人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市東部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)
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tanko 2020-9-27 9:40
千坂 げんぽう(一関市、僧侶)
 世界中を恐怖に陥らせているコロナ禍は、GDP(国内総生産)を重視する経済成長優先の社会に反省を投げ掛けている。しかし、政府、岩手県などは世界的な課題に真剣に向き合いながら国民、県民の生命を重視した施策を行っているだろうか。
 日本においては、東日本大震災以降、台風などによる風水害や地震被害が続いている中でのコロナ禍、政府はコロナ禍から国民の生命と産業を守るとして2次にわたる補正予算を繰り出した。国民の生命を守るという「錦の御旗」は、誰もが異議を唱えにくいので補正予算は通過したが、東日本大震災と同様「錦の御旗」に便乗した各省庁の無駄遣いは著しい。今や国民一人当たりの借金は900万円を超えんとする勢いなのにである。
 国に比べスケールは小さいが、岩手県のILC(国際リニアコライダー)誘致運動も似たような構図が見られる。ILC誘致が実現すれば、「国際科学都市ができる」とか「多くの雇用が生み出される」などの「錦の御旗」で、岩手県を中心とする推進側は県議会や各市議会でのいち早い同意を取り付け、反対を許さない戦前の「大政翼賛会」的な体制をつくり上げた。
 私は7年前からILC誘致反対の意見を県内他紙のオピニオン欄で述べていた。当初は「雇用が増えるのになぜ反対するの?」と非国民的な目で見られていた。欧米、日本の財政難や日本政府の科学予算の在り方を勘案すれば、国際事業であるILCのような巨大プロジェクト誘致を本気で考えること自体、高度経済成長期やバブル経済の再来を夢見る「愚かな考え」と思っていた。投げ掛ける冷ややかな視線も「どうせ実現しないのだから」と気に掛けることもなかったし、あえて反対運動を呼び掛けるつもりもなかった。
 しかし、岩手県や一関市が出前授業と称して、小学生から高校生、高専の学生まで「1万人の国際科学都市ができる」という確約されてもいない夢を語っていた。将来世代に悪影響を与えつつあると感じた。そんな中、請われて市民団体「ILCを考える会」の共同代表になった。
 日本学術会議が2018(平成30)年12月19日に公表した「ILC計画の見直し案に関する所見」には、『純学術的意義以外の技術的・経済的波及効果については、ILCによるそれらの誘発効果は現状では不透明な部分があり、限定的と考えられる』と、否定的な見解が記されている。
 学術会議は人文科学、社会科学、情報科学、医学、農学、工学、理学など科学者約87万人の中から選ばれた会員、連携会員で構成され活動している。その会員が長時間検討して「日本誘致を支持するに至らない」とした。いくら「岩手県民が一致してILC誘致を希望している」と繕ってアピールしても、学術会議の結論は重い。
 この学術会議の所見について、東北ILC準備室長(当時)の鈴木厚人・岩手県立大学長(素粒子物理学)は講演で「事実誤認に知識不足ばかり。時間をロスしてばっかりだ」と発言。学術会議の組織・運営にも疑問を呈したという。
 このような発言が研究者からなされることは信じがたいし、許されるべきではない。八つ当たりの発言は、自分が科学者であることを忘れた恥ずべき行為なのである。誘致関連費用を出している岩手県は何を考えているのだろう。
 所見は「所要経費が格段に大きく、長期にわたる超大型計画」だとし、「国民に提案するには学術界における広い理解と支持が必要」と指摘する。さらに「地域振興の文脈で語られている事項、土木工事、放射化物生成の環境への影響に関する事項等について、国民、特に建設候補地と目されている地域の住民に対して、科学者コミュニティーからの正確な情報提供に基づく一層充実した対話がなされることが肝要」とある。
 ところが誘致推進側は、ILC計画に携わる高エネルギー加速器研究機構(KEK)の研究者らを岩手県に招いたPRしか行っていない。漫画や芸能人を利用したPRもしているが、他分野の科学者コミュニティーの理解を得る実践は皆無と言ってもよいほどだ。一関市、奥州市でのリスク説明会も、私たちが反対の決議文を学術会議や文科省に提出してから、形だけ行ったに過ぎない。
 KEKでは「Belle?(ベル・ツー)」実験のように、素粒子の謎に迫る良い結果を出していると聞く。素粒子物理研究の進展は喜ばしいが、可能性のない計画を展望があるかの如く引き延ばし、県民の税金を無駄に使わせることは、県民を軽視していることに他ならない。彼らの「岩手県民は私たちの言うことを聞いていればよい」とでも考えているようなパターナリズム(父権主義)的な姿勢は、民主主義と相容れるものではない。
 ロードマップ2020に申請していたILC計画だったが、今年3月27日に取り下げていた。KEKは国際協力体制が確立されたためなどと理由を述べてはいる。だが私は、審査の結果、ロードマップに掲載されなかった時のことを恐れたのではないかと感じた。不掲載は、予算化への道が明確に否定されたことになるからだ。
 なにより、9月8日からパブリックコメントが開始されるまで発表せず隠していたことには、「県民をばかにした行為」という印象を受けた。一部報道では、まだILC計画に見込みがあるというKEKの一方的な発表をそのまま記事にした。どうしてこうも客観性を欠くようになったのか、KEKと地元自治体、一部マスコミとの関係の究明も必要ではないか。
 財政難の日本の現状、経済力が弱い岩手県……。これらの状況を冷静に見つめ、地域づくりには王道はないことを知るべきである。巨大プロジェクト誘致などではなく、地道に岩手の農林水産業や観光などの振興に取り組むことが大事ではないだろうか。

