人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市東部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)
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tanko 2020-5-23 10:50
 北上山地が有力候補地となっている素粒子実験施設「国際リニアコライダー(ILC)」の誘致推進派は、施設受け入れ対応を具現化する新組織の設立を目指している。東北ILC推進協議会(共同代表=大野英男・東北大学総長、高橋宏明・東北経済連合会名誉会長)の内部組織、東北ILC準備室(室長・鈴木厚人岩手県立大学長)を発展的に解消。県や奥州、一関両市など、候補地近傍の自治体、関係機関などがメンバーとなり、インフラ整備など具体的な受け入れ対策について協議する見通しだ。今夏をめどに発足を見込むが、国内外の研究者の動きや新型コロナウイルス感染症を巡る情勢などを見定めながらの対応になりそうだ。
(児玉直人)

 新組織設立は、国内外の素粒子物理学者らが「国際推進チーム」の立ち上げ準備を進めている動きを踏まえたもの。同チームは、ILC計画を「建設準備段階」へ移行させる役割を担い、茨城県つくば市の高エネルギー加速器研究機構(KEK、山内正則機構長)が主導的な役割を果たしている。
 東北推進協はこれまで、研究者側の動きに合わせながら、受け入れ協議を進めてきた。作業の核となっていた同準備室は、昨年3月「東北におけるILC準備状況」を取りまとめ、国会のILC超党派議連(河村建夫会長)に手渡した。日本学術会議に設置されていた「ILC見直し計画案に関する検討委員会」でも、内容が説明された。
 東北推進協は、準備検討に関わる所期の目標を達成したとして、本年度総会に同準備室廃止議案を提出。書面議決で了承された。
 同準備室がまとめた報告書は、東北全体のビジョンが描かれる。後継となる新組織では、候補地周辺の受け入れ態勢に対する具体的な中身が協議される見込みだ。
 県ILC推進局の高橋毅副局長は「道路などインフラはどうなっているか、どうすべきかなど、周辺地域が関係する話になると思われる」と説明する。
 現在、組織体制や協議事項などの取りまとめが行われている。今後、奥州市など関係市町村に対し、組織設立の説明に入るとみられる。


事業計画を書面議決、感染状況見定め実施(東北推進協)
 東北ILC推進協議会は新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、本年度総会を書面で開催。22日までに本年度事業計画や東北ILC準備室廃止など5議案が原案通り承認された。
 事業計画には、ILCに関連した国際会議に出席しての意見交換、子どもたちを対象にした講演会、全国向け広報活動などが盛り込まれた。
 しかし、新型コロナによる各種会合の自粛や海外への渡航が制限されている実情を踏まえ、東北推進協は「どのタイミングで実施できるか、状況を見ながら考えたい」としている。
 東北推進協事務局は、4月20日に会員230団体を対象に書面開催する旨を周知。今月8日に議案書を提出した。19日までに賛否や意見などを求めたところ、208団体から回答があり、すべて原案通り承認するとの回答を得た。
 ただ、議案は3月に作られたもので、新型コロナを巡る状況が反映されていなかった。今後予定している要望や啓発普及などの活動はもとより、今回の総会自体も通常開催できなかった。同事務局は「(感染が拡大している)今の現状には合致しない内容もあるが、基本的な活動の柱は変わりない。状況を見ながら、実施の時期とタイミングを見定めたい」と話している。
 同推進協共同代表の大野英男・東北大学総長と高橋宏明・東北経済連合会名誉会長は、書面のあいさつで「ILC計画は実現に向けて、国内外で一歩一歩、前に進んでいると思われる。本協議会は、ILC受け入れ具現化のための新組織と連携しつつ、東北へのILC誘致活動を一層強化していく」とコメントしている。
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tanko 2020-5-11 11:20
 文部科学省が策定する「学術研究の大型プロジェクトの推進に関する基本構想(ロードマップ2020)」は、新型コロナウイルス感染症の影響で、公表時期が見通せない状況にある。書面審査の段階で作業が中断。ヒアリング審査対象の決定から先に進んでいない。ロードマップ掲載計画の選定審査には、北上山地が有力候補地となっている「国際リニアコライダー(ILC)」も応募している。同省研究振興局学術機関課は、全体スケジュールを設定し直している。(児玉直人)

 ロードマップは、幅広い研究分野の意向を踏まえながら、大型プロジェクトの優先度を明らかにするもの。日本学術会議(山極寿一会長)が策定する「学術の大型施設計画・大規模研究計画に関するマスタープラン」と関連性があり、どちらも3年ごとに策定している。
 「ロードマップ2020」掲載計画の審査を受けられるのは、学術会議が今年1月に策定した「マスタープラン2020」で、重点計画に選ばれた31件と、重点計画選定時のヒアリング審査を受けたが選外になった28件。ILCは28件のうちの一つだ。
 ロードマップの審査は、書面とヒアリングの2段階。書面審査により、ヒアリング審査対象を30件まで絞り込む。マスタープラン2020の重点計画31件に比べ、選外の28件に対する審査要件のハードルは高く設定されている。
 文科省は2月末まで書類提出を受け付けていた。3月に入り、約3週間の期間を設け、大学教授ら専門家による書面審査を開始していた。
 しかし、時期を同じくして新型コロナが感染拡大。ヒアリング審査の対象を決める合議審議が開催できず、4月24日から26日に予定していたヒアリング審査は延期に。5月以降としていたロードマップ案の取りまとめ、意見募集(パブリックコメント)、策定・公表なども先送りとなった。
 同課は全体スケジュールを再設定中。担当者は「6日までだった緊急事態宣言が31日まで延長されたこともあり、現段階では見通しが立たない」としながら、新型コロナ感染防止を意識したヒアリングの方法も含め、検討を進めているという。
 ロードマップとともに策定動向が注目されている欧州素粒子物理学戦略(European Strategy for Particle Physics)次期計画についても、新型コロナの影響で策定・公表が延期された。当初は、5月25日にブダペストで開催される欧州合同原子核研究所(CERN)理事会の臨時会議で最終承認される予定だった。

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