人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市東部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)
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tanko 2013-6-16 5:50
 一般社団法人国際経済政策調査会が主催し市文化会館(Zホール)で21日に開催する、国際リニアコライダー(ILC)計画講演会で、マンガなどによって分かりやすく作られた解説本2冊が、先着500人に配布されることになった。ILC関連の話題が飛び交う一方、研究内容に難解なイメージが多く、専門用語も多いなど、とっつきにくさを感じる人も多い。同調査会は冊子を読んでもらうことで、より多くの人たちにILCへの理解を深めてもらいたいとしている。

 東京に事務所がある同調査会は、約30年前からILC計画について情報を収集。内部に「加速器科学研究会」を設置し、国内外の有識者を集めた勉強会などを数多く開催してきた。ILCが一般的に知られるようになってからは、奥州市などでも同研究会を開催し、市民向けのILC周知も図っている。
 21日の講演会は、国内候補地一本化などを進める研究者組織・ILC戦略会議議長で、東京大学素粒子物理国際研究センターの山下了准教授が講師として招かれる。
 参加者の受け付けを進める中、同調査会には「新聞やニュースでILCのことはよく聞くが、実際、何をやる所なのか今一つ分からない」などという趣旨の声が数多く寄せられてきているという。
 ILCで行われる研究は高校や大学で、物理を学ばなければ触れることがない分野。さらに、波及効果が地域振興や技術革新、経済、教育、国際交流など多岐にわたるため、情報を整理しきれないことも背景にあるようだ。
 そこで同調査会は、いわてILC加速器科学推進会議が中高生向けに作成した読本「ILCを東北に」と、高エネルギー加速器研究機構(KEK)の企画で制作された「宇宙をつくる加速器『国際リニアコライダー』がやってくる!?」の2冊を先着500人の聴講者に配布することにした。「ILCを――」は、研究内容や施設構造に加え、まちづくりの構想など図やイラストをふんだんに使用し解説。「宇宙を――」は、マンガによってILC計画の概要を紹介している。
 同調査会の高橋佑理事長は「山下先生の講演とともに、2つの冊子を読んでもらうことで、少しでもILCの意義について理解してもらえたら」と話している。
 講演開始は午後1時半から(開場は同1時)。参加申し込み、問い合わせは月曜日以降に同調査会(電話03・6277・7461)へ。
(児玉直人)
写真=ILC講演会で配布される、2つの冊子
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tanko 2013-6-16 5:40
 金ケ崎町主催の「第2回ILC講演会」は15日、町中央生涯教育センターで開かれた。町民ら30人余りが来場。高エネルギー加速器研究機構(KEK)素粒子原子核研究所の大森恒彦講師(56)が語るILC(国際リニアコライダー)の原理や実現によって期待される効果について、熱心に聴き入った。
 講演に先立ち、高橋由一町長は「ヒッグス粒子の発見で、宇宙の謎を解くのに一歩前進した。次の一歩に必要なのがILC。金ケ崎は建設候補地の北上山地の隣町。完成後には、研究学園都市を造る一翼を担えればと思う」と意欲をみせた。
 大森講師は「国際リニアコライダーがひらく世界―宇宙をつかまえる」と題して、ILCの役割などを語った。
 ILCは物質の成り立ちを調べる物理学の実験施設であることを示し、「物質をつくり上げている最も小さな粒である素粒子を高速でぶつけ合うことで、その変化をみるもの」と説明。宇宙の誕生(ビッグバン)前は素粒子だけの世界で、その後に原子が生まれたという。
 「原子がさまざまに組み合わさって物質をつくり上げ、最初の星が生まれたのがビッグバンから数億年後。それから今の状況になるまでに(ビッグバンから)約137億年たっているといわれる」とし、「ILCは137億年前の宇宙誕生をもう一度再現してみるもの。つまりは宇宙をつかまえることになる」と語った。
(宮本升平)
写真=ILCの仕組みや役割を話す大森恒彦講師
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tanko 2013-6-16 5:00
 市国際交流協会(佐藤剛会長)は、同会の国際リニアコライダー(ILC)誘致に向けた取り組みとして「コミュニケーションのための英語入門教室」を開催。多くの市民の参加を呼び掛けている。
