岩手県奥州市・金ケ崎町をエリアとした地域新聞社による国際リニアコライダー(ILC)関連記事を掲載。 奥州市東部の北上山地は、現時点における世界唯一のILC候補地に選定されました。当サイトにはILCをはじめ、理系分野やILCに関連性のある地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)についての記事を随時アップします。
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tanko 2018-5-17 11:20
 フランスのアルザス欧州日本学研究所(CEEJA)のオリヴィエ・ベシュト所長(42)が16日、前沢の蠕蘚沈彩工業(千田伏二夫社長)を視察。北上山地への誘致実現に向けて取り組みが進む素粒子実験施設・国際リニアコライダー(ILC)について、「日本の子どもたちや世界の将来を担う重要なプロジェクト」とエールを送った。

 ヨーロッパにおける日本研究の拠点とされる同研究所。オリヴィエ所長はフランスの国会議員でもあり、欧州の素粒子物理研究の推進にも携わる。同研究所のヴィルジニー・フェルモー統括部長やアルザス日本代表部の後藤淳子さんらと初めて来県し、午前は盛岡市のホテルで達増拓也知事らとILC実現に向け意見を交換した。
 午後は、金ケ崎町の(株)デンソー岩手と前沢の千田精密工業を視察。千田精密工業では千田雄二工場長(38)の案内で五軸マシニングセンタなどの金属加工に用いる機械を見学し、図面や部品などにも目を通すなど日本のものづくりのノウハウに関心を抱いていた様子だった。
 視察後、オリヴィエ所長は報道陣の取材に応じ「技術の素晴らしさや正確さだけでなく仕事に対する熱意に感銘を受けた」と笑顔。「全人類が夜空の星を見上げながら人類がどこから来たのか夢を抱く。その夢に応えてくれるのがILCのプロジェクト。フランスとしても財政や技術、人的な面でもサポートしていきたい」と支援を表明した。
 その上で、ILC実現へは「日本政府がスタートボタンを押さなければならない」と指摘。「ゴーサインが出れば数十年の間に日の目を見るだろう。乗り越えなければならない課題は多いが、われわれは岩手の熱意に好意を持って対応したい」と激励した。
 オリヴィエ所長を案内した千田工場長は「ILCに関連する仕事はまだまだ未知数だが、技術力や関わる人の熱意を伝えられたと思う」と振り返った。

写真=千田精密工業の工場を視察するアルザス欧州日本学研究所のオリヴィエ・ベシュト所長
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tanko 2018-5-15 9:50
「北上夜曲」発祥の地を示す案内標柱が新しくなったという記事を書いたが、この曲が北上市発祥の曲と認識している人が多いという。大リーグで活躍中の大谷翔平選手を「花巻出身」と勘違いしている人もいるらしい。地名の力、周囲に与えるインパクトは大きい。
 国際リニアコライダー(ILC)の建設候補地は英語で「Kitakami site(北上サイト)」と呼ばれている。県ILC推進協による英字広報の名前も「the Kitakami times(ザ北上タイムス)」だ。
 「20××年、世界中からILCに訪れた研究者や見学者は、一ノ関、水沢江刺を通り過ぎて北上の駅で下車していた……」。なんてオチには、おそらくならないとは思うが。
(児玉直人)
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tanko 2018-5-15 9:50
 江刺工業団地企業誘致推進委員会(会長・小沢昌記市長)は14日、ホテルニュー江刺新館イーズで本年度総会を開き、自動車関連や半導体関連企業を誘致の重点分野とすることを含む事業計画を決めた。国際リニアコライダー(ILC)誘致実現に備え、加速器関連産業などの誘致に向けた情報収集や関連産業への立地企業参入に関わる情報提供にも取り組む。完売を目指す江刺フロンティアパーク=江刺岩谷堂=は残り6区画4.9ha(分譲率77.5%)まで分譲が進んでおり、企業訪問や情報発信などを積極展開する方針。

