人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市東部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)
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tanko 2023-6-5 12:20

写真=「ブラックホールマドレーヌ」などをアピールする水沢農高の生徒たち

 奥州市内の菓子店などが推進している「オウシュウ・ブラックホール・プロジェクト」。プロジェクトに参加、賛同する菓子店や飲食店などによるイベント「第2回奥州ブラックホールお菓子フェスティバル」が4日、水沢西町のみずさわ観光物産センター(Zプラザアテルイ)で開かれた。プロジェクト開始から4年。ブラックホール(BH)にあやかった商品が次々と誕生しているほか、地元高校も出店に加わるなど輪が広がっている。
 同プロジェクトは、国立天文台水沢VLBI観測所(本間希樹所長)の研究者らによるBH撮影成功をきっかけにスタート。天文学の研究成果を菓子で盛り上げるというユニークな試みで、水沢菓子組合(高橋一隆組合長)が中心となり推進している。BHという共通テーマの下、組合加盟店がオリジナルの菓子を開発し販売している。
 プロジェクトの盛り上がりを図るため、岩手県菓子工業組合(菊地清理事長)の奥州支部と水沢菓子組合は昨年、初めて同フェスティバルを開催。大好評を得て2回目を企画したところ、前回より5店舗多い18店舗が出店した。
 各店とも、従前の定番商品と一緒にBHをイメージした菓子や飲食物を販売した。岩谷堂羊羹の製造元として知られる回進堂(菊地清代表取締役)では、今回のフェスに合わせ新商品「こがしブラック羊羹」を発売。菊地孝典取締役は「砂糖を焦がし、カラメルのようにしたので甘苦さが特徴」とアピールする。
 菓子店やパン工房、飲食店に交じり、県立水沢農業高校(菅野修一校長、生徒124人)の食品科学科も出店。2年生4人と担当教諭らが、そば粉を素材にした「ブラックホールマドレーヌ」などを並べた。「そば粉によって黒っぽさが表現でき、ブラックホールのネーミングを当ててみた」と同科の鈴木美穂子教諭は説明する。
 会場では、BHにあやかった多種多様な商品、料理を提供。水沢菓子組合の高橋組合長は「今までの組合活動は情報交換が主流だったが、ブラックホールという一つのコンセプトをきっかけに、まちを元気にしていこうという機運が出てきている」と喜んでいた。
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tanko 2023-5-30 12:20

写真=『平家物語』の屋島の戦いを基にした作品『八島』を披露する水沢宝生会

 第48回市謡曲大会が28日、水沢東町の水沢グランドホテルで開かれた。水沢地域の謡曲文化は、水沢緯度観測所(現・国立天文台水沢VLBI観測所)の初代所長・木村栄博士が普及に尽力した経過もあるが、近年は若い世代へ広がらず愛好家団体にとって高齢化が最大の悩みという。新型コロナの影響による3年連続中止を経ての再開、さらには会場変更も余儀なくされる中で開催した4年ぶりの大会。木村博士が根付かせた文化を絶やすまいと、参加者たちは日ごろの稽古の成果を存分に発揮していた。
 水沢観世会(観世流)、水沢喜多会(喜多流)、喜嚶会(同)、水沢宝生会(宝生流)の3流派4団体で構成する市能楽連盟が主催。市芸術文化協会が後援した。
 能では主役を「シテ」といい、シテを主に演じる人たちのグループを「シテ方」と呼んでいる。市内で活動する4団体は、いずれもシテ方の流派。このうち水沢宝生会は、木村博士が創設した団体だ。
 緯度観測所の歴史について調べている国立科学博物館の馬場幸栄研究員によると、多趣味な木村博士は水沢地域での謡曲普及にも取り組み、明治40年代前半に駒形神社第11代宮司・當山亮道氏と共に同会を創設したという。他会も伝統ある文化を継承してきているが、若い世代への浸透が難しくメンバーの高齢化が著しい。
 同大会は例年、水沢大手町の後藤伯記念公民館で開催しているが、同公民館が老朽化による安全性の問題で今年4月から全面休館。会場を同ホテルに変えて開催した。
 この日は11演目を披露。出演者らは独特の調子で朗々と謡い上げた。水沢観世会の石川利昭さん(68)=江刺愛宕=は「1973年に始まった大会。若い人の加入がなかなかないが、謡曲文化の火を消さないよう頑張っていきたい」と話していた。
(児玉直人)
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tanko 2023-5-22 17:20

