人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市東部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)
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tanko 2022-2-1 10:40

写真1=ILC絵画がラッピングプリントされたパッカー車

 奥州市内をくまなく走り回るごみ収集車やバキュームカー。その中に、地元小学生によるイラストが入っている車両があるのにお気づきだろうか。廃棄物や資源物の収集運搬事業を行う一般社団法人水沢環境公社は2018(平成30)年、創立50周年記念事業として清掃車9台をラッピングプリントした。モチーフは国際リニアコライダー(ILC)。起用されたのは、平成29年度ILC絵画コンクール(県南広域振興局主催)の入賞作品だ。
 電子と陽電子を正面衝突させるための直線型加速器を取り入れている絵が多いようだ。宇宙空間へ伸びていく加速器や岩手の豊かな自然と未来都市を加速器がつなぐ様子など、「未来への希望」や「科学と自然の調和」への思いが感じられる。
 ILC関連の絵画は看板にもなっている。市内中学校の生徒が描いたもので、多くはその学校付近に設置されている。地域の特色を盛り込んでいるのが面白い。
 東水沢中学校は、宇宙の中にたたずむ奥州藤原氏の建物を背景に、アテルイの里の物見やぐらや天文台、南部鉄器などを配置した。衣川中学校は、衣川地域内でよく見られる朱塗りの橋を中央に置き、自然環境と未来都市をつないだ。橋の上で電子と陽電子が衝突する、視覚的にもインパクトのある作品だ。水沢中学校の看板は日高火防祭の「お人形さん」と水沢三偉人を大きく取り上げ、優美さも感じさせるデザインに仕上げている。
 なお、水沢環境公社の高橋透常務理事によると、ラッピング車両は3月末までの運行は決まっているが、その後、模様替えが検討されているという。町で見掛けたら、ぜひじっくりとご覧いただきたい。


写真2=東水沢中生徒による絵画看板(同校前)


写真3=衣川中(右)生徒と江刺南中生徒による絵画看板(江刺藤里地内)


写真4=水沢中生徒による看板(同校前)
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tanko 2022-1-30 17:40

写真=「アストロノミカルジャーナル」1902年2月号に掲載されたZ項の論文。後に「Z」を用いて表現される数式(右の矢印部分)や、水沢緯度観測所の名前と執筆日(左の矢印部分)などが記載されている

 旧水沢緯度観測所の初代所長を務めた木村栄博士(1870〜1943)が、地球の緯度変化を示す数式に用いられる「Z項」を発見し、論文として公表してから今年で120年。緯度観測所の歴史を引き継ぎ、ブラックホールなどの研究を推進している国立天文台水沢VLBI観測所の本間希樹所長(50)は学術的意義に加え、国際的科学プロジェクトにおいて日本が初めて示した成果という点でも重要だと強調している。
(児玉直人)

