人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市東部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)
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tanko 2018-7-31 12:40
 岩手県ILC推進協議会(谷村邦久会長)は30日、素粒子実験施設・国際リニアコライダー(ILC)の日本誘致が実現した場合の経済波及効果額(最終需要額)は20年間で3兆106億円、生産誘発額は5兆7200億円になるとの試算を公表した。同協議会は、政府の誘致決断を後押しする材料として提示する考えだ。

 同協議会は一昨年2月、イノベーション・経済波及効果調査委(委員長・鈴木厚人県立大学長)を内部に立ち上げ、経済学者の意見助言などを得て試算。独自の算出方法で、ILCの社会意義を示す3項目の波及効果を示した。
 このうち「基盤技術(加速器関連技術)の発展・利用による産業の波及効果」は、3兆106億円と算出。最終需要の各項目から誘発される国内生産額「生産誘発額」は、運用10年を加えた計20年間で5兆7200億円になるとした。
 民間投資における「世界とつながる新たな地方創生の効果」については、約4000億円と試算。東北エリアにILC・加速器関連産業が約700事業所あるとし、民間を事業主体に公共事業を行うPFI等の施設、住宅などに係る「民間投資」を約1000億円とした。「居住者・来訪者の消費支出額」は約3000億円で、内訳は外国人は約1200億円、日本人は約1800億円となっている。
 このほか「更なる変革・社会課題解決等の可能性」として、▽既存の加速器関連研究から生まれた新技術・新製品▽加速器駆動核変換システム(ADS)での放射性廃棄物処理(短寿命化)への貢献――を挙げた。
 谷村会長は「ILC実現には、欧州の素粒子物理戦略の次期5カ年計画に日本の協力を示すことが必要。この調査結果の活用を促し、日本政府の誘致決定を計画策定時期に間に合わせたい」と話していた。
 文科省ILC有識者会議の報告書に添付された民間研究所試算による経済波及効果は、最終需要額1兆2166億円〜1兆3338億円の発生に対し、生産誘発額は2兆3776億円〜2兆6109億円としている。県推進協と同様、建設期間10年、運用期間10年の20年を対象にしているが、算出の諸条件が異なる。
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tanko 2018-7-28 9:30
 日本学術会議(山極寿一会長)が26日、「国際リニアコライダー(ILC)計画の見直し案に関する検討委員会」の設置を決定した。文部科学省のILC有識者会議の取りまとめ文章では、ヒッグス粒子の精密測定に対する研究意義を認める一方、計画見直しにより打ち出された施設規模では、新粒子発見の可能性が低いことや、「トップクォーク」と呼ばれる素粒子の精密測定は実施できないとしている。検討委メンバーには物理以外の専門家や、同じ物理でもILCを推進する素粒子物理学とライバル関係にある分野を専門とする研究者もいる。有識者会議が指摘した課題などに検討委メンバーはどのような見解を示し、その内容に文科省や政府関係者はどう反応するか――。
(児玉直人)

 見直し案検討委のメンバーは8人。学術会議の3人の副会長や、学術分野ごとに設けている三つの部会からの推薦を受けて人選した。2015(平成27)年にノーベル物理学賞を受賞した梶田隆章氏、2013年に設置されたILC検討委で委員長を務めた家泰弘氏も名を連ねている。8月10日の検討委初会合に先立ち、同8日に下部組織の技術検証分科会メンバーが集まり、協議を始める。
 委員の名称にもなっている「見直し案」とは、スイスとフランスの国境にある素粒子研究施設「CERN」の最新実験成果などを踏まえ、物質に質量を与えている素粒子「ヒッグス粒子」の生成に最適な施設規模(全長約20km)から運用を始める内容。段階的に施設を拡張していくこの見直し計画は「ステージング」とも呼ばれている。
 当初、全長約30kmで建設総額が約1兆円かかるとされていたILCだが、見直し計画を採用すれば、初期投資も当初より抑えられるメリットもある。
 一方で、未発見の新粒子を直接生成する可能性は低くなる。この点に対し、国内外の物理学者だけでなく、建設候補地の地元で活動する誘致関係者の一部からも「既に発見された粒子の後追い研究のような印象がある」「未知の世界に挑戦するぐらいのインパクトがある施設でなければ、ILCを建設する意味合いは薄れる」といった懸念の声がある。
 このほか、文科省有識者会議の取りまとめ文章では、国民や他分野の科学者界の理解を得る必要性なども指摘。今回結成された学術会議検討委は、ほとんどが他分野の研究者で占められていることから、有識者会議で洗い出された課題点を重く受け止め、ILC建設誘致のネックと指摘する声が相次ぐ可能性も否めない。
 素粒子物理学者の間では、ヨーロッパの次期素粒子計画の策定作業を考慮し、年内にも日本政府が何らかの意思を示す必要があるとしているが、今回設置された検討委の設置期限は来年7月25日までの約1年。学術会議事務局は、素粒子物理学者側の主張する動きと、設置期限との関係性は特になく「期限を超えない範囲であれば、早く終わる場合もある」としている。文科省からも「早期の審議」を求められているが、検討委内の議論の状況や参加委員の考え方、主張によっては時間をかけて審議を進める可能性も完全には否定できない。
 候補地の地元では、地域振興などへの効果も期待しながら熱意を見せる活動をしているが、一方でILCを建設する理由の根幹である「科学的意義」をおろそかにするわけにはいかない。ILC誘致を巡る議論は、まさに正念場を迎えている。


