人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市東部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)
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tanko 2018-12-25 11:00
 「万国測地学協会も貧乏で、とてもそうたくさんの観測所を置くこともできず、また協会では緯度観測ばかりが仕事ではありませんから、もし金があってもそればかりに使うということは、あまたの異論者が出てくることも無理ならんでしょう」
 1908(明治41)年、緯度観測所の木村栄博士が著した「緯度變化(へんか)に就(つ)いて」の一文である。国際リニアコライダー(ILC)を巡る動きを暗示しているかのようで、思わず身震いした。
 今月19日、日本学術会議はILCについて、現状の計画や準備状況では「支持するに至らない」との所見をまとめた。周辺の反応は「ILC実現は厳しい」と「科学的意義は認められた」の二つに分かれる。後者の考え方はILC推進派側に多く、指摘された課題についても対応していくというコメントもあり、極めて前向きだ。
 では、推進派はなぜ最初からこのような前向き姿勢を示せなかったのだろう。回答案(所見案)が公表された11月中旬、推進派は「意見・説明書」という名の、事実上の反論文書を学術会議に突き付けた。推進派が開いた記者会見の席上では、学術会議の委員らの素質を批判するような発言まで飛び出した。果たして「子どもたちに夢を」と誘致運動を進めている「大人」の対応であろうか。
 学術会議は厳しい表現ながらも、再び「宿題」を丁寧に提示してくれた。実は、同じような役割を果たしているのが、一関市を拠点とした慎重派の市民団体だ。彼らは住民間の感情的な分裂が生じる不安を抱きながらも、勇気を持って懸念要素をまとめ、メリット主張に偏りがちな誘致活動の在り方に一石を投じた。
 学術会議や市民団体の存在を敵対視するか、それとも彼らと向き合い真摯に声を聴いて事を進めるのか。推進派の姿勢が今後一層問われる。これまでの誘致の在り方や体制を早急に再点検する時にある。
(児玉直人)

写真=日本学術会議のILC検討委は計11回開催。公開会議の際は、推進派の研究者や誘致団体関係者が大勢詰め掛けた=11月14日、東京都港区の日本学術会議2階大会議室
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tanko 2018-12-23 13:55
 東北ILC推進協議会の高橋宏明代表(東北経済連合会名誉会長)らは21日、東京都千代田区の自民党本部を訪れ、素粒子実験施設ILC(国際リニアコライダー)の日本誘致に向けた国際協議を日本主導で速やかに開始することなどを求める要望書を、加藤勝信・党総務会長(衆院岡山5区)に提出した。

 訪問したのは高橋代表のほか、同推進協理事を務める達増拓也岩手県知事、村井嘉浩宮城県知事、参与を務める小沢昌記奥州市長、勝部修一関市長ら。ILCの誘致を推進したい研究者側は、ヨーロッパの次期素粒子物理学計画の策定スケジュールとの関係上、いち早く日本政府の前向きな意思表示が必要と強調。要望では、速やかに日本主導で国際協議を開始するよう求めたほか、震災復興や成長戦略、地方創生などの柱にもILCプロジェクトを位置付けるよう訴えた。
 ILCを巡っては、今月19日に日本学術会議(山極寿一会長)が文部科学省からの審議依頼に対する回答を提出。科学的意義は認めながらも、現状で提示されている計画内容や準備状況から判断し、「日本に誘致することを支持するに至らない」として、政府における誘致意思表明に関する判断は「慎重になされるべきだ」との所見をまとめた。
 誘致推進派の関係者は、ILCの科学的意義について認められていることを重視。公式な国際協議の場をまずは設けた上で、学術会議などが指摘する諸課題や国民理解などの対応に努めていく姿勢を示している。
 21日は内閣府や文部科学省にも要望書を提出した。