写真=iPS細胞開発でノーベル賞を受賞した山中伸弥・京都大教授は3時間台後半で完走(JR水沢江刺駅付近)

 第7回いわて奥州きらめきマラソンは21日、市役所江刺総合支所を発着点とするコースで行われた。新型コロナウイルス禍が落ち着き、4年ぶりにフルマラソン(42.195km)を再開。3種目・計29部門に国内外から3777人が出場し、初夏の奥州路を駆け抜けた。
 実行委員会(会長・倉成淳市長)が主催する同マラソンは、コロナ禍で2020(令和2)年度から2年続けて中止。昨年度は参加者を東北6県に限り、10kmレースのみ行った。
 「自分史上最高のRun 市民史上最高のFun」を合言葉に、フルに2181人、10kmに1052人、家族ペア部門もある2kmに544人が出場した。
 開会セレモニーでは、スターターを務めた倉成市長が「ようこそ奥州市へ。皆さん頑張って」と激励。午前8時半の号砲とともに、フルマラソンから一斉にスタートした。
 晴天で気温が上がる中、ランナーは自己記録の更新を狙ったり、他の参加者と親睦を深めたりしながら健脚を披露。人気キャラクターに扮したランナーも沿道を沸かせた。
 国際陸連と日本陸連の公認コースでもあるフルは、2018年の第2回大会に続き優勝した川内鮮輝さん(32)=東京都=が12kmから独走。レース後に「単独走となったが、皆さんの温かい応援のおかげで頑張れた。自然豊かなコースで奥州市を満喫できた」と喜んだ。
 2kmの女子小学生部門を制した市立胆沢第一小6年渡辺ひな花さん(11)は「少し疲れたけれど、1位になれたのでうれしい」と笑顔を広げた。
 2012(平成24)年にノーベル医学生理学賞を受賞した山中伸弥・京都大教授もフルで出場。完走後、「眺めも良く、素晴らしいコース。たくさんの方に応援していただき、すてきなマラソンでした」と語っていた。
 2013年世界選手権モスクワ大会女子マラソン銅メダリストで4大会連続五輪出場の福士加代子さんがゲストランナーを務め、一般のランナーと交流を深めた。水沢出身で2009年東京マラソン優勝の那須川瑞穂さんは大会アンバサダーを担い、ランナーにエールを送った。
(若林正人)
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tanko 2023-5-17 17:00

写真=亀谷收分団長(右)から団員証を授与される代表団員

 日本宇宙少年団水沢Z分団(亀谷收分団長)の本年度開講式はこのほど、水沢聖天の水沢地区センターで開かれた。今年は団結成30周年の節目に当たり、11月19日には記念事業が予定されている。
 本年度は新規入団12人を含む45人で活動。市外の学校に通う児童・生徒もおり、小学1年生から高校1年生までと年齢も幅広い。天文台OBで奥州宇宙遊学館館長を務める亀谷分団長ら、天文学や理系分野に詳しい教育関係者、地元企業勤務者らが子どもたちを指導する。
 3月まで11回の活動を計画。宇宙の仕組みや水ロケットの打ち上げ、天体観察、プログラミングなど多様な体験を行い、理数分野への好奇心をかきたてる。
 開講式で亀谷分団長は「30年の間に1000人を大きく超える団員が育ち、中には科学技術分野の世界で活躍している人もいると聞く。昨年までは新型コロナウイルスの影響で十分な活動ができず、募集定員も制限していたが、今年は感染に注意しながらも自由な活動ができると思う。積極的に活動してもらい、楽しみながら宇宙への理解を深めてほしい」と呼びかけ。団員の代表2人に団員証を手渡した。
 開講式後の第1回定例活動では、亀谷分団長が「宇宙の旅をしよう!」と題し講演した。
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tanko 2023-5-16 17:10

写真=本年度の取り組み内容を決定した県ILC推進本部会議

 北上山地が建設有力候補地とされている素粒子実験施設「国際リニアコライダー(ILC)」の誘致促進を目指している岩手県は15日、推進本部会議を開き、本年度の取り組み内容を決めた。国への働きかけやILC推進派の素粒子物理学者らへの支援、国民的な機運醸成などを継続。県と同一歩調で誘致活動に当たっている奥州市など県南部の関係自治体に対しては、ILC誘致を契機とした魅力あるまちづくりを促す。
(児玉直人)

