人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市東部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)
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tanko 2018-1-26 16:00
 日本では「お金があまりない」「財政が厳しい」とよく聞きます。国際リニアコライダー(ILC)は、税金を使って造るのですか?

公共性が高いので税金で造ります
 税金とは私たちの社会を支えるためのもので、公共的な財産を購入・建設したり、公共サービスを提供したりするため、法令に基づいて国民(住民)に負担を求めるお金です。したがって税金を使う事業は、公共性があるかどうかが重要となります。
 ILCについては、その目的や内容から「純粋な物理の基礎研究のための施設」であることから、税金を投入する事業の対象となり得ます。
 「国益になるかどうか」ということも重要な事項です。▽ILCが国民に対しどのようなメリットがあるか▽メリットはすぐ表れるのか時間をかけて出てくるのか▽どの程度の経済的波及効果が見込めるのか▽環境への影響はどうか――など、あらゆる方面から検討されます。国はそれらの検討結果をまとめ、国会の承認を得て、実施するかどうか決定します。
 ILCの本体建設費は、当初計画の全長31kmでは約1兆1000億円とされていました。しかし、新しく示された全長20kmから開始する計画だと、当初の建設費より約40%少なくなると見積もられています。北上山地に建設されることが正式決定すると、ホスト国となる日本は、本体建設費の半分よりやや多いくらいの金額を負担することになると言われています。
 仮に当初より建設費が約40%削減されるなどの条件に基づき計算してみると、日本は3300億円から4000億円程度負担することになるでしょう。実際に日本がどれくらい負担するのかは、今後の話し合いによって変化してくると思います。ここでの金額は、あくまでも「仮の計算」で導かれたものです。
 ところで、ILCに対する日本の負担額の中で、よく誤解されるのは「一気に数千億円ものお金を日本が支払わなければいけない」と勘違いされてしまう点です。ILCの建設期間は約10年と見込まれているので、平均すれば年間数百億円程度の負担です。
 ちなみに国際宇宙ステーションの運営に、日本は2010年までに約7100億円負担しています。2011年からの5年間は計2000億円、2011年以降は年間400億円投じています。
 では、ILCを建設することによるメリットは、基礎研究の発展以外に何かあるのでしょうか。
 まず考えられるのは経済波及効果です。2013年に日本生産性本部が、当初計画である施設規模全長31kmを前提に、「建設期間10年、運転期間20年」という条件で試算したところ、加速器関連産業(1次)関係で12.1兆円、加速器利用関連産業(2次)関係で32.6兆円の計44.7兆円の効果があると予測しています。ILC建設には数千億円規模を支出しますが、その見返りとなる経済波及効果が44.7兆円です。税金を使う価値は十分あると思われます。
 この試算では「運用期間20年」と条件を設けていますが、これは「ILCの施設を20年しか使わない」という意味ではありません。スイスの欧州原子核合同研究機構(CERN)では、建設から60年たった現在でも研究を続けています。ILCについても同様のことが考えられるのです。
 外国からの研究者や技術者もたくさんやってきます。そうなると住民と研究者家族との国際交流が盛んになると思われます。地域の小・中学校にさまざまな国の子どもたちが通学するかもしれません。わざわざ海外に行かなくても、異文化交流ができます。地域の教育レベルの向上も期待できそうです。
 国際交流や教育面の効果については、はっきりとした数字がまだ公表されていませんが、地域住民にとっては貴重な経験となるに違いありません。
(中東重雄・奥州宇宙遊学館館長)


番記者のつぶやき
 先日、うちの子どもたちがお風呂の中で遊べる「実験入浴剤」というものを買ってきました。理科室にあるビーカーのような入れ物に、専用の粉と液体を入れて棒で混ぜると、泡状の入浴剤がブクブク出てくるというものです。
 ただし、わが家のお湯を温める装置は、入浴剤が使えない構造。「無駄な買い物だな」と思ったのですが、子どもたちはお風呂の中ではなく洗面器を使い、目の前で起きる不思議な現象を楽しんでいました。
 ある人から見れば無駄な買い物かもしれませんが、別な人にとってはとても大切なものだったり、想像以上の効果を生み出したりすることがあります。税金の使われ方を見ていても、似たようなことを感じることがよくあります。
 子どもたちが「あの泡のブクブクは、どうやってできるのかな」と、いつか自由研究でもしてくれたら「無駄な買い物」ではなかったかもしれませんね。
(児玉直人)

