人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市東部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)
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tanko 2018-2-23 10:40
 ILCが実現したら、施設を造るための建設工事や土木工事の仕事、装置を組み立てる機械製造関係の仕事が忙しくなりそうです。一方で岩手県は昔から農業が盛んで、おいしいお米や野菜がたくさん取れます。地域の農業に何かメリットはあるのでしょうか?

食材の調達は重要事項です
 前回のこのコーナーでも触れましたが、ILCにはさまざまな国や地域から研究者やその家族がやって来ます。ILCは「宇宙誕生の謎の解明」が主目的の施設ですが、そこで働く人や関係者への「食材の調達」も最優先に重要な事項です。
 日本の農作物の産地では、これまでも消費者の皆さんに喜ばれるような食材を提供しようと、さまざまな努力を重ねてきました。それと同じように、世界から訪れる人たちの食生活や宗教上のルールに見合った食材を提供することができれば、農業技術のレベルも上がるでしょうし、新たな地域農業の魅力を創造することが可能だと思います。
 もし寒さが厳しい東北地方の気候に適さない作物の栽培を考えるならば、ILCの排熱を利用する方法が考えられます。すでに先端加速器科学技術推進協議会(AAA)という組織が中心となって、いろいろと対策を考えているようです。このように省エネを考慮しながらILCを運営していくことを関係者は「グリーンILC」と呼んでいます。
 ILCでは、加速して高エネルギー状態にした電子と陽電子の粒すべてが衝突するわけではありません。衝突地点を通り過ぎた電子、陽電子のビームは、直径約2m、高さ約11mの「ビームダンプ」という場所に導かれて冷やされます。冷却のために水を使用しますが、ビームが入り込んだ時の水温は、155度以下になるように設計されています。
 ビームダンプ以外の各装置からの排熱なども合わせると、研究施設全体からの排熱温度はおよそ45度です。この温水の熱をハウス栽培の野菜に活用することが可能です。トマトやパプリカ、イチゴなどの高価格野菜や果物を一年中栽培できます。さらにレタスやセロリ、クレソンなどの西洋野菜、ロマネスコ、ストロベリー・トマト、カステルフランコ、シャドークイーン、アーティチョーク、ビートなど岩手の気候では通常の栽培が難しい野菜類であっても、排熱を使って育てることは夢ではありません。温室栽培することによって栽培速度も速く、収量も安定します。
 野菜や果物だけではありません。フグやウナギなど高温を好む魚類、逆にヤマメやマスなど低温を好む養殖施設への活用も可能です。乳牛や養豚施設などへの熱供給も期待されています。
 新たな農作物や物産の開発だけでなく、今ある岩手が誇る物産を海外にアピールできるチャンスにもなります。地場ワインや地ビールは、海外へのおみやげになるでしょう。
(中東重雄・奥州宇宙遊学館館長)

番記者のつぶやき
 平昌五輪での日本選手団の活躍が目覚ましいですが、トップアスリートの皆さんを支える仕組みと、ILCを支える環境づくりはどこか似ているところがあると思います。
 例えばサッカーの日本代表が活躍するためには、競技場を管理する人、応援グッズを企画し製造し販売する人たち、選手の健康管理に携わる人たちが必要です。近年は外国人の監督やコーチを招くこともあります。コミュニケーションを円滑にするため、通訳も活躍します。また、サッカーの楽しさを子どもたちに伝え次の選手を育成する環境をつくる人もいます。
 一流のサッカー選手たちをILCの研究者に置き換えてみれば、ILCを取り巻く仕事や必要なサポートは多岐にわたることが想像できると思います。
 「自分の仕事や取り組んでいる勉強は、ILCと関係ない」と思っていても、実は何かの形で携わることが将来あるかもしれません。
(児玉直人)

写真=2014年に水沢で開催されたILC関連の国際会議の夕食会の様子。多くの外国人研究者たちが地元食材を使った料理を味わった
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tanko 2018-2-21 10:00
 一関市で20日開幕した国際リニアコライダー(ILC)に関連する国際議会「ILD(アイエルディー) meeting(ミーティング) 2018」。主会場の一関文化センターには、国内外から集まった研究者らをもてなす空間が設けられている。胆江地区からはバンケット(夕食会)への食材提供などの形でサポートが入っている。


