人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市東部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)
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tanko 2018-6-30 10:50
 北上山地が有力候補地の国際リニアコライダー(ILC)をヨーロッパの次期素粒子物理学計画に反映させるため、計画推進に携わる物理学者らは「今年中の日本政府の意思表示」というタイムリミットを設定し、各界著名人のネームバリューや発言力などを生かして幅広い層へのアプローチを試みる。誘致団体や候補地地元自治体もSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)や講演会などを通じたPRを展開しているものの、依然として国民的関心を呼ぶような雰囲気には至っていない。巨額投資への懸念か、難解な物理学への拒否反応か――。オリンピック以上と言われる波及効果が期待される壮大な計画ながら、計画の存在すら知られていない。既に半年を切ったわずかな時間で、国民的関心を高め日本政府が前向きな姿勢を示す環境を整えられるか。
(児玉直人)

 「ILC計画の意義を広く発信し、日本における建設実現を応援する」。29日に発足したILC100人委員会の取材案内にあった一文だ。4月に映画監督の押井守氏が立ち上げたILC Supporters(サポーターズ)もほぼ同じ趣旨。違いと言えば、100人委は財界人や文化人などいわゆる“お堅い系”の層を、サポーターズは若年層やアカデミックな研究にあまり関心がなかった層をターゲットにしている。さまざまな可能性や波及効果があるプロジェクトだけに、支持を取り入れる門戸も多様な形で用意したと言える。
 ILC関係の研究者や自治体は、フェイスブックやツイッターなどSNSを駆使して、関連情報を頻繁に更新。動画サイト「ユー・チューブ」へも関連動画をアップしている。ただ、ネット上での関心度を知る目安(フェイスブックの「いいね」件数や、ツイッターのリツイート件数、ユー・チューブの再生回数)を見る限り、お世辞にも関心が高いとは言いにくい。
 100人委発足記念式典で、あいさつに立った関係者からは「国民周知が十分でない」「岩手では毎日のように新聞に掲載されているが、都内ではほとんどILCの文字を見ることがない」との嘆き節も聞こえた。
 壮大なプロジェクトがなぜ国民の関心を呼ばないのか。100人委発起人の増田寛也氏は「内容の難しさもあるが、関心を呼ぶだけの材料を国民に示すのが欠けていた」とみる。
 素粒子物理学者でもある岩手県立大学の鈴木厚人学長は、国内候補地選定時の“配慮”が、全国的な発信の出遅れに影響したと認識する。北上山地とともに、最終候補に残った九州北部の脊振山地周辺でも誘致に対する期待が高まった。その後、九州にはデータ処理拠点を置く方針も示された。「今はオールジャパンで進められる素地ができてきた」と鈴木学長は語る。
 100人委は、8月上旬にもノーベル物理学賞受賞者を招いたイベントを都内で開催する計画。増田氏は「100人委へ賛同してただいた方の中にも、今回の依頼を通じて初めてILC計画を知った人もいる。各界の有力者が多い組織なので、折に触れてILCを誘致する意義をアピールしてほしい」と願った。

写真=ILC100人委員会発足記念式典に集まった賛同者や国会のILC議連メンバーら(東京都港区、国際文化会館)
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tanko 2018-6-30 10:40
「100人委員会」発足(増田前知事が発起人)

 【東京=児玉直人】北上山地が有力候補地となっている素粒子実験施設・国際リニアコライダー(ILC)の誘致に関連し、超党派国会議員で組織するILC議連幹事長の塩谷立氏(自民党、衆院静岡8区)は29日、ILC建設にかかる予算を従来の科学研究予算とは別枠で確保できるよう検討に入ることを明らかにした。同日、東京都港区の国際文化会館で開かれた「ILC100人委員会」発足記念式典のあいさつで述べた。その上で塩谷氏は、7月に安倍晋三首相が訪仏予定であることから「マクロン大統領との会談でILCを話題にするよう働き掛けたい」との考えを示した。