※投稿者の名前の漢字表記は、「げん」が山へんに「諺」のつくり、「ぽう」は峰
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tanko 2020-9-25 9:50
 国際リニアコライダー(ILC)計画に関する文部科学省への審査申請を取り下げ、その事実が約半年にわたり公表されなかった件について、東京大学素粒子物理国際研究センターの森俊則教授は24日、インターネットを通じた「ウェブ講演会」で陳謝した。申請書の提出や取り下げ、公表を巡る対応は高エネルギー加速器研究機構(KEK、山内正則機構長)が担当。KEKはホームページで「おわび」を表明しているが、高エネルギー物理分野の国際組織に所属している森教授は「ILCを推進するコミュニティーの代表として申し訳なく思う」と述べ、ILC有力候補地の本県関係者らに向け直接謝罪した。(児玉直人)

 森教授は「国際将来加速器委員会(ICFA)」の委員。国内では、高エネルギー物理学研究者会議委員長などを務めている。同日は県ILC推進協議会(会長・谷村邦久県商工会議所連合会長)が主催するILCウェブ講演会の講師の一人として、直近の動向を紹介した。
 ICFAは今年2月、ILC計画推進に当たり、国際協力体制の枠組みを再構築するよう提言した。これとほぼ同時期、KEKは文科省が策定する「学術研究の大型プロジェクトの推進に関する基本構想ロードマップ(2020)」に係る申請書類を提出。計画登載に向けた審査を受ける流れだったが、ICFAの提言に基づき体制構築が進めば「申請書に示した内容とは異なる」とし、KEKは3月27日に申請を取り下げた。
 ところが、KEKはロードマップの素案公表日と同じ9月8日になって、取り下げた事実を明かした。計画実現へ密接に協力してきたはずの東北の誘致団体、候補地周辺の自治体首長らにも知らせていなかった。KEK広報室は「ロードマップの審査過程は非公開が原則だったため、報告が遅れた」としている。
 森教授は「サポートを頂いている地元の方々、産業界の方々にすら伝えていなかった。どんなに必要な理由があったにせよ、非常に大きな間違いであり、(誤った)判断だった」と述べ、陳謝した。
 その上で「8月には国際準備研究所を立ち上げる『国際推進チーム』が発足した。1年から1年半後には準備研究所ができ、4年間にわたり細かい設計や地質調査などを行う。並行して政府間の協議を行うが、ここで各国の分担を話し合い、本当に(?LC計画を)やるかどうかが決まってくる」と説明。「今は(政府が)やる、やらないを判断するタイミングではない。今後の進展を見て判断していくだろう」と述べた。
 同日は東京大学の山下了特任教授、元国土交通省国土政策局長の藤井健氏らも講演。ILC計画などが反映された国土計画協会の「地球村創生ビジョン」策定に携わった藤井氏は、「新型コロナウイルス対策は最優先すべき課題ではあるが、だからと言って宇宙の真理を探究するような研究の積み重ねを止めていいわけではない。地球温暖化対策と同様、われわれの世代だけでなく、次の世代にも積み上げバトンを渡していくもの。そのためにも、ILCは取り組まなければいけない」などと述べた。
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tanko 2020-9-21 9:50

