人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市東部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)
投稿者 : 
tanko 2021-6-21 11:10

写真=新著「宇宙の奇跡を科学する」を手にする本間希樹所長

 国立天文台水沢VLBI観測所の本間希樹所長(49)による新著『宇宙の奇跡を科学する』がこのほど、扶桑社から出版された。宇宙の誕生から現在、そして未来について最新の科学的知見に基づき解説。さまざまな奇跡を経て、私たち人類が存在している点を伝えている。255ページ、定価946円(税込み)。
 本間所長単独による著書は『巨大ブラックホールの謎 宇宙最大の「時空の穴」に迫る』(ブルーバックス)、『国立天文台教授が教えるブラックホールってすごいやつ』(扶桑社)に次ぐ3作目となる。
 『巨大ブラックホールの謎』は、本間所長が専門とするブラックホール研究をメインに解説。『ブラックホールってすごいやつ』は水沢出身の漫画家で、本間所長も大ファンだという吉田戦車氏のイラストをふんだんに交え、ブラックホールや宇宙の謎をコミカルに、分かりやすく伝えている。
 今回の新著は宇宙誕生から今後について、より深く解説。内容は中高生以上向けで、専門的な文脈もあるが、写真や図などを入れて、これまで解明されている宇宙の姿をあらためて整理している。特に最終章「これからの宇宙像と人類の未来」は、宇宙人の存在など空想科学小説(SF)のような世界や、国連が定める持続可能な開発目標(SDGs)にも関連する内容だという。
 「これだけの星が存在しているのだから、私たち人類以外の『宇宙人』が存在するというのは、決して雲をつかむような話ではない」と本間所長。「もし宇宙人に会えるとしたら、どうすれば文明は持続できるのかなど、見習うべき点はたくさんあるはず。ロマンのような話に見えて、実は人間の未来を占うことでもある。これからの天文学で『こんな研究が面白くなる』という夢を若い世代に提供できたら」と話している。
投稿者 : 
tanko 2021-6-19 11:00

電波望遠鏡を背に、北緯度8分線を横切る聖火ランナーの本間希樹さん=水沢星ガ丘町

 東京五輪の県内聖火リレーが18日、胆江2市町をはじめとする本県内陸部の自治体で行われた。奥州市では水沢市街地で公道も使って実施。沿道には多くの市民や小中学生、幼児らが詰め掛け、ランナーを応援した。金ケ崎町では、トヨタ自動車東日本岩手工場のほか森山総合公園陸上競技場を1周。地元の児童生徒がエールを送った。新型コロナウイルスの広がりが深刻な盛岡市では公道を使ったリレーが中止されるなど、感染症対策を優先した今大会の聖火リレー。県内での全日程を終えた。