 宇宙誕生の謎を探るなど、素粒子物理学の世界唯一の研究施設として計画されているILC。実現すれば、日本初の本格的な国際研究機関となり、科学的意義のみならず経済波及効果や人材育成などの観点から、北上山地やその周辺の自治体では誘致実現を求める声がある。研究者側は、ヨーロッパの次期素粒子物理学計画にILCを反映させる必要があるとして、今年中の日本政府の意思表示が不可欠としている。
 一方で、建設や運営には巨額な費用が必要となり、国や自治体の財政に与える影響や他学術分野への研究活動に支障が出るのではとの懸念から慎重論も根強い。
 100人委員会は、前岩手県知事の増田寛也氏が発起人となり発足。財界や文化系の有識者、著名人も名を連ねており、ILC議連などとも連携しながら国民への理解普及を進め、政府判断を後押しする。
 式典で増田氏は「日本にとって一度も経験したことがない壮大なプロジェクト。立ちはだかる壁は高く厚いが、国民的議論を高め支持してもらえるような環境をつくっていきたい」と意気込みを示した。
 来賓としてあいさつした塩谷氏は、「実現への一番のネックは予算。他分野の研究者からは自分たちの予算が削られるとの懸念があることから、国家プロジェクトとして別枠予算が確保できないか、来週にも協議の場を立ち上げたい。今年中には何らかの形で日本政府の前向きなメッセージを示せるようにしたい」と述べた。
 同日は東北ILC準備室長で岩手県立大の鈴木厚人学長が、ILC計画の概要や現状について講演した。
 100人委員会の賛同者は、今月26日時点で129人。委員会事務局は「個人の立場で参加している」として、各委員の肩書や所属などは明らかにしていない。委員は次の通り。

 相沢益男、朝田照男、芦田昭充、東根千万億、東信彦、新谷明弘、有馬朗人、安斎隆、石井幹子、一力雅彦、出井伸之、伊藤滋、岩崎賢二、岩渕明、氏家照彦、牛尾治朗、内館牧子、内永ゆか子、槍田松螢、江刺正喜、大内全、大滝精一、大友啓史、大野英男、大橋光夫、大橋洋治、大平孝、大山健太郎、岡崎昌之、小笠原直樹、岡素之、岡嶐一、奥田碩、奥正之、奥山清行、小田敏三、小野寺正、梶屋陽介、柏木孝夫、加瀬豊、香取薫、鎌田宏、茅陽一、北村清士、隈研吾、黒田玲子、五阿弥宏安、近衛はな、小林栄三、小間篤、小山清人、近藤徹、柴門ふみ、酒井宏明、寒河江浩二、坂田東一、佐々木幹夫、佐藤勝彦、佐藤敬、佐藤安紀、里見進、沢田康次、塩越隆雄、志賀秀一、志伯健太郎、柴田克洋、島地勝彦、白石智哉、杉田亮毅、鈴木賢、鈴木茂晴、鈴木隆、鈴木道雄、清野智、高橋姿、高橋真裕、高橋雅行、高柳雄一、田口幸雄、竹内純子、中鉢良治、寺島実郎、天坊昭彦、常盤百樹、徳山日出男、中井勝己、中上英俊、永原功、中村英夫、夏野剛、並木富士雄、成田晋、西垣克、根岸吉太郎、野長瀬裕二、長谷川吉茂、長谷川閑史、東哲郎、弘兼憲史、藤沢久美、藤本隆宏、藤原作弥、堀義人、前田佳宏、増田寛也、松尾義之、松本宣郎、三浦展、三浦宏、三木繁光、三田敏雄、御手洗冨士夫、宮原耕治、宗岡正二、村上尚登、室伏きみ子、森詳介、柳井雅也、柳正憲、山崎洋次、山下隆、山田清志、山本文雄、吉井譲、吉崎達彦、芳見弘一、吉村作治、ロバート・キャンベル、渡辺修

写真=ILCの別枠予算確保に向けた検討に着手することを明らかにした塩谷立ILC議連幹事長(東京都港区、国際文化会館)
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tanko 2018-6-8 12:10
 国際リニアコライダー(ILC)は宇宙誕生の謎に迫る研究施設であることはよく分かりました。宇宙に誕生があるということは、いずれ「死」もあるということでしょうか? 毎日私たちを照らしてくれている太陽や夜の星にも寿命があるのでしょうか?