写真=署名に応じる奥州宇宙遊学館の来館者。左は木村隆代表

 天文広域精測望遠鏡(VERA)の運用継続を求める署名活動が20日、水沢星ガ丘町の奥州宇宙遊学館(中東重雄館長)前で行われた。天文ファンらで組織する「VERAサポーターズクラブ」代表の木村隆さん(48)=金ケ崎町三ケ尻中荒巻=が来館者に署名への協力を呼び掛けた。
 国立天文台水沢VLBI観測所(本間希樹所長)が運用するVERA観測網は、水沢や石垣島、小笠原諸島・父島、鹿児島県の入来の4カ所に同一仕様の電波望遠鏡を設置。4局を連動させて高精度な天体観測を行ってきた。近年は韓国や中国など東アジアの電波望遠鏡群と連動させ、ブラックホール関係の観測など、より精度の高い観測を実施している。
 しかし昨年12月、同天文台執行部がVERAの運用終了と同観測所の予算半減の方針を急きょ提示。現場と執行部との協議で本年度予算は確保されたものの、2003(平成15)年から続けてきた「銀河系の地図作り」は当初予定よりも早く終了。研究プロジェクトの見直しを余儀なくされているほか、来年度以降の予算確保の見通し、若手研究者の育成にも暗い影を落としている。
 署名は、11月ごろの提出を目指しネット上などで既に行われていたが、より多くの賛同を得ようと、同観測所敷地内にある遊学館来館者に協力を求めた。
 4連休2日目とあって、この日は市内外から家族連れらが次々と来館。木村代表の呼び掛けに応じ、署名に協力していた。
 目標は1万筆。木村代表は「花巻ロータリークラブの働き掛けのほか、石垣局がある沖縄県石垣市の高校生たちも署名を集めている。集計途中ではあるが、5000筆近くは集まっているのではないか。地元、水沢や金ケ崎の方にもさらに協力をお願いしたい」と話している。
 同館前での署名活動は、27日も午前11時から午後4時まで実施する。署名サイトでは常時受け付けている。

署名サイト → http://chng.it/6kS5snj6
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tanko 2020-9-18 10:00
 素粒子実験施設「国際リニアコライダー(ILC)」の誘致に反対姿勢を示している、市民団体「ILC誘致を考える会」(千坂げんぽう※、原田徹郎共同代表)は17日、達増拓也知事に対し、高エネルギー加速器研究機構(KEK、山内正則機構長)と連携し実施しているILC誘致推進事業の停止などを求める要請書を提出した。同会は、文部科学省に提出した「学術研究の大型プロジェクトの推進に関する基本構想ロードマップ(2020)」の申請を取り下げ、5カ月余り公表しなかったKEKの対応を「不誠実」と批判した。
 同会は一関市を拠点に活動。ILC誘致に批判的、あるいは慎重な思いを抱く同市や奥州市、平泉町などの住民で組織している。県への要請書提出は今年2度目。達増知事へは同日郵送したほか、一関市の勝部修市長と大槻隆・同市議会議長には同様の内容の文書を担当部署を通じ提出した。
 ロードマップ2020の申請取り下げについて、KEKは「審査過程は非公開が原則だったため報告が遅れた」と釈明している。
 同会は岩手県南、宮城県北の自治体などで構成する「東北ILC事業推進センター」が8月に立ち上がった時点でも、「各自治体はロードマップ申請を取り下げた事実を知らずにいた」と指摘。「およそ科学者にあるまじき策動。このような不誠実な団体に踊らされることは、一刻も早くやめるべきだ」と厳しく批判し、東北ILC推進協議会、東北ILC事業推進センターからの退会を求めた。
 このほか、「県施策に対する県民意識調査」でILC計画が県民ニーズの低い施策となった結果に触れながら、ILC推進局の廃止やILC誘致関連費用の執行停止を要請。新型コロナウイルス感染症対策などに力を注ぐよう求めた。
 原田共同代表は「学術研究をしているKEKに私自身、敬意を表して接してきた。だが今回の申請取り下げのように、事実を長く公表しなかった姿勢があると大きな不信感を抱く」と不満をもらす。「ILCの県民ニーズの低さが県が自前で行った調査でも明らかになっている。コロナで地域経済が低迷している状況下、ILCに労力を費やしている場合ではない。日本学術会議さえ否定的な見解を示している計画を政府が実現するとは到底思えない」と述べている。