水沢から発信された“日本初”国際的成果


木村栄博士

 1888年、国際(万国)測地学協会は、国際緯度観測事業(ILS=International Latitude Service)の実施を決定。当時、天文学や測地学の分野で最大の謎とされていた、地球の自転軸のふらつき(極運動)によって生じる緯度変化を詳細に調べるのが目的だった。北緯39度8分上に観測所を設置。日本で選ばれた場所が水沢だった。
 1889年に観測が始まるが、しばらくしてドイツのILS中央局から「水沢の観測結果は誤差が大きい」と指摘を受ける。落第点を押し付けられたような形となった木村博士だったが、やがて全観測地点の緯度が季節によって大きくなったり、小さくなったりしていることに気付いた。
 緯度変化を示す数式は「Δφ = x cosλ + y sinλ」とされていたが、そこに謎の緯度変化を示す値(項)を加え「Δφ = x cosλ + y sinλ + z」としたところ誤差が小さくなった。そればかりか、水沢の観測結果は他地点より精度が高いことも証明された。
 木村博士は1902年1月6日付でZ項発見の論文を執筆。翌月、アメリカの天文学専門雑誌「アストロノミカルジャーナル(Astronomical Journal)」で発表された。同じ論文は後に、独専門誌でも取り上げられた。
 ただ、論文を発表した時点では「Z」ではなく、未知数を表す際に用いるギリシャ文字14番目の「ξ(グザイ)」を当て、「φ − φ0 = ξ + x cosλ + y sinλ」としていた。
 木村博士の功績を象徴するZ項は水沢地域の誇りに。「Z」の文字は市立水沢小学校や県立水沢工業高校の校章デザイン、市文化会館や市総合体育館、市営バスの愛称などに用いられている。
 VLBI観測所の本間所長は「Z項は地球の内部が流体核(金属がとけた状態)であることに起因しており、その後の地球の内部の研究に道を開いた」と学術的な意義を説明。「明治期の日本が近代国家を目指す上で、国際的な科学プロジェクトにおいて初めて挙げた世界的な成果。現代に生きる私たちも、大先輩である木村博士に倣い、優れた研究成果を打ち出していきたい」と話している。
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tanko 2022-1-27 9:30
 北上山地が有力候補地とされている素粒子実験施設・国際リニアコライダー(ILC)計画について達増拓也知事は26日、県庁で開かれた定例記者会見で、文部科学省のILC有識者会議終了を受け「社会的好影響や社会・政府全体で取り組んでいくべきではないかという、前向きな意見もあった」と所感を述べた。
 有識者会議は今月20日に最終会合が行われた。昨年夏から実施してきた計画の進展状況や準備研究所(プレラボ)設置などに関する議論の成果物として公表する「議論のまとめ」の内容について意見を交わした。
 「議論のまとめ」では、研究意義や技術的課題に対する一定の成果は認めるものの、独仏英3カ国政府機関が財政的に難色を示しているなど、今後の見通しを明確にするような大きな進展が見られていないと指摘。研究者側が今年中にも設置するシナリオを描いていた準備研究所(プレラボ)について、時期尚早であるとの見解を示し、技術開発とサイト(建設地)が絡む問題をいったん切り離すよう提言した。日本の誘致前提にこだわった現状の推進方法や、地域住民を含めた国民理解の在り方についても再検討するよう求めた。
 県はILC計画を推進する素粒子物理学者らの意見を取り入れながら、経済団体、北上山地周辺自治体などとも連携し、北上山地誘致実現を前提とした取り組みを展開。専門部署である「ILC推進局」を設置し、関連事業を展開している。
 達増知事は「今現在、日本政府として何も正式に決めていないということを踏まえ、現状での対応という方向に話がまとまってきているが、その中でもILCの可能性やメリットが一定程度確認された。政府決定やその前提となる外国政府間とのやりとりが進んでいけば、それに沿った形で認識も変わっていくと思う。県としては、ILCが前進していく方向で努めていきたい」と述べた。
 「議論のまとめ」は、文言等の修正などを経て後日公表される見通しだ。
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tanko 2022-1-21 9:40
 素粒子実験施設・国際リニアコライダー(ILC)計画に対する課題を検証している文部科学省ILC有識者会議(座長・観山正見岐阜聖徳学園大学長、委員14人)は20日、計画を推進する研究者側が提案していた準備研究所(プレラボ)の設置について、時期尚早とする趣旨の「議論のまとめ」を大筋で了承。学術的意義を認めながらも、日本誘致を前提とした現状の推進方法、国民理解の在り方について再検討するよう求めた。「まとめ」は、文言修正などをした上で、後日最終版が公表される。同日の第6回会議をもって2期目となる同会議は役割を終えた。