 奥州市内のリレーは、水沢星ガ丘町の国立天文台水沢キャンパスの電波望遠鏡前が始点。同キャンパスを拠点としている水沢VLBI観測所の所長、本間希樹さん(49)が第1走を務めた。
 和太鼓が鳴り響く中、午前10時42分にスタート。120年前、国際緯度観測のために設定された北緯39度8分のラインを横切り、奥州宇宙遊学館前を目指した。
 初代所長・木村栄の胸像が見守る前で、第2走の村岡康仁さん(39)=奥州市=が持つトーチに聖火を移す「トーチキス」が行われた。さらにトーチを天体望遠鏡に見立てて空を眺めるポーズを取るなど、天文台ならではの演出も見せた。
 県外在住のランナーも交えながら、聖火は市役所前の大手通りへ。第7走者の並木徳仁さん(48)=川崎市=から聖火を引き継いだのは、今リレー本県最高齢ランナーの大崎ミオさん(90)=奥州市。両目に障害があるため、孫の青木望実さん(29)=埼玉県=が伴走役を務めた。
 JA岩手ふるさと大手通り支店南側の路上から後藤伯記念公民館前まで、250m余りの道のりをしっかりとした足取りで進み、5分足らずで走破。笑顔でゴールに到着した大崎さんは「恥ずかしいけれど頑張りました。ありがとうございました」と沿道に集まった市民らに応えた。
 福島県郡山市から駆け付けた大崎さんの孫、新沼丈さん(26)は「元気に完走してくれれば、それだけでありがたいこと」。小沢昌記市長は「大崎さんの健脚がしっかりと聖火をつないでくれた。市民の皆さんも大崎さんにならい、笑顔で長生きしてほしい。コロナ対策を万全にし、五輪を楽しんで」と呼び掛けた。
投稿者 : 
tanko 2021-6-4 12:30
 素粒子実験施設「国際リニアコライダー(ILC)」計画に関連し、高エネルギー加速器研究機構(KEK、山内正則)と高エネルギー物理学研究者会議は2日付で、ILCを取り巻く主要課題への対策をまとめた回答を文部科学省に提出した。装置運用時に発生する放射線の防護策については「住民理解を得るため、継続して説明会を実施する」などとしている。一方、KEKを拠点に活動しているILC国際推進チーム(IDT)は、ILC準備研究所(通称=プレラボ)に関する提案書を公表した。(児玉直人)

 ILC計画は、国内外の素粒子物理学者らが中心となって推進している。当該分野の研究者らは昨年、IDTを立ち上げプレラボの設立準備に着手。今月1日付で「プレラボ提案書」を公表し、プレラボの役割や作業計画の概要を示した。
 プレラボで行う作業には、2018(平成30)年に文科省有識者会議や日本学術会議から指摘されていた課題への取り組みも少なくない。研究者側の対応状況や見解、今後の方針を明確にするため、KEKなどは同提案書とほぼ同時に「回答」もまとめた。
 回答の提出は「文科省が特に求めていたものではない」(同省素粒子・原子核研究推進室)という。KEKなどは「課題解決の活動が進んでおり、残された課題を解決するにはプレラボにおいて、国際協力の下で対応していく必要がある点を関係者に理解してもらいたい」と趣旨を説明。▽国際的な研究協力・費用分担の見通し▽学術的意義や国民・科学コミュニティーの理解▽技術的成立性の明確化▽コスト見積もりの妥当性▽人材の育成・確保の見通し▽その他――に大別し、取りまとめた。
 費用分担に関しては「最終的には政府間協議で決定される事項」とした上で、「協議に必要な研究者側の支援は、プレラボの主要任務。政府間分担協議に必要な研究者側の体制は、プレラボの設立によって整う見通しだ」とした。
 2015年以降、延べ約19万人がILC講演会や関連施設の見学に参加した実績を示しつつも「他分野や国民理解を得る努力はまだ十分ではない」と認識。対外的な広報や理解周知活動は、プレラボの重要任務の一つだとし「さらなる理解促進に努める」とした。
 放射線防護や放射性物質の長期管理に関する課題は有識者会議、学術会議双方から指摘があり、有力候補地である北上山地周辺の地元住民からも懸念の声が出ている。回答では「プレラボで関連施設・設備の詳細設計を完了させる」「住民理解を得るため、継続して説明会を実施する」との考えを示した。
 回答提出に先立ち公表された「プレラボ提案書」に関し、IDTの中田達也議長(スイス連邦工科大学ローザンヌ校教授)は「マイルストーン(中間目標)の達成だ」と強調。「ILCに関心を持つ研究所の経営陣が、プレラボ活動の責任分担について本格的に議論するためには、日本政府から何らかのシグナル(意思表示)が必要」とコメントしている。

当ホームページに掲載の記事・写真の無断転載を禁じます。すべての著作権は胆江日日新聞社に帰属します。
〒023-0042 岩手県奥州市水沢柳町8 TEL:0197-24-2244 FAX:0197-24-1281

ページの先頭へ移動