※…千坂氏の名前の漢字表記は、「げん」が山へんに「諺」のつくり。「ぽう」は「峰」
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tanko 2020-9-17 10:10
 人口3000人足らずの北海道寿都町でこのほど、原発の高レベル放射性廃棄物(核ごみ)の最終処分場文献調査応募を巡る住民説明会があった。当初は、1度だけの予定だったが、町議会全員協議会で「1度では来られない住民がいる」との意見に従って、8回に分け、町内各地で行われるようだ。
 短いニュースの一場面で、説明会の様子を目にしたが、住民の必死さが見て取れた。「こんな資料で説明になるか」とカメラの下で資料をめくる住民。色分けした図のような部分に比して文字は少なく、原発関連という事の大きさとはかけ離れて見えた。
 東日本大震災後の原発汚染土さえ、その取り扱いは難しい。青森県むつ市の使用済み核燃料を一時的に保管する構想も、合格とはなったが、保管後の搬出先は不透明で「永久保管か」との懸念が強い。原発銀座と言われる福井県は「とにかく使用済み核燃料は県外に」と言ってはばからない。
 寿都町の片岡春雄町長は地元も含めた反発に「判断を10月以降に延期する」とトーンダウンしたが、前向きな姿勢に変わりはないようである。「日本の核のごみについて、あまりに無関心。(原子力政策に)どこかで一石を投じないと。勇気を振り絞って提案した」と主張する。
 核ごみの最終処分場建設の流れは文献調査約2年(歴史的文献で過去の地震の調査)。概要調査約4年(ボーリングなどで地下の岩石や地下水の分析)、精密調査約14年(地下深く調査施設を設置、地質や岩盤を直接調査)。その後に最終処分場の建設地を決定する。市町村長や知事が反対すれば次に進めないが、文献調査応募では言ったが勝ちで意見無用である。
 寿都町は周辺の4町から指摘を受けた。「北海道は農業・漁業など1次産業が基本でイメージが損なわれ応募検討だけで実害が出る。文献調査に伴う交付金で町づくりは間違い」と。小さな町の大きな発言。応募の行方が気になる。
(響)
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tanko 2020-9-13 9:50
 私たちの住む地球は、「天の川銀河」の中の太陽系に存在する。地球は約45億年前に生まれた。宇宙は約138億年前にできた。きっかけは「10のマイナス34乗」の大きさの何かが爆発したためだ。
 その宇宙最初の爆発が「ビッグバン」。爆発の影響で宇宙は広がり続けている。宇宙に欠かせないのが「ダークマター(暗黒物質)」と「ダークエネルギー(暗黒エネルギー)」の存在だ。銀河は強い重力でモノをかき集める力を持つ「ダークマター」、宇宙は広がりの力になる「ダークエネルギー」のおかげで成り立っている。
 どちらも、光も電波も発しないナゾの存在だ。宇宙の全容を解明する研究が世界的規模で始まっている。日本では奥州市の「国立天文台水沢VLBI観測所」(本間希樹所長)の活躍が特に目覚ましい。
 2019年4月には、国際プロジェクト「EHT」に参加。世界で初めて巨大ブラックホールの姿を撮影した。今年は、太陽の25倍以上ある大質量星団の「赤ちゃん星」から上下に釣り鐘状に噴き出すガスと周辺を回転するガスを日韓共同観測で明らかにした。大質量星団でも、太陽のような小質量星と同じプロセスで星が形成されることが示された。
 先月末には、同観測所チーム代表の赤堀特任研究員が「ほうおう座銀河団」の中心部から誕生間もないジェットを観測したと発表。ジェットが銀河団のガスの冷却を抑制すると考えられてきたのだが同銀河団のガスは冷えており定説を覆した。
 水沢天文台のVERA望遠鏡は、世界と協力し合い銀河の中の巨大ブラックホールの姿を捕らえる「SKA」計画の貢献装置にも認められた。しかし、来年度の運用のための予算にめどが立たないことが判明。銀河系の立体地図を作る「VERAプロジェクト」に区切りを付けるなど、研究計画の見直しを迫られている。天文台の危機を救おう。現在、地元周辺都市で運用継続を求める署名運動が行われている。
(吉)
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tanko 2020-9-12 18:20
 原発から出る核のごみ(高レベル放射性廃棄物)の最終処分場選定に向けた文献調査に北海道寿都町が応募を検討しているという。道知事や周辺の町村長は拙速過ぎると反発を強めているが、同町の片岡春雄町長は「反対意見は覚悟している。地元以外からの声に耳を貸すつもりはない」と強行姿勢である。
 核のごみは、使用済み核燃料を再処理してプルトニウムやウランを取り出した後の廃棄物で、国は2000年に法律を制定し、地下300mよりも深い地盤に埋める地層処分を決めている。建設までの流れは「文献調査」「概要調査」「精密調査」の3段階で約20年を要する。「施設建設」に10年を見込んでいる。
 文献調査を受け入れると、最大20億円、概要調査は最大70億円の交付金が支給されるなど、寿都町のように人口が3000人にも満たない小さな町などは、悪化する町の財政を支える主要な選択肢であることも理解できないこともない。
 交付金を受け取ることは処分場建設に同意したとする意思表示に等しい。手を上げやすい「文献調査」という、ある意味では作為的で後戻りできない意味合いがあることをしっかりと頭に据え、慎重に検討すべきではないか。
 この町の地下には「核のごみ、高レベル放射性廃棄物が埋まっている」としたら、住民は不安でこの先長く住み続けられないのではないか。若い人たちは去り、やがては誰も住まない町になりはしないか。町の未来をともす光が見えないのだ。
 国は、原発の建設に際し、メリットを提示。実際、立地した町は多大な恩恵を受け、住む人々は原発を切り離すことができないほど生活と密着している。しかし、核ごみ処分場からは町の発展に結び付くようなメリットは思い浮かばない。国は、応募する町と住民のことを真摯に考え、数万年から10万年という管理に向けた安全性の科学的根拠と、町の明るい未来を示す発展構想を提示すべきではないのか。
(紀)
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tanko 2020-9-10 10:00
 茨城県つくば市の高エネルギー加速器研究機構(KEK、山内正則機構長)が、北上山地が有力候補地となっている素粒子実験施設「国際リニアコライダー(ILC)」の実現に関連した「学術研究の大型プロジェクトの推進に関する基本構想ロードマップ(2020)」への計画申請を今年3月に取り下げていたことが分かった。KEKは今月8日、誘致推進で連携している東北や本県の関係先などのほか、報道機関に事実関係を通知。取り下げの理由について、国際協力体制が申請した時点から大きく進展したためとしている。