 ILC候補地近傍での関連する国際会議の開催は、ILC誘致の熱意を海外の研究者らに伝える機会でもある。会場内には会議の合間の休憩スペースが設けられ、一関市観光協会が名所などの情報を提供。県立花巻農業高校の生徒が作った「ILC」「ILD」の文字が入ったリンゴやクッキーも振る舞われた。県南広域振興局が主催したILC絵画コンクールの優秀作品も展示され、胆江地区を含む児童の力作が並んだ。
 21日に開催するバンケットでは、奥州、一関、大船渡、宮城・気仙沼の4市から提供された、名物食材の料理が振る舞われる。奥州市は前沢牛を用意したといい、当日は及川新太副市長らが出席する。
 このほか奥州市国際交流協会(佐藤剛会長)は、出席した外国人研究者の急病や体調不良などに対応する医療通訳ボランティアを派遣し協力。ILCが実現した場合でも重要視される取り組みであり、多文化共生社会の構築に向けた地元の対応の一端を示すことにもなりそうだ。
 同会議の現地実行委議長を務める東北大大学院の佐貫智行准教授は、2回目となる候補地近郊での会議開催について「候補地を間近に将来の計画を考えることは、より現実味を持った協議になるのではないか」と話している。

写真上=休憩スペースの一角に展示されている絵画作品。胆江地区の児童の作品も

写真下=「ILC」「ILD」と記されたリンゴを撮影する外国人研究者
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tanko 2018-2-21 9:50
※訂正…2018/2/21 9:50ごろから2018/2/22 15:50ごろまでの間、この記事の内容が誤ったまま配信されていました。ヨーロッパの次期素粒子物理学計画の提出期限の日付が「10月18日」となっていましたが、正しくは「12月18日」です。お詫びして訂正します。 


 北上山地が有力候補地となっている素粒子実験施設「国際リニアコライダー(ILC)」に関連する国際会議「ILD(アイエルディー) meeting(ミーティング) 2018」が20日、3日間の日程で一関市の一関文化センターを主会場に始まった。初日の開幕行事では、ドイツ電子シンクロトロン研究所(DESY)のティズ・ベーンケ教授がヨーロッパの次期素粒子物理学計画に触れ、同計画にILCを盛り込むために必要な諸資料の提出期限が今年12月18日までだと説明。日本はILCのホスト国として期待されているが、日本政府側の方針を示す時期が刻一刻と迫っていることをあらためて浮き彫りにした。

 ILDはILCで用いる大型測定機の一つ。日本とヨーロッパの研究者らが中心となり開発に向けた協議が進められている。
 これまでもILDを担当する研究者らが顔を合わせる場面はあったが、他のILC関連の国際会議に合わせて行っていた。ILD単独での国際会議開催は、2014(平成26)年に奥州市水沢区で開催して以来、4年ぶりという。
 今回は63人が参加し、このうち39人が海外の研究施設所属。ドイツ、フランスを中心に、スペイン、オランダ、セルビア、アメリカから訪れている。
 開幕行事では、一関市の長田仁副市長が歓迎のあいさつ。引き続き、ILD研究者グループの共同代表者でもあるベーンケ教授が、ILC計画やILD開発の流れと今後の動きについて発表した。この中でベーンケ教授は、2020年5月を始期とするヨーロッパの次期素粒子物理学計画について説明した。
 ILCは国際協力体制の下に建設、運営される施設。同計画のような国レベルの上層計画にILCが組み込まれなければ、国際協力体制の構築ができなくなり、計画が頓挫する可能性も出てくる。
 ベーンケ教授は、科学的意義などをまとめた諸資料を、12月18日までに提示する必要があるとし「コスト関係もしっかり調べ確認する必要がある」と強調。日本政府に対しても、ILC計画に対する明確な方針が示されることを期待した。

ILCとILD
 ILCは素粒子物理学の大型実験施設として計画。最新の方針では、全長25kmの直線トンネルを掘り、電子と陽電子を両端からほぼ光速に近い状態にまで加速させ、中心部で衝突させる。衝突時の現象を調べることで、物質に質量を与える「ヒッグス粒子」の詳細研究や、未知の素粒子の探索などを進める。
 肉眼には見えない現象を捉えるために必要なのが測定機(検出器)で、中心衝突地点に設置される。現計画では、測定方式が異なる「ILD(International Large Detector)」と「SiD(Sillicon Detector)」の2台を設置。双方とも高さ10m以上、重さは1万t以上にもなる。ILDは主に日本とヨーロッパ、SiDはアメリカを中心とした研究者らによって開発しようとしている。