 2014(平成26)年5月に発足したILC有識者会議は、当時示されていたILC計画に対する課題を指摘した「議論のまとめ」を2018年7月に公表。一度役割を終えた有識者会議だったが、2021年に入り推進研究者側が、指摘された課題の対応状況を文科省に自主報告したほか、プレラボ設置を提案。文科省は一連の動きを受け、2期目と位置付けた有識者会議を再開させた。推進研究者側と意見交換しながら、プレラボ提案書や課題回答の内容を精査し、議論を取りまとめた。
 有識者会議は、一定の技術進展や学術的意義を認めつつ▽各国政府の具体的な参画や経費負担に対する見通しが依然立っていない▽国民理解等が不十分――などの課題を列挙。研究者側が提案している日本誘致前提のプレラボ設置について時期尚早とする基本的な考えを示した。
 ただし、当該分野の振興や次世代研究者の育成などの観点から、国内外の研究機関が連携し技術開発などを着実に実施する道筋を模索すべきだと指摘した。そのために、どこに建設するかという要素が絡む立地問題(サイト問題)については、いったん計画から切り離すべきだとした。サイト問題は、国際費用分担などを巡る議論を硬直化させており、必要な技術開発や研究分野の振興発展をも鈍化させている大きな要因になっている――との見方によるものだ。
 同日示された「まとめ」の当初案では、プレラボ設置については「困難である」という強い表現が用いられていた。会議の中で中野貴志委員(大阪大学核物理研究センター長)が、当該分野の研究そのものを閉ざすネガティブな印象を与えないよう修正を提案。中野委員は「今はそういう環境、状況でもないという意味からも『時期尚早』と変えられないか」と述べ、他の委員から賛同する声があった。
 このほかにも文言や表現について、複数の委員から意見があった。会議は同日が最終回だったが、文科省は委員の意見を反映した修正を施し、再度電子メールで修正内容を委員に提示。確認の上、観山座長の一任で最終版を決定する。
 文科省素粒子・原子核研究推進室は「『議論のまとめ』を受け、研究者側がどのようにILC計画の進め方を再検討するのか注視していきたい」と話している。


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【解説】理解周知も見直しを


 文部科学省国際リニアコライダー(ILC)有識者会議は20日、研究者側が提案していた日本誘致前提の準備研究所(プレラボ)設置に待ったを掛けた。プロジェクトの推進方法に加え、国民理解を目的とした周知方法についても見直しを求めた。
 ILC計画最大のネックは、巨額予算や人的資源などの確保。日本政府は「欧米の費用負担の確約がなければ意思表明できない」。欧米政府は「日本の明確な意思表示があれば参加してもいい」という雰囲気で、腹の探り合いになっている。
 どっちが先か――で議論は堂々巡りし、一向に進展しない。有識者会議の中では、しばしば「ニワトリが先か、卵が先か」の話に例えられた。
 この議論に付き合い続ければ、素粒子物理や加速器科学の研究、技術開発も進まなくなる。有識者会議は、費用分担を巡る問題なども含め場所に関わる「サイト問題」をいったん切り離し、研究や技術開発は着実に進めるべきだとの道筋を示した。学術の継続的な振興と、厳しい財政状況などという現実問題を考えた末、絞り出した答えだった。
 ILC計画の存在が明らかになってから10年余り。当該分野の研究者たちは、北上山地周辺の産学官関係者と連携し「日本誘致、東北誘致の実現」を声高らかに訴え続けてきた。しかし、ここにきて「誘致」前提の活動が思わぬ足かせになった格好だ。
 有識者会議が正午前に終わってから1時間余り、偶然にも奥州市立広瀬小学校では市ILC推進室による出前授業が行われた。有識者会議の「議論のまとめ」では、このような一般住民や子どもたちを相手にした理解普及の在り方も問いただしている。出前授業や講演会のような一方的な情報発信、あるいは安全対策の繰り返し説明による説得など、従来の広報活動にありがちなスタイルではなく、「双方向的コミュニケーション」の実施に努めるよう求めている。科学技術社会論の分野で重視されている手法だ。
 有識者会議で、同論が専門の横山広美委員(東京大学教授)は「『理解増進』という言葉があるが、非常に古くて押し付けて決めたことを理解せよという雰囲気がある。今は双方向コミュニケーションが求められている」と強調する。
 県ILC推進局、奥州市ILC推進室の担当者は、文科省が今後公表する「議論のまとめ」の最終版をもとに、関係者と今後の取り組みについて検討するという。最先端の研究施設を切望する誘致関係者。その理解・周知方法も「最先端」であってほしいと願う。
(児玉直人)