 文部科学省が策定するロードマップは、幅広い研究分野の意向を踏まえながら、大型プロジェクトの優先度を明らかにするもの。日本学術会議(山極寿一会長)の「学術の大型施設計画・大規模研究計画に関するマスタープラン」と関連性があり、いずれも3年ごとに策定している。
 KEKは、今年2月末に書面審査の申請書類を提出。書面審査やその後のヒアリング審査は3〜4月にかけて行われる予定だったが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で6〜8月にずれ込んだ。今月8日、文科省は素案を公表し意見募集(パブリックコメント)を開始した。
 ところが、文科省の素案公表と同日、KEKはロードマップへの申請を3月27日の時点で取り下げていた事実を明らかにした。取り下げによりILC計画は審査対象となっていないため、素案の中には記載されていない。
 KEK広報室によると、2月末の申請書提出とほぼ同時期に、国際将来加速器委員会(ICFA)などから新たな国際推進チームの立ち上げと、国際協力体制の枠組みの再構築に関する提言があった。申請書類では、国際協力体制の在り方が若干弱い表現だったが、新体制構築が明確になったことで、「申請書の内容と現状が異なる」と判断。取り下げたという。
 KEK広報室は「ロードマップの審査過程は非公開が原則だったため、報告が遅れた」と謝罪しながら、「国際推進チームが8月に設立され、新たな体制で活動を進めている。KEKは国際研究者コミュニティーと共に、引き続きILC実現に向け鋭意努力していく」とした。取り下げによるスケジュールへの影響はないとしており、「(3年後の)次期ロードマップへ再度申請するかどうかは、状況の推移によって判断することなので現時点では不明」と話している。
 申請取り下げについて、奥州市の小沢昌記市長は9日の定例記者会見で「事実を知ったのは今回の通知や報道を受けてだったが、後ろ向きな理由で取り下げたわけではないので、この時点での通知について特に遺憾に思うようなことではない。大きなハードルを乗り越えていく上で、(取り下げた)今回の判断は手法として良かったのでは」との見解を示している。
 県ILC推進局の高橋勝重局長は「6月の素粒子物理戦略により欧州も協力を表明しており、国際推進チームが立ち上がり動き始めている。その中でKEKが先を見据えて取り下げたと理解している」と話している。

