人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市東部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)
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tanko 2022-9-7 18:20

写真=出前授業で天文学や研究者の仕事について解説する本間希樹所長

 国立天文台水沢VLBI観測所の本間希樹所長は6日、観測所近くの市立水沢南小学校(菅原文彦校長、児童657人)を訪れ、5年生108人を対象に出前授業を行った。天文学者など学術研究者の仕事の一端を紹介。「研究には失敗がつきもの。失敗は嫌だと思われがちだが、何が悪かったか分析し、次へ進む前向きな気持ちを持ってほしい」と呼び掛けた。
 同観測所と市が連携して実施する「キラリ☆奥州市天文教室」として実施。子どもたちに宇宙や天文学への興味、関心を高めてもらいながら、120年余りの歴史を持つ研究機関が身近にあることへの誇りと、郷土愛の育成につなげる狙いがある。
 校章は星をイメージし、校歌に同観測所の前身「緯度観測所」がうたわれている同校。北校舎からは、観測所本館や電波望遠鏡を望むことができる。校長室から体育館へ通じる廊下には、緯度観測所初代所長の木村栄博士の功績をまとめた写真、本間所長らが携わったブラックホールの撮影に関する新聞の切り抜きなどが掲示され、普段から“ご近所”の天文台に関心や親しみを持つ取り組みをしている。
 出前授業で本間所長は、研究者の仕事や水沢で行っている観測の概要、ブラックホールがどんな天体なのかを解説。「ブラックホール撮影のようなプロジェクトは、世界中の天文学者が参加しており、そこでの会話は全て英語。皆さんの中には『なぜ、他の国の言葉を勉強しなくちゃいけいないんだ』と思っている人もいるかもしれないが、こういう場面でのコミュニケーションで大事になってくる」など、学校での普段の授業が研究者の世界でどのように生かされているのかを分かりやすく説明した。
 子どものころに星空を眺めて天文学に興味を持ち、「幸いにしてそれが仕事になった」と本間所長。「好きなことを複数見つけ、いろいろなことに挑戦し、失敗はいいことだという前向きな心を忘れないでほしい」と、将来の社会を担う児童たちに呼び掛けた。
 児童からは「ブラックホール以外に目指している研究はあるか」などの質問も。本間所長は「宇宙人探しをやってみたい。まじめに研究している人たちもいて、仮に見つからなかったとしても、それだけ地球人である私たちの存在が非常に貴重なものだということが分かる」と答えた。

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