星には寿命があります

 星には自分で光っている星と、そうでない星があります。自分で光っている星を恒星と言い、太陽は地球に最も近い恒星です。夜空に見える数えきれないほどの輝く星も、ほとんどは太陽と同じ恒星です。
 では恒星はどのようにして生まれたのでしょうか。
 地球がある太陽系は、銀河系(天の川銀河)の中にあります。銀河系の中には2000億個の恒星があるといわれています。太陽はその中でも最もありふれた恒星の一つです。
 太陽は約46億年前に誕生したといわれています。寿命は100億年ぐらいだと考えられているので、あと50億年以上は光り輝いていると考えられます。
 太陽のような恒星は、どのようにして誕生したのでしょうか?
 恒星は、宇宙空間のガスやチリが集まり、それらが互いに引き合うようになり、分子雲というかたまりになります。分子雲の中にあるダストは、可視光(目で見える光)を吸収してしまうため黒く見えることから暗黒星雲と呼んでいます。
 集まったガスやダストはお互いに引き合う力(引力)が増し、さらに周りのチリやガスを取り込みはじめ、さらに大きくなり、やがて暗黒星雲は自らの重力で収縮し始め、内部は高温、高圧の状態になります。温度が約250万度ぐらいになると、水素の熱核融合反応(水素やヘリウムのような軽い元素が融合して、より重い別の元素になる反応)が始まります。ヘリウムが生まれると同時に巨大なエネルギーが生じます。この発生したエネルギーが内部の圧力を高め、自分自身の重力とつり合って、安定になります。このような姿が恒星です。
 恒星の寿命は、大まかにいって、質量の3〜4乗に反比例します。質量の大きな星は中心温度が高くなり、熱核融合反応が盛んに行われるため短時間で燃料となる水素などを消費してしまうため、寿命は短くなります。
 太陽についても、熱核融合反応で中心部の水素をほぼ使い果たすと、エネルギー源はなくなり、自分の重力で収縮し始めます。この時「重力エネルギー」が開放され、熱が生まれます。すると熱核融合反応が起こっている外側は、ますます加熱され、膨張し、重力による収縮を上回るようになってきます。
 その結果、太陽の外側は大きく膨らみ、表面温度は低下し、赤く見えるようになる「赤色巨星」と呼ばれる星となります。この時太陽は、金星の軌道くらいまで大きくなると考えられています。さらに時間が経つと、太陽はガスを放出しながら膨張と収縮を繰り返し、熱核融合反応も起こらない小さくて高密度の「白色矮星」になります。
 現在の太陽は、赤道半径が約69万6000km。重さ(質量)は地球の約33万倍です。太陽から地球までの平均距離は、約1億4960万kmあり、光の速度でさえ約8.3分かかります。表面温度は約6000度で、中心部は約1500万度と言われています。
(奥州宇宙遊学館館長・中東重雄)

番記者のつぶやき

 6月に入り、暑い日が増えてきました。しかし、東北地方はもうすぐ梅雨入りすると思われます。梅雨になると曇りや雨の日が多く、だんだんと太陽の光や青空が恋しくなるものです。
 私が小学生の時、ビートたけしさんが出演していたテレビ番組で、太陽系や宇宙のことを取り上げていました。そのとき見たのが、太陽がだんだん大きくなっていき、水星から金星を飲み込み、地球の公転軌道付近まで膨らむという話でした。何十億年も先の話で、自分は生きていないと分かっていながら「怖いなぁ」と思ってしまいました。
 先日、庭に天体望遠鏡を出し、木星や金星を眺めました。膨張してくる太陽のことなど気にせず、のんびり星を眺められる時代に生まれてきたのは、本当にラッキーだったのかもしれません。今、生きているこの瞬間を大切にしたいものです。(児玉直人)