写真=ILC誘致につながる国際協議の早期開始などを求めた東北ILC推進協の関係者ら(奥州市ILC推進室提供)
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tanko 2018-12-20 11:30
 【東京=児玉直人】 日本学術会議(山極寿一会長)は19日、文部科学省から審議依頼されていた国際リニアコライダー(ILC)見直し計画について、科学的意義は認めながら「現状で提示されている計画内容、準備内容から判断して、日本に誘致することを支持するに至らない」とする回答を同省に提出。政府におけるILC誘致の意思表明について、「判断は慎重になされるべきである」とした。ILC推進派の研究者や国会議連、経済関係者らによる諸団体は同日、相次ぎコメントを発表。科学的意義を認めている点を重視し、指摘された課題への対応も進めながら公式な国際協議の開始や国民理解の形成に努めていくとした。

 同会議は今年7月の審議依頼を受け、ILC見直し計画案に対する検討委員会(委員長・家泰弘日本学術振興会理事、委員10人)を設置し、計11回の会合を開き審議してきた。
 提出された回答内容は、11月14日に示された「回答案」と趣旨に大きな変更点はない。科学的意義を認めながらも▽素粒子物理学分野における諸研究プロジェクトへの人材配置や予算の配分にまで踏み込んだ議論の段階には至っていない▽他の諸学問分野の大型研究計画も含めた広い視野でのILCの位置付けについてはさらに広範の議論が必要▽地域振興や土木工事、放射化物生成の環境への影響について、国民、特に建設候補地の地域住民に対し一層充実した対話が求められる――などの問題点、課題を指摘した。
 推進派研究者から「事実誤認」と指摘があった回答案の「当該分野での理解が得られていない」とする趣旨の表記については、「高エネルギー素粒子物理学のコミュニティーにおいて合意が得られている」と改められた。
 総合所見では「国内誘致について現状では支持できず、政府の意思表明に関する判断は、慎重になされるべきだ」と記した。加えて、実験施設の巨大化を前提とする研究スタイルは「いずれ限界に達する」とし、「ビッグサイエンスの将来の在り方は学術界全体で考えなければならない課題」とまとめた。
 19日、東京都港区の学術会議大会議室で開かれた学術会議第273回幹事会で、家委員長が回答書の内容を説明。目立った異論はなく承認された。
 家委員長はそのまま文科省に出向き、磯谷桂介・研究振興局長に回答書を提出。磯谷局長と非公開の懇談を終えた後、報道陣の取材に応じた家委員長は「巨額予算の問題もさることながら、建設開始から実験終了までの間、現状の日本国内の人的資源だけでは足りず、明白な見通しが得られていないという点、(ILC用の)加速器自体も簡単な装置ではなく検討の余地がまだあるという指摘もあり、現時点でゴーサインを出すには至らないという結論になった」と説明した。
 慎重な見解を示した学術会議側の見解に対し、政治側の判断で誘致に向けた動きが前進した場合について問うと、「そのことに関してはコメントする立場にはない」との考えを示した。
 誘致推進の立場にあるILC国会議連の河村建夫会長、東北ILC推進協議会の高橋宏明代表、素粒子物理学者を中心とする研究者グループは同日、学術会議の回答書提出を受けてのコメントを相次いで表明。このうち河村会長は「誘致実現は政治の使命として進めていくべき課題と捉えている」と強調した。

写真=磯谷桂介・研究振興局長(右)に回答書を手渡す家泰弘委員長(文部科学省研究振興局長室)
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tanko 2018-12-11 11:40
 素粒子実験施設「国際リニアコライダー(ILC)」の北上山地誘致を推進する地元行政と、慎重な姿勢を示す市民団体双方の見解を聴く学習会が9日、水沢佐倉河の奥州市文化会館(Zホール)で開かれた。出席者からは「最初は夢のある話だと思っていたが、リスクを初めて聞いて『本当に大丈夫なのか』と感じた」「県や市のレベルで放射性廃棄物処分場への転用を阻止できるのか」といった声が相次いだ。