 県庁3階第1応接室で開かれた会議には、推進本部長を務める達増拓也知事や幹部職員らが出席。研究者サイドを中心とした直近の動向や、県が対応した昨年度の取り組み実績について報告があった。
 昨年2月、文部科学省のILC有識者会議は、研究者サイドが提唱するILC準備研究所(プレラボ)の設置について「時期尚早」とする議論のまとめを公表。技術的課題を解消する取り組みと、施設設計など立地に関する課題(サイト問題)を切り離すべきだとしていた。これを受け、研究者サイドは実験装置の技術開発を行う新組織「ILCテクノロジーネットワーク(ILC TN)」の立ち上げに向けた準備を進めている。
 一方で県は、県内外の推進団体とともに国民的な機運醸成を図りながら、日本政府主導による国際的議論が進むよう、引き続き国や政府与党に働きかける方針。有識者会議から立地に関する事柄の切り離しを提唱されてはいるが、研究者の活動を後押しし、政治判断に期待しながら誘致実現を目指す姿勢に変わりはない。
 研究者支援の一環として、関係自治体に対してはILC誘致を契機とした魅力あるまちづくりの推進を促す。昨年度、岩手大学と東北ILC事業推進センター、先端加速器科学技術推進協議会(AAA)が共同策定した「まちづくりのモデルケース」を活用し、地域実情に沿ったまちづくり像を検討してもらう。
 理解普及啓発の関連では、県内の小中高生を対象にILCを含む科学への関心を喚起する取り組みも継続。科学講演会や出前授業を実施する。
 達増知事は「新型コロナに関係する規制が解除され、多様な活動が再開している。機運醸成を図り、国家プロジェクトとして動いてもらえるよう、全庁的に取り組んでいきたい」と力を込めた。
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tanko 2023-5-13 16:50

写真=新受信機の試験観測のため、電波望遠鏡を制御するパソコンを注視する秦和弘助教

 国立天文台水沢VLBI観測所(本間希樹所長)が運用する「天文広域精測望遠鏡(VERA)」に、新しい受信機を搭載しての試験観測が12日夕から夜にかけ行われた。ブラックホール(BH)のより詳細な観測を可能にする装置で、地球規模の観測地点に水沢の電波望遠鏡が仲間入りする日もそう遠くはない。担当する同観測所の秦和弘助教(39)は、「地域の皆さんにより親近感を持ってもらえるような成果を発表できる日を目指したい」と意気込む。
(児玉直人)

 VERAに搭載されたのは、波長3.5mm帯の電波を受信する装置。大阪公立大学と共同開発した。試験観測では、同じ波長に対応できる韓国2カ所の電波望遠鏡と連動させ、オリオン大星雲などに焦点を合わせた。
 観測は午後5時から同8時まで実施。問題なく受信できているかが分かるまでには、データ処理の関係上、1カ月弱かかる。
 国内4カ所にあるVERAは、7mmなど3種類の波長に対応。しかし、本間所長や秦助教が昨今関わっているBH研究では、3.5mmなど波長がさらに短い電波を受信できる望遠鏡を使用している。いずれもヨーロッパや南北アメリカ大陸など海外にある。
 だが欧米の観測網だけでは、観測不能な時間帯が生じる。秦助教は「アジアで3・5声信ができるようになれば、BHを24時間観測し続けることが可能」と導入メリットを説明。BHの動画や高画質の静止画が得られ、謎だらけの天体の構造の解明が進む可能性が広がる。
 研究成果面への期待だけではない。日本人、特に水沢に関係する研究者が多く携わっていながら、記者会見などで「日本や水沢の電波望遠鏡は使われていない」と話すことに秦助教自身、一抹の寂しさを感じていた。
 「アンテナ本体だけでなく、水沢上空の大気の状態が本当に3.5mm帯の観測に向いているのか、徹底的に調べた。アンテナの鏡面に問題はなく、大気も予想以上に良かった」と秦助教。「将来、大きな研究成果を発表する中で『水沢でも観測が行われた』となれば、地域の皆さんが一層親しみを感じてくれるのではないかと思う。うまく軌道に乗るよう頑張りたい」と話している。
 6月には石垣島のVERA局にも3.5mm帯受信機を取り付ける予定。今後、受信機の性能向上を図る際には、同観測所が昨年実施したクラウドファンディングで得た資金の一部を活用する方針だ。
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tanko 2023-5-10 14:20

