人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市東部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)
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tanko 2023-12-1 9:50
 大学共同利用機関法人自然科学研究機構(川合真紀機構長)は30日付で、国立天文台の次期台長に東京大学・天文学教育研究センター長の土居守氏(59)が内定したと発表した。発令は来年4月1日。
 同機構は、水沢VLBI観測所(本間希樹所長)を組織下に置く同天文台を始め、自然科学に関する研究機関の上部組織に当たる。
 土居氏は愛媛県宇和島市出身。東京大学大学院理学研究系研究科で博士号を取得した。2000(平成12)年11月から、同天文台本部=東京都三鷹市=敷地内にある同研究科付属天文学教育研究センターに所属。助教授、准教授を経て2007年に教授、2016年からセンター長を務めている。
 専門は観測的宇宙論と銀河天文学で、日本天文学会欧文研究報告論文賞を4回受賞。日本天文学会代議員、広島大学宇宙科学研究センター客員教授なども務めている。
 現台長の常田佐久氏(69)は、2018年4月から第6代台長に就任。台長職は任期4年で再任により2年の延長が可能で、2期目の任期が来年3月31日で満了する。
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tanko 2023-11-29 9:30

写真=県南局の来年度重点取り組みなどについて説明があった、県南広域振興圏地域協働懇談会

 岩手県の県南広域振興局(小島純局長)は2024(令和6)年度、人口の社会減対策とデジタル技術を活用してさまざまな変革を推進する「DX(デジタル・トランスフォーメーション)」を重点的取り組みに位置付ける。本年度第2回県南広域振興圏地域協働懇談会が28日、水沢大手町の奥州地区合同庁舎分庁舎で開かれ、各分野の有識者である委員に方針が示された。
(児玉直人)

 県の総合計画「いわて県民計画」の地域計画に当たる「県南圏域地域振興プラン」では、産業集積や農林業、多様な地域資源を生かし、暮らしと産業が調和した地域づくりを目指している。
 都市部への人口流出によって引き起こされる人口の社会減。移住・定住の促進で社会減に歯止めをかけるため、移住希望者向けのセミナー開催や新規就農者の確保などを進める。DXに関しては、各産業におけるデジタル技術の導入支援や普及、DX人材の育成や確保、生産性向上に向けた取り組みなどを実施する。
 懇談会には委員12人のうち7人が出席。重点的取り組みに関連し、観光客誘致や雇用環境、地域の特色を生かした行政施策など、多種多様な質問や意見が出された。
 県社会福祉士会理事の小笠原隆氏=一関市=は、女性の社会進出が進む一方で病児保育や病後児保育の体制が十分でないと指摘。「子どもの具合が悪くなると、学校などから『迎えに来てほしい』とすぐに連絡が来る。しかし、核家族が多い現状では母親が仕事を休んで対応しなければならず、ひいては賃金などに響く」と述べ、実態を調査し対策を講じるよう求めた。
 螢─璽妊襯錺ぅ鸛輒撹長の高見章子氏=花巻市=は「DXの概念がきちんと理解されておらず、言葉だけが独り歩きしている。デジタル機器を導入するだけのことではないはず」と述べ、用語や考え方も含めしっかり周知し、浸透させるべきだと訴えた。
 このほか、螳ど製作所の阿部紀子専務=北上市=は、国立天文台水沢VLBI観測所が他地域にはない大きな魅力だとした一方、若手研究者が不安定な有期雇用状態にさらされる「ポスドク問題」に直面していると懸念。「県は国際リニアコライダー(ILC)のことはよく取り上げているが、天文台に対して何か支援する意向はないのか」と質問した。県南局の担当者は「ILC出前授業の際、一緒に参加して側面的なお手伝いをしてもらっている程度で、直接的なかかわりはない」と現状を伝えた。
 小島局長は「制度的な理由で県南局だけでは解決できない問題もあるが、いただいた意見や提言は本庁とも情報共有していきたい」と述べた。
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tanko 2023-11-21 10:20

写真1=木村栄博士が観測していた当時の床面が現れた眼視天頂儀室内部。中央の台座の上に、眼視天頂儀が据え付けられていた

 国立天文台水沢キャンパス=水沢星ガ丘町=で20日、国の登録有形文化財「眼視天頂儀室」の修繕工事中、建設当初の木製床が姿を現した。「Z項」を発見した初代所長、木村栄博士(1870〜1943)が、毎晩観測時に立っていた床面で、板の隙間からは天頂儀の台座に振動を与えない特殊な基礎構造も確認できた。新たなかさ上げ床を設置するため、当時の床は再び見られなくなる。(児玉直人)