写真上=国内外の研究者が集まり始まった「ILD meeting 2018」

写真下=ヨーロッパの次期素粒子物理学計画などを交えながら、今後の方向性について語るティズ・ベーンケ教授
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tanko 2018-2-19 10:20
 金ケ崎町国際交流協会主催の「金ケ崎de(で)世界のTea Party(ティー パーティー)」は18日、町中央生涯教育センター多目的ホールで開かれた。親子連れや協会員ら約80人が集まり、各国の食や伝統衣装、踊りなど文化に触れるとともに、フェアトレードの取り組みを通して、途上国などの就労についても考えた。
 外国出身者や海外在住経験者らと交流しながら、食や文化に触れる恒例イベント。今年は、インドネシア・ジャワ島出身のアユ・イスカンダル・阿部さん(48)=盛岡市在住=をゲストに迎え、インドネシア舞踊や民謡を堪能。イスカンダルさんは「力強くも美しさもセクシーさもあるのがインドネシア舞踊の魅力。間近で楽しんでほしい」と伝統の舞で参加者を魅了した。
 会は、同協会英会話クラス受講生らによる歌とハンドベル演奏で幕開け。冬季五輪開催中の韓国のチマチョゴリや、服として着るだけでなくターバンやバッグ、おんぶひもと多彩な機能を発揮をする東アフリカのカンガなど、彩り豊かな伝統の衣装をファッションショーで身近にした。
 同協会では、途上国などで生産される商品を適正価格で購入することで、就労の機会を提供し自立を支援するフェアトレード活動に理解を深めてもらおうと、さまざまな機会を捉えてPRしている。同日も、フェアトレード商品を使ったカレーやデザートなどを紹介したほか、食品や雑貨を販売し、フェアトレード商品の魅力も伝えた。

写真=色鮮やかな民族衣装のファッションショーなどを通して、国際理解につなげた「金ケ崎de世界のTea Party」
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tanko 2018-2-19 10:10

 奥州市国際交流協会(佐藤剛会長)の新春交流会は18日、江刺区八日町のホテルニュー江刺新館イーズで開かれた。市内在住の外国人市民や同協会関係者ら約80人が参加。世界各国の料理や出し物を楽しみ、それぞれの文化や習慣などに理解を深めた。
 旧正月に合わせた恒例のイベント。新年を迎えた喜びを関係者で分かち合い、今後のさらなる国際化機運を醸成させようと毎年開催している。
 オープニングアトラクションとして、水沢区のダンス教室「レイアロハ」(矢守春菜代表)の生徒らによるポリネシアンダンスが披露された。南国のリズムに合わせて華やかに踊り、会場内に一足早く夏の雰囲気を呼び込んだ。
 佐藤会長はあいさつで「病院での医療通訳など市内に住む海外出身者の住環境の整備や、国際リニアコライダー(ILC)が完成し海外研究者らを落ち着いて迎えられるよう準備を進められているのは、皆さんのご協力のおかげ」と感謝。「水沢に緯度観測所ができたときに、いち早く旧藩士が英語学校を開いた。斎藤實閣下も英語が堪能で国際情勢に明るかった。こうした良い伝統や心構えを重んじてこれからも活動していきたい」と力を込めた。
 名物の世界の料理は、冬季五輪開催で注目を集めている韓国の炒め物「タッカルビ」、フランスのスープ「ポティロン」など13品が並んだ。参加者は和気あいあいと味わいながら、会話を弾ませていた。このほか会員による各国の歌の披露などもあり、大いに盛り上がった。
 同協会で10年近くボランティアに携わる水沢区上町の徳井貞男さん(74)は「世界のいろいろな国の人たちと知り合い、交流していると本当に勉強になるし、見識が広がる。そうした機会をより多くの人に得てもらうために、ことしも頑張って協力していきたい」と笑顔をみせていた。
 この日は会場に、県国際交流協会の呉慧敏・外国人相談専門員を招き、相談ブースも設置。参加者らが気軽に岩手での生活の相談をしていた。

写真=オープニングアトラクションのポリネシアンダンスは、会場を南国の雰囲気に変えた
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tanko 2018-2-14 19:40
 台湾東部で発生した大地震を受け、奥州市国際交流協会(佐藤剛会長)と奥州市水沢地域交流館(アスピア、藤原佐和子館長)は、奥州市水沢区吉小路の同館ロビーに、地震被災地支援の募金箱を設置した。現在、市民の善意を募っている。