 推進委は、市や県、中小企業基盤整備機構、金融機関や奥州商工会議所などで構成。江刺中核工業団地(完売)と同パークへの企業立地の促進を目的に連携し各種事業を実施している。
 昨年度の新規立地は1件で、立地企業の区画買い増しが2件7区画。市内ではほかに、前沢・本杉工業団地に1件の新規立地があった。
 市内9工業団地のうち、現在分譲しているのは同パークのみ。新たな工業団地の造成は今後の検討課題となっており、小沢市長は「造成を考えなければならない状況にあるが、一方で人口減少に伴う人材不足がある」と人員確保面なども考慮する必要性を指摘した。
 事業計画によると、企業誘致促進に関わり、関係機関の連携による企業訪問を実施。東北で集積が進む自動車関連、半導体関連企業へのアプローチを積極的に行うとともに、立地企業に対するきめ細かいフォローアップや事業拡大の支援をさらに充実させる。
 昨年度の市内企業への訪問・情報収集は延べ494件、県内企業への訪問は延べ5件、県外企業・団体への訪問は延べ54件だった。
 各種イベントでの情報発信も計画し、東京や名古屋を会場とする県主催イベントに参加するほか、市主催の「おうしゅう首都圏産業交流会」(会場・東京都)を本年度も開く。
 今月21日には新規事業として、市内ものづくり企業間の交流や産学官連携の推進を図る「おうしゅう地域産業交流会」を水沢で開催する。
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tanko 2018-5-12 11:10
 約2年半ぶりとなる日中韓サミットが今月9日、東京の迎賓館で開かれ、幅広い分野における3国間の連携、協力の推進などが確認された。日中韓の関係を巡っては、時に領土問題や歴史認識などを背景に緊張感が走り、国民感情にも影響を与えるような場面もしばしば見られたが、天文学の分野においては数年前から3国の研究機関が連携。水沢星ガ丘町の国立天文台水沢VLBI観測所(本間希樹所長)もその拠点の一つ。韓国、中国それぞれの国から研究者や大学院生が滞在し、日本人研究者たちと信頼関係を築きながら「人類共通の謎」の解明に挑んでいる。(児玉直人)

 国立天文台は2002(平成14)年、「天文広域精測望遠鏡(VERA)」の本格観測を開始した。同観測所を含む国内4カ所に口径20mの電波望遠鏡を設置。複数台が連動し一つの天体を観測することで、分解能の高い結果を得る超長基線電波干渉計(VLBI)という手法を採用している。
 同観測所の見学者向け屋外説明パネルには、国内4基の位置関係のみが記されているが、近年は韓国や中国にある電波望遠鏡と連動した観測も実施。国境を越えた観測体制の一翼を同観測所が担っている。
 東アジアVLBIネットワーク(EAVN)と呼ばれるこの観測網をリードしている研究者の一人が、同観測所の秦(はだ)和弘助教(34)。謎に満ちた天体ブラックホールの詳細な研究などを進める上では、より広範囲に位置する電波望遠鏡を連動させる必要があるという。
 日本のVERA4基による観測だけでも、実際に製造不能な直径2300km
の電波望遠鏡に相当する能力がある。これに韓国や中国の電波望遠鏡を加え総計21基のEAVNの観測網になると、直径約5500km相当の規模になる。
 「望遠鏡の数を増やし、間隔が広がるほど視力が良くなる」と秦助教。今後、タイの電波望遠鏡を加える構想もある。ブラックホールの解明のほか、より精度の銀河系の地図作り、星の誕生に関する詳しい研究も可能になる。
 通信網が発達した時代とはいえ、研究者の人的交流も行い、信頼関係を築いている。現在、韓国ソウル出身の金美京(キム・ミキョン)さん(36)、中国湖北省襄陽(じょうよう)市出身の崔玉竹(ツァイ・イヂュー)さん(27)が水沢VLBI観測所に滞在。秦助教らと研究に励んでいる。
 金さんは「日本や中国の皆さんと仲良く研究する、いい関係が築けている」。日本の総合研究大学院大学の留学生として滞在している崔さんは「秦さんのような研究者になるのが夢」と笑顔で話す。
 同観測所の前身、水沢緯度観測所は同じ緯度上に設置された4カ国、全6地点で観測を行う国際観測事業を実施していた。その伝統は、今も若い研究者たちに受け継がれている。
 秦助教は「異なる国の人間が一緒に協力するのは天文学では当たり前に行われてきたこと。確かに母国で良い成果を上げたいという競争心もあるが、互いに切磋琢磨することで全体の向上になるし、直接会って交流をすることで連携する機運も高まる」と話している。