写真=胆江法人会が毎年開催する小学生による税のポスター展。税金は有意義な形で使われてほしいものですね(資料)
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tanko 2018-1-25 13:50


 今月4日から3日間の日程で実施された「市中学生科学体験研修」の報告会が24日、江刺区の市役所江刺総合支所多目的ホールで開かれた。研修に参加した市内の中学生が、茨城県つくば市の高エネルギー加速器研究機構(KEK)などで見聞したことや感じたことなどを発表。集まった関係者や父母らに、感謝の気持ちも伝えた。
 同研修は旧水沢市から継承した事業で、最先端の科学技術とそれを支える研究者の思いなどに触れ、中学生の科学に対する興味関心を高めてもらおうと、毎年実施。2003(平成15)年、ノーベル賞受賞の物理学者・小柴昌俊氏が水沢で講演したことをきっかけに始まった。
 14回目を数える今回は市立水沢南中の高橋裕紀校長を団長とし、市内10校から2年生31人が参加。KEKのほか、宇宙航空研究開発機構(JAXA)やつくばEXPOセンターも訪ねた。KEKでは、奥州市出身の小野正明名誉教授の講義も受けた。
 報告に先立ち、市教育委員会の吉田政教育委員長は「KEKやJAXAでは、五感のすべてを働かせて日本で最先端の科学技術研究や、研究者の熱意を学んできてくれたことだろう。何を見、どう考えたか自信を持って発表してほしい」と呼び掛けた。
 登壇した生徒たちは、班ごとに見学の様子や学んだことなどを紹介。JAXAで国際宇宙ステーション・日本実験棟「きぼう」の実物大模型を見た際の感想を伝えたほか、KEKでは国際リニアコライダー(ILC)でも用いられる超伝導装置について理解を深めたことにも触れた。
 前沢中の佐々木楓君(14)は「現地では集中して話を聞いてメモを取り、疑問について積極的に質問できた。このメンバーで研修したことを誇りに思い、自信に変えて学校生活に生かしていきたい」と力を込めた。
 団長の高橋校長は「各班の発表内容と立派な態度を見て、参加者一人一人が実りが多い研修ができたことがよく分かった。今回の研修が皆さんの人生を変えるきっかけになれば、うれしい」と希望していた。

写真=現地で感じたことなどを発表する参加生徒たち
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tanko 2018-1-24 11:20
 鉄道の駅でレンタカー業務を展開しているJR東日本レンタリース(中村浩之社長)は、3月いっぱいでJR東北新幹線・水沢江刺駅構内の営業所から同社スタッフを引き上げ、同駅前に営業所を構える同業他社に業務委託することが、関係者らへの取材で分かった。一方、同社に同駅の観光案内所業務を委託している奥州市は、新たな委託先を探している。

 同社はJR東日本(冨田哲郎社長)のグループ会社。JR東日本管内の主要駅に営業所を設置し、レンタカーサービスを展開。JRの列車とセットで利用すると、乗車券やレンタカー料金などが割り引きされる特典がある。
 水沢江刺駅の営業所は、駅構内の「南岩手交流プラザ」にある。待合室と観光案内を兼ね備えた施設で、一角に設けられたカウンターに同社スタッフが常駐。レンタカーと観光案内の両業務を担当している。
 今回、スタッフを引き上げる理由について、同社盛岡支店の担当者は「主要営業所へ人員を集中させるため」と説明。退職者が増加する中、従業員の募集を呼び掛けても応募がない状況だという。
 同社は、駅前に営業所を構えるニッポンレンタカーサービス?(荒幡義光社長)に業務を委託。駅レンタカーで受けられていた各種割引サービスは継承される。同業他社への駅レンタカー業務委託は、釜石駅や宮古駅など各地に先例がある。
 この方針に伴い、同駅の交流プラザが無人化してしまうことから、奥州市は観光案内業務を引き受けてくれる新たな委託先を探している。同社に支払われていた業務委託料は年間約400万円。市商工観光部商業観光課によると、昨年秋ごろ同社から今回の方針に関する連絡があった。
 交流プラザは市が管理する施設。県南地域の特産品や祭典の紹介に加え、同駅近くの北上山地が素粒子実験施設「国際リニアコライダー(ILC)」の有力候補地になっていることから一昨年秋にはILCのPRコーナーが設けられている。
 同課の担当者は「当初は、新年度に施設をリニューアルしようと考えていたが、まずは新たな委託先を探さなければいけなくなった。県外の方も多く利用している奥州市の玄関口であり、スタッフ不在というわけにはいかない」と話している。
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tanko 2018-1-19 11:10
 1月5日付から続く「国際リニアコライダー(ILC)が誘致できなかった場合は」の最終回。一部の人たちから「ILCは核廃棄物の貯蔵場所になる」といううわさが出ていましたが、それは本当なのでしょうか?

