人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市東部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)
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tanko 2021-6-4 12:30
 素粒子実験施設「国際リニアコライダー(ILC)」計画に関連し、高エネルギー加速器研究機構(KEK、山内正則)と高エネルギー物理学研究者会議は2日付で、ILCを取り巻く主要課題への対策をまとめた回答を文部科学省に提出した。装置運用時に発生する放射線の防護策については「住民理解を得るため、継続して説明会を実施する」などとしている。一方、KEKを拠点に活動しているILC国際推進チーム(IDT)は、ILC準備研究所(通称=プレラボ)に関する提案書を公表した。(児玉直人)

 ILC計画は、国内外の素粒子物理学者らが中心となって推進している。当該分野の研究者らは昨年、IDTを立ち上げプレラボの設立準備に着手。今月1日付で「プレラボ提案書」を公表し、プレラボの役割や作業計画の概要を示した。
 プレラボで行う作業には、2018(平成30)年に文科省有識者会議や日本学術会議から指摘されていた課題への取り組みも少なくない。研究者側の対応状況や見解、今後の方針を明確にするため、KEKなどは同提案書とほぼ同時に「回答」もまとめた。
 回答の提出は「文科省が特に求めていたものではない」(同省素粒子・原子核研究推進室)という。KEKなどは「課題解決の活動が進んでおり、残された課題を解決するにはプレラボにおいて、国際協力の下で対応していく必要がある点を関係者に理解してもらいたい」と趣旨を説明。▽国際的な研究協力・費用分担の見通し▽学術的意義や国民・科学コミュニティーの理解▽技術的成立性の明確化▽コスト見積もりの妥当性▽人材の育成・確保の見通し▽その他――に大別し、取りまとめた。
 費用分担に関しては「最終的には政府間協議で決定される事項」とした上で、「協議に必要な研究者側の支援は、プレラボの主要任務。政府間分担協議に必要な研究者側の体制は、プレラボの設立によって整う見通しだ」とした。
 2015年以降、延べ約19万人がILC講演会や関連施設の見学に参加した実績を示しつつも「他分野や国民理解を得る努力はまだ十分ではない」と認識。対外的な広報や理解周知活動は、プレラボの重要任務の一つだとし「さらなる理解促進に努める」とした。
 放射線防護や放射性物質の長期管理に関する課題は有識者会議、学術会議双方から指摘があり、有力候補地である北上山地周辺の地元住民からも懸念の声が出ている。回答では「プレラボで関連施設・設備の詳細設計を完了させる」「住民理解を得るため、継続して説明会を実施する」との考えを示した。
 回答提出に先立ち公表された「プレラボ提案書」に関し、IDTの中田達也議長(スイス連邦工科大学ローザンヌ校教授)は「マイルストーン(中間目標)の達成だ」と強調。「ILCに関心を持つ研究所の経営陣が、プレラボ活動の責任分担について本格的に議論するためには、日本政府から何らかのシグナル(意思表示)が必要」とコメントしている。
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tanko 2021-4-29 9:30
 北上山地が有力候補地となっている素粒子実験施設「国際リニアコライダー(ILC)」の実現に向け、東北ILC事業推進センター(代表・鈴木厚人岩手県立大学学長)は、候補地周辺の自然環境に対する影響や物流ルート確立に関する調査を進めている。計画を推進する研究者らは、2026年ごろのILC建設開始を想定しているが、環境と物流だけでも解決すべき課題は多く、地元住民の理解を得ることも重要なポイントとなりそうだ。
(児玉直人)

