人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市東部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)
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tanko 2020-6-25 9:30
 今月19日に公表された次期欧州素粒子物理戦略について、文部科学省の萩生田光一大臣は23日、定例会見の質疑で「ILC(国際リニアコライダー)計画については、具体的な協力をもって参加することにまでは踏み込んでない」との認識を示した。
 同戦略は、欧州の素粒子物理学研究における中長期的な研究指針で、6〜7年に一度更新。今回更新された同戦略には、北上山地が有力候補地となっている素粒子実験施設・ILCについて、日本が時宜を得て計画を進めるのであれば、欧州の素粒子物理学界は協力するであろうとの趣旨が記載されていた。
 戦略に記載された内容について、萩生田大臣は「欧州の研究者界が素粒子物理学分野の取り組みの優先度を示す同戦略において、ILC計画に具体的な協力をもって参加することにまでは踏み込まなかった」との認識。さらに「欧州自身の将来の加速加速器計画について、より多くの文量が割かれている。技術的、財政的な実現可能性を調査すべきことも記載されている」とも述べた。
 今後の文科省の動きについては「今回の戦略を踏まえ、米欧の政府機関との意見交換などを行い、昨年3月の政府見解に沿って対応していく」とした。
 このほか萩生田大臣は、質問記者が冒頭「東北地方に設置が予定されている国際リニアコライダーについて……」と述べた点に触れ、「東北地方に予定しているという事実はない。九州でも熱心に誘致をしている」と指摘。政府として北上山地が公式のILC候補地と認識していない点を明確にした。
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tanko 2020-6-24 10:20
 素粒子実験施設「国際リニアコライダー(ILC)」の誘致に反対する市民団体「ILC誘致を考える会」(千坂げんぽう※、原田徹郎共同代表)は23日、ILC誘致関連予算の執行停止などを求める要請書を達増拓也知事らに提出した。
 要請書の提出は、今月19日の次期欧州素粒子物理戦略公表や、世界各地で新型コロナウイルス感染症による影響が深刻になっている状況を受け実施。達増知事と、同会が活動拠点を置く一関市の勝部修市長宛てに23日付で郵送した。
 同戦略では、日本でILCがタイムリーに実現すれば、欧州の素粒子物理学界は協力するという姿勢が示された。
 しかし、同会は「日本が遅くない時期に独自にお金を出せば協力するというもので、分担金は出せないことを暗示している」との認識。各国の財政難や新型コロナの問題に直面している実態を鑑み「ILC誘致は実現しないことが明白。惰性的に誘致推進費として多くの税金を投入することは無駄遣い」と指摘し、誘致関連予算の執行停止などを要請。喫緊の課題である新型コロナの対策に予算や人員を回すよう求めた。
 同会は萩生田光一文部科学大臣にも、同日付で要請書を郵送。趣旨は達増知事、勝部市長に提出したものとほぼ同じだが、「ILC誘致はない」と宣言するよう求めたという。
 公表された同戦略に対し、推進派の素粒子物理学者や本県の誘致関係者らは「欧州の協力姿勢が明確になった」「建設準備に向けて大きな前進になった」などと好意的に受け止めている。

※…千坂氏の名前の漢字表記は、「げん」が山へんに諺のつくり、「ぽう」は峰
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tanko 2020-6-22 14:50

写真=水沢柳町の胆江日日新聞社屋上で撮影した部分日食=?午後4時27分?同4時47分?同5時6分?同5時19分


写真=日食を観測し興奮する子どもたち

 二十四節気の一つ「夏至」の21日、太陽の前を月が横切り太陽の一部が欠けて見える部分日食が確認された。次は3年後の4月20日に南西諸島や九州南部など一部地域で見られるが、全国各地で観察できるのは10年後の2030年6月1日となる。
 市内では午後4時12分ごろから太陽が欠け始めた。同5時6分ごろに最も欠けた状態となる「食の最大」を迎え、地上から見た太陽の左下が面積比にして26%余り欠けた。
 水沢星ガ丘町の国立天文台水沢キャンパス敷地内では、同日開講した日本宇宙少年団水沢Z分団の子どもたちが日食めがねなどを使って観測。一関市立猿沢小6年の大島珠妃さん(11)は「太陽が徐々に欠けていく様子が面白かった」と声を弾ませた。
 同キャンパス敷地内にある奥州宇宙遊学館(中東重雄館長)でも、新型コロナウイルス感染防止策を講じながら観察会を開催した。
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tanko 2020-6-21 9:30