ILC見直し案検討委のメンバー
【検討委】
小林 伝司(大阪大副学長、哲学)
西條 辰義(高知工科大教授、経済学・環境学)
梶田 隆章(東京大教授、物理学)
田村 裕和(東北大院教授、物理学)
米田 雅子(慶応大特任教授、土木工学・建築学)
家 泰弘(日本学術振興会理事、物理学)
上坂 充(東京大院教授、総合工学・物理学)
杉山 直(名古屋大院教授、物理学)
永江 知文(京都大院教授、物理学)
平野 俊夫(量子科学技術研究機構理事長、基礎医学)

【分科会】
嘉門 雅史(京都大名誉教授、土木工学・建築学・環境学)
中静 透(総合地球環境学研究所特任教授、基礎生物学・環境学)
望月 常好(経済調査会理事長、土木工学・建築学)
田中 均(理化学研究所放射光科学総研副センター長、工学)
※検討委の西條辰義、米田雅子、家泰弘の3氏も分科会に加わる。
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tanko 2018-7-27 9:40
 日本学術会議(山極寿一会長)は26日、素粒子実験施設「国際リニアコライダー(ILC)」に関する文部科学省からの審議依頼を受け、「ILC計画の見直し案に関する検討委員会」の設置を決めた。初会合は8月10日に開かれる見通し。
 文科省のILC有識者会議(平野真一座長)は今月上旬、研究意義や課題点などを取りまとめた。学術会議は2013(平成25)年に文科省の依頼を受けILCの研究意義などを審議していたが、再びILCに関する審議に応じることとなった。
 同日開かれた学術会議幹事会では、委員会のほか素粒子物理学者らによって見直された新計画の妥当性を検証する「技術検証分科会」を下部組織として設置することも決めた。分科会は8月8日に開く予定だ。
 同会議事務局は「文科省からは早期に検討してほしいと依頼を受けている。時間的な制約も考慮しながら進めていくことになるだろう」と話している。
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tanko 2018-7-26 10:10
 素粒子実験施設・国際リニアコライダー(ILC)の有力建設候補地周辺の7市町議会の関係者は25日、超党派国会議員で組織する「リニアコライダー国際研究所建設推進議員連盟」の河村建夫会長(衆院・山口3区)や文部科学省研究振興局の磯谷桂介局長らと都内で相次いで面談し、北上山地への誘致実現を要望した。7市町議会による初の連名要望を、河村会長や磯谷局長は高く評価。「地元の皆さんの協力を得ながら前に進めたい」などと述べた。


 要望に参加したのは胆江(奥州市、金ケ崎町)、両磐(一関市、平泉町)、気仙(大船渡市、陸前高田市、住田町)の3地区の議会関係者。奥州市ILC推進室の瀬川達雄室長も同行した。
 要望書は、国会や担当省庁による尽力でILCを実現するよう求める内容。年内までに日本政府の何らかの意思表示が必要とされる正念場を迎えていることから、候補地周辺の地元の熱意を伝え、国の動きを後押しする狙いがある。要望書は7市町議会の議長名のほか、奥州市議会ILC誘致推進議連と気仙地区議会ILC誘致推進議連の会長名も加えた9団体連名での提出となった。
 要望に参加した奥州議連の渡辺忠会長によると、7市町議会が結束した行動が「大きく評価された」という。
 磯谷局長との面談では、奥州議連が取り組んでいる中学生によるILCのPR看板の写真を見せたところ、「子どもたちの思いや取り組みが台無しにならないようにしなくてはいけない。一つ一つの課題は大きいが、国会の議連と動きを合わせ、丁寧に解決しながら前へ進めたい。決まるまで一緒に頑張っていこう」と激励されたという。
 河村会長は「奥州市議会だけの要望かと思ったら周辺の議会もだと聞いて驚いた。周辺地域の皆さんの協力がないと前には進めない。12月をめどにという意識の中、文科省と歩調を合わせて対応していく時期にある。日本に判断を委ねられている状態なので、皆さんの行動を励みにやっていきたい」と述べたという。
 渡辺会長は、前回2016(平成28)年5月に奥州議連単独で要望活動したときよりも「前進しているような印象を受けた」と話した。

