北上山地への誘致が期待される国際リニアコライダー(ILC)に関する講演会は、11日午後1時半から市文化会館(Zホール)で開かれる。日本政府の判断が2017〜2018年度に迫るとされる中、最新の動向について東京大学の山下了特任教授が紹介する。入場無料で、多くの市民の聴講を呼び掛けている。
 ILC誘致を推進している水沢区の民間団体・いわてILC加速器科学推進会議と、東京の一般社団法人国際経済政策調査会が主催。市が後援する。
 昨年12月に盛岡市で開催された素粒子物理学者による国際会議「リニアコライダー・ワークショップ(LCWS)2016」では、懸念されている高額コストの問題に対処するため、直線距離の短い加速器設備から実験を開始し、段階的に拡張していくアイデアが打ち出された。また、超党派国会議員で組織する「ILC議連」においても、欧米との交渉やプレゼンテーションを積極的に展開している。
 一方、今年1月には米国第一主義を掲げるドナルド・トランプ氏が大統領に就任。最先端科学に対する新政権の方針が見えない中、ILC計画の今後の展開が気になるところだ。
 講師を務める山下准教授は、これまでも市内をはじめ各地でILCに関する講演を展開。国内外の政界、研究者界、候補地地元行政などを結ぶキーパーソンとして各地を駆け回っている。講演当日は「早期実現に向けた最終コーナーの状況」をテーマに、最新の動向に触れる。
 聴講の申し込み、問い合わせは市ILC推進室(電話0197・24・2111、内線416)へ。
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tanko 2017-2-26 10:48


 奥州市水沢区羽田町の芦ケ沢自治会(佐藤徹会長)は25日、同町内の国道397号沿いに国際リニアコライダー(ILC)誘致をPRする看板を設置。道行く人たちにILC計画をアピールしながら早期実現を願った。

 芦ケ沢地区は30世帯123人が暮らす小さな集落。同区と江刺区の境界に接しており、地区内を通る国道397号は内陸と沿岸を結ぶ重要道路で、ILC誘致が実現した場合には、JR東北新幹線水沢江刺駅から実験施設までのアクセス路になる可能性も大きい。
 看板設置を提案したのは、同地区が地元で看板製作業(有)アトム工房=水沢区佐倉河字野田=を営む小野寺誠社長。小野寺社長が看板を寄付し、国道沿いにある佐藤自治会長の所有地に設置することになった。
 看板の大きさは横9.7m、縦1.5m。ILCのイメージ図や候補地の位置などに加え、「早期実現!! 私たちも応援します」といったスローガンも大きく記された。
 設置式には地元住民ら約40人が出席。乳幼児から高齢者まで幅広い年齢層が集まり、小沢昌記市長、佐藤建樹羽田地区振興会長らも駆けつけた。
 佐藤自治会長は「小さいけれど団結力が大きい集落から、ILCを応援しようという話となり実現した。最近のILCをめぐる動きはどうもトーンが下がっているように感じる。国道を通る他地域の人たちにもPRし、盛り上げたい」とあいさつ。
 来賓の小沢市長は「予定通り進めば2030年ごろには、多くの外国人研究者がやって来るかもしれない。今の小学生の皆さんが大人になるころなので、たくさん勉強して迎え入れてほしい」、佐藤振興会長は「早く『祝着工』の看板も取り付けられるよう、小さな地域から世界に向けて熱意を発信しよう」とそれぞれ呼び掛けた。
 市の担当者がILC計画の概要を紹介した後、出席者全員で「ILCを奥州市に誘致しよう」と声高く唱和した。

写真=設置したPR看板を前に、誘致実現のスローガンを唱和する芦ケ沢地区の住民ら
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tanko 2017-2-25 10:20
 奥州市の吉田政教育委員長は24日開会の市議会3月定例会本会議で、新年度の教育行政方針を示した。初年度となる教育振興基本計画の基本理念は「学ぶことが奥州市の伝統であり未来である」。「生涯にわたる学習の中で、市の伝統である『学ぶ』ことを常に念頭に置き、『知育・徳育・体育』の調和的な推進を図るとともに、未来を拓く人づくりを推進する」とし、教育施策の着実な展開を強調した。
 「『生きる力』を育む学校教育環境の充実」や「次代をつむぐ歴史遺産の保存と活用」を施策に挙げ、市総合計画のうち教育委員会所管分を述べた。
 学校教育の充実に関わっては、就学前教育の充実や確かな学力の保障、不登校・いじめの防止、特別支援教育の充実を掲げた。児童生徒減少に伴い、学校の適正配置計画の策定に向け検討。グローバル化に対応し、「ILC(国際リニアコライダー)実現に向けたまちづくりに貢献できる広い視野を持った人材の育成にも取り組む」とした。
 教育施設は、教育・保育施設再編計画や学校給食施設再編計画に基づき改築の実施設計に着手。耐震化にも引き続き取り組む。文化財施設の再編統合については「老朽化が進んだ施設の貴重な資料の適切な保存と効果的な公開活用を行うため、整理統合について検討を始める」と述べた。
 「教育はまちづくりを支える人づくりの基盤を成す」とし、市の目指すべき都市像を見据え、「子どもたちの健全育成を主軸に、家庭・学校・地域と一体となって教育に取り組み、その重責をしっかり果たす」と締めくくった。
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tanko 2017-2-25 10:10
 小沢昌記奥州市長は24日開会した市議会3月定例会の本会議で、2017(平成29)年度の施政方針を演説した。初年度となる第2次市総合計画の推進を掲げ、健全な財政運営や行財政改革へのまい進を強調。今年生誕160年を迎える先見の政治家後藤新平(1857〜1929)の「自治三訣」の精神が「協働の根幹」とし、「協働のまちづくりにより地域自治が確立され、さらに市民力、地域力の高まりが奥州市のさらなる発展につながる」と力を込めた。
(千葉伸一郎)