構造上、核処分場や貯蔵場所には適しません

 ILC計画がどの段階で中止したのかによって、多少対応が異なると思います。
 工事を始める前に、日本への誘致やILC計画そのものの実施が困難となれば、研究者は別の実験方法や施設の姿を考えるかもしれません。ILCを北上山地に誘致する活動をしていた団体なども解散し、奥州市や一関市のあちらこちらで見掛けた「ILC実現を!」などと書かれた看板やのぼり旗も取り外されると思います。もしこのような結果が起きてしまったら、とても残念な気持ちになってしまうことでしょう。
 アメリカのSSC(超伝導超大型加速器)のように、建設工事が始まっている途中で中止になった場合は、ちょっと大変です。造ってしまった施設をどうするのかという問題があるからです。
 「せっかくなので別なことに使おう」となった場合に、心配されているのが「核廃棄物貯蔵施設」への転用です。少し難しい言葉ですが、原子力発電所などで不要になった放射線を出し続ける物質「放射性物質」を捨てる場所に使われないかということです。
 放射性物質にはいろいろな種類があります。短い時間しか放射線を出さないものもあれば、何万年、何億年と出続けるものもあります。
 放射線を大量に浴びたり、少ない量でも長時間浴び続けると、人体の健康に影響を与える恐れがあります。そのために、核燃料を扱う原子力発電所やそこから発生する「核廃棄物(核のごみ)」を捨てる場所に対しては、「本当に安全なのか」「危険だからそういう施設は造らないでほしい」と心配する声があるのです。
 では、ILCのために造ってしまったトンネルがそのような施設になるのでしょうか。
 結論から言うと、心配ありません。北上山地にILCを造る場合、標高約100mの位置にトンネルを掘ることになっています。標高とは「海面からの高さ」です。つまり、北上山地の地面に立ったとき、場所によってトンネルの位置が地面から50m下だったり、100m下だったりするのです。奥州市や金ケ崎町の中心部は標高50m前後の場所にあるので、ILCのトンネルはそれよりも高い位置に掘られることになります。
 一方で、経済産業省などが構想に描いている「核廃棄物貯蔵施設」は、地下300m以上の深さの「安定した地層に貯蔵する」ことが法律によって決められています。したがってILC用に掘削されたトンネルは、標高100mに位置しているので対象外になり、転用される心配はありません。
(中東重雄・奥州宇宙遊学館館長)

番記者のつぶやき
 ILCに関連した記事には、たくさんの専門用語や、理解するのが難しい現象が次々と出てきます。皆さんに分かりやすくしようと心掛けていますが、まだまだ努力が足りないなと感じ続けています。
 ただし、分かりやすく表現しようと思うがあまり、かえって誤った情報を伝えてしまう危険性もあります。今回の中東さんの解説にも出てきた、ILCのトンネルの位置についてもそうです。新聞記事に限らず、ILCの誘致団体や専門家の講演会、説明用のパンフレットなどには「地下100m」と書かれていることがあります。
 いきなり「地下100m」と言われたら、どんな場所をイメージするでしょう? きっと「自分の足元から100mの深さ」をイメージする人もいるのではないでしょうか。
 専門家の世界では「常識的」なことも、一般の方々にとっては分からないこと、違うイメージで伝わってしまうことがたくさんあります。知人の科学者はこんなことを話していました。「子どもたちに分かるように説明できない専門家は失格ですよ」と。
(児玉直人)
写真=ILCのトンネル想像図=(C)Rey.Hori/KEK
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tanko 2018-1-17 11:00
 奥州市は16日、2018(平成30)年度の一般会計当初予算案を発表した。3月に市長選を控えているため、義務的経費や継続事業などの経費を中心とする「骨格予算」で編成。総額は本年度当初比25億9180万円(4.5%)減の552億7280万円とした。

