人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市東部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)
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tanko 2018-2-9 18:40
 国際リニアコライダー(ILC)誘致に関連した奥州市議会の特別委員会と議員連盟は8日、市役所本庁7階委員会室で相次いで会合を開き、これまでの取り組みを総括した。任期満了に伴う市議選を3月に控えており、両組織はいったん閉じた上で、新しい議会構成の中で活動を継承させる見通しだ。
 特別委は議長を除く全議員、議連は全議員で構成し、どちらも2014年に設置した。特別委では各種視察や誘致を巡る現状把握などの調査活動を実施。議連は、国政関係者らへの要望活動や地元中学生らの絵を活用したILC宣伝看板の設置などを展開した。
 会合終了後、議連会長でもある同特別委の渡辺忠委員長が取材に応じ、市が2016(平成28)年度に策定した「ILCまちづくりビジョン」に基づく具体的な取り組みがほとんどなされていない点を指摘。「近隣自治体の議会との連携も含め、新しい議会でつくる組織に検証などを申し送りしたい」と述べた。
 大船渡市議会が昨年6月、ILC議連を立ち上げたことに触れ「沿岸を含めた県南地域の議会が一体になって行動するような勢いが必要。国への要望も、ほかの要望事項に付け加えるのではなく、ILC一本で行くぐらいの気構えが必要だろう」と指摘した。
 同特別委の調査報告は、開会中の市議会2月定例会の最終日に行われる。

写真=市が2016年度に策定したILCまちづくりビジョン
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tanko 2018-2-8 19:10
 鈴木俊一オリンピック・パラリンピック担当大臣(衆院岩手2区)や達増拓也知事らは7日、大島理森衆院議長(衆院青森2区)ら国政関係者や文部科学省に対し、素粒子実験施設・国際リニアコライダー(ILC)の日本誘致と早期実現を求める要望書を提出した。

 要望活動に参加したのは鈴木大臣、達増知事のほか、県立大学の鈴木厚人学長、県ILC推進協議会の谷村邦久会長(県商工会議所連合会会長)ら。大島議長をはじめ、ILC議連の河村建夫会長(衆院山口3区)と塩谷立幹事長(衆院静岡8区)、新妻秀規・文部科学政務官(参院比例)に提出した。
 要望書ではILCが科学技術創造立国の実現やものづくり産業の競争力強化などを促すプロジェクトであることを強調。中国においてILCのライバルと言われている超大型円形加速器「CEPC」の設計が急速に進められている現状や、東北や岩手県内における準備状況についても触れた。
 その上で国に対し?政産学および地域社会での取り組みを海外政府に発信し、海外からの大きな資金分担の可能性と研究参加に関する国際調整を速やかに進めること?産業・情報・技術のネットワークと国際科学技術イノベーション拠点の形成、民間活力を伸ばす成長戦略、地方創生など学術以外の観点についても可能性を検討すること?ILCの中心を成す超電導加速器技術は基礎科学・医療・エネルギー・安全保障など幅広い利用が進むことから、省庁横断的に取り組むこと?具体的かつ建設的な国際プロセス案、投資や人材の国際分担に対する基本的な考え方を日本政府として早期に明示すること――を求めた。
 要望に同行した県科学ILC推進室の佐々木淳室長は、胆江日日新聞社の電話取材に「大島議長からは、同じ東北出身の議員として実現に向けて進みたいとするニュアンスの言葉をいただいた。塩谷幹事長は、欧州側との議論も始まったことなど、実現に向けた取り組みの状況の説明があった」と答えた。
 ILCは世界に唯一作られる素粒子実験施設として、世界中の素粒子物理学者らを中心に計画。江刺区から宮城県気仙沼市にかけての北上山地が有力候補地となっている。
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tanko 2018-2-6 18:50
 岩手県は5日、歳入歳出をそれぞれ9533億4800万円とする2018(平成30)年度一般会計当初予算案を発表した。東日本大震災の復興関連事業がさらに進んだことで、2017年度当初比で263億8500万円(2.7%)減少した。予算規模は縮小しているものの、人口減少がさまざまな分野に影響を及ぼしている実態を踏まえ、県ふるさと振興総合戦略(2015年度策定)に基づいた取り組みに力を入れる。国際リニアコライダー(ILC)誘致実現に向けた調査研究事業費は、同比3390万円増の1億490万円とした。当初予算案は15日招集予定の県議会2月定例会に上程し、審議される。