 学習会を主催したのは、全日本年金者組合胆江支部(菅章夫執行委員長)。同組合会員にとどまらず、一般市民や一関市の住民なども含め、年配者を中心に50人余りが参加した。
 同支部では当初、ILC計画を推進している素粒子物理学者ら専門家から直接説明を受けることを希望。奥州市ILC推進室、県科学ILC推進室に講師紹介を依頼したが「日程が合わない」との理由で実現できず、奥州市の推進室職員が実施している「出前講座」の範囲内でILCの科学的意義やメリット、直近の情報を説明するスタイルに変更となった。慎重派の見解については、一関市を拠点に活動している市民団体「ILC誘致を考える会」共同代表の原田徹郎氏が述べた。
 奥州市ILC推進室の職員はILCで行われる研究概要などに加え、11月14日に明らかとなった日本学術会議ILC検討委による文部科学省への回答案についても触れた。質疑応答では「海外にも同様の施設があり、KEK(茨城県の高エネルギー加速器研究機構)でも新たな実験が始まろうとしている中、ILCをやる必要性は何なのか」「決定する前にリスクを説明すべきだ」「放射能への対応は」など、リスク面への不安や懸念を示す意見や質問でほぼ占められた。市は学習会を主催した同組合を通じ、文書で回答するとした。
 考える会の原田氏は、学術会議の回答案で指摘されていた項目の多くは、地元住民の間でも心配されていた点だったと評価。「地元住民へ十分なリスク説明をしないで推進しようとする姿勢の在り方が問題。行政や議会、商工団体、一部報道機関も含め誘致推進に動いており、疑問の声を上げにくい雰囲気になっている。科学の発展に貢献するという主張は分からなくもないが、震災被災地での生活再建も終わっておらず、われわれ地域住民が生きる上でやらなければいけないこともたくさんある。懸念要素が多い中、ILCは最優先でやるべき事業ではない」と主張した。
 原田氏と共に活動している自営業菅原佐喜雄氏=一関市千厩町=は、推進派と慎重派が感情的にぶつかり合い、地域を二分にするようなことがあってはならないと強調。その上で「本当は心配だが声を上げないという人は、『賛成している』とカウントされてしまう。ILCを推進する人たちや、KEKの中にもいろいろな立場や考えの人たちがおり、それぞれの話を聞かないと全体像はつかめない」との考えを示していた。

写真=ILC推進、慎重双方の立場の話に耳を傾ける出席者
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tanko 2018-12-9 16:30
 ドイツのヘルムホルツ重イオン研究センターで研究グループリーダーを務めている、斎藤武彦教授(47)=神奈川県出身=は7日、協和学院水沢第一高校(生徒370人、伊藤勝校長)で宇宙や物理など科学に関する特別授業を行った。斎藤教授は科学にとどまらず、さまざまな仕事や活動は今後、国際的に行われる場面がますます増えると指摘。「世界を知ることは、自分自身のためにもなるし、岩手や世界のためにもなる。世界に出て、いろいろと学んでほしい」と呼び掛けた。

 児童・生徒や一般地域住民らを主対象とした斎藤教授の特別科学授業は2012(平成24)年以降、東日本大震災被災県を中心に毎年開催されている。同校での授業は斎藤教授の活動を支援している一般社団法人SAVE IWATE(寺井良夫理事長)と、奥州市国際交流協会(佐藤剛会長)の協力で実現した。
 普通科の1〜3年から1クラスずつと、調理科1年の生徒計約100人が聴講。斎藤教授は、宇宙の成り立ちやスケール感を分かりやすく解説した。
 宇宙がなぜ誕生したか、なぜ物質が存在するのかを知るために、使用される実験装置が「衝突型加速器」。スイスのジュネーブ近郊で欧州原子核合同研究機構(CERN)が運用する大型ハドロン衝突加速器(LHC)の様子を例に、国際協力の下で科学の研究が行われている点を紹介した。
 LHCと同様に国際協力での運用が計画され、北上山地が有力候補地となっている素粒子実験施設「国際リニアコライダー(ILC)」についても触れた。「実現すれば岩手で世界の様子に接しられるようになるが、本当に実現できるかどうかはまだ分からない」としながら、「科学に限らず、これからの時代は世界の人たちと協力して仕事をする場面がもっと出てくる。皆さんはまだ若いので、ILCが来る来ないにかかわらず、どんどん世界を見てほしい。もしILCが来たら、それをうまく活用すればいいと思う。英語をはじめとするさまざまな言語も学んで、世界を引っ張っていけるような人材になってほしい」とエールを送った。