 歳入のうち、市税(市民税など)は景気の回復基調を反映し131億6610万円(本年度当初比2.4%増)。地方交付税は国の地方財政計画や実績などを勘案し185億969万5000円(同6.9%減)と見積もった。寄付金は、ふるさと応援寄付金(ふるさと納税)の増により3億6090万3000円(同9.1%増)。繰入金は、財政調整基金などを計画的に活用するが、新市建設計画基金廃止などで30.1%減の12億2430万8000円とした。2016年度から財源不足を補う財政調整基金を取り崩して当初予算を編成している。
 歳出のうち、義務的経費は人件費75億4729万7000円(同1.9%減)、扶助費108億830万8000円(同0.9%減)、公債費84億8208万9000円(同3.3%減)といずれも減少。投資的経費は、衣川支庁舎建設工事やスマートインターチェンジ事業負担金の減少などにより27.1%減の31億8386万7000円。繰り出し金は、介護保険給付費の増に伴う介護保険特別会計への繰り出しで1.0%増の68億8102万5000円とした。
 主な事業は、市総合計画の戦略プロジェクト(人口、ILC)などを展開。政策的判断が必要な事業は、市長選後の補正で予算計上する見通し。
 市債の抑制によりプライマリーバランス(基礎的財政収支)は黒字を堅持。起債残高は年度末比較で45億円減を見込んだ。
 当初予算案発表の臨時会見で小沢昌記市長は「義務的経費や経常的経費、行政の継続性の確保、緊急的課題への対応など年度当初からの執行が必要な事業について措置した。市民生活に支障がないよう編成した」と述べた。
 当初予算案は、29日開会予定の市議会定例会に上程する。

新年度市予算案に反映した主な事業
【戦略プロジェクト】
 ?人口プロジェクト(市版総合戦略)▽安定した雇用と新しい産業の創出など…1億7245万8000円
 ?ILCプロジェクト▽ILC推進事業…2398万6000円
【協働のまちづくり第2ステージへのさらなる推進】
 ▽地域づくり推進事業(協働のまちづくり交付金など)…2億271万6000円
 ▽地区センター管理運営事業(指定管理料分)…3億79万2000円
 ▽協働の提案テーブル実践事業(総合戦略予算に含む)…1116万3000円
【潤い豊かなスポーツライフの推進】
 ▽いわて奥州きらめきマラソン運営事業(総合戦略予算に含む)…3000万円
 ▽カヌージャパンカップ開催事業…1759万7000円
【子育て支援・教育環境整備】
 ▽子ども・子育て支援事業(給付事業など)…21億4507万円
 ▽学校施設整備事業(江刺南中学校屋内運動場耐震補強事業)…2521万3000円
【地域産業の振興】
 ▽「食の黄金文化・奥州」推進事業…489万4000円
 ▽奥州ふるさと特産品返礼事業(ふるさと応援寄付への返礼)…1億9567万8000円
 ▽商店街活性化対策事業(商店街活性化ビジョン関連事業)…8813万9000円
【都市環境・生活空間・施設整備】
 ▽社会資本整備総合交付金事業(道路改良工事、通学路改善など)…5億160万円
 ▽都市基盤長寿命化事業(道路、橋など)…5億9012万円
 ▽ラジオ難聴対策事業…1億2730万2000円
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tanko 2018-1-16 11:00
 岩手県の2018(平成30)年度当初予算の一般会計要求額は9600億3600万円で、2017年度当初予算額と比べ2%(196億9700万円)少ない。このうち、胆江地方含む8市町を管轄する県南広域振興局に係る要求額(公共事業費除く)は3000万円で、2017年度当初比で20.3%(800万円)の減だった。当初予算案は、県議会2月定例会に提案される予定だ。

