人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市東部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)
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tanko 2019-1-26 9:10
 柴山昌彦・文部科学大臣は25日の定例記者会見で、素粒子実験施設「国際リニアコライダー(ILC)」誘致を巡る政府対応について、大型学術プロジェクト実現に求められる基本的なプロセスがあるとし、「日本学術会議において引き続き議論がなされ、国内の科学コミュニティーの理解や支持を得られることが必要ではないか」との考えを示した。その上で、関係省庁の考えを聴取しつつ学術会議が提出したILCに関する所見を精査するといい、国際的な動向や要請なども注視しながら「慎重に検討したい」と述べた。
 昨年12月19日に学術会議が文科省に提出したILC計画に関する所見では、素粒子物理学分野における一定の科学的意義を認める一方、費用分担や人材確保に課題があること、候補地の地域住民らへの一層の対話充実が求められるといった点を指摘。「現状で提示されている計画内容、準備内容から判断して、日本に誘致することを支持するに至らない」としている。
 柴山文科相は、大型学術プロジェクトを進める上での正式なプロセスについて「学術会議で策定されるマスタープラン(基本計画)を基に、文科省の審議会において優先度を明らかにするロードマップへ位置付ける必要がある」と説明。ILCに関しても、「まずは学術会議のマスタープランにおいて、所見で示された課題の対応を含めて引き続き議論がなされ、国内の科学コミュニティーの理解や支持が得られることが必要ではないか」との考えを示した。
 国際研究者組織「リニアコライダー・コラボレーション(LCC)」が昨年12月、今年3月7日までに日本政府が見解を示すことを求めるという意向についても「承知している」とし、これら国際的な要請などにも注視しながら対応していきたいとした。
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tanko 2019-1-26 9:10
 国際リニアコライダー(ILC)の北上山地誘致に慎重な姿勢を示している市民団体「ILC誘致を考える会」(千坂げんぽう(※)、原田徹郎共同代表)は25日、文部科学省を訪れ「ILC誘致計画の不採用」を求める趣旨の要望書を柴山昌彦大臣宛てに提出した。
 要望に出向いたのは、千坂共同代表と同会の活動に関わっている首都大学東京の山下祐介教授ら4人。同省の素粒子・原子核研究推進室の轟渉室長に手渡した。
 要望書で同会は、昨年12月に日本学術会議が文科省へ提出した「ILC見直し計画案」に対する所見の内容に賛同しながら、「計画の不採用」を求めた。
 学術会議の所見内で触れている地域住民への正確な情報提供について、「推進側は十分な対応をしているかのように主張しているが、決してそのようなことはない」と指摘。昨年9月24日に一関市内で開かれたリスク説明会についても、「十分な答えがなく、その後、補足の説明会は開催されていない」と主張した。
 自然環境や放射性物質に対する不安なども掲げた。メリットや夢を強調しがちな誘致活動に疑問を呈しながら、「このような状況のまま誘致が進めば、『考える会』から『反対する会』に移行しなければならない」と強調した。
 要望書提出後、取材に応じた山下教授は、同日の柴山文科相の会見内容に触れ「学術会議が認めていないことを文科省がOKすることはないと思う」との考えを示した上で、「(文科省の)外の関係がどのような動きをするのか注視したい」と話していた。

※…千坂氏の名前の漢字表記は、山へんに諺のつくりで「げん」、峰で「ぽう」
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tanko 2019-1-22 15:50
 国際リニアコライダー(ILC)の誘致に国民的関心を引き寄せる一環として、漫画「会長 島耕作」に誘致プロジェクトが取り上げられる。24日発売の週刊漫画雑誌「モーニング」(講談社)に掲載される。
 弘兼憲史さん作の「島耕作」シリーズは、サラリーマンの島耕作を主人公に、企業内外の競争やそれを取り巻く人間模様などを描いた人気漫画。「課長―」「部長―」「社長―」などのシリーズ作品があり、現在は「会長―」がモーニングに連載中だ。
 ILC計画は「国民周知が不十分」との指摘が以前からあり、誘致関係者は著名人や「ハローキティ」など人気キャラクターの力を借りたPR活動、グッズ販売などを展開している。弘兼さんは、昨年6月に発足した「ILC100人委員会」に名を連ねている。
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tanko 2019-1-22 15:50
 北上山地が有力候補地となっている素粒子実験施設、国際リニアコライダー(ILC)について、推進派の研究者側は、3月7日までに日本政府が国際協議に入る意向を示した場合、関係政府間での建設最終合意は2022年から2024年ごろになるとの見通しを明らかにした。文部科学省は昨年末、日本学術会議(山極寿一会長)からILCに関する所見の提出を受けており、日本政府がどう判断を下すのかが最大の焦点となっている。