写真2=眼視天頂儀室の外観。左後方は20m電波望遠鏡

 同天文台水沢VLBI観測所(本間希樹所長)は、今月13日から12月中旬までの予定で、眼視天頂儀室と眼視天頂儀目標台覆屋の修繕工事を実施。両施設とも老朽化が著しく、同天文台への寄付金を活用して事業着手した。文化財を良好な状態で残し、安全な形で一般公開できるようにする狙いがある。
 天頂儀室は水沢VLBI観測所の前身である水沢緯度観測所が、臨時緯度観測所として開所した1899(明治32)年に完成。木村博士らは同年12月11日から毎晩、天頂儀室で天体観測に当たった。やがて、時期は不明だが別の木板によって15cmほど床面はかさ上げされた。以降、開所当時の床を見ることは不可能となった。
 かさ上げ床は腐食が進んでおり、工事業者によって撤去されたところ、当時の木製床が姿を見せた。さらに板の隙間からは、眼視天頂儀の台座と建物の基礎部分の間に空間が設けられていることも確認できた。


写真3=眼視天頂儀室の設計図。振動を与えない特殊な基礎構造になっている=水沢VLBI観測所提供

 水沢VLBI観測所の蜂須賀一也・特任専門員(52)によると、わずかでも振動が天頂儀に伝わると正確な観測ができないため、台座と建物基礎は一体化していないという。「台座の基礎部分は2〜3mは掘っており、当時としては大掛かりな土木工事だったのではないか」と推測。「暑い日も寒い日も、木村博士がこの床面に立って観測し続けたことで、Z項発見があったと思うとしっかり残さなければいけない財産だと感じる」と話している。
 同時に修繕している目標台覆屋は、天頂儀室から北へ100mの位置にある。天頂儀室にいる観測者が、正確な北の位置を把握するための施設。修繕では覆屋の外壁や屋根の塗り直しを行う。
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tanko 2023-11-10 6:20
【ILC誘致は、はかない夢に過ぎない】
 一部の研究者は、世界の素粒子研究者たちに向け、北上山地にILC誘致が可能であるかのような言動を繰り返している。経済人や文化人らを寄せ集めた「ILC100人委員会」を結成させるなど、通常の大型科学技術施設を決めるシステム以外の方法で、実現を勝ち取ろうとしている。
 しかしそのやり方は、できもしない「地震予知」をできるかのような振る舞い、毎年100億円以上の関連予算を獲得している地震予知研究者の姿と二重写しに見える。
 東日本大震災など度重なる大地震を受け、地震予知はできないことが明確となっている。以前から地震予知はできないと主張している元東京大学教授のロバート・グラー博士は、著書『日本人は知らない「地震予知」の正体』(2011年8月、双葉社)の中で次のように述べている。
 「残念ながら地震予知はかなわぬ夢だ。地震予知というはかない幻影に、これ以上希望を託すのはやめようではないか。東日本大震災を経験した日本人は、今こそ現実に目を向けなければならない」
 ロバート博士の言う、はかない夢「地震予知」は、はかない夢「ILC誘致」と読みかえることができる。もはやILC誘致は、はかない夢に過ぎないのだ。