写真上=日中韓連携の観測に携わる(左から)秦和弘助教、崔玉竹さん、金美京さん

写真下=水沢VLBI観測所の直径20m電波望遠鏡
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tanko 2018-5-12 9:50
 東北ILC推進協議会の本年度総会は10日、仙台市内のホテルで開かれ、本年度事業計画など4議案を原案通り可決した。役員選任では、代表を務めていた里見進氏が東北大学総長を退任したのに伴い、後任総長の大野英男氏が代表に就いた。
 同協議会は、北上山地が有力候補地となっている素粒子実験施設・ILC(国際リニアコライダー)の誘致実現を目指す産学官による組織。胆江2市町や胆江地区の製造系企業なども加入しており、今年3月末時点の会員数は213会員となっている。
 ヨーロッパの次期科学計画策定のスケジュールなどから、年内にも日本政府の誘致に対する前向きな意思表示が必要とされている。政府判断の後押しには、国民理解や周知が不可欠との考えから、本年度は広報関係予算を大幅に増額する。
 具体的には協議会の下部組織、東北ILC準備室(室長・鈴木厚人岩手県立大学長)が携わっている「ILC東北マスタープラン」の策定作業など、前年度で活動が一段落した部門の予算を削減。広報部門の予算は前年度比980万円増の1140万円とし、国民周知に向けたシンポジウムを東北以外の地域で開催する費用などに充てる。協議会本体の予算でも、広告宣伝やパンフレット・グッズ作製にかかる費用を100万円増やし、182万円とした。
 総会ではこのほか、ILC日本誘致に関する決議案を採択。決議文は、国政関係者や関係省庁に対する要望活動の際に活用する。
 役員選任では代表の大野氏のほか、顧問に寺田真浩氏(東北大大学院理学研究科長)、理事に郡和子氏(仙台市長)、参与に戸田公明氏(大船渡市長)の就任を承認した。同協議会の代表職は設立以来2人制を取っており、もう一人の代表である高橋宏明氏(東北経済連合会名誉会長、東北電力相談役)は、引き続き務める。
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tanko 2018-5-11 11:00
 ブラックホールに関係する謎を解明する研究に取り組んでいる、国立天文台水沢VLBI観測所の秦(はだ)和弘助教(34)がこのほど、本年度の科学技術分野文部科学大臣表彰・若手科学者賞を受賞した。ブラックホールから電気を帯びた「プラズマ粒子」が噴出するという奇妙な現象を解き明かす先駆的な取り組みが評価された。
 秦助教は、おとめ座の方向にある「M87銀河」の中心部にあるブラックホールを対象に、「ジェット噴出」と呼ばれる現象を研究している。質量が太陽の約30億倍あり、強大な重力が発生しているはずだが、その力に逆らうようにプラズマ粒子が噴出している。
 一般に「何でも吸い込む天体」として知られているブラックホールで起きている矛盾した現象については、いくつかの理論が提唱されている。しかし、検証するための観測成果がなかったという。
 秦助教は、アメリカ国立電波望遠鏡が運用する「超長基線アレイ(VLBA)」を活用して、高精度の観測を実施。ジェット噴出の発生位置やブラックホール本体の正確な位置も把握できた。この成果が認められ昨年3月、2016(平成28)年度日本天文学会研究奨励賞を受賞。今回、大臣表彰につながった。
 科学技術分野の文科大臣表彰は国立研究機関や大学のほか、民間企業も含め、優れた科学研究や技術開発に貢献した個人やプロジェクトチームなどに贈られる。いくつかの部門があり、秦助教が受賞した若手科学者賞は、萌芽的、独創的視点に立った研究で顕著な業績を上げた40歳未満の若手研究者に贈られる。全国から300人の推薦があり、秦助教を含む99人が選ばれた。
 秦助教は「今後も詳細な研究を進めたい」と話している。

写真=文部科学大臣表彰・若手科学者賞を受賞した秦和弘助教
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tanko 2018-5-11 10:10
 北上山地が有力候補地となっている素粒子実験施設「国際リニアコライダー(ILC)」の実現に向け、今年中に日本政府の意思表明が必要とされる中、国民に対する周知と理解形成がいまだに不十分な状況にある。誘致関係者も「最後に残った大きな課題」と認識。ツイッターなど、インターネットのSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)などを通じてアピールに力を注ぐが、わずか半年で広く国民に認知してもらうのは、容易なことではなさそうだ。
(児玉直人)