 同センターは昨年8月に発足。胆江2市町を含むILC建設の有力候補地・北上山地周辺の16市町や、岩手・宮城両県、岩手県立大、県ILC推進協などで構成している。ほぼ同時期に立ち上げられた、素粒子分野の研究者らによる国際推進チーム(IDT)と歩調を合わせながら、ILC受け入れに向けた環境整備を具体検討している。
 鈴木学長は、28日に行われた県ILC推進協議会(会長・谷村邦久県商工会議所連合会長)主催のウェブ講演会で、同センターの活動状況を説明。地質や電源・水源確保、加速器関連産業の振興などに加え、自然環境や物流ルートの設定に関する課題や検討事項について紹介した。
 環境影響調査(環境アセスメント)は、国の指針に基づくものと、県条例に基づく取り組みの2本立てで進める。
 国指針に基づく対応は、ILC建設事業に先立つ早い段階で、著しい環境影響を把握。重大影響の回避や低減を図る。ー舁彜超(大気や水質など)∪限峽蓮弊己の生育・生息基盤など)生活環境(騒音や放射線量など)ぅ▲瓮縫謄ー・文化(景観や史跡・文化財など)セ餮察η儡物Σ梗叱果ガス――が評価項目に掲げられている。
 県条例に基づく調査では、植生図や自然環境マップの作製、猛禽類調査を行う。
 自然環境マップは、実験装置を設置する地下トンネル掘削に伴い配慮すべき点を4区分に整理。各区分の位置付けは▽区分A…重要性が明らかで影響回避が必要(例=徳仙丈山の山麓)▽区分B…事業による影響が懸念され、しっかりとした調査が必要(例=砂鉄川などトンネル直上の渓流)▽区分C…希少な動植物の生育環境で極力改変の回避が望ましい(例=ススキ草原)▽区分D…過去に重要性が指摘され配慮するかどうかの判断が必要(例=東山のアカマツ林)――となっている。
 鈴木学長は「環境アセスメントは非常に重要視しなくてはいけない。トンネル掘削時に発生するズリ(岩石や土砂)を置く場所などについても、これから詰めていく」と述べた。
 このほか、国内外の製造拠点から運ばれてくる大型の実験装置部品の物流ルートについても調査していることを明かした。ILCで使用する部材や装置には、1基当たりの長さが15mの長尺物や、最大65tにもおよぶ重量物がある。同センターが港湾から建設地までの輸送を想定し、現状の道路環境での経路を調べた結果、信号機に接触したり橋の強度が弱かったりなど、154カ所の障害が確認されたという。
 自然環境や道路環境など、生活に身近な要素が絡む事柄だけに、調査や課題解決策の検討が進むにつれ、候補地近傍の住民の関心は高くなると思われる。
 ILC計画に対し慎重姿勢を示している市民団体・ILC誘致を考える会の原田徹郎共同代表は「野村総合研究所や日本学術会議は、ILC実現には自然環境や放射能に対する地元理解が不可欠だと言っており、われわれが活動を始めた理由の前提でもある。北上山地の豊かな自然や文化は守っていかなければいけないものだ」と話し、同センターの動きを注視している。
 県ILC推進協のウェブ講演では鈴木学長のほか、高エネルギー加速器研究機構(KEK)の道園真一郎教授、東京大学の山下了特任教授が研究者サイドや海外の最新動向について紹介した。
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tanko 2021-4-25 18:40
 北上山地が有力候補地となっている素粒子実験施設「国際リニアコライダー(ILC)」の誘致活動は、新型コロナウイルス感染症の収束見通しが立たない状況下でも、実現に向けた体制づくりなど準備作業を淡々と進めている。一方、誘致に慎重な姿勢を示している市民団体は、「各国や国内自治体はコロナ禍対応でILCどころではない」などと指摘。命や暮らしを守る対策に人員や予算を投じるべきだとし、達増拓也知事らに誘致活動の停止を求めている。
(児玉直人)


写真:来県したアナ・ポラック=ペトリッチ大使(右)にILC誘致への協力を呼び掛けた達増拓也知事

■受け入れへ環境整備着々と
 コロナ禍による渡航や移動の制限、自粛が強いられている中、推進派の研究者らは、ILC準備研究所(プレラボ)設置に向けた作業や連携体制の構築、候補地における受け入れ環境の整備などを進めている。研究者らはオンライン講演会やSNS、マスコミなどを通じ、誘致実現の取り組みが進行中であることをアピール。北上山地周辺の自治体首長や経済団体関係者らも、研究者らの姿勢を支持する。
 今月22日、スロベニア共和国のアナ・ポラック=ペトリッチ駐日全権大使が来県。同国は、加速器をはじめとするハイテク産業が盛んな国で、今年7月から欧州連合(EU)の議長国になる。
 県庁で大使を迎えた達増知事は「ILCは国際研究プログラム。実現には、素粒子物理学と加速器産業の先進地であるスロベニアとヨーロッパの協力が欠かせない」と伝えた。ペトリッチ大使は「ILCは日本にとって偉大なプロジェクト。ILCプロジェクトをEUの他の国にも紹介していきたい」と応じた。