【国際科学都市ができるという「はかない夢」を子どもたちに教えるべきでない】
 日本における科学技術予算の貧弱さは、データ科学における人材不足も招いている。そのため海外から人材を求めようとすると、世界的な人材獲得競争に巻き込まれる。医療データ分野で海外の人材を求めようとした東京医科歯科大学の宮野悟特任教授は、月刊誌『選択』の本年8月号で次のように述べていた。
 「この間、海外の女性研究者4人に招聘を打診したが年俸1500万円では、『ワーキングプア(働く貧困者)』だと、けんもほろろに断られた。最近の円安はかなりの痛手だ」
 日本の国力の低下をまざまざと思い知らされる。
 誘致関係者らは、ILCが稼働した当初は20人レベルの研究者で始まるが、本格稼働すれば100人以上の科学者が集まり国際科学都市ができるとアピールする。過疎が進む一関市、奥州市の中山間地の人々に、はかない夢をまき散らしている。同じことを出前授業などで子どもたちにも吹聴しているのは誠に許し難い。
 ILC計画について検討した日本学術会議の所見回答(報告書)でも、オンラインなどを活用するリモート勤務の時代なので、たとえILCができたとしても科学者が施設の近くに住む必要がないと指摘している。国際科学都市ができないことはもちろん、ILC誘致自体が絶望的だと思う。子どもたちに虚偽的ではかない夢を教え込む出前授業は、私は罪深い取り組みだと感じる。
 科学技術に関する人材確保の面では、中国が抜きんでていることを知るべきである。2019年に開催された全国人民代表大会(全人代)の記者会見で、科学技術相は「基礎研究は科学技術革新の源であり、十分に重視する必要がある」と強調した。そのような中国の政策でできた一つが2016年、貴州省に設置された直径500mの世界最大の開口球面電波望遠鏡「天眼」である。
 このように先端科学に挑み費用を惜しまない中国の政策は、海外ハイレベル人材招致計画(通称・千人計画)に示されている。この対象に選ばれたのが、宇宙核物理で世界的な成果を挙げている国立天文台の梶野敏貴特任教授だ。2016年10月、北京航空航天大学に新設の「ビッグバン宇宙論・元素起源国際研究センター」の初代所長に就任し、翌年には北京航空航天大学の特別教授として招かれた。
 梶野氏は日本の教授職と兼務できる中国の研究環境を高く評価している。すぐに人を集められ予算も潤沢。日本より研究がやりやすい。政治体制から受ける印象とは違い、研究者は自由に世界を行き来しており、中国の勢いや可能性を感じるという。毎日新聞の取材に、そのような趣旨の話をしている。
 このような基礎科学への向き合い方を考えるならば、世界的水準の給料を出すことができない日本に100人以上の科学者を招聘するなどというILC計画は、はなかい夢に過ぎないことが分かる。
 いくら素粒子物理学の先端研究に没頭する専門家であっても、研究者を巡る待遇の日本と他国との違いを知らないわけがない。その上で「国際科学都市ができる」と語るというのは、「岩手県民の大部分は、このような事実を知るはずもなく、こちらの話をそのまま信じるだろう」と、高をくくっているようにさえ感じる。
 私たち岩手県人は、いつまでも惑わされ続けてはいけないのではないか。ロバート博士が地震予知で語った「東日本大震災を経験した日本人は、今こそ現実に目を向けなければならない」という言葉そのまま引用するなら、「ILC誘致は実現しないという現実に目を向けなければならない」と言いたい。
 先日、国立天文台水沢VLBI観測所が他国の天文台と協力し合い、ブラックホール研究に関する最新成果を発表した。世界的に注目を集める快挙を打ち出している水沢の観測所でさえ、働く身分が不安定な研究者がいるという問題も存在している。
 人件費も含め、県が行う毎年約3億円以上にものぼるILC誘致の関連予算。その支出をもっと有効な形に活用できるよう努めるべきではないか。