 10日午後、仙台市内のホテルで開かれた東北ILC推進協議会の総会。誘致に携わる研究者や自治体関係者ら約200人が出席した。
 年に一度の総会では岩手、宮城両県の知事や候補地周辺自治体の首長らが登壇し、決意表明をするのが恒例に。正念場となる年を意識した言葉が相次いだ。本年度、新たに参与に就任した大船渡市の戸田公明市長は、ILCの部品荷揚げ拠点の一つに大船渡港が位置付けられていることを挙げながら「実現へ最大限協力したい」と力を込めた。
 総会後の特別講演では、東京大学の山下了特任教授が誘致活動の進展状況を報告。欧米との事務レベルの協議や地元受け入れ態勢にかかる計画の策定など、多くの作業が「順調」に進んでいると強調した。
 その一方で唯一残っている最大の課題が、国民への周知や理解の形成。山下教授は「年内に日本政府が前向きな意思を示す上では、社会全体の応援が必要」と語る。
 先月16日、都内で「ILC Supporters(サポーターズ)」の結成会見が行われた。映画監督の押井守氏が発起人。ゲームディレクターや声優など、科学とは一見無縁の分野の著名人らが賛同し、ILCをアピール。映像作家の森本晃司氏がデザインしたタトゥーシール(肌に直接貼るシール)を貼った姿をSNSに投稿し、ILCの周知を図るという。
 東北推進協の総会出席者にもタトゥーシールを配布。会場一角には撮影用のパネルが設けられ、小沢昌記奥州市長や勝部修一関市長らも手の甲にタトゥーシールを貼り、その様子はフェイスブックなどにすぐさま投稿された。
 タイムリミットが迫る中、必死に取り組む関係者。しかし国民やメディアの関心は、現政権を取り巻く諸問題や北朝鮮を巡る国際情勢、芸能界での不祥事などに注がれているのが現実で、わずかな時間で話題の上位にILCが入り込むのは至難の業だ。東日本大震災前から誘致活動を進めている岩手、宮城であっても、候補地周辺自治体とそうでない自治体とでは温度差がある。
 東北ILC準備室長を務めている岩手県立大学の鈴木厚人学長(素粒子物理学)は、国内政治の現状なども踏まえ、決して容易な取り組みではないと受け止める。その上で「むしろこういう状況だからこそ、日本が起死回生するようなもの(ILC)がなければいけない。実現へあらゆることをやっていきたい」と前を見つめる。

写真上=一関市の児童たちが作ったのぼり旗が飾られた総会会場。壇上では関係首長らが決意表明した

写真下=総会出席者に配布されたタトゥーシール
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tanko 2018-5-11 10:10
 岩手県立水沢高校(立花起一校長)理数科3年生の課題研究英語発表会は10日、水沢佐倉河の市文化会館(Zホール)で開かれた。これまで取り組んできた研究内容をまとめ、英語で発表。最優秀賞には生形優太君、佐藤ミコトさん、千葉倫暉君の「光と種子発芽に関する研究」が選ばれた。
 文部科学省指定スーパーサイエンスハイスクール(SSH)事業の一環。3年生28人が9グループに分かれ、昨年4月から研究を重ねてきた成果を披露した。2年生約240人が聴講し、今後の参考にした。
 生形君ら3人は、レタス種子の発芽における光質と光量子束密度の影響を調べた。「先輩方が続けてきた研究だったので、自分たちも新たな発見がないと、これまでの研究に紛れてしまう。私たちの手で見いだしたことが、今回認められたという思いだ」と千葉君。生形君は「データが一つでも欠けると使えなくなってしまう。誤差が小さくなるよう、実験の手順の中で神経を使った」と振り返る。
 3人は、8月に神戸で開かれるSSH校の代表が集まる発表会に水沢高代表として出場する。佐藤さんは「さらに考察をしっかりまとめ、準備をしていきたい」と意欲をみせた。
 発表会の中で、市ILC国際化推進員のトマス・アンナさんの英語講演もあった。自身の経験を織り交ぜながら、男女関係なく興味があることに挑戦し、英語圏で生活してこそ英語が身に付くと語り掛けた。

写真=最優秀賞に輝いた佐藤ミコトさん、千葉倫暉君、生形優太君(右から)
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tanko 2018-5-11 10:00
 国際リニアコライダー(ILC)の候補地が北上山地であることは知っていますが、そもそもなぜ北上山地なんですか? 普段目にしている北上山地のどんなところがILC建設にぴったりなんでしょうか?