写真=市立広瀬小で行われたILC出前授業。有識者会議では一方的情報発信ではなく、双方向コミュニケーションの実施を求めた
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tanko 2021-12-25 10:20

写真=水沢駅通りの街灯に掲げられているILC誘致を求めるフラッグ

 遠方からの来客の希望で、とある温泉に案内した。天候は雪。急坂を上った山の上に温泉はあるが、路面は予想以上につるつる。冬タイヤを装着していたが、あと数百?のところで空転し始めた。無理に進めばガードレールにぶつかり、最悪は谷底に落ちる。
 「戻りますね」
 Uターンをして、ふもとでチェーンを装着。無事温泉にたどり着いた。
 数日後、文部科学省の国際リニアコライダー(ILC)有識者会議があり、配布資料の一つに、あの温泉への坂道を思い起こさせる一文があった。

 〈困難な時に無理に話を進めようとしないこと〉

 委員の一人で、東京大学の横山広美教授が提出した意見書だ。
 今回の有識者会議では、非常に重要な提案が出されている。誘致を前提としている現計画の再考。「ILC計画の断念」を飛行機のハードランディングに例えるなら、「誘致前提の切り離し」はソフトランディングだ。誘致、すなわち研究所建設に関わる話があるため、巨額予算の壁にぶつかり話が先に進まない。ネックを取り除き、将来に向けた当該研究分野そのものの進行発展を図るのが現実的な路線だという考えだ。
 「何がソフトだ」。本県関係者は憤るかもしれない。北上山地に誘致されるからILCを応援し続けてきた。壮大な経済波及効果を期待して――である。
 「地方は学術のために我慢しろというのか」との指摘もあるだろう。だが、地方を再生させる道筋はILCだけなのだろうか。本県はそんなに選択肢や魅力に乏しい地域なのだろうか。サイエンスの分野で言うなら、幸いにして当地には世界に誇る天文台がある。豊かな森林、海洋だって自然科学の研究対象になる。新たな施設を「つくる」のではなく、今あるものから新たな価値を「つくる」ほうが現実的であり、今の社会状況からして共感が得られやすい。
 「困難があったら無理するな」。アクセル全開で突進してきた時には気付かなかった「道」が見えるように思う。
(児玉直人)
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tanko 2021-12-25 10:10

写真=一関市で開かれた岩手県南・宮城県北ILC誘致推進大会

 北上山地が有力候補地となっている素粒子実験施設、国際リニアコライダー(ILC)誘致実現を求める大会が24日、一関市文化センターで開かれた。岩手県南と宮城県北の自治体の首長や議員、誘致促進団体メンバー、関係地域選出の国会議員ら約300人が出席。ILCは、国の成長戦略や地方創生、震災復興に寄与するプロジェクトだとし、「岩手県南と宮城県北が一体となって誘致実現への取り組みを力強く推進する」との大会宣言を採択した。
(児玉直人)