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誤解招きかねない対応
 【解説】ロードマップ2020の審査テーブルに、そもそもILC計画はなかった――。審査委員が「NO」の評価を下したからではなく、KEKが自ら審査を受けずに退いたから「掲載されなかった」のである。一種の通過関門のような位置付けだったロードマップ審査から退いた事実を、5カ月以上も明らかにしていなかったのはなぜか。
 KEKは、審査過程が非公開だから取り下げた事実の公表を控えていたという。だが、そもそも取り下げた計画までも「非公開」の対象なのか。文科省研究振興局は本紙の取材に「『取り下げたことを当事者は明かしてはいけない』という決まりはない」と答えている。非公開はあくまで、KEKの判断にすぎない。
 「非公開」は、公費を投じた誘致活動を展開している候補地の地元自治体に対しても、である。「そんなつもりはなかった」としても、地元軽視や情報隠蔽と誤解されても仕方ないのではないか。
 「審査されているものだと思っていた」。奥州市ILC推進室や東北ILC推進協の職員は、本紙の取材に答えた。誘致に反対姿勢を示している市民団体「ILC誘致を考える会」共同代表の千坂げんぽう(※)氏(75)は、「結局、県も地元自治体もKEK任せ。住民の不安や問題点を指摘する声よりも、研究者側の指示を重視して動いているにすぎない。パターナリズム(父権主義)的構造だ」と指摘する。
 地域の姿が一変するかもしれないILC。そのさまざまな重要判断は、残念ながらわれわれ候補地近傍にいる人間には見えない遠い遠い舞台で行われている。それゆえ、地元対応はより一層丁寧であるべきだ。そして地元の誘致関係者は、時に研究者サイドの問題点を指摘するぐらいの、適度な緊張感と距離感を持つべきだ。
(児玉直人)

※…千坂氏の名前の漢字表記は、「げん」は山へんに「諺」のつくり。「ぽう」は「峰」
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tanko 2020-9-2 10:50

写真=ほうおう座銀河団の中心にある銀河から噴き出すジェットの想像図(国立天文台提供)

 国立天文台三鷹キャンパス=東京都三鷹市=に勤務する同天文台水沢VLBI観測所(本間希樹所長)所属の赤堀卓也・特任研究員らは、銀河団内のガスと、ブラックホール(BH)から噴出されるプラズマ粒子「ジェット」との関係性について、有力説に疑問を投げ掛ける新たな研究成果を発表した。銀河団のガスは、ジェットによって温められていると考えられていたが、赤堀研究員らは冷え続けている銀河団の内部にジェットが存在していることを確認。『日本天文学会欧文報告』8月号に掲載された。
(児玉直人)