※千坂氏の名前の漢字表記は、山へんに「諺」のつくりで「げん」、峰で「ぽう」
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tanko 2023-11-3 14:30
 【科学リテラシーを持とう】
 現在、日本と欧米各国は財政難で、基礎的研究の実験施設であるILCに予算を付ける余裕はない。
 米国では1980年代に計画された素粒子加速器「SSC(超電導超大型加速器)」が、あまりにも経費がかかり過ぎ、建設開始後に中止に追いやられた過去がある。高エネルギー天体物理学などを専門とする戸谷友則氏は著書『宇宙の「果て」になにがあるのか』(2018年8月、講談社)で、SSCを引き合いに出し「あまりにも巨大化した加速器による素粒子研究が、人類の限界に突き当たったと言える」と警告を発している。
 今年6月の東北ILC推進協議会が主催した講演会では、昨年に続き講師を務めた東京大学の横山広美教授(科学技術社会論)が、社会的観点からも巨大プロジェクトの推進は、決して容易ではない旨を話している。日本の科学全体が発展してほしい時に、ILCのような巨大プロジェクト単体に多大な経費をかけるのではなく、多くの分野に配分したほうが良いことは明らかである。
 また、20kmのトンネルで実験を始めようとしている現計画では、巨費を投じる意義と価値は失われている。現計画はヒッグス粒子のクリーンな捕捉を目的にしているというが、すでに欧州原子核機構(CERN)でヒッグス粒子の存在がほぼ確認されている。次に課題になるのは、宇宙の23%を占めるとされる暗黒物質(ダークマター)に関する新粒子の発見である。ところがILCでこの新粒子を発見するには、50km以上のトンネルが必要と考えられる。このことから、ILC誘致によって20kmのトンネルが建設されたとしたら、なし崩し的に50kmまでの延長を言い出すことになるだろう。
 つまり、巨大な経費に見合う新粒子発見が期待できない“20kmILC”は、それを誘致する理由をほとんど失っている。しかしながら、いきなり“50kmILC”の誘致を言い出せば実現が遠のくというジレンマを抱えているのだ。
 宇宙誕生の謎を解明するための研究は現在、加速器による新粒子発見だけではなく、重力波検出など多方面にわたっている。2015年、米国の重力波検出器「LIGO」が、太陽質量の30倍もあるブラックホール二つが合体した際に生じる重力波を検出した。日本でも岐阜県にある「スーパーカミオカンデ」で、重力波を捉えようと計画しているが、この施設の建設費は100億円台だった。
 私は文系の研究者で、物理は高校で学んだだけだが、ILC誘致推進者でもある素粒子物理学者の村山斉氏らの著書を読んで、少しでも科学研究の現在を知ろうと努めてきた。間もなく80歳を迎えようとする高齢者だが、一部の研究者や誘致団体による都合のよい主張をうのみにしない力を持てたと思う。
 誘致関係者の好都合な話と、それを一方的に伝えている一部報道の情報のみを受け止めるのではなく、多くの県民の皆さんには科学リテラシー(読み解く力)を身につけてほしいと願っている。

 【県立大学は素粒子物理学者の雇用の場ではない】
 岩手県は巨大プロジェクト誘致のため、素粒子物理学者らを県立大学の重要ポストに置いている。誘致を推進する研究者にとって、俗にいう「おいしい存在」になってはいないだろうか。
 理工学部がない県立大に彼らを雇い続けるのは、奇妙と言わざるを得ない。私は、もはや巨大プロジェクト誘致は全く見込みがない状況だと思っている。彼らを雇い続けることは、本県の税金を無駄に使っていることにならないか。県は速やかに改めるべきである。
 2004年から始まった大学への運営費交付金減額政策により、大学では講座を維持するために研究機関などに属する研究員を研究所と兼任できる特任教授とし、あるいは定年退職した教授を特任教授として雇い入れている。若手研究者は5年の任期付きとして雇用されるなど、落ち着いて研究ができる環境が大学から失われつつある。
 このように、大学で専任教授職に就くことは大変厳しいのだ。ILC関係者の雇用にとどまらず、10月8日付の河北新報では、県立大理事長に就任した副知事経験者の報酬アップを巡り波紋を呼んでいると報じている。この件も含め、県立大運営に対する県の姿勢が、大きく問われていると感じる。

※千坂氏の名前の漢字表記は、山へんに諺のつくりで「げん」、峰で「ぽう」
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tanko 2023-10-27 18:20
 【東北大学を「卓越大学」の候補に認定】
 文部科学省は9月1日、世界最高レベルの研究力の獲得・育成を目指す「国際卓越研究大学」に東北大学を候補とし、認定を目指すと発表した。来年に正式認定されると、政府が設立した10兆円規模の大学ファンド(基金)の運用益から支援を受けられることになる。卒業生の私としては誇らしく、喜びを感じる。
 しかし、喜んでばかりもいられない現状がある。国は財政難から、大学の運営費交付金をこの20年間で1500億円も減らし、すぐに利益が上がる研究に振り向けた。安倍晋三内閣で顕著になった「出口志向」「川下の研究」と言われる、すぐ利益があがる研究への「選択と集中」である。
 この政策を進めるため、国は科学技術予算を内閣府に付けさせる「総合科学技術・イノベーション会議」を2001年に立ち上げた。内閣総理大臣のリーダーシップの下、一段高い立場から科学技術政策の企画立案や総合調整を行うなど、重要政策に関する会議の一つと位置付けている。大型研究開発プロジェクトを立ち上げ、公募して研究を選んだりしたが、ことごく成果を見ないで終わっている。そもそも会議では、経済界の意見を尊重する委員を選定しているのだから、基礎的な研究が選定されることもなかった。
 今回の卓越大学も、国の「選択と集中」政策の延長線上に生まれた構想である。その背景には、優秀と見なされる論文の数が2018―2020年の平均で日本が過去最低の12位と没落したことにある。さすがに国も日本が科学技術面で一流国と言えなくなった現状をまずいと考えたのであろう。
 しかし卓越大学に助成するファンドは、国が作った「科学技術振興機構」の運用利益による仕組みである。今まで国が各分野で行ったファンドによる政策では、国産有機ELパネル製造「JOLEDの経営破綻」をはじめ「クールジャパン」、農業関係、半導体などで赤字を出して解散したなど、失敗も多い。そのうえ今回の卓越大学では、「経済社会に変化をもたらす研究成果の活用」とのうたい文句もあることから、基礎的研究ではなく、どうしても出口志向の研究に重きを置くことになる。
 東北大学では今年、任期付き雇用の研究者や職員数百人の雇止めを行ったことが問題になっている。卓越大学は研究者の育成を目的としているが、今でも任期付き雇用が多い若手研究者の育成のことは、置き去りにされるのではないだろうか。
 「卓越大学」構想は基礎的分野の科学研究を軽視する流れの上にある。岩手県や一関市、奥州市が、素粒子物理学者らと誘致しようとしている国際リニアコライダー(ILC)も無縁ではなく、こうした根本的な流れを変えない限り、そもそも実現などあり得ないのだ。