 地震は7日未明(現地時間6日午後11時50分)に発生した。台湾東部の花蓮沖が震源。地震の規模を示すマグニチュードは6.4で、花蓮市を中心に建物倒壊などの被害が出た。9日午前時点で、死者10人、負傷者276人、行方不明者7人に上っているという。現地では、懸命な救出活動が展開されている。
 同協会では7日に募金箱を設置。同協会事務局の藤波大吾さん(35)は「東日本大震災のときに、台湾からは200億円余りの義援金が送られ大変に助けられたことへの恩返し」とし、「後藤新平以来台湾との交流は深く、当協会の医療通訳ボランティアにも市内在住の台湾出身者3人に参加してもらっている。大切な関係にあるだけに、少しでも力になればと、すぐに設置した」と説明。協力を呼び掛ける。
 同協会は今後、1カ月をめどに募金の送り先を検討し、寄付金を現地に届ける予定。

写真=台湾・花蓮を襲った大地震への援助を呼び掛けて設置された募金箱
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tanko 2018-2-14 19:10
 岩手県商工労働観光部雇用対策・労働室は、今春県内の高校を卒業する生徒らに、岩手の魅力を情報発信する「いわてカレンダー」と企業・就職情報提供サービスなどの案内チラシを配布した。人口減少が著しい本県にあって、3月は1年の中で最も人口が減る時期。県外へ進学、就職する若者が多いことなどが主な要因となっている。生徒たちそれぞれの夢や目標を尊重しつつも、大学卒業後や一定の職業スキルを身に付けた後に「岩手に戻りたい」という気持ちになるよう、卒業生本人はもちろん、親に対しても情報を提供していく。(児玉直人)

 【地域の魅力満載のカレンダー】
 カレンダーやチラシの配布は昨年度から実施。1月23日に県内各高校に配布し、卒業式までに3年生各生徒に配るよう呼び掛けている。
 カレンダーはA4サイズで、4月からスタートする「年度タイプ」となっている。各月の下半部は日付、上半分は素朴な岩手を象徴する事柄や物産などを列挙したイラストになっている。
 イラストには、胆江地区ゆかりの事柄も見られる。9月のテーマは「伝統工芸」で、岩谷堂箪笥や南部鉄器などを紹介。10月は「偉人」で、後藤新平や高野長英らの姿も。最終月の3月は「最前線」で、国際リニアコライダー(ILC)やスローライフ、ラグビーワールドカップ2019を取り上げている。
 カレンダーとともに配布したのが、就職関連情報を提供するサービスの登録案内と、各種相談窓口の紹介チラシ。生徒用と保護者用の2種類を用意した。
 事前登録制の情報提供サービスは、主に県外など自宅から離れた地域の大学や短大、専門学校に進学する生徒向けに実施。月1回程度の割合で、県内企業の紹介やインターンシップ、就職関連イベントの案内などを配信する。
 保護者向けのチラシには相談窓口のほか、わが子との今後の関わり方に関するアドバイス文も掲載している。肉体的、精神的な疲労、悩みを抱えて落ち込んでいる子を心配する余り、あれこれ聞きだしたり、アドバイスしたりしそうになるが「過干渉や指示的な関わり方はNG」と指摘。「子どもが話したいと思う時に、ゆっくり様子を聞きながらサポートを」と説明している。

 【3月は人口激減期】
 県がこのような配布物を通じ、高卒者に「つながり」の意識付けを図っている背景には、急速に進む人口減の問題がある。人口推移に関する諸統計を見ると、県内では出生数の減による減少に加え、毎年3月には就職や進学を機に岩手を離れる人により、3500〜4000人規模の急激な人口減が生じている。水沢公共職業安定所がまとめた昨年12月末現在の新規高卒者の就職内定状況によると、就職先が決まった367人のうち138人は県外企業。3人に1人は本県を離れて就職する状況だ。
 人口減少は産業活動や地域振興、税収などあらゆる面に影響を与える問題だけに、さまざまな分野で対策が講じられている。一方で今回のような取り組みは、結婚や出産・子育て支援などと同様、当事者個々の思いや考え方も尊重する必要もある。公的立場からの押し付けや一方的な雰囲気づくりにならないような配慮と事業展開が大切となる。
 配布事業に携わったジョブカフェいわての担当者は「新しい門出を祝い、県外に行く人でもまずはそれぞれの進学先や就職先で頑張ってもらいたい」と話す。その上で本県の魅力や就職情報を配信することで、卒業後、または将来的に、古里に戻りたいと考えている人たちに対し、丁寧にサポートしていきたいとしている。