 水沢区吉小路の水沢地域交流館(アスピア)を会場に22日から7月20日までの毎週土曜日全5回の日程で実施。時間は各回とも午前10時半から1時間ほど。受講料2000円。
 地域の国際化にあたり、英語でのあいさつや簡単な読み書き、自己紹介などを楽しみながら学ぶ。講師は同会の渡部千春事務局長が務める。
 問い合わせ・申し込みは同会(電話0197・22・6111)まで。
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tanko 2013-6-15 5:40
 金ケ崎町の町民懇談会が13日夜、南方地区生涯教育センターを皮切りに始まった。町側から高橋由一町長ら三役と課長合わせて12人が出席し、本年度の主要事業や予算などについて説明。住民からは、固定資産評価方法の変更や金ケ崎診療所の今後について質問が出された。

 同懇談会は、高橋町長が掲げる「住民参加型町政」の一環。年2回、各地区へ出向いて開催している。同日は町民35人が参加した。
 高橋町長はあいさつで「第9次総合発展計画の中間の年。事業の見直しをしながら新たに追加、検討している。本年度は91億円の予算を組んだ。県内33市町村のうち、20%以上予算額を増やしたのは金ケ崎だけ」と述べ、「財政改革に伴い、先送りしてきた事業がある。それを着実に事業化している。住民生活に関わるインフラ整備を年次計画で進めていきたい」とした。
 参加住民からは、国際リニアコライダー(ILC)誘致後の展望や、市街地宅地評価法(路線価方式)導入後の固定資産税額、今後の運営について検討が始まっている金ケ崎診療所に対する町の考えなどについて質問があった。
 ILCについては「建設された後、どうサポートしていくか。居住区が仙台や盛岡に吸収されたらその一部分だけが膨らんで終わり。県南で協力し、構想を練るべき」と誘致後を見据えた対応を求める意見も。
 中里武司参事兼総合政策課長は「7月にも国内候補地が一本化される見通しで、本年度は北上山地への誘致を進めたい。東北ILC推進協議会の会員として、誘致活動を一体的に行っている」と現状を説明。「誘致後は金ケ崎は研究学園都市を補完する周辺地域。豊かな自然やスポーツ施設、温泉など余暇活動の適地であり、候補地が決まった場合はその点を生かした取り組みも重要になるが、まず本年度は誘致に集中的に取り組む」と理解を求めた。
 今後の運営について検討に着手した金ケ崎診療所について高橋町長は「4人の医師が安定的に診療できる環境をつくらなければならない」とした上で、「建て替えが必要な中で、どういう形、機能が必要か。胆江の医療圏の中で役割分担もあるが、町民、地域の願いを反映できる検討にしたい」と述べた。
 懇談会の今後の日程は次の通り。
 ▽17日…三ケ尻地区▽18日…永岡地区▽20日…街地区▽21日…北部地区
写真=町民懇談会であいさつする高橋由一町長
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tanko 2013-6-15 5:40
 小沢昌記奥州市長は14日の市議会6月定例会で、ILC(国際リニアコライダー)を核とした国際的なまちづくりに関連し、医療体制の充実は「非常に重大なこと」と指摘。「2020年代半ばに(ILCが)本格稼働するとなれば、その時期に合わせ体制づくりを進める必要がある」と答弁した。
 老朽化した水沢病院の建て替え問題を絡めた藤田慶則氏(創政会)の一般質問に対し、小沢市長は「一定以上のレベルの医療環境を市として持っているかどうかは、この地に住んでいただけるかどうかの重大なポイント」と指摘。「初期医療、救急医療について万全を期せる地域であることを将来にわたって担保できる医療をしっかりと確保したい」と述べた。
 小沢市長はILCの本格稼働後は外国人研究者とその家族ら1万人超が研究施設周辺に居住するとの試算を示し、「市民病院としての強さを発揮できる状況をつくる必要がある。市が設置する病院としてきめ細かな医療サービスを提供できるような体制をつくりたい」と答弁した。
 市当局は小学校の英語学習の現状について、5、6学年は外国人講師の指導も交え週1回程度、年間35時間を目安に実施していると報告。1〜4学年も異文化に触れる機会を設けるなどして、5、6学年での学習に円滑に取り組める素地づくりを行っていると説明した。
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tanko 2013-6-15 5:30