写真=宇宙や物理の研究について解説する斎藤武彦教授
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tanko 2018-12-8 10:00
 北上山地が有力候補地となっている素粒子実験施設「国際リニアコライダー(ILC)」実現を見据えた日本政府の前向きな意思表示について、国際研究者組織「リニアコライダー・コラボレーション(LCC)」最高責任者のリン・エバンス氏=インペリアル・カレッジ・ロンドン教授=は7日、「来年3月7日までに出すことが重要」と表明。これまで期限とされていた「年内」から事実上引き延ばされたことになる。

 エバンス氏は、東京の衆議院第一議員会館で開かれた国会のILC議員連盟とILC誘致実現連絡協議会の総会に出席。海外におけるILCに対する期待を伝えるため、LCC副責任者の村山斉氏=カリフォルニア大学バークレー校教授=と共に招かれた。
 席上、エバンス氏は日本政府の意思表示時期について「来年3月7日までに」と発言。総会に参加した誘致関係者によると、同3月7日は世界の主要加速器研究所の代表者らで組織する「国際将来加速器委員会(ICFA)」と「リニアコライダー国際推進委員会(LCB)」の東京で開かれる合同会議の開催日で、今月6日にLCBの電話会議で意思表示の期限延伸の方針がまとめられたという。
 ILC誘致を推進する研究者らはこれまで、「今年中に日本政府による前向きな意思表示が必要」と主張。東北や本県の経済界、自治体首長ら地元関係者も研究者らの指摘に基づき、政府関係者らに早期対応を求める要望活動などを展開していた。
 「年内」が期限とされてきた理由は、欧州の次期素粒子物理学計画の策定作業があるためで、計画に大きな影響力を持つ欧州原子核合同研究機構(CERN)のファビオラ・ジアノッティ機構長らの見解に基づくものだった。ファビオラ機構長はLCBのメンバーでもあり、日本政府の意思表示期限の先送りを実質了承したものとみられる。
 ILCを巡っては、日本学術会議のILC計画見直し案に関する検討委員会(家泰弘委員長、委員10人)が、文部科学省に対する回答案を11月14日に公表。誘致に慎重な見解や指摘がにじみ出た内容で、推進派の研究者や行政、経済関係者は「事実誤認」「正しく理解されていない」などと反発している。
 学術会議の検討委は、11月21日に開かれた第11回会合(非公開)以降開催されていない。同会議事務局によると、今月7日時点でも次回会合の予定は決まっていない。
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tanko 2018-12-3 8:00
 北上山地が有力候補地となっている素粒子実験施設「国際リニアコライダー(ILC)」を巡り、国際協議に入るために必要な日本政府の意思表明が、年内までに行われるかどうか微妙な情勢となってきた。政府にとって、日本学術会議(山極寿一会長)から回答されるILC計画への所見が判断のよりどころの一つ。回答提出までには学術会議内での査読作業と幹事会の了承を経る必要があるが、次回幹事会は19日の予定で祝日や年末年始の休業なども勘案すれば、年内に政府内で協議できる時間はわずか。仮に年内表明が間に合わない場合、日本の誘致関係者らは、国際協力体制構築を左右する欧州の科学者界に対し時間的猶予を求めて交渉せざるを得ない場面も出てきそうだ。(児玉直人)