写真=県内就職促進に向けた「いわてカレンダー」。間もなく卒業する高校3年生全員に配布される
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tanko 2018-2-14 19:00
 世界各国の国際リニアコライダー(ILC)関連の研究者が集まる「ILD meeting 2018」は20日から22日まで、一関市の一関文化センターを主会場に開かれる。2014(平成26)年に水沢区で開催したのに続き、国内では2回目。素粒子の衝突現象を捉える検出器「ILD(International Large Detector)」の研究開発に携わる国内外の関係者約70人が参加し、会議や意見交換会などを行う。

 ILDミーティングの開催は、13日に盛岡商工会議所が開いた定例会見で明らかにされた。すでにネット上には同会議のホームページ(英文)が開設されており、日程等が閲覧できる状態になっている。
 会議を主催するのはILD meeting 2018国際組織委と同現地実行委。現地実行委議長は、東北大大学院理学研究科物理学専攻の佐貫智行准教授が務める。
 開幕初日、岩手県ILC推進協議会(会長・谷村邦久盛岡商工会議所会頭)が共催するウェルカムレセプションを、一関市内の郷土料理レストランで開催。勝部修一関市長らも出席する予定だ。21日のバンケット(夕食会)には、候補地周辺の自治体や谷村邦久会長らが出席する。
 ILCは、物質の起源や宇宙誕生の謎を解明することなどを目的に、世界に唯一つくる国際研究所。世界中の素粒子物理学者らが実現に向けて協議を進めており、江刺区から一関市、宮城県気仙沼市にかけての北上山地が最有力候補地となっている。
 実験を行う施設の主要部分は、地下に掘られる直線トンネルの中にあり、その中心部分で両端から加速させた電子と陽電子を衝突させる。衝突部分に設置されるのが検出器で、「ILD」と「SiD(Sillicon Detector)」の2台を設置する計画だ。双方とも高さ10m以上、重さ1万t以上という巨大な装置で、目には見えない素粒子の衝突現象を捉える。

ILD(右下)とSiDの完成予想図。矢印部分に描かれた人間のイラストから装置の巨大さが想像できる((C)Rey.Hori/KEK)
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tanko 2018-2-12 19:00
 江刺ユネスコ協会(高橋新平会長)主催の第23回江刺ユネスコ作文コンクール表彰式は10日、江刺生涯教育センターで行われ、世界平和の尊さなどについて真っすぐな意見をつづった区内の中高生12人をたたえた。中学生の部では市立江刺一中2年の生野愛奈さん、高校生の部では県立岩谷堂高3年の千葉優香さんがそれぞれ最優秀賞に輝いた。
 ユネスコ協会が主唱する世界平和や環境保護などについて考えるきっかけにしてもらおうと開催しているコンクール。昨年10月から募集を開始し、中学生の部に12点、高校生の部に5点の応募があった。岩谷堂高の大内高志校長を委員長とする審査員ら5人で今年1月24日に審査を実施した。
 表彰式で高橋会長は「人生では、さまざまな人との関わりが大切。感謝の気持ちを忘れずに立派な人間に成長して活躍してほしい」とエールを送り、受賞者に表彰状と盾を授与した。
 大内審査委員長は「国際リニアコライダー(ILC)やSNSについて取り上げた作文もあり、新たな傾向も見られた」と講評。「作文を通じて皆さんの体験をこれからの将来にどう生かすかを知ることができた。たくさんの人と手を取り合って平和を実現してほしい」と激励した。
 生野さんと千葉さんを除く受賞者は次の通り。
 【中学生の部】▽優秀賞…太田仁奈(江刺東2年)久米紗奈(江刺南2年)▽優良賞…阿部唯果(江刺東2年)千田愛蘭(江刺南2年)三上愛(江刺一2年)千葉万穂(同)
 【高校生の部】▽優秀賞…菊地琴葉(岩谷堂3年)菊地一輝(同)菊地美玲(同)▽優良賞…及川由紀菜(同)

写真=祖父母から聞いた戦争体験を基に世界平和の尊さを訴え、高校生の部最優秀賞に輝いた千葉優香さん
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tanko 2018-2-9 18:50
 国際リニアコライダー(ILC)が実現したら、大勢の外国人がこの地域に生活し、さまざまな施設もできるそうですね。ILCは北上山地にできるということは、山の中に外国人が暮らす巨大な都市ができるということですか?