 【東京=児玉直人】 首相所轄の特別機関・日本学術会議(大西隆会長)が、文部科学省の審議依頼を受け設置した「国際リニアコライダー(ILC)に関する検討委員会」の初会合が14日、東京都港区内で開かれた。委員からは「他の科学研究分野の予算が圧縮されないようにすべきだ」「国民理解の形成にもっと努めるべきではないか」といった意見が出されるなど、一層の理解普及に向けた取り組みの必要性が浮き彫りになった。検討委は7月中にもILC計画の意義や建設・運営、予算確保に関する学術的見解をまとめる。

 審議依頼は文科省研究振興局の吉田大輔局長名で5月27日付で出された。文科省は▽研究意義と素粒子物理学における位置付け▽学術研究全体の位置付け▽国内立地による国民や社会に対する意義▽実施に向けた準備状況と建設、運営に必要な予算・人的資源の確保などの諸条件――について回答を要請している。
 検討委は、物理学にとどまらず哲学や社会学などの専門家10人で構成。委員長に、同会議副会長で東京大学物性研究所の家(いえ)泰弘教授(物理学)が選ばれた。
 初会合には参考人として、ILCなどの加速器研究の推進を監督する研究者組織・リニアコライダー国際推進委員会の駒宮幸男委員長(東京大学素粒子物理国際研究センター長)が招かれ、ILC計画の概要や意義について説明した。
 終了後、家委員長は報道陣の取材に「ILCの研究自体は意義があるが、他の研究分野の予算を圧縮するような事が起きてしまえば、マイナス影響が場合によっては大きくなる。日程的に急がれる中ではあるが、予算以外にも研究に携わる人員確保なども含め、実行の可能性について十分に考えたい」と答えた。
 駒宮委員長は「国民理解については、どうやって将来を担う若い人たちにILCの意義を伝えるかが特に大事になる」と強調した。
 検討委は7月までに専門家を招きながら、文科省への回答をまとめる方針。同会議幹事会での精査を経て、秋ごろにも文科省に回答を提出したい考えだ。回答は、政府がILC国内誘致の表明を判断する上で重要な参考材料になるとみられる。
 検討委で回答がまとめられる同時期に、日本の素粒子研究者で組織するILC戦略会議が中心となって進めている国内候補地(北上山地と脊振山地)の一本化が予定されているが、検討委では候補地に関連する事項は取り扱わないとしている。
写真=ILCの国内誘致について、学術的見解を取りまとめる検討委員会の初会合(日本学術会議・東京都港区六本木)
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tanko 2013-6-14 8:50
 国際リニアコライダー(ILC)の北上山地誘致を見据え、国際都市形成について考えるパネルトークが13日、奥州市水沢区星ガ丘町の奥州宇宙遊学館で開かれた。数千人規模の外国人が地域住民の一員として生活する上で、必要となる機能や対策について有識者3人が意見交換。外国人や異文化の受け入れに、地元住民がどれだけ寛容な心で臨めるかが重要なポイントになることがあらためて浮き彫りとなった。ILC誘致が実現した場合、より深い市民の理解構築が求められそうだ。

 パネルトークは奥州市が主催し、奥州市国際交流協会(佐藤剛会長)が主管。市民生活に関する事業やサービスを提供する立場の人たちに聞いてもらうため、金融機関や不動産、スーパー、住宅建築関係の事業所に声を掛けたところ、約40人が出席した。
 意見交換したのは、県立大学総合政策学部の吉野英岐教授、NPO法人イーハトーブ宇宙実践センターの大江昌嗣理事長、外国人市民で組織するインターナショナル“ILC”サポート委員会のビル・ルイス委員長の3人。同協会の渡部千春事務局長が司会を務めた。
 水沢区で約20年生活している米国出身のルイスさんは、町内会や各種風習の意味を理解するのに苦しんだことを明らかにした。「日本や地域のやり方を説明してくれれば、それに多くの外国人は従うだろう」と述べた。
 国立天文台名誉教授でもある大江理事長は、2年間カナダで家族と生活した経験を踏まえながら話題提供。「研究者の配偶者の仕事場を用意する必要がある。例えば農作業の手伝いなどがあれば、彼らもうれしいし、農業界にとってもいことではないか」との考えを示した。
 聴講した人からは「外国人に限らず、日本人であっても他地域から来た人は、よそ者扱いされる。人的交流が一番の難点になり得るのではないか」という声もあった。
 吉野教授は、大学や周囲の学生居住地域でも同様のことが起きている事例を引き合いに「騒ぐとか町内会に入らないなど、悪いイメージばかりが先行し、どうしたら彼らを歓迎できるかという良い話に展開していかない」と指摘。「今まで経験したことのない、数千人という規模の外国人を招くかもしれない中、重要なのは迎える側に寛容な心があるかどうかだ。今のうちにさまざまな事例を謙虚に学んでほしい」と訴えた。
(児玉直人)
写真=外国人研究者の受け入れについて意見を述べるビル・ルイス委員長、大江昌嗣理事長、吉野英岐教授(右から)