写真=地球規模のブラックホール観測に向け、新たな電波受信装置が搭載されたVERA水沢局。12日に試験観測が行われる

 水沢星ガ丘町の国立天文台水沢VLBI観測所(本間希樹所長)が運用する「天文広域精測望遠鏡(VERA)」の水沢局に、ブラックホール(BH)の高精度観測などを目的とした新しい受信機が搭載された。12日に韓国の電波望遠鏡と連動させた試験観測を実施。性能を検証し、早ければ来年度から地球規模の電波望遠鏡観測ネットワーク「GMVA(グローバルミリ波VLBI観測網)」に加わり、BHの動画撮影などを目指す。
(児玉直人)

 同観測所の秦和弘助教や本間所長、同観測所で研究活動している東京エレクトロンテクノロジーソリューションズ蠹賈婿業所=江刺岩谷堂=の田崎文得・シニアスペシャリストらは、地球から約5500万光年(1光年=約9.5兆km)離れたM87銀河の中心にある巨大ブラックホールを観測。BHに吸い込まれるガスの流れがつくり出す構造「降着円盤」の撮影に、世界で初めて成功した。
 この観測に用いられた観測網がGMVAで、ハワイや欧州、南米などに点在する16局の電波望遠鏡で構成される。2019年4月に「人類史上初のBH撮影」として話題となった成果も、全て日本国外の電波望遠鏡を使用したものだった。日本人研究者が数多く活躍していながら、水沢など国内の電波望遠鏡が使われていない理由は、同じ波長帯に対応した受信装置が備わっていないためだ。
 電波望遠鏡は、天体が発する電波を受信して観測。GMVAは波長3.5mm帯の電波に対応できる望遠鏡で観測網を構成している。一方、水沢など国内4カ所に設置されているVERAには、44.7mm、13.6mm、7mmに対応した受信装置を搭載している。
 電波の波長が短いほど、精細な観測結果が得られる。しかし、電波を受ける反射鏡の表面を高精度に仕上げる必要があるほか、空気中の水蒸気などの影響も受けやすくなり、技術面や観測の困難さは増す。
 秦助教らは大阪公立大学と共同で、VERA搭載用の3.5mm帯受信機を開発。水沢のVERAに搭載し、動作試験を行ってきた。望遠鏡の構造的な精度に現時点では問題はなく、今月12日の夕方から韓国の電波望遠鏡と連動させた試験観測を行う。
 同観測所の小沢友彦・特任専門員は「大きな研究成果を得るまでに、研究者たちは長く地道な作業を続けていることにも関心を寄せていただけたら」と話している。
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tanko 2023-4-28 14:00

写真=研究成果を説明する秦和弘助教(右)

 ブラックホール(BH)の3要素とされる▽本体▽降着円盤▽ジェット――の同時撮影に関する論文が発表された27日、責任著者の一人である国立天文台水沢VLBI観測所の秦和弘助教らが記者会見し、成果概要などを説明した。秦助教は「今回の撮影成果で、構造解明に向けた新たな“宿題”がまた提示された。まさにBHから抜け出せない、底なし沼のような状況だが、それもまた楽しい」と、ユーモアたっぷりに語った。
 水沢星ガ丘町の同観測所会議室で開かれた会見には、秦助教のほか、同観測所で研究活動している東京エレクトロンテクノロジーソリューションズ(株)東北事業所=江刺岩谷堂=の田崎文得・シニアスペシャリスト、八戸工業高等専門学校の中村雅徳教授、東京大学宇宙線研究所の川島朋尚・特任教授が出席した。
 今回の観測では、ハワイや欧州、グリーンランド、南米・チリなど、広範囲に分散する電波望遠鏡計16局で構成する「GMVA(グローバルミリ波VLBI観測網)」を活用。実際には建設できない、地球直径に匹敵する規模の電波望遠鏡で観測したのと同等の精度で、約5500万光年(1光年=約9.5兆km)かなたにある巨大BHを撮影した。
 これにより今までの観測で唯一撮影できなかった、回転しながらBHに吸い込まれるガスの流れが作り出す構造「降着円盤」を捉えることに成功。BHの影、降着円盤、ジェットの3要素も同時に撮影できた。
 秦助教はこの3要素を「三種の神器」に例え、成果を分かりやすく説明した。「宇宙の研究は魅力的だが、一方で難しいと感じる方も多い。身近な場所でこのような研究をしている人がいることを知っていただくきっかけになればうれしいし、研究者を目指す人が少しでも増えてもらえたら」と話していた。
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tanko 2023-4-28 14:00