写真=奥州宇宙遊学館では、特殊なレンズなどを使って撮影した現在の太陽の様子を見ることができる
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tanko 2018-6-6 9:40
 素粒子実験施設・国際リニアコライダー(ILC)の北上山地誘致実現を見据えた、市内小中学校でのILC出前授業。本年度は24校から申し出があり、既に一部の学校で実施した。ILC誘致に対する日本政府の出方に注目が集まる中、講師役の市職員やNPO法人関係者は、最新の動向も意識しながら授業に対応している。
 市は2014(平成26)年度から中学生、2015年度からは小学生を対象に出前授業を展開している。ILCは建設から運用開始まで10年から20年の歳月が必要。今の児童・生徒たちが大人になり地域社会の中核を担うころとの見方から、子ども向けの普及活動に力を入れている。
 小学校では、市ILC推進室の職員がDVD観賞やクイズを通じてILCの概要を解説。中学校では、市から委託を受けたNPO法人イーハトーブ宇宙実践センター(大江昌嗣理事長)の関係者が、素粒子物理の入門的知識や波及効果について説明している。
 これまで中学生4335人、小学生1681人が受講。本年度は中学校9校、小学校15校で5月下旬から順次行われている。これとは別に、県南広域振興局は遠野や北上などの中学校への出前授業を実施しており、同NPOに講師派遣を委託している。
 ILCは実現の是非に関する議論が進行中のプロジェクト。出前授業が始まった当初と現在とでは、計画内容も変わっている。昨年11月に国際研究者組織が了承した見直し計画では、施設規模を表す上で重要なキーワードとなる地下トンネルの長さなどが変わった。同NPO理事で奥州宇宙遊学館の中東重雄館長は「新聞などで最新の動向を注視しながら授業に対応している」と語る。
 最も悩ましいのが建設時期どころか、日本に誘致すること自体はっきりしていない点。中東館長は「建設時期などが明確になっていれば、子どもたちはより真剣にILC計画を受け止めるだろうが、現在のような協議検討中の状況において、ただ単に『盛り上がりましょう』だけでは現実味が乏しい」と捉えている。
 ILCを推進する研究者や誘致団体は、ヨーロッパの次期素粒子物理戦略計画の策定時期を踏まえ、年内にも日本政府から誘致に前向きな姿勢が示される必要があると強調している。一方で、政府が年内に姿勢を示すのは困難とみる有識者や政界関係者もいる。
 ILC誘致を巡る動きが正念場を迎えようとしている中、出前授業の予定は12月中旬まで組み込まれている。市ILC推進室の瀬川達雄室長は「動向に注視し、場合によって内容を変えることがあるかもしれないが、本年度の授業そのものは予定通り実施していきたい」としている。

写真=市内小中学校で本年度も始まったILC出前授業(市立水沢南小)
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tanko 2018-6-2 18:40
 水沢星ガ丘町の国立天文台水沢VLBI観測所(本間希樹所長)で1日、天文学専用スーパーコンピューター(スパコン)の新型機「アテルイ?」が本格運用を開始した。従前機「アテルイ」の3倍の演算スピードを誇る新型機は、銀河の誕生経過などをより現実的に再現できるようになり、宇宙誕生の謎解明に期待が掛かる。
 同天文台のスパコンは、天文シミュレーションプロジェクト(プロジェクト長・小久保英一郎教授)が運営。先代のアテルイは、機器更新に伴い今年3月に運用を終えていた。
 アテルイ?は、2013(平成25)年の従前機導入時に比べ6倍、2014年のアップグレート時から3倍の性能アップを果たした。1秒間に約3000兆回の計算ができ、天文学専用のスパコンとしては世界最速の理論演算性能を誇る。
 銀河系に散らばる数千億個の星や超新星爆発などを再現することで、銀河の誕生と進化や恒星と惑星系の起源など宇宙の謎解明に近づけるという。アテルイ?は、東京都三鷹市の同天文台本部と専用の高速ネットワークで結ばれ、審査を経た日本全国の研究者がログインして無料で利用ができる。
 同日、アテルイ?始動の記者会見が同天文台水沢キャンパスで行われ、本間所長や小久保教授らが報道陣にアテルイ?の性能を解説し、外観を公開した。小久保教授は「より細かく現実的なシミュレーションが可能となり、宇宙の謎を解き明かす段階が一歩先に進む」と自信。本間所長は「今夏のイベントで一般公開を予定している」と話した。