 小沢市長にとっては2期目の任期最終年度。新たな総合計画の着実な推進など市政運営の基本方針を述べ、主要な施策は同計画の大綱に沿って説明した。
 市の最上位計画となる総合計画は、目指すべき都市像に「地域の個性がひかり輝く自治と協働のまち奥州市」を掲げる。この都市像実現のため、人口対策と国際リニアコライダー(ILC)の2戦略プロジェクトに分野横断的に取り組む。
 また、新年度は奥州市の名を全国に発信する「奥州アピール」の年と位置づけた。「いわて奥州きらめきマラソン」や「カヌージャパンカップ」、「台湾をターゲットとした観光戦略」などでPRする考え。
 ほかに、新市立病院の2021(平成33)年度開院を見据えた基本構想・基本計画を策定。行政経営改革プランに基づく優先施策の選択と資源の集中投下により、「最少の経費で最大の効果を上げる行政経営の実現に努める」とも述べた。
 結びには、後藤新平の自治三訣「人のお世話にならぬよう、人のお世話をするよう、そしてむくいを求めぬよう」を引用。自治三訣の精神が協働の根幹と強調とし、「住んで良かったと思える」まちづくりに尽力すると決意を示した。

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ILC推進室を総務企画部内室に格上げ(奥州市)

 奥州市は、市総合計画2戦略プロジェクトの着実な推進に向け、4月から総務企画部政策企画課内に「人口プロジェクト推進室」を設置。同課内に設置していた「ILC推進室」を同部内室に格上げする。
 2020(平成32)年の公営企業法適用開始に向けた「下水道法適化準備室」を下水道課に、生活環境課には「空家対策室」を設置。北上川東部土地改良区の経営改善と世界農業遺産登録を目指し、農地林務課内には「農村保全推進室」を設ける。小沢昌記市長が24日の市議会3月定例会本会議の施政方針で述べた。

写真=施政方針を述べる小沢昌記市長
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tanko 2017-2-24 11:50
研究者の言葉に触れる

 高エネルギー加速器研究機構(KEK)は、つくば市中心部から北北西へ約8km、筑波山を望む郊外にある。
 生徒たちが訪れたのはKEKの本部機能や円形加速器「KEKB(ケックビー)」、放射光研究施設「フォトンファクトリー」、国際リニアコライダー(ILC)関連の研究施設などが集まる「つくばキャンパス」。敷地面積は153haで東京ドーム32個がすっぽり収まる。
 素粒子の衝突現象を捉える巨大装置「Belle検出器」、素粒子が光速に近い速さで駆け抜けるKEKBの加速器装置は、全て地下空間に配置されている。そのスケール感は、施設の中に入って初めて実感できる。
 「実物を見ることで受ける印象はとても大きい。そして、ノーベル賞を取った人がここの装置を使って仕事をしていたことも非常にインパクトがあること」。今回の研修で団長を務めた市立田原中学校の石川勝也校長は、長年継続してきたつくば研修の意義を再確認したようだ。
 施設見学後は、放射線の飛跡を視認できる簡易装置「霧箱」の製作と実験に挑戦した。スコットランドの物理学者チャールズ・ウィルソンが発明した装置で、ウィルソンはその偉業が認められ1927年にノーベル物理学賞を受賞している。
 「放射線は目に見えないが、何かが出ており怖さも感じる。しかし人類は100年余りで放射線の存在を目で確認できるようにし、素粒子物理学は一気に開花した。こうした努力は皆さんの地域が候補地になっているILCにもつながっていく」。製作実験の指導に当たったKEK計算科学センターの松古栄夫助教の説明に、生徒たちは真剣な表情で聞き入った。
 続く講義で登壇したのは、奥州市出身の小野正明・KEK名誉教授。本研修の講義を毎年引き受けている。小野さんは水沢緯度観測所(現・国立天文台水沢VLBI観測所)の木村栄初代所長と、ノーベル賞を受賞した小林誠氏、益川敏英氏との共通点として「若い時に一流の仕事をしていた」と説明した。
 「科学研究とは誰も知らないことを予言すること。洞察力が新事実を引き出す。基礎科学はすぐに実用できる成果を生み出しはしないが、究極の理論を得たいという思いは結果として応用発展を生み出すことに結び付く。よくわれわれの研究に対し『何の役に立つのか』と言われるが、そう簡単に答えられるものではない」
 小野名誉教授の言葉は生徒たちに対する熱いメッセージであると同時に、早急な経済効果や利便性を追求する流れにある世の中への警鐘とも言える。
(つづく)

写真=真剣な表情で講義に耳を傾ける生徒たち
写真=講師を務める奥州市出身の小野正明名誉教授

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