次期欧州素粒子物理戦略の内容について見解を述べる県立大の鈴木厚人学長

 欧州合同原子核研究所(CERN)の理事会は19日夜(日本時間)、「次期欧州素粒子物理戦略(2020 Update of the European Strategy for Particles Physics)」を承認、公表した。北上山地が有力候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)への期待が明記され、時宜を得てILC計画が進む形であれば「欧州の素粒子物理学界はILCに協力する」とした。ILCを推進する研究者らは「日米欧の足並みがそろった」と評価。今後、建設費だけで約8000億円と試算される膨大な経費や技術、人員確保を巡る国際分担が最大の焦点となる。(児玉直人)

 同戦略は、欧州の素粒子物理学研究における中長期的な研究指針。2006年に最初の戦略が策定され、6〜7年に一度更新している。
 今回見直された次期戦略では、「ヒッグスファクトリー(ヒッグス粒子の製作所)が、最も優先度の高い次のコライダー(衝突型加速器)だ」と強調。ヒッグスファクトリーは、物質に質量を与えるとされる「ヒッグス粒子」を大量に生成して、その性質を精密に調べるタイプのコライダーで、ILCもこれに該当する。
 欧州の素粒子物理学界では将来、かつてない最高レベルのエネルギーで陽子と陽子を衝突させる次世代円形衝突型加速器「FCC(Future Circular Collider)」の構想を打ち出している。CERNが運用する大型ハドロン衝突型加速器(LHC)同様、地下に整備するイメージで周長は約100km。LHCの約4倍になる。「ILCのタイムリーな実現はこの戦略に適合する」とし、その場合は欧州の素粒子物理学界はILC計画の推進に協力するとした。
 同戦略公表後、ILC計画を推進する県立大学の鈴木厚人学長と、岩手大学理工学部の成田晋也教授が県庁で記者会見。鈴木学長は「個人的には想像以上の強いメッセージ。これで日米欧の考えが出そろったことになるので、一刻も早く政府間交渉をして日本政府としての態度を決めてほしい」と期待を込めた。
 ILC計画は、文部科学省の「学術研究の大型プロジェクトの推進に関する基本構想ロードマップ(ロードマップ2020)」への掲載審査に応募している。新型コロナウイルス感染症の影響で、作業は遅れているが今月下旬から書面審査を再開し、策定・公表は9月以降となる見通しだ。


 達増拓也知事のコメント ILC計画に対する欧州の協力姿勢が明確に示されたことは、ILC実現に向けて極めて意義深い。米国からの支持も表明されており、建設準備に向けて国内外の取り組みが進展することを期待する。本県としても、関係機関と連携し、引き続き実現に向け取り組んでいく。

 谷村邦久・県ILC推進協議会長のコメント ILCが最優先の研究計画と認められたことは、誘致実現に向けて大きく前進したと考える。日本の未来を担う若者・子どもたちに夢と希望を与え、地方創生の起爆剤となるILCの誘致実現を目指し、引き続き受け入れ態勢の準備に全力を尽くす。

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コロナ禍での誘致「理解に苦しむ」(考える会共同代表)
 次期欧州素粒子物理戦略に、国際リニアコライダー(ILC)への期待が明記されたことについて、「ILC誘致を考える会」の原田徹郎共同代表=一関市=は20日、胆江日日新聞社の取材に応じ「新型コロナウイルスで世界中が大変なときなのに、理解に苦しむ」と違和感をあらわにした。同会は近日中に文部科学省と県、同市に対しILC誘致を中断し新型コロナ対策を充実させるよう求める要請文を提出する予定だ。
 要請文提出は、2月ごろに予定していた。しかし、新型コロナの感染拡大を受け、状況が落ち着くまで実施を見合わせていた。
 欧州の戦略に明記され、ILCについて国際的協議が進展する可能性が高まったことを受け、原田共同代表は「新型コロナの感染が広がってから、個人経営者などから『とてもILCどころではない』という声を聞く。生活が困窮している人たちからすれば、到底理解を得られるはずがない」と批判した。
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tanko 2020-6-13 13:40