写真=国会ILC議連の河村建夫会長(左から4人目)に誘致実現を求めた7市町議会の関係者ら(提供)
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tanko 2018-7-25 10:50
 北上山地が有力候補地となっている素粒子実験施設「国際リニアコライダー(ILC)」の誘致実現を図るため、奥州市や金ケ崎町など県内7市町議会は25日、国会ILC議連の河村建夫会長や本県選出国会議員らの元を訪問する。候補地の地元としての思いなどを伝えながら、誘致実現に向けた動きをさらに推し進めるよう求める。7市町議会が連名で国政関係者らへ要望するのは今回が初めて。

 要望活動に参加するのは胆江2市町議会のほか、一関市、大船渡市、陸前高田市、平泉町、住田町の各議会。要望書は7市町議会の議長名のほか、奥州市議会ILC誘致推進議連と気仙地区議会ILC誘致推進議連の会長名も加わることから9団体連名での提出となる。気仙地区の議連は大船渡、陸前高田、住田の3市町議会の議員で構成している。
 要望団は18人で、奥州市議会からは同議会ILC議連の渡辺忠会長ら11人。金ケ崎町議会からは伊藤雅章議長が参加する。
 午前中に本県選出国会議員7人の議員会館内の事務所を訪問。午後は文部科学省の担当局長や河村議連会長と面談する。
 渡辺会長は「今回の要望活動がILC建設候補地周辺自治体の議会の結束を強めるきっかけにしたい。一つの輪になることで、よりインパクトのある要望活動になるだろう」と話す。
 ILC誘致を巡っては、文科省のILC有識者会議が今月4日、研究の意義や課題点などを取りまとめた。文科省は日本学術会議(山極寿一会長)に審議を要請している。ILC計画を推進している素粒子物理学者らの間では、ヨーロッパの次期素粒子物理学計画にILCを反映させる必要があるとして、今年中の日本政府の意思表示が不可欠としている。
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tanko 2018-7-20 10:40
 国際リニアコライダー(ILC)ができると、海外の人たちが大勢来ます。もともとこの地域に住んでいる私たちも英語をちゃんと勉強して、話さなくてはいけないのでしょうか?

話せるほうがいいです
 ILCが来たら「地域住民も英語を話せなくてはいけない」という人もいれば、「ここに住むようになる外国人は必死に日本語を覚えてくる。むしろ私たちは日本語で話してあげたほうがいい」と考えている人もいます。
 英語はコミュニケーションを図るための道具です。話せないより話せたほうがいいと思います。
 ILCは、49の国と地域にある300以上の大学や研究所の科学者や研究者、エンジニア2400人以上が参加するビッグプロジェクトです。彼らのほとんどは家族同伴で来日することが予想されます。この方々の母国語は英語以外にドイツ語、フランス語、中国語、韓国語など数十カ国以上の言語になると思われますが、研究所や国際会議などで使われる共通語は英語。したがって英語が話せれば、それだけ意思疎通がスムーズにうまくいくことは確かです。
 ここに興味深いリポートがあります。2017年8月、欧州原子核研究機構(CERN)やドイツ電子シンクロトロン研究所(DESY)などで働いている科学者や研究者ら24カ国、76人に対し、日本にILCが建設された場合を想像しながら「言葉や生活についてどのように対応しますか」「来日することが決まったら、日本のどのようなところに住みたいですか」「医療やお子さんの教育に心配はないですか」など、日常生活に関することについて、アンケートが行われました。
 「ILCに来る前に、日本語を勉強する気がありますか」「あるとすれば、どのようにして日本語を勉強したいですか」という問いもありました。有効回答者67人のうち、日本語に対して「興味がない」と回答した人はわずか7人。90%以上の人が興味を持ち、しかも「日常会話ができる程度にまでなりたい」と回答しています。そしてほとんどの人が、「学校やグループで学びたい」と思っているようです。
 少なくとも調査に協力してくれた外国人研究者のほとんどは、日本語に興味があり、日本人との交流を望んでいるようです。子どもの教育のために「インターナショナル・スクールがなければいやだ」という雰囲気ではなく、会話についてもほとんど心配していないようです。
 彼らは積極的に日本語を覚えようとしているし、意欲もあるのです。日本文化(異文化)を何でも吸収したい、という意気込みも強い。つまり私たち地元の日本人は、分かりやすい正しい日本語でゆっくり話してあげれば、むしろ相手に喜ばれるかもしれません。
 このように「英語でなければ絶対だめ」と極端に考えないことも一方では大切なのかもしれません。コミュニケーションを取る方法はいくらでもあるのです。
 重要なのは、いかに真面目に相手と向き合うかです。私たち日本人はもちろんですが、たとえ外国人でも英語を母国語としていない人にとって、英語は外国語なのです。
 ただし医療機関や行政機関など、仕事によっては専門用語を含め、英語でコミュニケーションが十分取れるようにしなければいけないでしょうし、すぐに対応できる能力を持った人を複数人配置する必要はあります。また公共施設や交通機関の標識、案内板や地図などは多言語表示が必要です。さらにより精度のよい言語翻訳機の設置やインターネット網の完備が必要と思われます。
(奥州宇宙遊学館館長・中東重雄)