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tanko 2013-6-14 8:40
 奥州市水沢区の後藤伯記念公民館を会場に開設している高齢者向け教養講座「立生(りゅうせい)大学」で13日、国際リニアコライダー(ILC)に関する講演会が行われた。奥州市ILC推進室の職員が施設概要や期待される経済効果などについて説明。出席者からは教育環境の整備や、市財政への影響の有無などについての質問があった。
 「ILCって何? ILCができると何かが変わるの?」と題し、同推進室の千葉雄飛主任が解説。ILC誘致で想定される経済効果や地域の変化、施設の安全性などについて説明した。
 受講者からは「人口が増えるのはありがたいが、いろいろな施設を建設することで、市財政の負担が増すばかりだと思う。本当に奥州市のためになることか」といった疑問も投げ掛けられた。
 千葉主任は「(ILCに付随する施設の整備は)公的支出をなるべく抑え、民間投資を多く活用することが検討されている」と説明した。同推進室によると約8000億円とされるILC建設コストは世界各国からの出資でまかなわれる。加速器本体や研究設備の製造や建設に、県や市町村レベルの支出が求められることはないという。
 「もし1、2年で研究が終わったらどうするか」との質問には「先進例である、CERN(スイスの欧州合同原子核研究機構)は間もなく設置され60年になろうとしているが、いまだにいろいろな研究が続けられている。ILCにおける研究が1、2年で終わることは考えていない」と答えた。
写真=ILC計画の説明を受ける立生大学の受講者たち
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tanko 2013-6-13 12:20
 第2回金ケ崎町ILC講演会(町主催)は、15日午後2時から町中央生涯教育センターで開かれる。高エネルギー加速器研究機構(KEK)の大森恒彦氏が、ILC(国際リニアコライダー)について分かりやすく語る。申し込み不要で、誰でも聴講できる。
 同町は、産学官連携の東北ILC推進協議会に町村レベルとしてはいち早く入会し、誘致を後押ししている。講演会も推進活動の一環として、4月から始めた。
 問い合わせは町総合政策課(電話42・2111、内線2314)へ。
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tanko 2013-6-13 8:10
 北上山地などが有力候補地となっている、素粒子研究施設・国際リニアコライダー(ILC)の「技術設計報告書(TDR=Technical Design Report)」が12日、完成した。ILC建設に必要な詳細事項をまとめた書類で、ILCの建設実現に向け、一歩前進したことを意味する。同日、東京大学で完成記念セレモニーが開かれ、各国の素粒子研究者が出席。北上山地を擁する本県からも、奥州市の小沢昌記市長らが参加し、ILC計画前進に向けた節目を祝った。
 TDRは、国際共同設計チーム(GDE=Global Design Effort)と実験管理国際組織(RD=Research Directorate)によって作り上げられた4巻5冊組で構成する書類。ILCで行われる研究の内容や、そのために必要な実験装置や設置場所の構造など専門的な事柄が詳細に記されている。昨年12月に草案が完成していたが、建設コストに関する事柄を反映したり細かな修正を施したりして、完成版刊行にこぎつけた。
 東京大で開かれたセレモニーには、GDEとRDの活動を引き継ぐため2月に発足した国際研究組織「リニアコライダー・コラボレーション(LCC)」の最高責任者リン・エバンス氏と、LCCの監督機関である「リニアコライダー国際推進委員会(LCB)」の駒宮幸男委員長らが出席。エバンス氏は「世界中の科学者が携わった設計が完成し、『夢』から『現実』に変わる時が来た。あとは先に進むという決断をするだけだ」と述べた。
 セレモニーの様子はインターネットで生中継され、中国や韓国、インドといったアジア諸国の素粒子研究者もTDR完成を祝福した。
 TDR完成でILCは建設作業開始へと近づいたことになる。国内外の研究者間では、日本への建設を有望視する声が急激に高まっている。北上山地と北九州の脊振山地の2カ所を有力候補に挙げている日本の研究者たちは、7月末にも一本化する方向で詰めの作業を行っている。候補地が一本化された後も、日本政府による誘致の正式表明や費用負担に関する国際協議など、いくつかの関門が待ち構えている。
(児玉直人)

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