開館から15周年の節目を迎えた奥州宇宙遊学館

 100年ほど前に建設された水沢緯度観測所2代目本館の建物を活用している水沢星ガ丘町の「奥州宇宙遊学館」は、開館から15周年の節目を迎えた。NPO法人イーハトーブ宇宙実践センター(大江昌嗣理事長)が運営を担い、五つのテーマに分かれた常設展示室やシアター室に加え、サンデースクールやサイエンスカフェなど定期開催イベントを通し、「宇宙と人との出合いの場」を提供している。レトロな空間の中で体験的に「宇宙」を身近にでき、幅広い年代の科学的好奇心を刺激する同館の魅力を探る。
 国立天文台の広いキャンパスの一角に立つ同館。このほど開かれたサイエンスカフェで、15年の節目を迎えたことに触れた亀谷收館長は、「国立天文台水沢VLBI観測所とのタイアップで、電波望遠鏡など最新の研究施設や歴史的に重要な建物など本物にも触れられる国内でもユニークな場所として存在価値を高めつつある」と強調。「より充実した展示や催し、イベントを行っていきたい」と意気込んだ。
 遊学館のコンセプトは「又三郎といっしょに奥州の宇宙(そら)に学び、遊ぼう!」。宮沢賢治の童話『風の又三郎』が、緯度観測所を訪れた際の見聞を基に書かれたことにちなんでいる。
 国の有形文化財に登録されている2代目本館は、耐震補強などを行った際に大正時代の部材をなるべく使用しており、レトロな雰囲気を味わうことができる。「大地」「月」「銀河」「風」「星」の五つの常設展示室があり、観測所の歴史や最新の宇宙探査などを紹介している。
 来館者には、実際の体験を通して理解を深められる展示が人気という。「大地」に設置されているブラックホール模型は、スーパーボールを使い、ブラックホールに吸い込まれていく様子を可視化。「銀河」に置かれているパラボラクッションは、どの位置に当たっても中央に跳ね返るパラボラアンテナの仕組みを視覚的に学べる。月や木星の重力を比較体験できるアイテムも配置されており、館内では自分で見て、触って、試してみることを夢中で繰り返す子どもたちの姿が多く見られる。
 各分野の専門家が携わる定期開催行事もファンが多い。サイエンスカフェは、カフェのようなリラックスした雰囲気の中で、研究者が最先端の科学を紹介する。小学生らが多く参加するサンデースクールは、より分かりやすく正しい知識を伝えようと、手作りの教材や模型を駆使し参加者の興味関心を引き出している。
 サンデースクールに通い2年という、市立常盤小4年の大田暖起君と母彩子さん(44)は「専門家からさまざまなことを学ぶことができ、展示では触れて学べる。科学が学べる施設が身近にあるのはうれしい」と、同館の企画や展示を満喫している。