■感染症禍、セミナー開催にも影
 機運醸成につながる講演会は、オンライン方式で開催するスタイルが定着。今月28日には県ILC推進協主催のオンライン講演会が予定されている。
 一方、安全管理やリスク説明をメインとした「ILC解説セミナー」は、昨年2月2日以降実施されていない。同セミナーは高エネルギー加速器研究機構(KEK)などの主催で、放射性物質の取り扱いや自然環境への影響に対する質問、意見が多く出される。
 県ILC推進局の高橋毅副局長は「講師と参加者との直接的な質疑応答が多いセミナーなので、オンライン方式で対応しきれない側面もある。感染防止に配慮し、どういう形で開催できるか検討している。やったほうがいいという思いはある」と話す。

■慎重派「誘致活動停止を」
 一関市や奥州市などのILC慎重派住民らで組織する「ILC誘致を考える会」(千坂げんぽう※、原田徹郎共同代表、会員800人)は、21日付で達増知事に対しILC誘致活動の停止を求める要請文を提出した。
 停止を求める理由の一つに、コロナ禍の影響を掲げた。原田代表は「地元の商店経営者からは『とにかくコロナで大変。そんな時にILCなんて』という嘆き節が聞こえる。地方自治体も同じような本音を持っているはず。県民の命を守る施策に資金や人員を使うべきだ」と主張する。
 同会は要請文の提出に当たり、昨年6月に公表された新しい「欧州素粒子物理戦略」の概要文を翻訳。英語教諭経験者らと読み直してみたところ、ILCの表記は1カ所だけで、その内容も「他の大型プロジェクトとともに関心を持っているとの姿勢を示したにすぎない」(同会)との解釈に至った。
 推進派の研究者や誘致関係者は、同戦略について「強いメッセージ」「ILCが最優先の研究計画と認められた」など歓迎姿勢をみせていた。原田代表は「翻訳された方も、ILCが想像より重要視されていない文脈に驚いていた。誘致関係者はあたかも、ILC実現の可能性があるように情報を流しているのではないか」と指摘している。

