人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市東部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)
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tanko 2020-10-7 9:20

写真=東京都港区にある日本学術会議の講堂(資料)

 日本学術会議が推薦した新会員の候補者6人が任命されなかった問題が、連日報道されており、任命権者である菅義偉首相の対応に批判が相次いでいる。一方、学術会議の在り方を問う声に混じり、素粒子実験施設「国際リニアコライダー(ILC)」計画に厳しい所見を出した同会議を中傷するような投稿が、会員制交流サイト(SNS)で散見される。ILC推進派で岩手県立大学長の鈴木厚人(すずき・あつと)氏は「今回の件とILCへの見解の話は全く別」とし、同列で議論すべきことではないと指摘する。(児玉直人)

 同会議の会員は210人。任期は6年で、3年ごとに半数を入れ替える。今年はその改選年に当たり、同会議は内部選考を経て決定した新会員105人の名簿を内閣府に送付していた。
 ところが首相が任命するとした会員は99人。6人を除外した理由について、首相以下政府関係者は明らかにしていない。しかし、6人は安倍前政権の政策に否定的な見解を持っていたといい、学術関係者や野党などから政治権力の介入を問題視する声が噴出している。
 ILC誘致活動が展開されている本県では、計画を巡る審議がたびたび注目されたこともあり、同会議は一定の認知度がある。ILCを推進する研究者の一人で、広島大学大学院教授の栗木雅夫(くりき・まさお)氏は「(同会議は)会員選考過程や基準が明確でないなど、一定の問題は感じている」としつつ、「学術の独立性を尊重するという視点から、今回の政府の措置は問題が多い」と指摘。鈴木氏は「政府側が除外した理由、学術会議側が推薦した理由それぞれがオープンにならないと善しあしの判断はできない」との考えを示した。
 同会議副会長を歴任した東京大学名誉教授の家泰弘(いえ・やすひろ)氏は「『暴挙』というより『稚拙』という印象」。文部科学省ILC有識者会議で委員を務めた、元国立天文台長の観山正見(みやま・しょうけん)氏は「大変残念なこと」と語る。
 首相サイドの対応に批判が集まる一方、同会議の在り方に疑問や批判を投げ掛ける意見もある。さらに、同会議が2度にわたりILC計画に厳しい所見を示した点を引き合いに「ILCに反対した組織」「ILCを潰したから廃止にしていい」といった投稿が、SNS上にここ数日散見されるようになった。
 栗木氏は「学術会議の所見にはILCに批判的な意見もあったが、学術において健全な批判は必要。むしろ計画の健全性を担保するのには必要なこと」と話している。
 所見をとりまとめた委員会の代表でもあった家氏は、「会員になることや、利益誘導をするのが目的などと勘違いしている人も中にはいる。しかし、多くの会員は学術の在り方を真摯に考え行動している。ILCの所見についても、後世の検証に十分耐えられるものと自信を持っている」と主張する。
 科学技術論、科学コミュニケーション論の観点からILCを注視している、東京大学大学院教授の佐倉統(さくら・おさむ)氏は「学術会議の在り方には批判されるべき点が多々あるが、今回の首相の行動は全くの別問題」とした。SNS上の投稿に関しては「論評に値するものではない」と切り捨てながら、「ILC計画に問題は多く、学術会議の判断は妥当なもの」と評価する。
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tanko 2020-10-7 9:10
 テレビを見ていると、5G(ファイブジー)のコマーシャルがよく流れる。5Gは第5世代移動通信システムを意味し、スマホなどは現在の4Gより格段に性能がアップする。アメリカ、韓国では昨年4月から、中国では同年10月末から運用が始まり、日本では今年3月からサービスが開始した。
 5Gに関するネットの検索をして驚いたのは、健康被害を警告する記事が多いことである。共通するのは、ミリ(メートル)波による人体への影響。ミリ波とは、マイクロ波のなかでも高い周波数(30〜300ギガヘルツ)の電磁波(電波)を指す。5Gでは2G〜4Gまで使用されてきたマイクロ波に加え、ミリ波を使用する。
 ミリ波は直進性が強く、大容量のデータを伝送できる。このため衛星通信や電波望遠鏡、車載衝突防止レーダーなど多岐な用途に使われる。一方、アメリカ軍は暴動鎮圧用などの目的で、ADSという電子銃の開発を進めている。5Gの技術はもともと電磁波兵器として開発されたと指摘する記事も。
