人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市東部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)
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tanko 2017-10-5 10:30
 今年のノーベル物理学賞受賞者が日本時間の3日夜発表され、重力波観測に世界で初めて成功した研究施設「LIGO(ライゴ)」の立ち上げや運営に貢献した米国の3人に授与される。このうちの一人、カリフォルニア工科大学名誉教授のバリー・バリッシュ氏(81)は、北上山地が有力候補地となっている素粒子実験施設「国際リニアコライダー(ILC)」の設計チームで最高責任者を務めた人物。2012(平成24)年1月には本県を訪れ候補地を視察している。バリッシュ氏の受賞に、ILC誘致関係者も喜びを表している。
(児玉直人)

 受賞したのはバリッシュ氏のほか、マサチューセッツ工科大学名誉教授のレイナー・ワイス氏(85)、カリフォルニア工科大学名誉教授のキップ・ソーン氏(77)。3氏が携わったLIGO(レーザー干渉計型重力波研究所)は、重力波観測のために米国西部のワシントン州と南部のルイジアナ州に建設された大規模な観測施設だ。
 重力波は質量を持った物体が動いた際、周囲の空間や時間に生じた「ゆがみ」がさざ波のように伝わる現象。理論上は人間が動いているときも生じるが、あまりにも微小な現象のため直接観測は困難とされていた。
 LIGOは、二つのブラックホールが合体する過程で生じた重力波を世界で初めて捉えた。昨年2月、その成果が発表された。
 ネブラスカ州出身のバリッシュ氏は、LIGOの研究責任者などを歴任。国際的なプロジェクトに育て上げたことなどが認められ、今回の受賞となった。
 バリッシュ氏はILC計画にも関与。技術設計報告書(TDR=Technical Design Report)をまとめ上げる国際共同設計チームの最高責任者を務め、計画実現に向けた作業をリードした。2012年1月には、国内外の研究者とともに一関市や江刺区の北上山地を視察している。
 視察時、報道陣の取材に応じたバリッシュ氏は「ILCは数十年にわたり世界の中心的な研究施設になる」と強調。「地域の人たちの熱意など、受け入れる側の姿勢も大きな鍵。研究者の家族のための環境整備などもその中に含まれてくるだろう」と述べた。
 バリッシュ氏の受賞に喜びの声を上げているのは、ILC実現に向け活動し続けている東北大学大学院の山本均教授(62)。京都大学卒業後、カリフォルニア工科大学大学院に留学中、バリッシュ氏のもとで博士号を取得した。
 山本教授によると、バリッシュ氏はTDR完成翌年の2013年からは、再び重力波研究に集中。昨年の検出発表、そして今回の受賞につながったという。
 “師匠”であるバリッシュ氏の受賞に「喜びの限り」と山本教授。「ILCにとっても素晴らしいニュース。ノーベル賞受賞者が『次にやらなければならないのはこれだ』と、身を投じて推進した計画がILCだということになる」とアピールした。

写真=2012年1月18日に北上山地を視察し、報道陣の質問に応じたバリー・バリッシュ氏(一関市大東町内で)

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