 銀河団とは、数多くの星が集まった銀河の集団。これまで確認されている銀河団の中には、水素を主成分とする1000万度を超えるガスが大量に閉じ込められているとされている。
 ガスは、強いX線を放射することにより熱と圧力を失う。圧力低下したガスは、暗黒物質(ダークマター)と呼ばれる正体不明の物質の重力で、銀河団中心部の銀河に引き寄せ集められる。さらにX線放射で冷却が進むと、爆発的に大量の星が作られる。
 一方、地球が属する天の川銀河近くの銀河団では、逆にガスが保温し続けられている例がほとんど。「超大質量BHから噴出されるジェットから熱エネルギーが供給されているため」とする説が有力とされてきた。
 赤堀研究員らの国際チームが今回、観測対象にしたのは、ほうおう座銀河団の中心部。地球からの距離は約59億光年。ほうおう座は南十字星などと同様、主に赤道付近や南半球で確認できる星座で、日本では鹿児島以南で見られる。
 赤堀研究員らはすでに、南米チリのアルマ望遠鏡によって、同銀河団のガス温度が例外的に低くなっている点を突き止めていた。有力説に基づけば「同銀河団にジェットは存在しない」となるが、「従来の観測は解像度や感度が不足しており、ジェットを確認できなかったのでは」との疑問を抱いた。
 そこで同銀河団の長時間観測に適した、オーストラリアの電波望遠鏡を使い観測を実施。その結果、同銀河団中心部の銀河でジェットの存在を確認した。さらに、噴き出した時期が異なっていると思われる、2組で構成されていたことも分かった。うち一つは、同銀河団の年齢よりも非常に若く、誕生から数百万年と推定された。
 赤堀研究員は、南半球に国際プロジェクトとして整備される電波望遠鏡観測網「スクエア・キロメートル・アレイ(SKA)」を活用した観測の継続を望んでいる。「さらに高感度・高解像度でこの天体を観測し、地球近傍の銀河団との違いがなぜ生じているのか解明したい」と抱負を語る。
 電波望遠鏡による天体観測は同観測所の「お家芸」で、本間所長らによるBH撮影などの成果にも表れている。同観測所が運用する天文広域精測望遠鏡(VERA)は、赤堀研究員が活用を望むSKAプロジェクトの「科学技術に貢献する観測装置」として、国際組織のSKA機構から公式認定を受けている。
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tanko 2020-9-1 11:00
 岩手県は31日、奥州保健所管内(胆江地区)に居住する50代の男性が毒キノコを食べ、舌がしびれる症状を訴える食中毒(植物性自然毒)事案があったと発表した。男性は自ら採取した「カエンタケ」と推定される毒キノコを誤って食べたという。県内で毒キノコによる食中毒が発生したのは2018(平成30)年度以来。県環境生活部県民くらしの安全課は注意を呼び掛けている。
 同課によると、男性は8月27日に花巻市内の山を訪問。漢方薬や薬膳料理などに使われるキノコの一種「冬虫夏草」と誤認し、カエンタケと思われるキノコを採取した。同日、自宅で食べたところ深夜に発症した。28日、男性が受診した県央保健所管内の医療機関が奥州保健所に通報。奥州保健所は症状や潜伏時間などから、毒キノコによる食中毒と断定した。男性は31日現在入院中という。
 カエンタケは赤紅色で高さ8〜12cm程度の円柱または棒状。夏から秋にかけて、ブナやコナラなどの広葉樹林の地上に群生する。毒性が非常に強く、食後30分から発熱、悪寒、嘔吐、下痢、腹痛、手足のしびれなどが起こり、2日後に消化器不全、小脳萎縮による運動障害など脳神経障害により死に至るケースもある。
 今後、本格的なキノコ採りシーズンを迎える県内だが、同課は▽食用キノコと確実に判断できない場合は絶対に採らない・食べない・売らない・人にあげない▽食用に混ざって毒キノコが生えている場合があるので1本ずつよく確認する▽キノコにまつわる迷信や言い伝えを信じない――など、注意を呼び掛けている。

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