人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市東部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)
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tanko 2022-4-21 10:00

写真=クラウドファンディングへの協力を呼び掛けている本間希樹所長

 国立天文台水沢VLBI観測所(本間希樹所長)は20日、若手研究者への支援を主目的に、一般市民や企業・団体等から資金を調達するクラウドファンディングを始めた。6月17日までの間、1000万円を目標に寄付を呼び掛ける。基礎研究に関する国の予算が頭打ち状態にあり、有望な若手を育てる環境の厳しさが背景にある。同天文台が公式にクラウドファンディングを実施するのは今回が初めて。
(児玉直人)

 同観測所では、複数の電波望遠鏡を連動させて、精密な天体観測を行う超長基線電波干渉法(VLBI)を活用した研究をメインに展開している。近年は、本間所長ら同観測所の主要メンバーが参加する国際プロジェクト「イベント・ホライズン・テレスコープ(EHT)」によるブラックホール撮影が大きな話題となった。
 歴史的な研究成果に貢献している同観測所だが、国の基礎研究に対する予算は頭打ち状態にある。研究の最前線に立つ若手研究者の育成にも影響。天文学に限らず基礎研究全体が、厳しい台所事情に悩まされている。
 「若い人たちが安心して研究に打ち込める環境づくりを進める上では、国だけに頼らない財源確保をしていかなければならない」と本間所長。地元企業の協力による若手研究者の支援対策もしてきたが、一般市民を含めた幅広い応援を得ようと、クラウドファンディングに初挑戦することとなった。
 クラウドファンディング支援するREADYFOR(株)=東京都千代田区=のサービスを活用。目標金額は1000万円で、目標金額に達した場合のみ支援金を受けられる「All or Nothing型」で実施する。期限まで達成できなかった場合は、寄付者に返金される。
 支援コースは寄付金額や記念品の有無によって15種類ある。最も手軽なのは3000円で領収書とお礼メッセージのみ。最高額は300万円で、同観測所敷地内の木村榮(きむら・ひさし)記念館の芳名板に名前が掲げられ、特別感謝状が贈られる。300万円で記念品ありを選択すると、オリジナル南部鉄器風鈴や本間所長による観測所案内ツアーやオンライン講演会などが体験できる。
 支援申し込みは、インターネットで「国立天文台 レディーフォー」と検索。「国立天文台 水沢VLBI観測所 進むブラックホール研究にご支援を」などと表示されたリンクへ進む。寄付金の支払いはクレジットカードまたは、銀行振り込みで。寄付額にシステム使用料220円が加算されるほか、銀行振り込みの場合は手数料が発生する。
 問い合わせは同観測所(電話0197・22・7111)へ。
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tanko 2022-4-14 9:50
 北上山地が有力候補地とされている素粒子実験施設「国際リニアコライダー(ILC)」の実現を目指している素粒子物理学者らの組織は、「国際推進チーム(IDT=International Development Team)」の活動を1年間延長する見直しを図った。IDTはILC準備研究所(プレラボ)の設置に向けた事前準備を進めてきたが、文部科学省ILC有識者会議はプレラボ設置を「時期尚早」と指摘。早ければ本年度中にもプレラボを設置する予定だったが、IDTの体制を維持したまま利害関係者の支持拡大を図る。
 今回の修正は、このほど開かれた国際将来加速器委員会(ICFA)で協議され、今月10日付でICFAが公式ホームページ(HP)で明らかにした。
 ICFAは素粒子物理実験を行っている世界の主要加速器研究所の代表らで構成する国際組織で、一昨年8月にプレラボ設置を見据えてIDTを立ち上げ。昨年6月にはプレラボ提案書を公表した。政府等の理解を得て、早ければ本年度中にもプレラボを開設し、ILC建設への大きな弾みにする――という趣旨のシナリオを描いていた。
 しかし文科省の有識者会議は、研究意義は認めるものの、IDTが示した提案に基づくような形でのプレラボ設置は「時期尚早」と結論。ILC計画のみならず、素粒子物理学や加速器科学全体の将来像、研究開発戦略を再構築する時期に来ていると指摘した。
 有識者会議の結論を受け、ICFAは当初1年から1年半程度としていたIDTの活動期間を延長。「研究機関や研究室間の国際的な連携をさらに強化し、日本におけるILC実現に向けた幅広い支持拡大のため活動していく」とした。

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