 ミリ波については「人間の皮膚の数ミリ以内及び角膜の表面層でほとんど吸収され、末梢神経系、免疫系、心血管系などに有害な生理学的影響をもたらす」「生殖能力、脳、心臓機能、遺伝子にも作用を与える」と警鐘を鳴らす専門家が少なくない。電磁波による発がん性の恐れも指摘されている。
 ミリ波を使う5Gでは、100〜200メートルごとにアンテナを設置する必要があるという。そうなると、より強い電磁波を多く浴びることになる。5Gの電磁波の浸透力は強く、ビルの壁などもすり抜ける。5G用の通信衛星が地上の基地局に送電すると、いやおうなしに人間や動物に降り注ぐ。
 なかには、5Gの電磁波で昆虫が絶滅し、環境にも悪影響をもたらすと指摘する専門家も。これらの警告が杞憂に終わればいいのだが、もしも将来的にこれらの警告が現実になったらと思うと、背筋が寒くなる。
(史)
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tanko 2020-10-6 10:00
 菅首相は就任早々、説明責任の追及を受けている。日本学術会議が推薦した会員候補者を任命しなかったことに対する説明だ。報道各社は学者らの見解を引用しながら、学問への政治介入として批判的。首相官邸前では抗議デモが行われるなど、問題視する動きが広がる。
 報道によると、学術会議は3年に一度、半数の105人を改選する。内部での選考を経て、臨時総会で候補者が承認され、時の首相が任命する。今回、内閣府から学術会議の事務局に送られてきた名簿には99人の名前しかなく、6人の名前がなかったことで問題が表面化した。
 学術会議側が内閣府に問い合わせると、「人事上の問題は回答できない」との返答。指摘されているのは、前安倍政権の政策に対して否定的な意見を持つ人たちが任命されなかったことにある。安全保障や組織犯罪処罰法などの法制度に反対の立場を取ったことで、排除されたのではないか、との見方だ。
 学術会議といえば、当地域を含む「国際リニアコライダー(ILC)」誘致問題でも重要な役割を果たす研究者組織として知られる。政府とは独立した立場で提言する「科学者の国会」とも呼ばれているそうだ。任命されなかった6人に、ILC問題などにあたる素粒子物理学の研究者は含まれていないが、前政権の主要政策に批判的な言動を取っている人たちという。
 菅首相は、就任後最初の記者会見で前政権の取り組みを継承することを明言した。安倍政権に非協力的な人材を排除したとの見方が広がっているのは、首相本人も不本意だろう。
 かつての国会審議で、首相の任命が「形式的な発令行為」との答弁もあったようだ。学術会議法の条文を読むと、内部の推薦に基づき、内閣総理大臣が任命する、とある。任命権があるということは、任命しない権利もあるということか。ならば、理由を説明する責任はあるというのが、世の中の見方だと思うのだが。
(和)
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tanko 2020-10-4 7:30
 「仕事師内閣」など自画自賛して登場した菅義偉内閣は、高い支持率で始まったが、早くも「馬脚」を現した。安倍内閣の後継とはいえ、そこまで独善的な体質になるようにはみえなかったのだが、政府系機関のありとあらゆる人事に介入し、自分たちに意見する人たちを排除しようとしているらしい。その端的な表れが、日本学術会議への介入である。
 日本学術会議(会員210人、任期6年)は、任命権そのものは内閣にある。しかし、これまでは会議が推薦した会員候補をすべて追認してきた。ところが今回菅内閣は、105の推薦者のうち6人の任命を拒否したのである。どうやら、政府に対する反対意見などを過去に述べたことが原因らしい。
 戦後、学術会議が推薦した学者を政府が拒否した例は一度もなかった。なぜかといえば、政治は学問に介入してはいけないからだ。「学の独立」は、あの明治憲法下でさえ、大学の基本だった。
 学問の何を承知で介入する破廉恥を冒しているのか。いわば総理とその周辺の幼児性による。しょせん「仲間内」に対する異常な執着の裏返しにみえる。政治の世界の感情が、学問、科学の世界にまで踏み込む愚。その罪は大きいといわなければならない。
 たまたま、安倍氏の病気による首相退任が、日本人のやさしさによる「判官びいき」につながり、高い支持率に助けられているこの機に、学術の世界にまで汚い手を入れようとする感覚。これはかなり危険な心根の内閣というほかない。しばらくは「お手並み拝見」と考えていたが、看過できなくなってきた。
 司法に影響を与えようとイエスマン検事を「検事総長」に据えようとして失敗したことと、同一線上にこの問題はあって、国民が知らないうちに、自分たちの「思いのまま」の社会をもたらそうとする、独裁者の危なさを感じる。
 携帯電話料金の引き下げ、行政改革、デジタル化といった、確かに魅力的な「仕事」を強調している。しかしその陰で、けっして行ってはならない「陰謀」が進行していることに、私たちは気づかなければならない。