 2018年度予算編成に関する方針は、昨年9月に千葉茂樹副知事名で各部局等に通知されている。
 東日本大震災からの復旧・復興事業を引き続き優先的に実施するとともに、現総合計画「いわて県民計画」の総仕上げ年度であることを意識した編成を指示。同時に、次期総合計画の策定年度であることを踏まえ、次期計画で用いる指標のキーワードとなっている「幸福」に関連する12の領域(仕事のやりがい、住まいの快適さ、家族関係など)に沿った施策についても、先行的な立案を図るよう求めていた。
 主要部局ごとの要求額を見ると、政策地域部では国際リニアコライダー(ILC)に関係する「プロジェクト研究調査事業費」に1億490万円を計上。2017年度当初比3390万円増で、一部新規事業を取り入れ、受け入れ環境の整備に関する具体的な検討などを進める。
 文化スポーツ部は、新規に復興五輪ムーブメント推進事業費として2610万円を計上。2020東京オリンピック・パラリンピック関連事業への県民参画を進めるため、ホストタウンや事前合宿の誘致、聖火リレーの実施に向けた体制を整える。
 保健福祉部は、農業分野での障害者就労支援を推進する「農福連携総合支援事業費」に2140万円。農林水産部は、台湾・香港における県産農林水産物の知名度アップと販路拡大を図る事業に2750万円を計上した。
 教育委員会は、近年社会問題となっている学校教職員の長時間労働を是正する取り組みに着手。学習資料の作成など、教職員の業務を支援する「学校事務補助非常勤職員配置事業」に4480万円、「部活動指導員配置事業」に5890万円を計上した。
 県南広域振興局関係の主な要求額は、ものづくり産業の人材確保と企業の人材育成に980万円、食産業振興事業に1010万円、観光振興プロジェクトに1000万円などとなっている。
 2017年度当初の同振興局関係予算額は3750万円で、うち170万円が震災対応分だったが、今回の要求額に該当予算は入っていない。
 県は各部局等からの要求額を基に、政府予算の動向や外部環境の変化、事業内容の充実・精査などを図りながら必要な修正を加え、県議会に提案する。
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tanko 2018-1-14 10:50
 前奥州市議の佐藤邦夫氏(70)は13日、任期満了に伴い2月25日に告示される市長選に出馬することを正式表明した。「奥州は一つ」として「五つの地域の均衡ある発展」を掲げ、地域の活力による市の再生などを目指すと決意を述べた。
 江刺区の岩谷堂地区センターで会見。今月12日に議員辞職しており、無所属での立候補を見込む。
 現市政に対する住民訴訟や市議会の百条委員会設置という事態、住民による市町村合併への否定的評価、新市立病院建設の在り方の再検討が必要との考えから出馬を決めたという。法令順守と透明・公平・公正な市政運営を目指すとし、「明るく元気で楽しい奥州市」をキャッチフレーズに掲げた。
 地域の均衡ある発展に関っては、地域の活力をよみがえらせる施策が必要と強調。▽少子人口減対策の強化と若者の集うまちづくり(子育て世代の支援強化など)▽県南の中心都市の実現(県南広域振興局との連携強化、ILC立地促進など)▽各総合支所の自由度の拡大(権限委譲と財源配分など)▽財政の健全化(プライマリーバランスの大幅黒字化など)――を挙げた。企業誘致やふるさと納税のPRなどで「トップセールスに飛び回る」とも述べた。
 新市立病院建設については、市民が安心できる医療を提供するために、県や市、3師会など各関係者により「地域医療構想の練り直しから始め、その上で新病院建設の在り方を市民と話し合うことが必要」とした。
 市長選にはこれまでに、3選を目指す現職の小沢昌記氏(59)=水沢区東町、前市議の佐藤洋氏(63)=同区東大通り=が出馬を表明しており、三つどもえの争いとなる公算だ。

 佐藤 邦夫氏(さとう・くにお) 早稲田大大学院公共経営研究科修了。1999(平成11)年から旧江刺市議を2期、奥州市発足に伴う2006年の市議選に当選し3期。全国マニフェスト推進地方議会議員連盟共同代表、奥州市監査委員、議会改革検討委員会委員長などを務めた。江刺区愛宕字酉丸。