番記者のつぶやき
 中東さんの今回の文中には、英語でのコミュニケーションが必要な仕事の一例として、医療機関や行政機関を挙げていました。が、ILCの取材を進めていく中で私たち新聞記者も、英語でのコミュニケーション能力が必要だなと痛感させられます。
 会話はもちろん、資料やインターネット上の関連情報も英語で書かれています。分からない部分は、知人の研究者や奥州市国際交流協会のスタッフの方に聞いて翻訳しましたが、「直接自分の考えや質問したいことを英語で外国人研究者に伝えられたらな」と思うことが何度もありました。英語で楽しそうに会話をしている日本人研究者の姿を見て、うらやましく思いました。
 ILCの会議では科学の専門用語が、ばんばん飛び交います。日本語で会話をしているのに、意味が分からないこともしばしば。言語や専門用語がコミュニケーションの障壁にならないような雰囲気づくりも、大切になると思います。
(児玉直人)

写真=接客で使用する英会話を学ぶ金融機関の関係者たち(2014年8月に開かれた企業人英語研修会)
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tanko 2018-7-16 17:30
 リニアコライダー国際研究所建設推進議員連盟幹事長の塩谷立衆院議員(自民・静岡8区)は14日、水沢で講演。北上山地が有力候補地の素粒子実験施設・国際リニアコライダー(ILC)誘致実現へ「新たな国家プロジェクトに位置付けていこうという考え方で進みつつある」との認識を示した上で、「今年の暮れまでには日本政府が何らかの形で意思を示すよう努力したい」と述べた。
 塩谷氏は「アジアで最初の国際研究機構として日本が誘致することが大事。将来の日本が科学技術で世界のトップを走れるかどうかという大変大事な施設」と指摘。誘致の実現へ、国際的科学者に加え、欧米の政府・議会の理解を得られるよう働き掛けてきた経過に触れた。
 誘致の大きな壁となっている予算の確保については、計画の見直しにより予算規模が縮小されたことなどを踏まえ「毎年の予算からできるだけ別枠で取るように、新たな国家プロジェクトに位置付けていこうという考え方で進みつつある」と説明。
 「まだまだ壁はあるが、超党派でしっかり組織をつくっていく段階にきており、今年の暮れまでには日本政府が何らかの形で意思を示すよう努力したい」とし、「日本の将来のために建設し、国や地域の発展につなげていく考えに結び付けられるか。それぞれの立場で誘致活動に取り組んでいただき、オールジャパンで成功させたい」と国民理解の深まりを求めた。 
 講演後には、塩谷幹事長と小沢昌記奥州市長、高橋由一金ケ崎町長、勝部修一関市長との懇談の場も設けられた。