施設近くは実験関連の建物が中心

 ILCの実現が決まった場合、建設技術者や研究者、その家族など年間1万人程度の外国人が来ると見込まれています。これは、スイス・ジュネーブにある欧州原子核研究機構(CERN)の実績に基づくものです。しかもこれらの人たちは、短期の来日ではなく、数年にわたる長期の滞在です。
 このため、ILCで行う研究や実験などに関する話し合いと並行して、外国人を含む関係者の受け入れに必要な環境整備、まちづくりについても、研究者ばかりでなく、行政や経済産業団体の関係者が話し合っています。もしILCが実現したらどんなまちになるのか、とても気になるところです。
 ILCは有力候補地である北上山地の地中にトンネルを掘って造ります。なので「山の中に巨大な研究所や研究者が造るまちができる」と思ってしまいそうですが、少し違います。
 まず、ILCの実験施設のほとんどは、地中のトンネルや大きな部屋の中に装置を置くので、地表からそれらの施設が見えるわけではありません。地中の実験施設へは、地上とをつなぐアクセストンネルを通って入っていくことになります。
 アクセストンネルは、検出器など巨大な実験装置を置く部屋がある中央部分(衝突地点)のほか、加速器を中心とした装置が設置される直線トンネルの途中数kmごとに造られる予定です。
 中央部分の出入り口付近には、素粒子の衝突現象を計測するのに必要な施設が集まる「実験サイト」になります。装置を動かしたり、修理をしたりする現場の拠点です。途中のアクセストンネルの出入り口近くには、加速空洞を冷やすための「液体ヘリウム」を製造する装置や電源など、関連する施設が設置される程度です。
 「実験サイト」からおよそ30〜40分ぐらいの範囲で移動できる場所に造られるのが、「メーンキャンパス」と呼ばれる中核施設です。参加研究機関や大学など約370機関の事務室や研究施設が集まる「ILC国際研究所」をはじめ、さまざまな情報を管理するコンピューターセンター、国際会議・研修施設、宿泊・飲食施設、サービス施設などが集まるエリアです。
 新幹線駅があり、研究者の皆さんの生活エリアを想定する平野部や市街地からも30〜40分ぐらいで到達できる場所を想定。つまり、実験サイトと市街地の中間地点にメーンキャンパスをつくることで、自宅やまちからの通勤も、実験施設にも行くのにもちょうどいいわけです。バス停やヘリポートなどの交通系施設など基幹となる重要な建物や施設も建設・整備されます。
 このほか、ILCに直接関連した技術、応用した技術などを活用し、新製品や新素材を生み出す研究拠点の整備も検討されています。
 このようにILCの本体のすぐそばには、実験に必要な施設や設備が、必要最小限の範囲で開発や建設されることになると思います。巨大なビルや建物を山の中につくって、都会のように開発をするというわけではありません。周辺の自然環境や、もともとそこに生活していた地域住民に極力影響を与えないようにすることが大切です。
(中東重雄・奥州宇宙遊学館館長)

番記者のつぶやき
 加速器を設置する直線トンネルの途中に造られる「アクセストンネル」と、ほぼ似たような役割を果たしている施設が奥州市前沢区や平泉町にあります。JR東北新幹線の一ノ関トンネルに設けられた「斜坑」という施設です。一ノ関トンネルは一関市舞川から前沢区生母字下沢田までの全長9730mに及ぶトンネルです。その途中に、地上へと通じるトンネルが2カ所あります。山肌から斜めに掘られている坑道(トンネル)なので「斜坑」と呼ばれています。
 長いトンネルを建設するとき、両端から掘ったり資材を運んだりしていると時間がかかるので、途中に横穴を掘って作業をすることがあります。完成後は、保守点検のための出入り口や緊急避難時の通路に使うことが可能です。
 周辺は有刺鉄線の付いたフェンスで囲われ、斜坑の扉も鍵のついた頑丈なものになっています。勝手に中に入ったり物を投げ入れたりすると、厳しく罰せられるので絶対にやめてください。
(児玉直人)

写真=JR東北新幹線・一ノ関トンネルの斜坑一つ「音羽斜坑」(奥州市前沢区生母地内)

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