人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市東部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)
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tanko 2018-8-9 12:20
 達増拓也知事は8日、東京都千代田区の自民党本部を訪れ、二階俊博幹事長らに素粒子実験施設・国際リニアコライダー(ILC)の誘致実現を要望した。
 要望活動には達増知事のほか、ILC国会議連副会長を務める鈴木俊一五輪相、県ILC推進協議会の谷村邦久会長、東北ILC準備室長の鈴木厚人・県立大学長も参加。党本部で二階幹事長やILC国会議連の河村建夫会長、超党派議連「科学技術の会」代表を務めている細田博之・元官房長官、甘利明・元経済再生相と面会した。
 県科学ILC推進室によると、二階幹事長は「党として頑張っていかなければならない。いつまでも決めないわけにはいかない」とコメント。要望後、報道陣の取材に応じた達増知事は、自民党を軸としたILCに関する連絡協議会が立ち上がる動きに触れ「それぞれ政策を進める立場の人たちに話を聞いていただき、(ILCが)雲をつかむようなものではなく、現実的な動きとして進んでいることを実感した。県としても受け入れ準備をしっかり進めていくことをお伝えした」と話していたという。

写真=二階俊博幹事長(手前中央)らにILC誘致実現を要望した達増拓也知事(同左)=自民党本部、県提供
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tanko 2018-8-8 17:00
 ノーベル物理学賞受賞者で米国人のシェルドン・グラショー氏(85)とバリー・バリッシュ氏(82)が7日、東京都千代田区の日本外国特派員協会で記者会見し、国際リニアコライダー(ILC)実現の重要性を強調した。バリッシュ氏は「巨額投資に対する問題に対し、国民の理解を得るのは啓発や教育によって可能だと思う。ヒッグス粒子をなぜ調べるのかは、好奇心という人間が持つ本質に関わる。現代社会に生きている人間として、ただ単に資源を消費して生存するだけでなく、好奇心を満たしていくことが重要で、ILCを実現しなくてはいけない最大の理由はそこにある」と持論を展開した。

 両氏は今月5日に都内で開かれたILCに関する講演会参加や主要メディアへの取材対応などのため来日。帰国直前の時間を利用し会見に応じた。
 グラショー氏は、物質に質量を与える素粒子「ヒッグス粒子」らしきものが発見され、「研究の舞台はいよいよILCになる。ヒッグスが本当にあるのか、複数なのか、どんな性質を持っているのかもILCだからこそ分かる」と研究意義を強調。「絶対にILCは造らなければいけない。ILCができれば、必ず国際的な研究所となる。友人の研究者たちも楽しみにしている。日本学術会議でこの計画が承認されることを願っている」と述べた。
 研究者界や候補地の北上山地周辺地域の自治体、経済関係者はILC実現を強く求めている。だが、国民的認知度が依然として低く、また巨額な投資を伴うことへの反発が起きないとも限らない。
 国民理解や周知に関する質問に対しバリッシュ氏は「非常に膨大な費用がかかる。しかし、投資されるお金は幅広い分野に生かされる。素粒子物理分野の成果は、1000人、2000人規模の研究者の間で共有される。研究者1人当たりのコストは、他の学術分野と比べ半分ぐらいではないか」と主張した。
 ILCを推進する研究者たちは、最新の研究成果や初期コストの抑制などを踏まえ、施設規模を全長約30kmから20kmに見直し、物質に質量を与えているとされる素粒子「ヒッグス粒子」の精密測定に重点を置く方針を打ち出している。しかし、文部科学省のILC有識者会議の報告書には、見直し後の施設規模では新粒子発見の可能性が低くなることや、「トップクォーク」と呼ばれる素粒子の精密測定は実施できないと指摘している。
 物理系の研究者や誘致関係者の一部からも、研究成果の広がりや世界最高峰を目指すインパクトが当初計画よりも薄れるとの声が出ている。しかし、バリッシュ氏は「ILCは施設を拡張することができる加速器だ」とし、将来的に拡張できる面がILCのような直線加速器の優位点であることを強調した。

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 シェルドン・グラショー氏 1932年ニューヨーク市生まれ。コーネル大、ハーバード大卒の理論物理学者。力を伝える素粒子である「電磁気力(電磁相互作用)」と「弱い力(弱い相互作用)」の統一理論(電弱統一理論)に貢献した一人として、1979年にノーベル物理学賞を受賞。物質を構成する素粒子の一種「チャームクォーク」の存在も予言した。ボストン大などで数学、物理の教授を務める。

 バリー・バリッシュ氏 1936年ネブラスカ州オマハ市生まれ。カリフォルニア大バークレー校卒の実験物理学者。重力波の測定に世界で初めて成功した米国の研究施設「LIGO」を国際的なプロジェクトに育て上げたとして、昨年のノーベル物理学賞を受賞した。ILCの技術設計報告書をまとめ上げた国際共同設計チームの最高責任者も歴任。2012年1月には、北上山地を視察している。

写真=記者会見に臨むバリッシュ氏(左)とグラショー氏
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tanko 2018-8-8 16:30
 【東京=児玉直人】 北上山地が有力候補地となっている素粒子実験施設「国際リニアコライダー(ILC)」計画で、日本の負担額は建設関係が年間約400億円、運用関係が約230億円になるとの具体的な費用見通しが明らかになった。7日、日本外国特派員協会=東京都千代田区=で開かれたノーベル物理学賞受賞による会見の冒頭、ILC計画に携わっている東京大学の山下了特任教授が説明。既存の学術関連予算とは別の予算枠を設けることで、予算削減を警戒する他学術分野の関係者の理解を得たい考えだ。

 ILC建設や運用に関係するコストのうち、日本の負担についてはこれまで、想定される割合のような形でしか示されていなかった。具体的な金額として公表されたのは初めて。
 山下教授によると、10年の建設期間にかかる費用は総額7355億〜8033億円とし、このうち日本の負担は3750億〜4096億円になる見通し。年額にして、375億〜410億円という。金額に幅があるのは、技術の進歩などを加味するか否かによるもので、最新の技術が順調に取り入れられた場合は、公表された金額の低い側になると見込まれる。
 山下教授は「通常の学術・科学技術・大学予算の枠外にILCの予算を措置できるよう政界関係者と共に模索中だ。日本の科学研究予算は逼迫しており、ILCによって自分たちの研究予算が削られるとの不安はどうしてもある。枠外予算という仕組みができなかったら、ILCは実現できない」と断言。地域創生や産業振興など他の政策効果とILCが関わり合うような位置付けを取ることで、一つの予算で複数の効果が得られるような姿を描いているとした。
 ILCを巡っては、日本学術会議(山極寿一会長)の「ILC計画の見直し案に関する検討委員会」の初会合が今月10日に予定されており、科学的意義や技術面の妥当性などの検証が始まる。

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