※…千坂氏の名前の漢字表記は、「げん」が山へんに「諺」のつくり、「ぽう」は峰
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tanko 2021-4-22 10:20
 東京電力福島第1原発の処理水の海洋放出が決まった。事故から10年、廃炉の進展、風評被害、増え続ける処理水。誰が海洋放出を決めようと、私たちが沖縄を気の毒と思いつつも沖縄に我慢を強いているように、原発も国の大問題として全国民が捉えているのかは微妙であろう。
 国のことは政治家に任せるしかないが「(処理水を)飲んでも、なんてことないそうだ」と言った麻生太郎財務相の軽率さにゾッとした。資源エネルギー庁は、トリチウムの安全性を「紙1枚あれば遮ることも可能」と説明。それならば、「紙1枚で遮って見せて、後に発言して」と言いたくなる。
 処理水放出に対し、国内のみならず中国や韓国の反対は根強い。韓国は原発から処理水を排出しているにもかかわらず、日本の処理水海洋放出の差し止めを国際海洋法裁判所に提訴することを検討。だが、日本の方針を支持するアメリカの姿勢もあって、強硬な態度が弱まりつつあるようだ。
 東日本大震災前、日本には54の原発があり、日本で使う電力の30%前後を賄っていた。福島第1原発事故後、2021年3月時点で再稼働した原発は、大飯(関西電2基)、高浜(関西電2基)、玄海(九州電2基)、川内(九州電2基)、伊方(四国電1基)の9基のみ。廃炉にも果てしない月日と経費がかかることを考えると、電気を使う一人として不安ばかりが増す。
 水素爆発した1号機は手つかず、未確認状態である。炉心溶融は1、2、3号機。今までの工程表改定から推察すると、政府と東電の廃炉完了目標の20〜30年にも疑問符がつく。現場は放射性物質の飛散防止対策や除染、機器トラブルに時間を取られっ放しであろうから。
 核ごみ最終処分場でさえ行き場のない日本。福島のタンクの群れにもため息が出る。福島の友の言葉がよぎる。「福島が嫌な物はどこでも嫌で当たり前だっぺ」。相づちを打てなかった。
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tanko 2021-4-20 10:10
 世界トップの科学技術強国を目指し、外国から優秀な研究者を集める中国の人材招致プロジェクト。2008年から実施され、研究者の多くは米国や欧州を中心に、2018年までの10年間に延べ7000人を超えているとされるが、研究内容や参加者などの実態は明かされていない。
 中国には、北京理工大学や南京理工大学など、中国軍の監督下にある大学が7校あるとされ、研究者の多くは兵器開発を中心に軍民融合戦略の担い手になっている。軍民融合戦略とは、民間の最先端技術を軍事力の強化につなげることで、民間企業とはいえ重要な情報や技術は強制的に中国軍に伝えなければならない。
 参加している日本人の研究者は50人程度明かされているが、実際はもっと多いとされる。外国からの研究者が多く参加する背景には多額の研究費と生活が保障され、自国の研究環境よりも待遇に恵まれていることらしい。
 千人計画に参加している日本人の多くは、日本の科学技術政策へ不満を抱く。民間技術と軍事技術との線引きは困難で、どんな技術でも軍事転用は可能でありながらも、研究内容に縛りが伴うだけでなく、研究費はわずかで、待遇や任用期間が限定されているなど、生活に不安を抱えながらの研究に見切りをつける研究者が多い。
 安全保障の考え方と認識の甘さからか、平和の行方そのものがさまざまなかたちで岐路を迎えているということであろうか。「戦争反対、平和を守る」という声だけで他国からの脅威を跳ね除け、軍事力と対等に戦えるとは思えない。
 日本の安全保障とは、防衛力の強化に限らず産業を守り技術と人材の流出を防ぐことでもあろう。海外に進出した企業を国内に呼び戻すサプライチェーン対策も含め、流出を防ぐ手だてこそが今必要な安全保障政策ではないか。技術も人材も他国に渡り、自国が軍事的標的にさらされている理不尽な現実に、平和を叫ぶだけで平和を守れるのか甚だ疑問である。
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tanko 2021-4-15 10:00

画像=世界各地や宇宙空間の望遠鏡によって観測された巨大BHの姿。左列6種類は電波、中央3種類は可視光線、右列4種類はガンマ線などでとらえた((c)EHT多波長サイエンス作業班)

 国立天文台水沢VLBI観測所(本間希樹所長)の研究者らが参加する天文学研究のプロジェクトチームは14日、巨大ブラックホール(BH)を同時観測した成果を発表した。巨大BHの観測としては天文学史上最大規模のプロジェクトで、同観測所の天文広域精測望遠鏡(VERA)など19の望遠鏡や観測網、装置群を駆使。謎多き天体の研究に寄与するデータを提供する成果を打ち出した。
(児玉直人)

 観測対象は、国際研究チーム「イベント・ホライズン・テレスコープ(EHT)」が一昨年春に画像公開したのと同じ巨大BH。楕円銀河「M87」の中心部にある。地球から見ておとめ座の方向にあり、距離にして約5500万光年(1光年=約9.5兆km)かなたにある。
 EHTは17年4月、地上の電波望遠鏡8台を連動させBHを撮影。ほぼ同時期に水沢のVERAなど各国の望遠鏡群、宇宙空間にあるハッブル宇宙望遠鏡などが同じBHを観測していた。32の国と地域の760人余りが携わったという。
 天体から発する電磁波には、人間が光や色として視認できる「可視光線」のほか、可視光線よりも波長が長くエネルギーが低い「マイクロ波」「電波」、可視光線より波長が短く高エネルギーの「エックス線」「ガンマ線」がある。対応できる波長の種類は装置により異なるが、それぞれの波長には観測できる現象の得意分野がある。
 それぞれの望遠鏡が、ほぼ同時に同じBHを観測したことで、BHが発するさまざまな種類の電磁波ごとにBHの性質を解明でき、BHの活動状況や構造解明につながるデータを多角的に得られる。
 波長が異なる電波とガンマ線だが、研究者の間ではBHの同じ領域から放射されると考えられていた。しかし今回の観測データをもとに、同観測所敷地に設置されているスーパーコンピューター「アテルイ供廚撚鮴呂靴燭箸海蹇▲ンマ線は電波と異なる場所から生成されている可能性が高いことが分かった。
 今回の研究プロジェクト全体を取りまとめた同観測所の秦和弘助教は「何でも吸い込むと言われるBHからは、勢いよくジェット(プラズマ粒子)が出ている。なぜ、そのような現象が起きるのかの謎は、他の波長の観測があって初めて解明できる。大規模な観測が実現でき感無量。BHの撮影画像とさまざまな波長の観測データを組み合わせた研究の第一歩になるだろう」と意義を強調している。
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tanko 2021-3-26 11:00