写真=講演する塩谷立・ILC議連幹事長
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tanko 2018-7-10 18:40
 奥州市ILC推進連絡協議会(会長・小沢昌記市長)は、ILCサポーターズ6万人署名運動を展開し、国際リニアコライダー(ILC)誘致実現を目指す市民総参加の機運を盛り上げる。
 映画監督の押井守氏が発起人となり4月に発足したILC誘致実現の応援組織である同サポーターズが、政府の誘致判断を後押しするために全国30万人のサポーターズ参加を呼び掛けている。
 市推進協がこれに賛同し、市民の過半数となる6万人の署名登録の運動に独自で取り組むことにした。
 近く、市広報とともに用紙を全戸配布する。市のILCウェブサイトからも入手できる。氏名を記載し、同推進協事務局の市ILC推進室に申し込む。
 問い合わせも同室(電話0197・24・2111)。
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tanko 2018-7-8 8:30
 超党派国会議員で組織するリニアコライダー国際研究所建設推進議連の河村建夫会長(衆院山口3区)らはこのほど、北上山地が有力候補地となっている素粒子実験施設・国際リニアコライダー(ILC)を巡る情勢について安倍晋三首相に報告し、国内誘致実現を要望した。同議連副会長の鈴木俊一五輪相(衆院岩手2区)が、自身の公式ホームページやフェイスブックで明らかにした。
 要望には河村会長、鈴木五輪相のほか、塩谷立議連幹事長(衆院静岡8区)、小野寺五典防衛相(衆院宮城6区)、高橋宏明・東北ILC推進協議会代表、西岡喬・先端加速器科学技術推進協議会会長、山下了・東京大学特任教授らも同席した。
 河村会長らは、前岩手県知事の増田寛也氏が発起人となり、財界人や文化人らが参画する「ILC100人委員会」が設立されたことなどを報告。ILCの日本誘致に向けた関係者の機運の高まりを伝えたとみられる。
 ILC議連の塩谷幹事長は、先月下旬に都内で行われた100人委員会設立記念式典のあいさつで、今月中旬に予定される安倍首相の欧州・中東歴訪を前に「マクロン仏大統領との会談でILCを話題にするよう働き掛けたい」と述べ、首相にILCを巡る動向を伝える意向を明らかにしていた。
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tanko 2018-7-7 14:00
鈴木氏(県立大学長 東北準備室長)が指摘

 東北ILC準備室室長を務める岩手県立大学の鈴木厚人学長(素粒子物理学)は6日、水沢佐倉河の市文化会館(Zホール)で講演し、ILC(国際リニアコライダー)の誘致に対する日本政府の意思表示が今年中に示されない場合、中国が計画している大型円形加速器の建設が現実のものになると指摘。「何としてもILCはやらなくてはいけない」と訴えた。

 講演会は一般財団法人国際経済政策調査会(本部東京都、高橋佑代表理事)と、いわてILC加速器科学推進会議(海鋒守代表幹事)が主催。市民ら約400人が聴講した。
 講演に先立ち、同推進会議の海鋒代表は「ヨーロッパの次期素粒子物理学計画にILCが盛り込まれないと、国際プロジェクトとして位置付けるのが困難となるばかりか、日本に対する信用や培ったブランドが大きく傷付く」と主張。「ILC100人委員会も立ち上がり、全国的な盛り上げを進めている。多くの人に理解してもらい、一層の盛り上げを図っていこう」とあいさつ。来賓の小沢昌記市長も「日本への誘致を確実なものにしなければいけない。いかに重要な施設か確認し、一人でも多くの人に発信してほしい」と訴えた。
 鈴木学長は、ILCの研究意義やこれまでの協議経過などを説明。「給電、給水、地下へのアクセスなどの設計はできている。あとは日本政府の判断を待つばかり」と述べた。仮に日本政府の判断が出なかった場合、中国が計画している大型円形加速器の建設が始まる可能性が高いと指摘した。
 このほか、誘致実現後の地域の在り方、特に外国人研究者やその家族の受け入れに関しては「国際交流協会だけではなく、住民も参加して多文化共生社会を築いていかなくてはいけない」とした。英語の重要性に注目が集まりがちだが、「英語圏以外の人たちもおり、英語が話せない外国人とのコミュニケーションを考えると、やはり『日本語』が大切。彼らが居住する町内が『日本語講座』の教室のような姿になれば」との考えを示した。
 また、居住地域など受け入れ環境の整備に関しては「広域的に分担して取り組まなければ、発展性がない」とした。
 講演終了後は、今年4月に映画監督の押井守氏が発起人となり発足した「ILC Supporters(サポーターズ)」の趣旨に賛同する宣言が読み上げられ、同サポーターズのロゴマークが印刷された紙を聴講者全員が掲げ、誘致実現への機運を高めた。
 ILCを巡っては、文部科学省のILC有識者会議が今月4日、研究の意義や課題点などを取りまとめた。今後は、日本学術会議(山極寿一会長)に審議が委ねられる見通しだ。

写真=市民ら400人を前にILC誘致への経過や研究意義について解説する鈴木厚人学長

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