 【中国に対する危機感を一部の研究者が利用するILC誘致運動】
 基礎的分野の研究に金を出したくない国の政策により、大型科学研究費が付きにくい状況は1960年代から一貫しており、その研究費はせいぜい1件当たり50億円から300億円である。それも数年にわたる支給となる。
 今回、東北大学が「卓越大学」認定候補になったのは、青葉山新キャンパスに設置される次世代放射光施設「ナノテラス」の存在が大きい。この設置が決まるまでには、産業界と仙台市から100億円以上の資金を集めることが要請された。300億円強の研究施設でさえ、国は単独支出を渋るのである。
 これをILCに当てはめると、予想される国の負担のうち、最低でも1割は地元負担とするであろう。ILC本体価格は8000億円と言われているが、国際協力事業なので国際入札での円安の影響と物価高も加味すると、最終的には1兆5000億円という規模も考えられる。その半分の7500億円をホスト国が持つとして、750億円は地元負担とするであろう。
 さらには県道、橋梁、トンネルなどの改良工事も地元負担が要請されるが、岩手県の財力ではできない。まして欧米各国は資金を出さないと明言している。このことからも国がILC誘致に乗り出すことはあり得ない。にもかかわらず、高エネルギー加速器研究機構(KEK)や国内素粒子研究者たちは、いかにも世界的協力体制が整ったかのように語っている。
 2026年に政府間合意、2030年ごろにトンネル工事着手などの“予定”を示している。この“予定”は、10年前にも見たことがある。中国の次世代型巨大円形加速器「CEPC計画」が明らかになった時で、中国に負けるなという危機意識をあおり、誘致実現に結びつける意図も見えた。研究者たちは今回も「中国がCEPC(円形電子・陽電子衝突型加速器)計画を明確にしてくる」かのような話をして、危機意識の醸成を図る可能性がある。
 しかし、CEPC計画に対する危機意識をあおったところで、ILC誘致に国が動くことはないだろう。北朝鮮の弾道ミサイル発射のたびに全国瞬時警報システム(Jアラート)を鳴らし、「敵基地反撃能力を持つミサイルが必要」と突出した防衛予算を付けるのに成功したのとわけが違う。

千坂氏の名前の漢字表記は、山へんに諺のつくりで「げん」、峰で「ぽう」
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tanko 2023-10-17 17:50

写真=半導体基板材料の「シリコンウエハー」を手にする田崎文得さん

 東京エレクトロンテクノロジーソリューションズ螢轡縫▲好撻轡礇螢好箸如∋堝盧濬擦療頂衒呼世気鵝37)は15日、水沢星ガ丘町の奥州宇宙遊学館(亀谷收館長)で講演した。同社で半導体製造装置の開発研究に携わりつつ、国立天文台の研究員時代から続けているブラックホール(BH)研究にも取り組む“二刀流”で活躍。極小と極大の相反する世界の魅力を熱く語った。