秘密は地下の岩盤にあります

 ILC計画を正しく理解する中で、「なぜ世界で一つしか造らないILCの候補地に、北上山地が選ばれたのか?」という疑問にぶつかるはずです。国際的な研究施設の候補地になるには、それなりの理由があります。今回は、なぜ北上山地がILC候補地に選ばれたのかをあらためて説明したいと思います。
 北上山地は「非常に安定的で、長大な花こう岩の岩盤があり、その周辺部には活断層がない」という非常に恵まれた地層を持っています。ILCは最大延長時で、全長50kmにもなる長大な精密機械です。地盤が安定しており振動が少ないことが、建設する上で絶対に必要な条件なのです。
 ILCでは電子と陽電子という、この世で最も小さい粒「素粒子」を光速に近いスピードでぶつけて研究を行う装置です。ぶつけるといっても、1個1個をぶつけることは到底できません。なぜなら、電子の大きさは10のマイナス18乗m(0.000000000000000001m)以下と言われるくらい、とてつもなく小さいのです。
 そこでILCでは、電子や陽電子を横約500ナノm(0.0000005m)、高さ約6ナノm(0.000000006m)、長さ約300マイクロm(0.0003m)の塊(バンチ)にしてぶつけます。
 ナノメートル(nm)という単位は、あまり聞きなれない単位かも知れませんが、インフルエンザウイルスの大きさが100ナノm、原子の大きさが0.1ナノmです。一つのバンチの中には電子または陽電子がそれぞれ約200億個あります。このような塊にしても電子と陽電子がぶつかる確率は、非常に低いのです。いかに電子、陽電子が小さな粒子かがわかりますね。
 ILCでは、ぶつかる確率をより高くする工夫が施されています。研究者たちは、衝突確率を高くすることを「ルミノシティを上げる」と言っています。直訳すると「明るさを上げる」という意味ですが、ぶつかる確率を高める性能を光の強さに例えて「ルミノシティ」と言っています。
 研究者や技術者はさまざまな工夫をして、ルミノシティを上げようとしています。しかし、どんなに高度な技術を用いても周囲に振動を与えるような原因があると、良い実験成果は上げられません。自然的なもの人工的なものも含め「揺れ(振動)」の影響をなるべく受けない場所に建設するのが重要です。
 北上山地の地盤の安定性については、すでに実証済みです。国立天文台では、北上山地の阿原山の山腹=江刺伊手(いで)=に「地球潮汐(ちょうせき)観測施設」を建設し、1978年8月から観測を続けています。地球潮汐とは、地球が月と太陽の引力を受けて周期的に約30cm程度変形する現象のことです。2011年3月11日に発生した東日本大震災の際にも何ら影響なく観測を続けています。
 このほかにも北上山地が選ばれた理由はありますが、続きは次回。
(奥州宇宙遊学館館長・中東重雄)

番記者のつぶやき
 NHKの人気番組「ブラタモリ」で以前、平泉文化遺産と金との関係を取り上げていました。番組の中では、金の採掘に適した環境が築かれた要因として、花こう岩帯の存在を紹介。その花こう岩帯は地下の奥深くにあったそうですが、長年にわたる隆起や浸食により地表部分に現れてきたそうです。
 平泉栄枯の歴史から800年。その花こう岩帯は、ILCの候補地として脚光を浴びることになります。花こう岩の隆起という大自然の営みが、この地域に生きる人たちに再び絶好のチャンスを与え続けているような気がしてなりません。
 そういえば、国立天文台が水沢にあるのも、同じ緯度上に同一仕様の観測点を設ける国際プロジェクトが発端でした。決して誰か偉い人の力で誘致したわけではなく、たまたまそこに水沢という都市があったから。こんなにラッキーなことはありませんし、さまざまな形で地域のためにも生かさなければ、もったいないですよね。
(児玉直人)

写真=北上山地で行われた地質調査の際に採取された地中の花こう岩。サンプルを見る国内外の研究者たち(2012年1月、一関市大東町・旧丑石小学校)

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