この地にあった幸運 生かしたかった
佐藤一晶さん、保存活用へ思い語る
 1921(大正10)年に建てられた水沢緯度観測所2代目本館は、木造2階建てのドイツ風建築物。1967(昭和42)年まで使用されていたが老朽化が進み、国立天文台は2005(平成17)年10月に取り壊しを決定。翌年2月に解体される予定になっていたが、宮沢賢治が度々訪れた歴史的にも貴重な建造物とあって、保存活用を求める動きが広がった。市民運動が国立天文台や市、市議会を動かし、2007年に国から市へ建物の譲渡が決定。耐震補強や建物位置の変更、展示品の設営が進められ、2008年4月に奥州宇宙遊学館がオープンした。
 当時の様子について、NPO法人イーハトーブ宇宙実践センターの佐藤一晶副理事長は、4月に開催されたサイエンスカフェで「奥州宇宙遊学館誕生物語」と題し講話。「地域開発の大原則は他のまちに無くて、このまちにあるものを使っていくことだと考えている。日本で最初の国際観測施設である緯度観測所がこの地にあった幸運を生かしたかった。県内で唯一の天文台が水沢にあるのだから、子どもたちが科学を学ぶ場が県南にも欲しいと思った。天文台で働く多くの専門家の知恵を借りていけば、より良いまちづくりができると考えた」と活動の背景を説明した。
 「全国的にも珍しい木造の科学館。古い建物は、残そうとしなければ姿を消していく」。市議会への請願や全国に呼びかけた募金活動など市民らが力を合わせ残すことができた施設と強調する。
 「天文台の敷地にあるからこそ、高まる価値がある。登録有形文化財は活用が基本。かつては退官すると水沢を離れる職員が多かったが、今ではこの地で暮らし続ける研究者も増えた。今後も天文台とタッグを組み、広いキャンパスを生かした活動をしていきたい」と力を込めた。
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tanko 2023-4-27 9:10
(C)Lu et al.(2023);composition by F.Tazaki

画像=GMVAで捉えたM87銀河中心部の巨大BH。左上はBH中心部を拡大した画像で、中央の薄暗い部分がBH本体の存在を示す影、周囲の輪が降着円盤を示す。中心部から右方向へ放物線状に見えるのがジェット。色が明るい場所ほど高温で最大1億度以上に達する


 国立天文台水沢VLBI観測所(本間希樹所長)などに所属する本県縁の研究者4人を含む国際共同研究チームは、強力な重力を持つ天体「ブラックホール(BH)」の3要素と呼ばれる▽本体▽降着円盤▽ジェット――の同時撮影に世界で初めて成功した。26日付(英国時間)の英国科学雑誌『ネイチャー』に掲載された。論文責任著者の1人で、BHジェット研究の第一人者である同観測所の秦和弘(はだ・かずひろ)助教は「BHからどのようにして高速のジェットが噴き出ているのかなど、構造解明を進める上で非常に重要な成果」と強調。今後、同観測所の電波望遠鏡をグレードアップさせた観測も計画されている。(児玉直人)

 今回の観測対象は、2019年4月に「人類史上初のBH撮影」として話題となった、M87銀河の中心にある巨大ブラックホール。地球から約5500万光年離れた場所に位置する。
 2019年に発表された画像は、国際研究者チーム「イベント・ホライズン・テレスコープ(EHT)」によるもの。主に南北アメリカ大陸と南極、ハワイにある電波望遠鏡を連動させるVLBI(Very Long Baseline Interferometry=超長基線電波干渉計)によって、BHの影がドーナツの穴のような形で捉えられた。
 EHTの画像は、BH本体にかなり近い部分に焦点を合わせている。BH本体の影や光子リングはくっきり見えても、BHに回転しながら吸い込まれていくガスによって形成される「降着円盤」や、BHから噴き出すジェットが写っていなかった。
 一方、今回の観測はヨーロッパなどの電波望遠鏡も加えた16局でVLBIを形成する「GMVA(グローバルミリ波VLBI観測網)」によって実施。EHTより視力が半減するデメリットはあるが、高い感度を維持したまま広範囲を撮影できるメリットがある。
 観測は2018(平成30)年4月に実施。データの解析や検証、論文作成に5年の歳月を要し公表に至った。得られた画像は、BH中心部の降着円盤や右方向へジェットが噴き出している様子を確認できる。
 今回の研究には、16カ国・地域の65研究機関から100人を超える天文学者らが参加。このうち、水沢観測所の秦助教と本間所長、同観測所で研究活動している東京エレクトロンテクノロジーソリューションズ(東北事業所=江刺岩谷堂=の田崎文得・シニアスペシャリスト、二戸市出身で八戸工業高等専門学校の中村雅徳教授の4人は本県居住や出身者という縁のある研究者だった。
 本間所長は「当初から予測されていたものとはいえ、本体、降着円盤、ジェットの3要素を世界で初めて捉えた大きな成果。さらに詳細なジェットの動きを見ていく上で、水沢や石垣島にある電波望遠鏡(直径20mのVERA望遠鏡)をグレードアップする予定だ」と話している。

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