 ILC推進プロジェクト事務局によると、想定スケジュールは今月18日に都内で開かれた「ILC推進産学連携フォーラム」の席上、資料の一つとして配布された。茨城県つくば市の高エネルギー加速器研究機構(KEK)が中心となり、まとめたという。
 内容は、日本政府が3月7日までに国際協議に入る意向を示した場合を前提としている。政府の意向表明後、国際分担案の大枠合意に向け、来年5月ごろまで各国との政府間協議が行われると見込んでいる。これと並行して研究者間では、政府間協議の補佐を務めたり、建設の最終承認に応え得る十分な設計、残された技術的課題の解決に努めたりする。ILC計画も関係する、ヨーロッパの素粒子物理戦略の議論も進められる。
 大枠合意後は、ILC研究所の組織や運営、経費・人的資源の分担合意に関する本格交渉が始まる。一方研究者側は、主要加速器研究機関による国際研究組織「ILCプレラボ」を立ち上げる。政府間交渉がまとまり、最終的な建設へのゴーサインを出すタイミングは、2022〜2024年ごろになると見通した。
 当初、素粒子物理学者らILC推進派の間では、日本政府の意思表示の期限は「昨年末まで」と想定していた。しかし、文科省から審議依頼を受けていた日本学術会議による同省への所見提出に向けた協議や諸手続きは年末近くまでかかり、政府の「年内表明」は実質困難な情勢になった。
 これを受けILCを推進する研究者側は、都内で開催予定のILC関係の国際会議日程などを踏まえ、新たな期限を「今年3月7日まで」とした。
 学術会議は昨年12月19日に、文科省へ所見を回答。学術的な意義は認める一方で、現状の計画や準備状況では「支持するに至らない」と指摘し、政府に対して慎重な誘致判断を求めている。

[/b]図=日本政府が3月7日までに、前向きな意思表示をした場合の想定スケジュール[b]
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tanko 2019-1-16 16:00
 岩手県はこのほど、各部局から提示された2019年度当初予算の要求額をまとめた。要求額の総額は9377億3900万円で、本年度(2018年度)当初予算額と比べ156億900万円(1.6%)少なかった。厳しい財政状況や震災復興の進展などを反映し、本年度当初水準を若干下回ったが、ラグビーワールドカップ(W杯)釜石開催や働き方改革への対応など、増額や新規要求の事業も散見。限られた財源で、効果的な事業を展開する「選択と集中」を意識していることがうかがえる。県総務部は、政府予算編成の動向や外部環境の変化を踏まえるとともに、事業内容の充実・精査なども行い、県議会2月定例会に提出する予算案の作成作業を進める。
 県は新年度当初予算の編成に当たり、昨年9月、千葉茂樹副知事名で方針を示していた。方針提示と同じタイミングで公表された県の中長期財政見通しによると、社会保障関係費の増加や県債償還が高水準で推移している状況にあり、毎年多額の財源不足が発生。財源対策3基金の残高が減少するなど、今後も厳しい財政状況が続くと見込まれている。
 一方で、人口減少や人手不足など諸課題を意識した対応も求められる。さらに「三陸防災復興プロジェクト2019」のように被災地復興の動きを発信する事業や、国際リニアコライダー(ILC)誘致など地域将来の発展に期待を寄せる取り組みにも、県は力を注ぎたい考え。2019年度は、策定作業中の次期総合計画の実施初年度でもあることから、全ての事務事業をゼロベースで見直しつつ、限られた財源の効果的な活用に努める方針だ。
 ILC推進事業費は1億1510万円(本年度当初比1020万円増)で、誘致実現後の研究者受け入れ環境の整備の具体検討、国内外への情報発信を進める。
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tanko 2019-1-11 16:10
連載《「平成」の時代 節目の30年を振り返る》より

 「平成」は4月で幕を下ろし、5月から新しい元号となる。一つの節目ともいえる新たな時代に何を求め、期待しているのか。世論調査では、一般市民も高校生も「住みよさ」を志向している。住みやすさの定義として高校生は「都市化」を期待している。
 「住んでいる地域は今後がどうあるべきか」に対する高校生の回答(108人)をみると、「安心して暮らせるまち」「治安のいいまち」「落ち着いて暮らせる地域」が多い。その上で「都市化」「人口増による活性化、にぎわい」を挙げている。
 にぎわいづくりのために商業環境の充実・発展を望み、欲しいのは▽若者向けのショップ▽ネットカフェ▽娯楽施設▽若者交流の場――など。こうした回答の裏には、高校生ら若い世代にとって、魅力的な施設が少ないという事情があるといえる。