 大会は佐藤善仁・一関市長をはじめ、同市内の誘致団体の代表者ら4人が発起人となり開催。胆江地区からは奥州市の小沢昌記市長、金ケ崎町の鈴木浩之副町長のほか、両市町の議員や担当職員らが出席。仙台市や盛岡市の議会、行政担当者らも参加した。
 発起人を代表し佐藤一関市長は、「わが国にとって国際プロジェクトを主導するのは初めてであり、実現には大きな政治決断が求められる。政策を動かすのは政治。政治を動かすのは民意であり、その原動力は経済だ。今回は日ごろ政治、経済を動かしている方々に集まってもらった。双方が車の両輪となって誘致実現させたい。実現に向けて全力で努力することを誓う」と力を込めた。
 大会では東京大学の山下了特任教授と県立大学の鈴木厚人学長が講演。最新動向についての説明があったが、主催者側は「コロナ感染防止対策」を理由に、聴講を大会開催の案内を受けた誘致推進の関係者に限定した。
 山下特任教授は「2019年に文部科学省は『関心表明』をしているが、よくよく見ると『ILC計画に関心がある』という意味で、『ホスト(誘致)することに関心がある』とは言っていない。欧米は、日本がホストする意向があるという一言がほしいと考えている。今は非常に重要なタイミングなので、アフターコロナの時代にILCが実現できるよう、地域の皆さんの力添えをお願いしたい」と呼び掛けた。
 講演後は「ILC実現に向けた取り組みを力強く推進していく」とする大会宣言を採択。宣言の内容に基づき、関係省庁など中央要望を展開していく。
 ILCを巡っては文科省の有識者会議が、年度内に議論の取りまとめを行うが、誘致を前提とした現状の計画の進め方では巨額予算の負担に関係国政府が二の足を踏んでいる現状を受け、「先に進めるのは難しい」と慎重論が根強い。
 有識者会議委員の間からは、施設誘致に関係する取り組みを切り離し、工学設計や技術研究に特化した準備研究所(プレラボ)を開設してはどうかという意見が出ている。
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tanko 2021-12-22 9:20
 素粒子実験施設・国際リニアコライダー(ILC)計画に対する誘致課題などを検証している文部科学省ILC有識者会議(座長・観山正見岐阜聖徳学園大学長、委員14人)は21日、第5回会議を開き「議論のまとめ」を作成するための骨子案を協議。焦点となっているILC準備研究所(プレラボ)の設置については、素粒子物理学者が示した日本誘致前提の内容では「先に進めるのは難しい」とし、工学設計や実証実験などを進め、機が熟すかどうかを見極めながらより高いステップに進むやり方が望ましいとの意見が相次いだ。
(児玉直人)

 ILCは、宇宙誕生の謎や物質の成り立ちの解明など素粒子物理学研究を主目的に計画されている大型実験施設。計画を推進する研究者コミュニティーの中では、本県南部の北上山地を建設候補地と位置付け、周辺自治体や経済団体などと連携した誘致活動、広報普及事業を展開している。
 一方、文科省は有識者会議や日本学術会議などの審議結果に基づきながら、米国や仏独英の欧州3カ国の関係政府機関と事務レベルで意見交換を行っている。ただ、他分野の研究者も交えた有識者会議や学術会議での議論は、研究内容の意義は認めつつ、ILC計画の妥当性に疑問を投げ掛ける声が多い。文科省が欧州3カ国と複数回実施した意見交換でも、欧州側からは財政難などを理由に消極的な姿勢が強く示された。
 第5回会議では、これまでの議論の集大成となる「まとめ」の骨子案を協議。焦点となっているプレラボの設置について、大阪大核物理研究センター長の中野貴志氏は「設置が必要だという機運が十分に高まっていない。いきなり230億円を必要とする規模の組織や取り組みをするのではなく、しっかりと中間目標を設定し、こぢんまりとしたところから進めたほうがいい」と述べた。
 同日の会議に欠席した東京大教授の横山広美氏は、書面で意見を提出。素粒子物理学が果たしてきた役割や研究の継続性に期待を込める一方、生命科学分野における取り組みを例に「困難な時にこそ、無理に話を進めようとしないことが、当該分野の信頼を保つ上で重要だ」と指摘した。
 関西学院大理事の神余隆博氏は「現状では欧米各国の財政状況などから鑑み、すぐにILCができるとは思わない。推進するなら小さなステップで進めてはどうか」と提言した。
 同日は国民理解推進の関連で、推進側研究者が奥州市や一関市などで開かれた住民説明(リスク説明)の開催状況を提示。東京大の浅井祥仁教授は「放射線の心配がないことや、地震対策などの理解が進んでいる」と説明した。
 このことに、科学ジャーナリストの東嶋和子氏は「実際に参加者から理解できたなどの声を聞いたのか」と質問したが、浅井教授は「(説明会の)現場での反応を見てそう感じた」と述べた。観山座長は「感想などの調査をしていないのには驚いた。どの程度理解が浸透し、期待感があるのかを示さないといけないのでは」と指摘した。
 次回会議で「まとめ」を成案し、会議を集結する方向だ。
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tanko 2021-11-30 14:40
米国は準備研設置に支持も“日本次第”