 国際プロジェクトに位置付けられるILC計画を実現するためには、公式な国際協議の場で費用分担などを話し合い、その都度合意を得ていく必要がある。ILC計画を推進する素粒子物理学者らは「今回の政府の意思表明は、誘致の是非ではなく、公式協議を始めようという姿勢を示してもらうもの」と強調する。
 一方、日本学術会議の「ILC計画見直し案に関する検討委員会」(家泰弘委員長、委員10人)が11月14日に公表した文科省への回答案には、ILC計画に対する慎重な見解や各種対応の不十分さを指摘する文言が目立った。推進派研究者や東北、岩手の経済関係者らは、事実誤認や情報が正しく理解されていないなどと一斉に反論。同19日、検討委に意見・説明書を提出している。
 検討委の家委員長は当初、同21日の第11回会合(非公開)で最終版に近いものに仕上げる意向を示していた。しかし、関係者によると取りまとめまでには至らなかったという。12回目の会合時期について、学術会議事務局は「未定」としている。
 学術会議では、審議などの依頼を受けた案件を回答する前に、査読と呼ばれるチェック作業と幹事会での承認を踏む必要がある。学術会議事務局によると、幹事会は月1〜2回開催しており、次回は19日に開催される予定だ。2013年に学術会議でILC計画の協議が行われた際は、案がまとまってから文科省に回答するまで約1カ月半かかっている。
 あらゆる分野の科学者の意見をまとめ、国内外に発信する立場にある学術会議が、慎重姿勢の色濃い所見を回答した場合、推進派の考えとぶつかることになる。推進派関係者は、国会のILC議連や自民党のILC関係組織の存在を頼りに、政界での理解構築に努めてきた背景がある。推進と慎重双方の立場を考慮すると、政府がわずか数日で公式見解を示すのは容易ではなさそう。
 年内までに日本政府の意思表示が求められている理由は、2020年5月を始期とする欧州の次期素粒子物理学計画の策定作業があるためだ。同計画にILCが盛り込まれなければ、国際協力体制が構築できない恐れがある。
 ILCを推進する研究者の一人は、計画策定に大きな影響力を持つ欧州原子核合同研究機構(CERN)のファビオラ・ジアノッティ機構長らが「年内に日本政府の前向きな発表がなければ欧州の戦略でILCは考慮しない」と述べていたと説明。これが現時点での公式見解になっているという。この研究者は、仮に日本政府の意思表示が年内に間に合わなかったときは、欧州側に時間的な猶予を求める交渉が必要になってくると推測している。

 ◇LCC最高責任者ら議連で講演へ(7日)
 超党派国会議員で組織するILC議連と、自民党のILC誘致実現連絡協議会の総会は7日、東京都千代田区の衆議院第一議員会館内で開かれる。ILCを推進する国際研究者組織「リニアコライダー・コラボレーション(LCC)」の最高責任者リン・エバンス氏と、LCC副責任者の村山斉氏を招き、ILCを巡る海外での状況について報告を受ける。
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tanko 2018-12-1 8:10
 岩手県南と宮城県北の8市町首長は30日、文部科学省から国際リニアコライダー(ILC)に関する審議依頼を受けている日本学術会議(山極寿一会長)に、候補地周辺の誘致に関する取り組みをまとめた連名の意見書を提出した。慎重な見解が示された学術会議の検討委員会の回答案へ事実上反論した素粒子物理学者や経済界の動きに、地元自治体も追従した形だ。
 意見書に名を連ねたのは、奥州市の小沢昌記市長や一関市の勝部修市長ら首長8人。児童生徒や地域住民に対する理解促進に取り組んできたことなどが記されており、「地域住民はILCに理解を深め、その実現を待ち望んでいる」と主張している。同日、勝部市長が代表して東京都港区の同会議を訪れ事務局職員に直接手渡した。
 一方、ILC計画に慎重な姿勢をみせている県内の市民団体8団体は、11月26日付で検討委の回答案に賛意を示す文書を提出した。8団体は自然保護や放射能汚染問題をテーマに活動している組織。「推進側は地域住民の疑問に真剣に向き合わず、経済効果などを誇大宣伝してきた」などと指摘し、「貴委員会の所見案により、県民が抱いていた不安、リスクが明らかにされた」と評価している。

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