写真=市長選への出馬を表明する佐藤邦夫氏
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tanko 2018-1-12 10:40
 前回(1月5日付)では、アメリカで建設途中に中止してしまったSSC(超電導超大型加速器)と呼ばれる実験施設の例を紹介しました。中編では、中止になった理由を詳しく見ていきたいと思います。

中止の最大要因は「財政危機」

 SSCが中止になった原因はいくつかあります。
 第一の原因は、財政危機であったと言われています。レーガン政権下では高金利政策からドル高が進行し、輸入が増大して貿易赤字となりました。さらに国防予算が増大したため支出が拡大。「財政赤字と貿易赤字の双子の赤字」と言われる事態となったのです。
 1992年になると財政赤字は最悪となり、SSCと宇宙関連事業を展開しているアメリカ航空宇宙局(NASA)が削減のターゲットとなりますが、NASAは関連する研究所や企業が多くの州に散らばっており、縮小するとその影響が大きいため、手は付けられませんでした。一方、SSCはテキサス州だけの問題であり、影響も少なく「政治的にも切りやすい」との判断が働いたと言われています。
 第二の原因は、運営(組織)の問題です。SSCの組織は、従来の研究所から見ると異様だったと言われています。所長および副所長はともに物理学者でしたが、彼らが直接コントロールできたのは、物理研究の部門のみでした。加速器に必要な電磁石の開発や製造などの実質的な部門の総括マネージャーは、アメリカエネルギー庁長官(DOE)が直接選んだ元海軍軍人だったそうです。また施設・設備の責任者も元海軍軍人でした。
 このような人員構成になったのは、予算が巨額であり「物理学者だけでは運営できないのではないか?」という懸念と、国防予算が縮小する中でSSCが軍需産業の受け皿になり得るのではという期待が持たれていたためとも言われています。
 さらに設計変更の問題もあったようです。SSCの設計を行ったのはCDG(セントラル・デザイン・グループ)という組織でした。物理学者によって運営され、科学的な議論によって計画は認可されたのですが、その後、SSC研究所が設計をやり直したのです。結果、予算は増大してしまいます。

 CDGの本拠地は、カリフォルニア州の都市、バークレイにありました。一方、SSCの建設地はテキサス州北部の大都市ダラスから南へ約50km、エリス郡ワクサハチーという“田舎町”のさらに郊外にあります。CDGにはアメリカ各地の加速器研究者がたくさん集まり協力していましたが、SSCの「現場」には移らなかったのです。
 移った研究者の待遇も決していいものではなかったようです。研究所の運営が気に入らず上司と意見が食い違い、辞めていった人も多かったそうです。
 最もまずかったのは「現場であるSSC研究所に設計の詳細や技術が引き継がれなかったことだ」とも言われています。
 さて国際リニアコライダー(ILC)でも、建設に必要なお金のことでさまざまな意見が出ています。この対応策となり得るのが、このコーナーでも何度か登場した「ステージング」と呼ばれる建設方式です。
 物質に質量を与えているとされる素粒子「ヒッグス粒子」の研究に最適な施設の規模が、当初想定していたものよりも小さくて済むことが分かり、「そこから建設して、段階的に拡張していこう」という考え方です。本体の建設費用も、最初に伝えられていた約1兆円よりも約4割少なくて済むメリットがあるので、予算面の心配も解消されるのではという期待があります。ただ「成果が中途半端になり、限定される」と指摘する科学者もいます。
(中東重雄・奥州宇宙遊学館館長)