 北上山地が有力候補地とされている素粒子実験施設、国際リニアコライダー(ILC)の建設計画に対し、主要参加国として想定されているフランス、ドイツ、イギリスの欧州3カ国の政府が依然、参加に消極姿勢を示していることが29日、文部科学省のILCに関する有識者会議第2期第4回会議で明らかにされた。アメリカ政府は、ILC準備研究所(プレラボ)の設置を支持するとしながらも、「日本の誘致表明が前提」という条件を付けている。財政難や新型コロナウイルス対応などを背景に、ILCが最優先プロジェクトには位置付けられていない現状が鮮明となった。
(児玉直人)

 文科省は10月15日、欧米4カ国の政府機関と、ウェブ会議システムを使って意見交換を実施。各国のILC計画に対する姿勢を確認した。
 欧州3カ国からは、共通して国内の財政的余力がない状況が示された。フランスは、学術関連計画の改訂時期にあるが、ILCを記載する予定はなく、投資する考えもないという。ヨーロッパにおける超大型円形加速器計画(FCC)ですら「慎重に見ている」とした。ドイツとイギリスも、日本がILC計画への優先順位付けをしていない中、自国がILCに優先的に取り組むことは難しいという立ち位置で、消極的な見解が強くにじみ出た。
 これまでと同様、アメリカはILC計画に好意的な考えで、プレラボの設置提案も支持。ただし、日本の誘致表明を前提とした進展に期待をしている点は、欧州3カ国と同様だ。
 文科省の報告に対し、委員の神余隆博氏(関西学院大学理事、国際政治学)は「本来、この分野でリードするはずのドイツでは、物理学者だったメルケル首相が引退する。まして、コロナ禍からの経済回復などを考えると、ここ2、3年は新しいプロジェクトをやる余力はないと思わざるを得ない。もし、ILCをやるならヨーロッパに頼らず、日本が(経費の)6〜7割を負担するぐらいの覚悟を示さない限り、ついて来ない」と指摘。
 座長の観山正見氏(岐阜聖徳学園大学学長、天文学)は「日本の意思表示を期待しているようだが、コロナ禍や少子化、温暖化など日本が優先的にやるべき課題や現状を考えた時、国内の社会的な動きがない限り、日本政府は『やります』となかなか言えないだろう」と述べた。
 この日の会議では、計画を推進する研究者側から▽プレラボの位置付け▽国民や他の科学分野への理解──などに対する説明もあった。
 有識者会議では年内を目標に、プレラボ設置提案に対する見解などをまとめる予定。ただ、第4回会議を終えた時点で、委員の間ではプレラボの位置付けなどに対する疑問や、理解が深まっていない点も多い。
 他分野研究の予算に影響を与えないよう、新しい科学予算の獲得を目指すとする推進研究者側の説明に、その根拠や見通しが不明とする指摘もあった。素粒子物理学振興に対する思いの一方、コロナ対策など他の優先課題がある中、国民理解を得るのは難しいとの見方も。取りまとめは困難を極めそうだ。
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tanko 2021-11-29 14:40
一般向けは「年明けにも」(県推進局)

 素粒子実験施設・国際リニアコライダー(ILC)誘致に関し、施設建設の意義や安全管理などについて研究者らが説明する「ILC解説セミナー」が、12月26日午後2時から水沢大手町の市役所本庁3階講堂で開かれる。市ILC推進連絡協議会(会長・小沢昌記市長)が主催し、同協議会会員である商工団体や事業所関係者に対象を限定し行う。同セミナーは新型コロナウイルス感染防止を理由に、昨年の2月以降、約2年にわたり開催されていないが、県ILC推進局は年明けにも一般市民が参加できる形の同セミナーを開く方向で調整している。
(児玉直人)