 千葉県出身の田崎さんは、京都大学大学院博士課程を修了後、2014年4月から同天文台水沢VLBI観測所の研究支援員、特任研究員としてBH研究に従事。2020年から同社の嘱託社員となり、現在は正社員として天文学研究で得た経験を半導体製造装置開発に生かす仕事に従事している。一方で、天文学研究も業務の一環として認められており、BH撮影を行った国際研究者チーム「イベント・ホライズン・テレスコープ(EHT)」の一員でもある。
 今回の講演は同館の定例行事「サイエンスカフェ」として開催。16人が聴講した。
 宮沢賢治の『やまなし』を小学校の国語の授業で読んだ際、文中に出てくる正体不明の「クラムボン」が、研究者になるきっかけとなったという田崎さん。「大人たちが研究しても正体が分からないものがあるんだ」と感じ、研究という言葉やその仕事に興味を抱くようになった。
 天文学で研究対象にしているBHは、地球からはるか遠く離れた場所にあり、質量は太陽の数十万から数億倍という、まさに“天文学的数字”を扱う世界。一方、生活に身近な電子機器の中に組み込まれている半導体の表面には、マイクロ叩100万分の1叩傍薜焚爾龍望の規模で、複雑な電子回路が形成される。
 全く真逆の世界の仕事をこなす田崎さんだが、密接な関係も見いだせるという。「半導体はポケットに入れているスマートフォンの内部、そして小惑星探査機やBHを観測するための電波望遠鏡にも使われている。半導体にはさまざまな元素が使われているが、その多くは星の中で作られ、宇宙の進化の過程で誕生した」などと説明した。
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tanko 2023-10-13 17:40

写真=ブラックホール研究や天文台の歴史を解説する本間希樹所長

 水沢地区センターと市が共催する生涯学習講座「立生(りゅうせい)大学」の本年度最終講座が12日、水沢聖天の同地区センター体育館で開かれた。国立天文台水沢VLBI観測所の本間希樹所長が地域史の話題を交えながら、同観測所が取り組んでいるブラックホール研究について講演。ユーモアも交えた分かりやすい解説に、受講生はうなずきながら聞き入っていた。
 立生大学は60歳以上の市民を対象に実施。論語の一節「本立而道生」の精神を基に、江戸時代の水沢に開設された郷学「立生館」にあやかっている。本年度は70人が受講登録。5月11日に開講し、6回の全体学習と受講生が選択する学部講座に励んだ。
 閉講式に先立ち行われた講演で本間所長は、日本が太陰太陽暦から太陽暦(グレゴリオ暦)に改暦してから今年でちょうど150年に当たると紹介。「改暦を中心になって行った和算家の内田弥太郎(内田五観)は、高野長英の弟子で獄中や逃亡中の長英を支えた人物。現在の暦の作成、主に春分の日や秋分の日、二十四節気を決めているのは私たち国立天文台だ」と、生活に身近なカレンダーが郷土の偉人や天文台に関係していることに触れた。
 旧緯度観測所時代からの成り立ち、現在の施設名称にある「VLBI(超長基線電波干渉計)」の意味も分かりやすく説明した。4年前に発表したブラックホールの撮影については、「誰もが納得する『目で見て分かる証拠』を示せたことが非常に重要」と強調。この快挙を祝い、市内の菓子業者がブラックホールの菓子を発売したが、「ブラックホールの可視化と菓子化に成功した」とジョークを飛ばし、笑いを誘った。
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tanko 2023-9-28 9:30

画像=巨大BHから噴出しているジェットが、こまのような首振り運動をしているイメージ図。この現象がBHが自転している証拠となった=(C)Cui et al.(2023),Intouchable Lab@Openverse,Zhejiang Lab

 国立天文台水沢VLBI観測所(本間希樹所長)などの研究者らで構成する国際研究チームは、直接観測不可能な巨大ブラックホール(BH)が自転している極めて強い新証拠をつかんだ。日本時間の28日付で英国の科学雑誌『ネイチャー』に論文が掲載された。本研究には、水沢の電波望遠鏡、スーパーコンピューター、そして人材の“3資源”が大きく貢献した。(児玉直人)