 県予算は大震災発生翌年の2012年度以降、一般的な行政運営や全県を対象とした予算を「通常分」、震災復興に関連した予算を「震災分」に大別している。
 2018年度の通常分予算は、6684億4100万円で、2017年度当初比69億6200万円(1.0%)減。震災分は2849億700万円で、同比194億2200万円(6.4%)少ない。
 通常分歳入のうち自主財源は2743億2300万円で通常分総額の41.0%に相当する。依存財源は3941億1800万円で、通常分の59.0%を占める。自主財源は2017年度当初比0.5%、依存財源は同比1.4%それぞれ少ない。
 通常分歳出は、人件費などの義務的経費が3013億300万円で、2017年度当初比98億3000万円(3.2%)減。投資的経費は939億9200万円で、同比3.7%増。補助費や貸付金などを含むその他経費は2731億4700万円で、同比0.2%減とした。
 2018年度についても、大震災や一昨年の台風10号被害からの復旧・復興に最優先で取り組む方針。災害公営住宅整備事業費は48億6330万円で、沿岸市町村のほか内陸部への整備を進める。台風関連では、岩泉町などの河川復旧・改修事業費に総額約117億2430万円計上した。
 災害関連以外で重要視しているのが「ふるさと振興」。人口減少に歯止めをかけるため、県ふるさと振興総合戦略に掲げた「働く」「育てる」「暮らす」の3分野に基づいた取り組みを展開する。
 各種産業振興や定住化促進を図る「働く」では、水稲や園芸作物などの産地化・競争力強化を図る取り組みを支援する「強い農業づくり交付金」は8億9800万円。ものづくり産業の高度技術・技能人材育成事業に2億5000万円計上した。
 子育て支援や出生率向上を目指す「育てる」に該当する事業では、周産期医療対策費として3億2700万円、新生児のヘリコプター搬送用設備整備の経費補助として500万円を盛り込んだ。市町村が行う地域子育て支援拠点事業や一時預かりなどへの経費助成は、2017年度当初より1億5060万円多い14億6760万円とした。
 地域社会の魅力向上や医療福祉の充実、文化・スポーツの振興などに関する「暮らす」の分野では、津波で被災したJR山田線・宮古〜釜石間を三陸鉄道(株)に経営移管するための交付金として19億9900万円を投じる。
 文化・スポーツ関係は「ラグビーワールドカップ2019」「東京オリンピック・パラリンピック(オリ・パラ)」を意識した事業がめじろ押し。県産材をオリ・パラ選手村施設に使用する事業に3300万円。GAP(農業生産工程管理手法)を取得し県畜産品のオリ・パラ施設供給などにつなげる事業に900万円計上した。
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tanko 2018-2-4 18:50
 奥州市は、政治家・椎名悦三郎氏(1898〜1979)の旧邸宅などが残る水沢区吉小路の市有地で、建物類の解体工事を進めている。外務大臣や自民党副総裁などの要職を務めた悦三郎氏、衆参両議院を務めた次男の素夫氏(1930〜2007)を知る人たちにとっては、思い出深い場所。敷地一角にある悦三郎氏の胸像などは、そのまま残される。素夫氏は生前、「水沢3偉人」などの顕彰の場になることを望んでいたといい、地元住民らを中心に有効活用を願う声もあるが、市は当面、公有車の駐車場にするという。

 市財産運用課によると、解体しているのは悦三郎氏が暮らしていた邸宅と、後援会の会合などに使われていた「清和会館」、悦三郎氏の実弟で元県議の故・後藤五郎氏の邸宅、市道に面していた門など。作業に先立ち、市は地元への説明を済ませており、歴史的価値のある遺品や文献の有無などについても、市教育委員会歴史遺産課が調査したという。
 悦三郎氏は旧商工省総務局長などを経て、1955(昭和30)年に衆院議員に初当選。官房長官、通商産業大臣、外務大臣、自民党副総裁などの要職を歴任した。市民運動の形で浮上した東北新幹線の「新水沢駅」誘致にも携わり、悦三郎氏の死後、水沢江刺駅として実現している。悦三郎氏の地盤を引き継いだ素夫氏は、生まれも育ちも東京だが、水沢入りした際には邸宅で過ごすこともあったという。
 清和会館前には悦三郎氏の顕彰碑や胸像がある。胸像は馭年の悦三郎氏生誕100年を記念し建立したもので、台座の銘版は韓国の外務部長官を務めていた李東元氏(1926〜2006)が揮毫。李氏は、悦三郎氏が外相時代に取り組んだ日韓条約締結交渉の際、韓国側の外相を務めていた。
 悦三郎、素夫両氏をよく知り、自らも新幹線駅誘致に奔走した同区新小路の箱崎清高さん(84)は「最近は建物がぼろぼろになり雑草も伸び放題。前を通るたびに忍びなかった」と語る。
 吉小路は高野長英や後藤新平、斎藤實の「水沢3偉人」の誕生の地。旧椎名邸前の市道は「偉人通り」の愛称で呼ばれ、年に一度顕彰イベントが繰り広げられている。箱崎さんによると、素夫氏は市に土地や建物を寄贈するに当たり、地元支援者らからのアドバイスもあって、3偉人を顕彰するための場としての利用を望んでいたという。
 市財産運用課は、地元から有効活用を望む声があることを認識しながら「当面は、公用車の駐車場として使いたい」としている。