 県内、特にもILCの有力候補地に近い胆江両盤地区では、各種講演会やセミナー、小学校等への出前授業などが活発に開かれている。その多くが、誘致機運醸成につながるPR色が濃い内容となっている。
 これに対し「解説セミナー」のタイトルで開催してきた取り組みは、リスク面の疑問や指摘に応えるもの。2018年、一関市民を中心にILCの安全性、誘致の妥当性を指摘する声が表面化したのを機に始まった背景がある。行政や企業などが実施する「住民説明会」のような性格が強い。
 東北ILC準備室(現・東北ILC事業推進センター)や、国内のILC推進母体である高エネルギー加速器研究機構(KEK)などが中心となり企画。今年10月18日に開かれた文部科学省のILC有識者会議の中で、KEKの照沼信浩教授は「11会場で延べ700人近い参加を得た」と報告している。
 取り上げるテーマは、施設から発生する放射性物質の管理体制、建設に伴う自然環境への影響とその対策などが中心。慎重論を唱える地元住民と当該分野の研究者らが直接顔を合わせ、対話形式で質疑応答する数少ない場だ。年に数回開催されていたが、新型コロナの感染拡大により、奥州市内では昨年1月日以降、実施されていない。
 12月に開催する同セミナーは、タイトルと説明する中身はこれまでと同じだが、市ILC推進連絡協議会が主催し市が共催。同協議会事務局の市ILC推進室は「協議会会員である商工団体や企業の関係者に限定したもの」と説明している。
 関係者に配布された資料によると、講師はKEKの照沼教授、道園真一郎教授、佐波俊哉教授、岩手大の成田晋也教授、東北大の佐貫智行教授。計画の意義や現状、安全面への配慮について語るといい、KEKなどが主催したこれまでのセミナーとほぼ同一の内容だ。30人定員で12月8日まで参加者を募集するという。
 一般市民も参加できる同セミナーは、年明けにもを開く予定で県ILC推進局が調整中という。同局の高橋毅副局長は「感染状況がこのままで推移していくようであれば、対話型で行ってきたセミナーの開催は可能だと思う」と話している。
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tanko 2021-10-27 10:30
 素粒子実験施設、国際リニアコライダー(ILC)に関する国際会議「ILCX2021」が26日、完全オンライン方式で始まった。29日まで。素粒子物理学以外の科学実験にも寄与する可能性などについて、議論を交わすとみられる。当初は茨城県つくば市で開催予定だったが、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、オンライン方式に切り替え。参加研究者らによる北上山地の視察は中止となった。
 同会議は、ILC準備研究所(プレラボ)の開設作業を推進している国際研究チーム、ILCの国内推進母体である高エネルギー加速器研究機構(KEK)などが主催する。
 ここ最近になって、メインとなる「ヒッグス粒子の詳細研究」にとどまらず、さまざな実験装置をILC施設内に設置し、素粒子物理学以外の学術研究にもILCを活用するアイデアが提案されている。ILC計画に対する他分野研究者の理解と、支持を得る狙いがあるとみられる。
 国際会議開催に合わせ、本県南部の北上山地視察も予定されていたが、オンライン開催に伴い中止に。素粒子物理学者らと連携し、ILC誘致を進めている県は、国際会議参加者がアクセスするサイトに奥州市など候補地周辺の暮らしや観光名所などをまとめた情報などを提供。本県の受け入れ態勢をアピールしている。
 ILCを巡っては、国内外の素粒子物理学者らが中心となり、プレラボの設置を進めている。一方、文部科学省はプレラボ設置などを含む直近の動向について、他分野研究者らで構成する有識者会議の場で、計画の妥当性などを検証中。有識者会議委員からは賛否両論が出ている。
(児玉直人)

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