写真=巨大ブラックホールの新たな姿としてEHTが公開した画像。右側の筋は整った磁場の存在を示す=(C)EHT

 国立天文台水沢VLBI観測所の本間希樹所長(49)ら、同観測所研究者が所属する国際研究チーム「イベント・ホライズン・テレスコープ(EHT)」は、一昨年春に公開していた巨大ブラックホールの画像再現に用いた観測データを解析。ブラックホールのすぐそばに、整列した磁場が存在する証拠を突き止めた。ブラックホールからは「ジェット」と呼ばれるプラズマ粒子が、非常に広大な範囲まで噴出している。本間所長は「ジェットのメカニズムを解明する上でも非常に重要な成果だ」と強調している。(児玉直人)

 EHTは2019年4月、地球から約5500万光年(1光年=約9.5兆km)離れた「M87銀河」の中心にあるブラックホールの直接撮影に成功したと発表。いびつな光の輪(リング)の中央に、ブラックホールの影が黒く写り込んだ画像は「人類が初めて目にしたブラックホールの姿」として、大きな注目を集めた。
 この画像を再現する際に用いた観測データを詳細に解析したところ、リングの大部分から発生する光には、特定の方向に偏った「偏光」の性質があることが判明した。
 解析結果に基づき再現した新たな画像には、リングの下から右側にかけ、砂地をほうきで掃いた時のような整った筋状の線が現れた。本間所長は「リングの全体に偏光があり、磁場が存在しているが、線がよりよく見える右側が特に磁場が強いことを表している」と説明する。
 一般に知られているブラックホールは「何でも吸い込み、二度と出てくることができない」という特徴が知られている。それとは相反する形で、プラズマ粒子がブラックホールに引き寄せられる寸前で、ジェットとして宇宙空間に飛び出している。ジェットの噴出距離は約5000光年とも言われるが、太陽系ほどしかないブラックホールの領域からどのように粒子が飛び出すのか、正確な仕組みは解明されていない。
 EHTはハワイや南北アメリカ大陸、南極大陸、西欧の電波望遠鏡9局を連動させるVLBI(超長基線電波干渉法)を用いて、巨大ブラックホールの観測を実施している。
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tanko 2021-3-26 10:50

写真=応援動画の撮影に臨む本間希樹所長(右)と秦和弘助教

 水沢出身の米大リーグエンゼルス・大谷翔平選手に向けて、「メジャー2021シーズン開幕応援動画」を制作し、動画投稿サイトYoutubeで公開している。市内野球スポ少団員らによるカウントダウン動画は既に公開が始まっているが、国立天文台水沢VLBI観測所の本間希樹所長(49)らが出演する「特別編」が4月1日午前11時に公開される。本間所長は「大谷選手には、天文学的な記録を打ち出してほしい」と期待を込めた。
 動画には本間所長と、同観測所の秦和弘助教(37)が出演する。架空の球場を舞台に本間所長が投手、秦助教が打者に扮して対決するストーリー。25日、水沢南地区センターで収録が行われた。
 コンピューター・グラフィックスで背景を合成するため、撮影は緑色の布の前で実施。サッカー少年だった本間所長は「キャッチボール程度しか経験がなく、撮影もぶっつけ本番」と笑いながら、「奥州から世界で活躍する大谷選手の姿は、皆さんに夢や力を与えてくれる。頑張ってほしい」と期待を込めた。
 一方、秦助教は少年時代に野球経験がある。ブラックホール撮影成功発表後のテレビ出演よりも「汗をかいてしまった」と苦笑い。「誰もやったことがない投打二刀流に挑戦しているが、自分たち研究者も誰も知らない世界を知ることにやりがいを感じている。今回の動画を機に、天文台のことも身近に感じてもらえたら」と話していた。
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tanko 2021-3-26 10:50
 国立天文台(常田佐久台長)執行部は、水沢VLBI観測所(本間希樹所長)の2021年度運用予算をほぼ要求通り確保したとして、同観測所に通知した。25日、本間所長が報道関係者に明らかにした。一方、2022年度からは同天文台などを統括する大学共同利用機関法人・自然科学研究機構の第4期中期計画が策定される。VLBI観測の継続が、同計画に反映されることが観測所運営の今後を握る。
 同観測所は本年度、当初予算が大幅に削減され、水沢など全国4カ所に設置している電波望遠鏡「VERA(ベラ)」の正常運用ができなくなる危機に直面した。結果として台長裁量の配分経費で必要予算は確保されたが、地元市民らによる署名運動や寄付など支援の広がり、国会での質疑にも取り上げられるなど、さまざまな形での反響があった。
 新年度予算の要求に当たっては、財政全体が厳しい状況にあることを考慮し、必要最低限の人員で運用できるよう、夜間観測の自動化なども提案したという。本間所長は「綱渡り状態ではあるが、市民の皆さんの声が大きな追い風となった」と感謝していた。
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tanko 2021-3-25 10:10