写真=解体工事が進む旧椎名邸や清和会館などがある水沢区吉小路の市有地。写真右側に見える悦三郎氏の胸像などは残される

※補足…椎名素夫氏が代表を務めていた国際経済政策調査会(PSG)は1999年「加速器科学研究会」を設置。以来、ILCに関する情報収集や学習機会を設けていた。
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tanko 2018-2-4 18:40
 第68回胆江地区児童画展は3日から4日まで、水沢区佐倉河の市文化会館(Zホール)で開かれた。児童たち一人一人の個性が輝く絵画が並び、市民らの関心を引いていた。
 児童たちの造形意欲や豊かな情操を育むことを目的に、胆江地区図工研究会(会長・高橋豊和水沢小学校校長)が毎年開催。年度の終盤に開かれ、児童たちの取り組みの集大成を披露する場として定着している。本年度は、管内の30小学校から652点の作品が集まった。
 会場には、お気に入りの物語や学びやの風景画などに加え、浮世絵にチャレンジしたり仕掛けを施したりとアイデア満載の絵画も。国際リニアコライダー(ILC)を題材にした作品もあり、子どもらしい伸び伸びとした発想を画用紙に表現している。
 同研究会事務局は「各校のカラーや児童の個性があふれる作品が勢ぞろい。児童たちの努力の足跡を見に来てもらえたら」と話していた。

写真=児童たちの力作が並ぶ胆江地区児童画展
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tanko 2018-2-2 18:40
 ILCは宇宙誕生の謎を調べるそうですが、どうして宇宙に始まりがあることが分かったのでしょうか。宇宙が誕生する前は、一体何があったのでしょうか。

理論と観察結果から分かりました

 「宇宙には始まりがある」という科学的な考え(学説)は、いつごろからあったか、振り返ってみましょう。
 アルベルト・アインシュタイン(1879〜1955)は、1915年に重力場の理論である「一般相対性理論」を発表しました。この理論によって「宇宙誕生のモデル」が作れるのではないかと考えたのです。
 アインシュタインは、当時信じられていた「宇宙は静止している」という「定常宇宙モデル」を導こうとして、自身の基礎方程式である「アインシュタイン方程式」を解き始めます。しかし「アインシュタイン方程式」では、万有引力はすべての物質に引力として働くため、はじめは静止していても宇宙の物資はお互いの重力が作用し合い動いてしまうので、宇宙は「膨張」または「収縮」してしまいます。
 その後、旧ソ連の宇宙物理学者、数学者のアレクサンドル・フリードマン(1888〜1925)や、ベルギーの宇宙物理学者ジョルジュ・ルメートル(1894〜1966)は、アインシュタイン方程式を解きます。その結果、フリードマンは「大きさのない宇宙が誕生」し「膨張する」か「膨張後、収縮する」。ルメートルは「宇宙は膨張している」という考えをそれぞれ発表しました。このように理論的には「宇宙は、どうやら膨張しているらしい」と考えられるようになります。
 1929年になり、エドウィン・ハッブルというアメリカの天文学者が、銀河を観測していたところ「宇宙が膨張している」ことを発見しました。ハッブルは、遠くの銀河ほど速い速度で遠ざかっていることを見いだし「ハッブルの法則」として発表した。理論だけでなく観測結果からも「宇宙は膨張している」ことが分かったのです。このことは「宇宙には始まりがある」ということを端的に示している重要な観測事実です。
 また「空間が膨張している」という観測事実は、「宇宙全体の体積が増加するため、物質やエネルギーの密度は低下する」ということを物語っていることになります。
 逆に、現在から宇宙誕生の瞬間に向かって時間をさかのぼっていくと、密度は上昇することになります。物質の密度やエネルギーはどんどん増大すると、温度も上昇します。
 単純に考えれば、138億年前には密度と温度が無限大となります。この状態が、宇宙誕生直後の大爆発「ビッグバン」に当たります。宇宙は、密度と温度が極めて大きい、超高温・超密度状態から始まったことになります。
 では、フリードマンらが提唱した「大きさのない宇宙」とはどのような宇宙なのでしょうか。これまでにさまざまな理論が唱えられていますが、それらを用いて宇宙誕生前の状態を解き明かすには、あと100年ぐらいはかかるとも言われています。残念ながら、現在の物理学では「宇宙の始まり」について何も答えることができません。
(中東重雄・奥州宇宙遊学館館長)

番記者のつぶやき
 久しぶりに「科学」の専門的な話を取り上げました。
 宇宙もそうですが、科学の世界には一度疑問を持ちだすと、次から次へと「なぜだろう」「わからない」という新たな疑問が生まれてきます。一般の人たちからすれば、研究者の皆さんは難しそうな研究や観測、実験に挑んでいるように見えますが、おそらく、とても素朴で単純な疑問がすべての始まりなのではないかと思います。
 宇宙に誕生する瞬間があったとすれば、もしかしたら「終わる瞬間」もあるかもしれません。知りたいような、知りたくないような……ですね。
(児玉直人)

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