天文台水沢の人材、電波望遠、スパコン “3資源”の貢献大きく
 自転とは天体自身が回転する運動。基本的にどの天体も自転しているが、巨大BHが本当に自転しているのか、直接観測できないため確固たる証拠がなかった。
 国際研究チームは、BHから高速で噴き出すプラズマ粒子「ジェット」に着目。おとめ座の方向にあり、地球から5500万光年(1光年=約9.5兆km)離れている「M87」銀河中心部の巨大BHのジェットを観測した。
 2000年から23年分の観測データを分析したところ、ジェットの噴出方向が周期的に変化している現象を確認。こまが首を振るのに似た動きで、その周期は11年もの長さに及ぶ。BHが自転していなければ発生しない現象で、「極めて強い自転の証拠」とした。
 観測は日中韓に点在する計13台の電波望遠鏡を連動させて実施。同観測所敷地内に設置している直径20mの電波望遠鏡「VERA」も含まれている。同敷地にあるスーパーコンピューター(スパコン)「アテルイ供廚鮖箸ぁ観測結果の考察も行った。
 同観測所の秦和弘助教は「これまでのBH研究の成果発表では、水沢の研究者が携わってはいたが、VERAは使っていないなど、物足りなさを感じられたかもしれない。今回は参加研究機関それぞれに大きな役割を果たしたが、水沢では電波望遠鏡、スパコン、そして人材の三つで貢献できた」と笑顔。VERAを活用した研究成果が世界的権威のある『ネイチャー』に掲載されるのも、2002年の本格運用開始以来初めてのことだという。
 今後はBHの自転速度の特定、ジェット発生のメカニズムの解明などが期待される。

天文研究に国境なし(水沢観測所で活動した崔さんの論文基に)

写真=会見にオンライン参加した崔玉竹さん(右のモニター内)

 今回の研究は、中国・之江(ジェジャン)実験室所属の崔玉竹(ツェイ・ユズ)さん=湖北省出身=の学位論文が基になっている。2017年から2021年まで、日本の総合研究大学院大学に在学。水沢VLBI観測所で研究活動し博士号を取得した。27日に同観測所で行われた記者会見には、崔さんもオンラインで参加した。
 1、2年分の観測データを分析するだけでも大変な作業だが、本研究では23年分のデータを分析。一時は心が折れ「宇宙の研究を辞めたい」と思うほど落ち込んだが、指導教官の本間所長や秦助教ら周囲の支えもあり、今回の成果に至った。
 会見前日の26日は、水沢緯度観測所初代所長・木村栄博士の没後80年の節目。本間所長は「天文学はグローバルで国境のない世界。木村博士の時代から国際協力の精神が脈々と受け継がれている」と語る。
 短期的成果が求められる科学界にって、長年の地道な取り組みが実った今回の研究。本間所長は「次世代の研究者にいい成果を出してもらうには、継続的な観測を続けデータを積み重ねる必要がある。望遠鏡などのインフラをしっかり運用しなくてはいけない」と気を引き締めていた。
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tanko 2023-9-26 9:20

写真=盛岡市内で始まったILCに関する国際会議

 北上山地が有力候補地とされる素粒子実験施設、国際リニアコライダー(ILC)に関連した国際会議が25日、盛岡市内で始まった。大型加速器プロジェクトにおける環境負荷低減をテーマに岩手大学(小川智学長)が主催。国外からの研究者7人を含む39人が出席し、オンラインでも17人が参加している。27日まで。
 ILC関連の国際会議が盛岡市で開かれるのは、2016(平成28)年12月に国際研究者組織が主催した「リニアコライダー・ワークショップ(LCWS)2016」以来となる。
 初日は盛岡市盛岡駅西通のアイーナで、開会セレモニーと5人の研究者の発表が行われた。小川学長は「ILCの日本誘致活動も含め、新型コロナウイルス禍でここ数年世界の動きが停滞していた。今回のワークショップが、参加者の皆さんにとって実りあるものとなり、日本でのILC実現の新たな契機となることを願っている」とあいさつした。
 同大学は2013年に「ILC推進会議」を設置。地域自治体や推進団体と協力し、ILCの東北誘致を目指している。
 今回の会議は、ILCをはじめとする大型加速器プロジェクトにおける環境負荷低減の取り組みについて、現状や今後の課題を明確にしようと企画された。大型加速器の建設、運用、実験終了後の対応では、環境への影響を最小化し、持続可能な社会を実現するための対策が求められている。
 実行委員長を務めている同大学の成田晋也教授は、「研究していく中で、いかに将来に向け環境に優しいプロジェクトにしていくか。これをきっかけにしてお互い情報交換し、それぞれの研究成果を役立ててもらい、さらに進んだ研究をしていきたい」と期待を込めた。

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