図=ILC施設における主要設備やビームダンプの位置
(C)Rey.Hori/KEK、高エネルギー加速器研究機構提供の図を基に作成

 北上山地が有力候補地になっている素粒子実験施設「国際リニアコライダー(ILC)」の推進派研究者の一人、米・カリフォルニア大学バークレー校教授の村山斉氏は23日、東北ILC推進協議会が主催したオンライン講演会に出演。ILC内部に設置される電子、陽電子の吸収処理装置「ビームダンプ」の近くに、未知の物質「暗黒物質」を探す測定器を設置する新たなアイデアを披露した。
(児玉直人)

 村山氏は昨年8月に発足したILC国際推進チーム(IDT)で、物理・測定器作業部会の議長を務めている。カリフォルニアからのネット中継で講演した村山氏は、ILCの科学的意義をあらためて強調。施設の随所に別な測定器(センサー)を設け、暗黒物質の解明を進める新たな構想についても紹介した。
 これまでのILC講演会などでは、電子と陽電子の粒子を衝突させる実験が主に説明されていた。しかし、全ての粒子が衝突するわけではない。光の速さに匹敵する速度の粒子を安全に停止させ、処分する場所がビームダンプ。「粒子の墓場」とも言われる装置で、内部は約100tの水で満たされている。
 講演で村山氏は「水と粒子が反応した際、暗黒物質のようなものが生まれるかもしれない」と説明。「ビームダンプの近くに暗黒物質を探索する新たな測定器を設置しようというアイデアが出ている」と述べた。
 暗黒物質は現在の宇宙が形成された理由をひもとく上で、素粒子物理だけでなく天文学など他分野の研究者も注目している謎の物質だ。村山氏は「ILCは何十年も活用できる施設。その機能を最大限に活用したい」と力を込めた。
 ビームダンプでは粒子が水に吸収される際に、放射性物質のトリチウムが発生。福島第1原発事故の汚染水処理を困難にさせている存在として知られ、ILC反対派・慎重派の地域住民らがILC誘致実現に懸念を示している要因の一つになっている。
 推進派研究者らは住民説明の場などで、厳重な安全管理の徹底を講じると主張し、誘致実現に理解を求めている。日本学術会議でも他分野研究者から安全管理の確実性に指摘があり、IDTにおいて懸念される課題の解決に向けた協議を進めているという。
 同日は村山氏のほか、IDT議長の中田達也氏(スイス連邦工科大学ローザンヌ校教授)がスイスから、IDT加速器作業部会の道園真一郎氏(高エネルギー加速器研究機構教授)が茨城県から、それぞれネットを通じて講演。このうち中田氏は「IDTは1年半から2年、プレラボ(ILC準備研究所)は4年設置し、ILC研究所の立ち上げに至る。プレラボではコスト協議が一番重要になるが、ちゃんとしたコストを示すにはサイト(建設地)を決める必要がある。プレラボ設置期間の中ごろまでには、ILCをどこに建設するか正式承認しなければいけない」と述べた。

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