写真=ウェブ中継でVERA運用継続を求める要望書を読み上げる山田慎也代表

 胆江地区の天文愛好家や地域住民で組織する「VERAサポーターズクラブ」(山田慎也代表)は、国立天文台水沢VLBI観測所(本間希樹所長)を拠点とするVERA(天文広域精測望遠鏡)プロジェクトの運用継続について、萩生田光一文部科学大臣宛てに要望書を提出した。11日夕、ウェブ中継で行った趣旨説明に対し、文科政務官の青山周平衆院議員(比例東海、自民)は、「文科省としてしかるべき対応をしたい」と述べた。
(児玉直人)

 要望書は、藤原崇衆院議員(比例東北、自民)が仲介役となり提出。新型コロナウイルス感染症の影響で上京が困難な実情を踏まえ、水沢南地区センター会議室と同省の間をウェブ中継で結び、趣旨説明などのやりとりを交わした。要望書は事前に同省に届けられている。
 山田代表は「大幅な予算削減により、主要研究ができなくなる危機に直面している。地域にとって、電波望遠鏡は宇宙を身近に感じるシンボル。全国4カ所の電波望遠鏡群の運用継続に特段の尽力を」と、要望書の内容を読み上げた。
 同クラブ発足の呼び掛け人でもある小野優市議も同席。「VERAのアンテナは奥州の宝であり、日本全体の宝。当市はILC(国際リニアコライダー)誘致を目指しているが、天文学の分野でも大きく貢献している地域だ」と理解を求めた。
 文科省では青山政務官が対応。青山政務官は「地域の皆さんが国立天文台をこのような形で応援してくれていることをありがたく思う。天文台側にも話をして、対応できるよう努力する。水沢観測所でより大きな研究成果が出るよう、今後も応援してほしい」と述べた。
 同クラブはネットや直筆による署名運動を展開し、11月にも文科大臣宛てに提出する。ネット署名は

http://chng.it/6kS5snj6

で受け付けている。
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tanko 2020-6-11 14:20
 国立天文台水沢VLBI観測所(本間希樹所長)を拠点とするVERA(ベラ、天文広域精測望遠鏡)プロジェクトの長期的な運用継続を求め、る署名活動が本格化する。地元天文ファンらで組織する「VERAサポーターズクラブ」が中心となって推進する。突然の大幅な予算削減で今月中にVERAの運用停止が想定されていた同プロジェクト。追加の予算措置により年度内は観測活用できる見通しだが、来年度以降の運用継続が保障されたわけではない。同クラブは観測事業の意義にとどまらず、観光資源や地域住民のシンボルとしての役割が大きいと強調。納税者の目線からも、耐用年数が10年以上残る観測設備を停止させず、有効活用すべきだと訴えている。署名は11月にも文部科学大臣に提出する考えだ。(児玉直人)