映画館が欲しい

 注目したいのが、この地に欲しい施設として「映画館」を挙げた高校生が5人いたこと。ネット社会となって映画館が全国的に減っている中、映画や映画館の魅力を見いだしたのだろうか、それとも無いものねだりなのか。興味深い。
 ほかに「ILC(国際リニアコライダー)で地域発展」を望む声や「雇用拡大を」「高齢者対応のショッピングセンターを」などの回答も。
 「クーラー設置など勉強に集中できる環境整備を」も高校生らしい。「交通の便を良くして」「電車の本数を増やして」の要望も数件あり、通学する高校生にとっては切実であり、「住みよさ」の条件といえる。
 交通の利便性を実現するにも、高校生が主張する人口増と都市化、経済活動の活発化が不可欠だ。
 同様の質問に、一般市民は「寛容で穏やかな市民生活」「若者、高齢者の共存」「お年寄りの生きがい」「互いに尊重し協力し合うまち」と回答。これが「住みよさ」の基本。デジタル時代が進むことによって、逆に「住民同士のつながり」を重視する傾向も見受けられる。
 ただし、中高年層から最も多かったのは、「若者を軸に据えたまちづくり」を望む声。「若者が安心して住み続けたいと思う地域」(60代)、「働きやすい、子育てしやすい環境」(50代)、「若い世代が安心して子育てできる社会」(20代)など。価値観が変化しようが、こうした意識は時代の必然のような気もする。

総 括

 新時代を担うのは現在の高校生を含む若者世代。少子高齢社会が進み、ライフスタイルが変化する中で、安心して暮らせる地域社会構築に対する若い力への期待は大きい。
 平成の後にはどんな社会が待ち受けているのか。調査結果が「平成の時代」の清算のすべてではないが、「ポスト平成」時代のの地方のまちづくりの進むべき方向と施策がみえてくるのではなかろうか。
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tanko 2019-1-8 16:00
連載《「平成」の時代 節目の30年を振り返る》より

 「平成の時代」世論調査では一般市民のほかに、地元の高校生108人(2、3年)にも調査用紙に記入してもらった。質問項目は一般市民とほぼ同じ。昭和と平成を生きてきた中高年世代は、両方の時代と比べることができるが、平成の真っただ中に生まれ、次代を担う若き高校生の考えはひと味もふた味も違って興味深い。
 「平成で印象に残る出来事」(複数回答可)で最も多かったのは「東日本大震災など自然災害」が96票、2位は「平成の市町村合併・奥州市の誕生」で16票、3位が「胆沢の3中学校の統合」13票だった。
 圧倒的数字を示した自然災害だが、96票のうち88票が「東日本大震災」(平成23年3月)と記入。他の災害として「岩手・宮城内陸地震」(平成20年6月)の回答も。沿岸部を大津波が襲った東日本大震災発生時、回答した高校生たちは小学3、4年生だった。内陸部でも大きな揺れがあり、そして停電。ライフラインが途絶えた中で相次ぐ余震に恐怖を覚えたに違いない。
 記憶から消せない大震災だが、「被災地の早期復興を」「何とか乗り越えることができた」「絆が強まった」など前向きな意見は、へこたれない高校生らしさを感じるし、これからの時代に向け期待感を抱くことができる。

合併に意見も

 2位は「市町村合併」。高校生たちが合併に関心を向けている。合併をスケールメリットとしてとらえているようだが、男子生徒からは「2市2町1村が一緒になって奥州市が誕生し、胆江地域内のつながりが深まった一方で、地域格差が目立った」との意見も。
 また「合併」の回答としてカウントしなかったが、印象的なこととして奥州市の「区の削除(廃止)」を挙げた回答が7票あったことも興味深い。
 回答した奥州市の高校生たちは、物心ついたころから住所には当たり前に「区」が付いていた。が、昨年4月に地域自治区が廃止され「区」が削除されたことに、ちょっとした違和感を持っているのではなかろうか。
 4位以下は「ILC(国際リニアコライダー)候補地・誘致活動」9票、「大谷翔平選手の活躍(プロ入り、メジャー移籍新人王獲得など)」6票、「少子高齢化、人口減の影響」6票など。
 人口減の影響に関しては、高校の定員割れや統廃合を課題として記している生徒も。高校生の生活にも影響してくるこの地域の問題だけに、少なからず関心を持っていることも調査で分かった。
 このほか「岩手国体」「インターハイ開催」「マラソン大会の統合」など、スポーツ関係の項目が目立つのも高校生らしい。
 「平成を象徴する郷土ゆかりの人物」は、やはり「大谷翔平」が圧倒的で95票。次いで「久慈暁子」(フジテレビアナウンサー)8票、「桑島法子」(声優)2票、「小沢一郎」(政治家)2票となっている。

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