■日本学術会議
 日本の科学者を代表する組織として、戦後間もない昭和24(1949)年に発足した。法律(日本学術会議法)により「独立した機関」として活動していて、麻生副総理の祖父「ワンマン」といわれた吉田茂は、その発会で「国の機関ではあるけれども、その使命達成のためには、時々の政治的便宜のための掣肘(自由を妨げる干渉)を受けることがないよう、高度の自主性が与えられている」とあいさつした。
 公選制から推薦制に改められた時にも、「推薦を拒否はせず、任命する。政府が干渉したり中傷したりすることはない」というのが政府の公式見解だった。
 日本学術会議は、総会で任命拒否を問題視し、政府に拒否理由開示を請求したが、政府はそれに応えていない。

 学問は、古代ギリシャでプラトンが「アカデメイア」を創設して以来、政治干渉を受けないように発展してきた。政治は、権力闘争の修羅であり、学問は純粋に追求すべき人間学だと考えられてきたからだ。
 中国では、科挙といわれる独特の厳しい官吏登用試験があって、門閥とはべつに官吏が採用された。このため、西洋の「アカデミー」を訳す際「翰林院」という言葉をあてた。
 翰林院は、学問の場というより、学者や高級官僚たちを集めた皇帝の諮問機関のようなもので、皇帝の「勅書」の起草や記述などを行った。学問好きだった唐の玄宗皇帝が設けたことで知られている。この場合には、政治に近い位置にある。しかし、中国でも長く「竹林の七賢人」ではないけれど、賢人は「臥竜」するものなのである。
 西洋のアカデミーは、貴族社会など政治の干渉を受けもしたが、それらの影響を排除する方向で芸術や文化を高めようとしてきた。
 日本では江戸期、学問所が各地にあったが、政治に近い学問、とりわけ朱子学においては、みるべき成果は何もなかった。むしろ、大坂・緒方洪庵の適々斎塾やシーボルトの鳴滝塾といった蘭学の「私塾」に俊英が集まった。
 保守派の論客、西部邁は「アカデミズムは、山の上に住む世捨て人の仙人のようなのものだ。普段は世の中にまったく知られていないことを、ひたすら研究している変わり者たち。それが、里人が何か困ったとき、意見を述べに山から下りてくる。それは里人のために日々に欠かさず考え抜いてきたからだ」
 学問は、アカデミズムは孤高であり、純粋であって政治とは相いれない。ところが、政治はしばしば干渉したがる。今の政治が我欲に落ちている証左と言っていい。