 VERAは同観測所のメインプロジェクトで、水沢など国内4カ所に設置した同一仕様の電波望遠鏡(パラボラアンテナ)を連動させ、銀河系の地図づくりなどを推進している。近年は、韓国や中国などアジアの電波望遠鏡群を組み合わせた国際観測事業の一翼も担っている。
 ところが昨年12月、常田佐久台長らをメンバーとする同天文台執行部が、VERAの運用終了と同観測所の予算半減の方針を急きょ提示。本間所長ら観測所関係者、VERAを利用する大学などの研究機関は、方針の見直しを執行部側に求めていた。
 本間所長によると、5月に来年3月までの運用経費に係る追加予算を申請。正式決定の通知は来ていないが、常田台長からは肯定的な返答があったという。ただ、来年度以降の運用継続が担保されたわけではく、運用や研究に従事する人材の補充がされていないなど、課題は山積したままだ。
 同観測所の窮状に手を差し伸べようと、地元の天文ファンらがサポーターズクラブを結成。今春、インターネットを通じた署名活動を開始し約1000筆が集まったという。地域住民の思いも反映させようと、直筆による署名運動を本格化させることになった。
 10日、同クラブ代表の山田慎也さん(50)=水沢天文台通り=と、メンバーの木村隆さん(48)=金ケ崎町三ケ尻中荒巻、新田高行さん(52)=同町六原東町=が、奥州市役所本庁を訪問。署名運動への賛同を求める小沢昌記市長宛ての文書を市ILC推進室職員に提出した。
 山田代表は「ブラックホールの撮影成功などさまざまな研究成果は、研究者や技術スタッフのみなさんの努力のたまもの。それでも本間所長は『市民の皆さまの理解があって、私たちは観測や研究ができる』と、地元に対する感謝の思いを常に抱いている。なおさら私たちは声を上げ、研究者の皆さんを支え、その思いに応えなければと感じている」と力を込める。
 署名への協力は、胆江2市町の商工・観光団体、国際交流協会、町内会組織、青年会議所などにも呼び掛ける。文科省への署名を提出する際は、電波望遠鏡が設置されている鹿児島県薩摩川内市、東京都小笠原村、沖縄県石垣市の各首長や地元選出国会議員らにも同席を求める予定だ。
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tanko 2020-6-11 14:20

写真=太陽の南中を観察する天文台研究者や宇宙遊学館のスタッフら

 「時の記念日」の10日、奥州宇宙遊学館(中東重雄館長)のスタッフらは、同館がある国立天文台水沢キャンパス敷地内の北緯39度8分線上で、太陽が真南に位置する「南中」を観察した。
 飛鳥時代、天智天皇が水時計によって初めて時刻を知らせたという日本書紀の記録を基に、1920(大正9)年に制定。100周年を迎えた今年、日本標準時子午線(東経135度)上にある、兵庫県の明石市立天文科学館が、全国各地で太陽の南中をリレーするイベントを企画した。
 ネット動画サイトを使って、全国8カ所の天文施設を生中継。経度によって太陽の南中時刻が異なり、明石市より東の地域は正午よりも前、西の地域は正午の後に南中を迎える様子を伝えた。
 生中継地点に入らなかった同館だが、イベントに賛同する形で南中を観察した。緯度観測を行っていた名残を今に伝える北緯39度8分を示すライン上に、同館スタッフ手作りの観測器を設置。同天文台水沢VLBI観測所の研究員や同館スタッフらが、午前11時34分に南中を迎えた様子を確認した。
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tanko 2020-6-3 15:30
 新型コロナウイルス感染症の影響で中断していた「学術研究の大型プロジェクトの推進に関する基本構想ロードマップ(ロードマップ2020)」の策定作業について、文部科学省は今月下旬から書面審査を再開する。新たなスケジュールによると、策定・公表時期は9月以降になる見通し。ロードマップに掲載する計画の審査には、北上山地が有力候補地となっている「国際リニアコライダー(ILC)」も応募している。(児玉直人)

 ロードマップは、幅広い研究分野の意向を踏まえながら、大型プロジェクトの優先度を明らかにするもの。3年ごとに策定する。
 掲載計画を選定する審査に応募できるのは、日本学術会議(山極寿一会長)が策定した「学術の大型施設計画・大規模研究計画に関するマスタープラン」で、重点計画に選ばれた31件と、重点計画選定時のヒアリング審査を受けたが選外になった28件。書面審査により、ヒアリング審査対象を30件まで絞り込む。
 当初は4月下旬にはヒアリング審査を終え、5月以降に素案の取りまとめ、意見募集(パブリックコメント)、策定・公表となる流れだった。しかし、新型コロナの影響で、3月に取り組み始めていた書面審査の途中で作業がストップしていた。
 文科省研究振興局学術機関課はこのほど、新たなスケジュールを設定。今月下旬から中断していた書面審査を再開させ、7月中旬ごろまでにヒアリング審査対象計画を決定する。ヒアリング審査は8月11〜13日に行い、素案の取りまとめ、パブリックコメント、策定・公表は9月以降とした。同課は「新型コロナの感染状況によっては、再び日程が動く可能性もある」としている。
 ILCは、学術会議マスタープランで重点計画からは漏れたが、ヒアリング審査対象となったためロードマップ審査を受けられる対象だ。

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