番記者のつぶやき
 新年明けましておめでとうございます。前回はスペースの関係で「つぶやき」をお休みしました。
 新年を迎え、私の自宅にILCに携わる研究者の方から年賀状が届きました。賀詞とともに、このようなことが書いてありました。
 「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」
 19世紀後半のドイツ帝国(当時)首相ビスマルクの言葉を用いた格言のようです。
 「今年がILC実現の勝負年」と言われていながら、当連載は「実現できなかったらどうなる」とか「過去の失敗例は」など、なんだか後ろ向きな話題を提供し、誘致を願う方々から「縁起でもない!」と怒られてしまうかもしれません。
 しかしながら、大きな事業を推し進める上では冷静に物事を見つめたり、過去の出来事(歴史)に学ぶことはとても大切なことだと思います。
 その上で心にとどめておきたいのは、過去の失敗例を知ったことで、無謀な挑戦は避けたほうがいいと考えるのは、必ずしも適切ではないという点です。安易に「逃げの思考」に走ってしまえば、チャレンジする気持ちが育たなくなり、いろいろな意味での成長もストップしてしまうと思います。スポーツの世界などでも同じようなことが言えるはずです。
 「失敗例があるから、ILCもやらないほうがいい」では何も始りませんし、何も残りません。歴史に学んで最適な道を考え選択し、精いっぱい努力して未来に進みたいものですね。
(児玉直人)
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tanko 2018-1-7 10:40
 第25回冬の子ども美術館の作品展示は6日から10日まで、水沢区佐倉河の胆江地区勤労者教育文化センターで開かれた。胆江の小中学生たちが描いた通学路の風景画や自画像など、多彩な作品を展示した。
 市と同美術館運営審議会(会長・木村徹前沢小学校校長)が主催。児童生徒たちが描いた絵画の中から厳選し、101点を展示した。
 仲間たちと勉強したり遊んだりして過ごす学びやや通学路の風景、想像・物語の世界などを自由な発想で描写。中学生たちは自画像やスケッチ、心象風景など多感な心の内を表現している。北上山地が有力候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)への期待を込めた絵画もあり、一人一人の個性を画用紙から伝えた。

写真=胆江地区の児童生徒たちの力作が並んだ冬の子ども美術館
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tanko 2018-1-5 10:30
 国際リニアコライダー(ILC)は、建設することすらまだ決まっておらず、研究者の皆さんや候補地の地元の人たちが頑張っていることは、前回(昨年12月29日付)説明がありました。あまり考えたくありませんが、もし誘致が実現しなかったらどうなるのでしょう? 過去に同じような失敗例はあったのでしょうか?

失敗例……。実はありました

 ILCのような大きな科学実験施設の建設計画で、途中で中止になった例があります。アメリカの「SSC計画」です。SSCとは Superconducting Super Collider の頭文字で、「超伝導超大型加速器」と呼ばれる円形の加速器施設を造る計画でした。加速エネルギーがTeV(テラ電子ボルト、1Tevは1電子ボルトの1兆倍)クラスの巨大な加速器です。当時の素粒子物理学では、TeVクラスのエネルギー領域が、物質の究極的な構造とそれを支配する基本法則を解明するためには、絶対的に必要なエネルギーだと言われていました。
 平田光司氏の論文によれば、SSCは1982年に計画が提案され、1987年にはジョージ・H・W・ブッシュ大統領によって認可され、議会でも建設が承認されていました。総予算は53億ドル。テキサス州を建設地に選びました。
 ところが1990年、エネルギーが1TeVから2TeVに変更されました。エネルギーを大きくする分、必要な機器も増えてしまうので、予算は当初より30億ドル多い83億ドルになりました。
 計画変更は政府によって認められましたが、連邦予算は5億ドルしか増えず、足りない25億ドルは自前で調達するよう求められました。そこで、10億ドルはテキサス州が、残りの15億ドルは海外に頼ることになります。この時点でSSCは国際プロジェクトに位置付けられたことになります。
 しかしヨーロッパでは、スイスのジュネーブ近郊に欧州合同原子核研究機構(CERN)という国際研究機関を既に持っており、大型電子陽電子衝突型加速器(LEP)を稼働させていました。ヨーロッパにとっては、あえてSSCに資金を拠出する意図はなく、残る頼みは日本でした。
 1991年にSSCの建設は始まり、地下200mのトンネル掘削がスタートしました。
 工事が20%ほど進んだ1992年、連邦議会下院がSSC中止を決議する事態が起きます。このときは、上院は継続を支持し、下院も認めたことから事なきを得ました。
 しかし翌年、下院で再びSSC中止の決議がなされます。上院は継続、両院議員総会でも継続の結論が出ましたが、今度は下院は拒否。SSC計画は建設途中で中止してしまうという結末を迎えたのです。
 SSCが中止してしまった詳しい原因は何だったのでしょうか。そして、ILCで同じようなことが起きる可能性はあるのか、ないのか。続きは次回へ。
(中東重雄・奥州宇宙遊学館館長)

写真=テキサス州にあるSSCの関連施設の建物跡。現在は民間企業が使用しているそうです(Wikipediaより)

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