人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市東部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)
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tanko 2023-2-10 18:10

ILC実現建設地域規制同盟会設立総会で祝辞を述べた塩谷立ILC議連会長。右はKEKの山内正則機構長=8日、一関文化センター

 超党派国会議員で組織するリニアコライダー国際研究所建設推進議員連盟(通称・ILC議連)の塩谷立会長(衆院比例東海、自民)は8日、一関市内で開かれたILC実現建設地域期成同盟会設立総会に出席。来賓祝辞の中で、日本学術会議が4年前に実施したILC計画に対する一連の評価手続きについて「あれは余分だった」と持論を述べた。
 塩谷氏が指摘したのは、文部科学省が2020(令和2)年度に策定した「学術研究の大型プロジェクトの推進に関する基本構想ロードマップ」に、ILC計画を搭載させるため実施した一連の手続き。文科省は当時、ILCを誘致するにはロードマップに位置付けられるなどの「正式な学術プロセス」を経る必要があると強調していた。
 ロードマップに搭載されるには、学術会議が策定する「学術の大型施設計画・大規模研究計画に関するマスタープラン」で、重点大型研究計画に選ばれるか、ヒアリング(聞き取り)審査対象となるのが条件。ILC計画はヒアリング審査対象になり、同計画を推進している高エネルギー加速器研究機構(KEK)は、2020年2月末にロードマップ審査の申請書類を提出した。
 しかし「国際協力体制が審査申請時より大きく進展したため」などの理由で自主的に取り下げた。この対応を巡っては、KEKが5カ月以上、地元誘致関係者に事実関係を伝えていなかった。
 期成同盟会の祝辞で塩谷氏は「文科省にもそれなりに協力してもらっているが、官邸に持ち込んでしっかり進めていくのがいいのでは」と、文科省の枠組みを超え、省庁横断的に取り組む体制の必要性に言及した。
 塩谷氏はこのほか「巨額の費用分担の在り方が大きな壁になっているのは事実。さらにここ3年、新型コロナウイルスの影響で、世界的な活動が難しくなっている上、各国が大型計画を抱え予算的に厳しいという状況もある。もう一度体制を立て直そうというのがここ最近の状況だ」と説明。「ILCの学術的意義は認められており、どういう手順で進めるかという段階になっている。誘致予定の地域に皆さんが集まり、期成同盟会をつくってもらったのは大きな力になる。共にILC実現に向けて頑張っていきたい」と力を込めた。
(児玉直人)
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tanko 2023-2-9 6:40

写真=岩手、宮城両県の関係自治体首長や議会関係者らが出席したILC期成同盟会の設立総会

 素粒子実験施設、国際リニアコライダー(ILC)の北上山地誘致実現を訴える「ILC実現建設地域期成同盟会」の設立総会が8日、一関市の一関文化センターで開かれた。新型コロナウイルス感染症の影響で国際的な交渉や機運醸成の場を設けにくく、進捗の実感が乏しい状況にある現状を打破しようと、参加自治体の首長らが誘致実現に向けた意気込みを力強く語った。
(児玉直人)

 同盟会設立発起人を代表し、一関市の佐藤善仁市長は「ILC候補地の地元として、継続的かつ組織的に活動すべきだとの話をいただき期成同盟会設立の運びとなった。東北におけるILC誘致を一日も早く実現したいと考えている。多くのご支持をたまわりたい」とあいさつした。
 議事では、規約など設立に関する3議案を原案通り可決。代表に佐藤・一関市長、倉成淳・奥州市長、菅原茂・気仙沼市長の3人を選出した。
 来賓祝辞などに続き、高エネルギー加速器研究機構の山内正則機構長が講演。技術的課題に取り組む新組織「ILCテクノロジーネットワーク」と、政府関係者間が議論できる土壌づくりを目指している「国際有識者会議」が活動している状況など、直近の動向を紹介。米国も欧州もそれぞれ、素粒子研究施設の建設や検討を抱えているとし、「その中でもILCは最も実現性が高い。適切なタイミングに向けて、今やるべきことを着実に積み重ねることが実現につながる最善の道だ」と強調した。
 同盟会発起人による決意表明で奥州市の倉成市長は「とても重要なプロジェクト。地域再生、持続可能なまちづくりを進める上でも重要」、金ケ崎町の高橋寛寿町長は「周辺地域の経済文化に大きく貢献する。建設実現に向け町議会と共に頑張る」と訴えた。
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tanko 2023-2-7 19:50
 素粒子実験施設「国際リニアコライダー(ILC)」の誘致実現を目指している岩手、宮城両県の自治体などは8日、「(仮称)ILC実現建設地域期成同盟会」を設立する。本県南部の北上山地が有力候補地に選定され今年で10年。さまざまな情勢変化やプロジェクト推進に対する慎重論もあり、当初想定を上回る形で誘致運動は長期化。新型コロナウイルスの影響もあってここ数年は進捗(しんちょく)が停滞している雰囲気さえあり、直近の県民意識調査でもニーズ(必要性)は他施策より低調だ。自治体首長や議員、経済団体トップらがこぞって誘致運動をリードしてきた手前もあり、期成同盟会を立ち上げて“地元の熱意”をあらためて示す狙いがあるとみられる。
(児玉直人)

 期成同盟会設立発起人には、倉成淳奥州市長や高橋寛寿金ケ崎町長を含む北上山地周辺の自治体首長と誘致団体の代表ら13人が名を連ねている。倉成市長は代表発起人(5人)の一員でもある。設立総会は8日、一関市の一関文化センターで開かれ、規約や役員選出、事業計画の各議案を審議し、承認される見通し。同盟会事務局は一関市ILC推進課内に設置される予定だ。
 奥州市ILC推進室の二階堂純室長によると「期成同盟会設立の話は、早い段階からあった」という。既存誘致団体、国会や関係自治体の議員連盟、ILC計画を地域関係者に提唱してきた素粒子物理学者らとの共通理解形成、調整などに時間を要した。既存誘致団体との違いについて、二階堂室長は「建設候補地により近い自治体や関係団体を構成メンバーとすることで、地元の熱意を政府に伝える意味合いがある」と説明する。
 ILC計画の存在は2009年ごろ一般県民に知られるようになった。推進派の素粒子物理学研究者らによる講演会などによって周知が進められた。13年には、研究者らにより北上山地に国内候補地を一本化。早期実現への機運が一気に高まった。
 しかし、日本学術会議や文科省ILC有識者会議における協議の中で、巨額な建設・運営コストの国際分担、プロジェクトの進め方、国民理解などに対する課題が度々指摘された。一部の地元住民からは、施設の安全性や教育現場を利用した周知活動に疑問を呈する声も上がった。
 県が昨年まとめた最新の「県施策に対する県民意識調査」では、ILC誘致を見込んだ外国人研究者受け入れに関しては、重要度が他施策より大幅に低く、満足度も平均以下という結果が得られている。
 こうした背景もあって、北上山地に候補地が一本化されたものの、地元誘致団体が思い描いていたようなスピード感でスケジュールが推移していない。「今年が正念場」と、高揚させる言葉が何度も繰り返されてきた実態がある。
 当初は本年度中に日本誘致を前提とした準備研究所(プレラボ)開設も想定されていたが、有識者会議の慎重論もあって、研究者側は戦略の練り直し。重要度の高い技術課題の解決などを優先的に進める新組織「ILCテクノロジーネットワーク(ILC TN)」を立ち上げている。研究者サイドの取り組みは、北上山地周辺地域に直接見える形で行われているわけではないため、進捗感が乏しいとの雰囲気になっているとみられる。

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