■政治弾圧
 表立った学問に対する政治介入は、「天皇機関説」を掲げていた美濃部達吉博士に向けられた。美濃部の学説は、当時の常識だったが、右翼議員たちが天皇の権威をさらに高め、その玉座の陰に隠れようとする悪意に満ちた工作をした。
 昭和10(1935)年2月、尊王的で貴族院議員だった美濃部は、右翼議員によってつるし上げにあい、それに同調した政友会が政局にしたため、学説そのものが葬られた。美濃部は「起訴猶予」ではあったが、失意のうちに議員を辞任した。
 大学自治に対する干渉は昭和13年、近衛内閣の文部大臣に就任した陸軍大将荒木貞夫によって始まった。それでなくても、数人の学者たちは、政治がらみで大学を追われていたが、皇道派の荒木が主張したのは、大学の学長を教授会が選ぶのは「天皇の官吏任免の大権をおかすものだ」という理屈だった。「帝大総長は官選とする」と荒木は言い出したが、各大学は一斉に反発した。そうなると、今度は、個別の教授をやり玉に挙げる動きが出た。
 大学の教授たちは、個々に持論がある。一枚岩とはいえない。それにあおられて大学に内紛も起きた。そこが政治につけ入るスキを与えた。
 昭和14年、古代日本史の権威津田左右吉が出版法違反で起訴された。神代史研究が政治の逆鱗に触れた。そこで大学の自由も、学問の自由もすべて失われた。そのあとには戦争が待っている。

■歴史への反省
 ひたすら反省と自虐のために歴史があるのではない。が、現代人の私たちが決して間違いをしないよう、先人たちに学ぶことを怠ってはならない。それが歴史であることはいうを待たない。
 政治が学問に介入する世の中が迫っている。私たちはそれを身近に感じる時代に差し掛かっていることを思わなければならない。新型コロナによって、大学はようやく学内での講義が始まったばかりだ。「学の独立」の大切さ、いまの生活に直面する人たちにとってそれは「どうでもいいこと」にみえるかもしれない。が、それを許すことは、普通の人たちの暮らしを息苦しくする第一歩なのである。それを歴史の教訓は教えている。
 日本のアカデミー組織は、日本学術会議だけでなく、学士院もあるが、純粋に、誰からも干渉されることなく研究に没頭してもらう、そのことが日本のためになる。幼い政治はそこに気付かない。
 学問に国が介入することが当然のようになっている国が世界中にはある。とくに、共産国、独裁国家などでは顕著だ。日本はそちらに近づきたいのか。最近、国の羅針盤が怪しくなってきた。

■任命拒否
 日本学術会議の推薦を内閣に拒否された学者は、東京慈恵会医科大小沢隆一教授(憲法学)、早稲田大岡田正則教授(行政法学)、立命館大松宮孝明教授(刑事法学)、東京大加藤陽子教授(歴史学)、京都大葦名定道教授(キリスト教学)、東京大宇野重規(政治学)の各氏。安保法制など、いまの自民党政治に批判的な見解を表明した学者たちは、内閣が率先して排除しようというわけだ。
 3年ごとに半数が改選される日本学術会議の会員。推薦した京都大学の前総長で霊長類学者として知られる山極寿一前会長(総会で退任)は「任命拒否は日本学術会議の歴史になかったことで重大。大変残念だ。首相に説明を求めている」と退任の言葉を述べた。
 会員の中からは「政府が学問にも口を出すという宣言だ」との声が上がった。この国の政治は、本当に大丈夫なのか。
 経済の自民党と言われながらも、コロナ禍で先行きは不透明だ。いまはただ、財政出動だけで株価を維持しているだけで、失業率も高くなってきた。安定感も自由も失われたら、自民党の取り柄はどこにあるだろう。
 「ものいわば唇寒し」に向かおうとしているようで、何やら背筋が寒くなる。それが、中国、台湾、南沙などの極東の不安定要素とリンクしていそうな気がするのは、思い過ごしだろうか。

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