写真=本格運用をスタートさせたアテルイ?
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tanko 2018-6-1 10:12
 国際リニアコライダー(ILC)計画を推進する国際研究者組織リニアコライダー・コラボレーション(LCC、リン・エバンス最高責任者)は31日、福岡市で開催中の国際会議「アジア・リニアコライダー・ワークショップ(ALCW)2108」に合わせ、ILC実現への熱意をまとめた声明「福岡宣言」を発表した。
 声明はLCCとALCW2018国際組織委員会(委員長・川越清以九州大学大学院教授)と共同で明らかにした。
 ILCの科学的意義を示しながら、来年初めにもヨーロッパの次期素粒子物理戦略計画の策定作業が始まると強調。同計画は世界中の高エネルギー物理学計画にも大きな影響を与えるとしながら、「(ILCの誘致実現へ)日本政府からの積極的なメッセージが時宜を得て伝えられることが不可欠」と訴えた。
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tanko 2018-6-1 10:00
 【東京=児玉直人】 北上山地が有力候補地となっている素粒子実験施設「国際リニアコライダー(ILC)」の国内誘致について協議している文部科学省の有識者会議(座長・平野真一名古屋大学名誉教授、委員14人)は31日、東京都千代田区の文部科学省16階会議室で第9回会合を開いた。施設全長20kmで建設を始める計画見直しを受けて実施した科学的意義やコストに関する再調査について、作業に当たった2部会が報告。委員からは、コスト削減ありきの見直しではなく「科学的意義がある点をしっかり示す必要がある」などの意見が出された。

 同会議では、当初計画の全長約30kmの規模を前提に議論を進めてきた。しかし、ILC計画を推進する国際研究者組織が昨年11月に了承した計画見直しを受け、再度内容を検証する作業部会を立ち上げ、科学的意義やコスト面の検証を進めていた。
 見直し後の施設規模は、スイスとフランスの国境にある素粒子研究施設「CERN(セルン)」の最新実験成果などを踏まえ、研究者組織が提唱。物質に質量を与えている素粒子「ヒッグス粒子」の生成に最適な規模が、全長20kmであることに基づいている。初期投資も当初より抑えられるメリットもある。
 一方で、まだ未発見の新粒子を直接生成する可能性は低くなる。だが、作業部会の報告ではヒッグス粒子の精密測定などを通じた間接的な方法で探査することは可能という。もちろん、偶然に新粒子が発見されることも完全には否定できないという。
 このほか、見直しによる施設の構造やコスト削減による影響、課題に関する検証についても報告があった。
 見直し後の計画では、トンネルの断面が幅11mから9.5mに縮小している。ILCのトンネルには左右を仕切るコンクリート製の遮蔽壁が設置され、加速器を設置する空間と電源供給装置などを設置する空間を分けている。これにより放射線が発生する加速器運転中でも、電源供給装置があるエリアは出入りが可能となっていた。
 しかし、トンネル断面が小さくなることで、遮蔽壁の厚さが3.5mになり、電源供給装置がある空間にも加速器運転中は入れなくなった。報告では「運営上の支障にならないよう工夫をする必要がある」とした。
 同日は、野村総合研究所に委託した計画変更後の経済波及効果の再計算結果も公表された。金額はILC本体のみに特化したもので、計画見直し前の2014年時点では4兆4606億円だったが、今回の試算では2兆6489億円から2兆9067億円と算出した。ただしこの結果については、建設期間の光熱費の算出方法などに疑問が相次ぎ、再度算出し直すことになった。
 次回有識者会議は今月19日に開く。

写真=文部科学省で開かれた第9回ILCに関する有識者会議

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