人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市東部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)
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tanko 2017-9-28 14:57
 「アジア初の本格的国際研究施設」「4.3兆円にも及ぶ経済誘発額」――。北上山地が最有力候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)計画は、地方創生や教育の充実、国際化など、オリンピック以上の波及効果も秘めている大型プロジェクト。ところが、国内外の現状に目を向ければ、北朝鮮を巡る情勢や突如浮上した衆議院の解散総選挙の話題などで持ち切りだ。ILC計画が世論の表舞台に出にくい状況の中、研究者やILC関係者は地道な広報普及活動を続けている。
(児玉直人)

 盛岡市内のホテルで27日開かれた、県ILC推進協議会の公開講演会。ILC誘致の現状と地方創生について解説した東京大学の山下了特任教授に続き、岩手大学理工学部の成田晋也教授が「東北ILC準備室の活動について」と題し講演した。成田教授は同準備室(室長・鈴木厚人岩手県立大学長)の広報部門を担当している。
 成田教授は「ILCを受け入れるための取り組みは地域の皆さんと一体となって進めなければいけない。そのためにもILCをもっともっと知ってもらう必要がある」と述べ、地域関係者の協力を求めた。
 ILCを知ってもらうため、関係者はさまざまな切り口で周知活動を展開。講演会や出前授業に加え、キャラクターを用いてより多くの人たちの興味を引き出そうともしている。同日の講演会場入り口でも、ハローキティが描かれたTシャツやクリアファイルなどの「ILCグッズ」を販売。ただ、聴講者の多くは行政や経済界の代表者や職員で、既に過去の講演会やイベントなどでグッズを目にしているため、足を止める人は少なかった。
 「ここ1年以内が政府判断に向けた正念場」との認識が強まっているが、昨今は北朝鮮情勢の緊迫化、解散総選挙とそれを巡る政治的駆け引きなどの報道で持ち切り。さまざまなメリットを持ち合わせていながらも、世論の表舞台にILCが出てくる機会は少ないのが現実だ。成田教授は胆江日日新聞の取材に「まだまだPRが足りない部分はある。どうしても目先の大きな話題に世の中の注目は集まりがちだが、地道に理解普及の活動を進めていかなければ」と気を引き締める。
 北朝鮮関係の問題には、別の懸念要素もある。山下教授は取材に対し、北朝鮮の軍事的挑発に不安を感じているフランスが来年2月に韓国・平昌で開催される冬季五輪に参加しない可能性を示唆しているとの報道を取り上げ、「このようなことが科学の分野にまで及んでしまったら大変」と指摘。その上で「北朝鮮問題などが注目されているからといって、政府や政界がそればかりに傾注しているわけではない。実際にILCについても本当にいろいろと考えていただいている」とも述べた。

写真=県ILC推進協講演会場入り口に設けられた、ILCグッズの販売コーナー
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tanko 2017-9-28 14:30
 素粒子物理学の国際研究施設、国際リニアコライダー(ILC)の誘致実現に向けた取り組みの最前線に立つ東京大学の山下了特任教授(51)は27日、盛岡市内で講演。施設を段階的に建設し初期コストを抑える「ステージング」について、11月にカナダで開かれる国際将来加速器委員会(ICFA)で正式承認を得る見込みであることを示した。当初の研究スケジュールや得られる成果に時間差が生じてしまうものの、山下教授は講演後の胆江日日新聞社の取材に対し、「研究者にとっては苦渋の判断だが、確実に狙えるところから実施したほうが結果的には最速だと思う」と述べた。


 講演会は岩手県ILC推進協議会(会長・谷村邦久岩手県商工会議所連合会長)が主催。誘致を推進している行政や経済・産業界の関係者ら約200人が出席した。
 ステージングは、昨年12月に盛岡市を主会場に開催された国際会議「リニアコライダー・ワークショップ(LCWS)2016」の会期中、国際研究者組織「リニアコライダー・コラボレーション(LCC)」によって提案された。当初計画では、直線距離30kmの加速器用トンネルを掘る予定だったが、20kmに短縮することで初期コストを抑制。実験成果や関係装置の技術進歩の状況を見ながら段階的に施設規模を拡大していく考え方だ。文部科学省のILC有識者会議や日本学術会議などの議論でたびたび指摘されていた莫大な建設・運営コストによる他研究分野予算への影響、人材確保などの問題解消を狙う。
 当初は、8月に中国の広州市で開催されたICFAとリニアコライダー国際推進委員会(LCB)との合同会議の場で承認されるとの見通しがあった。しかし、山下教授によるとLCC側の資料整理が間に合わなかった。ステージング自体は「支持」されたものの、正式決定はカナダでのICFA会合に持ち越されることになったという。
 山下教授は本紙取材に「研究者としては一度に複数の成果を得たいところ。ステージングを議論する過程でも異を唱える声はあった」と明かした。しかし、このままコストなどの諸課題が解決せず、時間だけが経過すると、来年夏以降にも予定されている欧州や米国の科学計画の策定にILCが盛り込まれない可能性が出てくる。国際協力が得らなくなることを意味し、日本やアジアにとって大きなチャンスとなるはずのプロジェクトが立ち消えになる恐れがある。さらに、中国では独自に大型の円形加速器を建設する計画が浮上している。
 山下教授は「貴重な財源を使う上からも、できる限りコストがかからず、かつ将来的な拡張性を担保した方針がステージング。研究者にとっては苦渋の選択だが、さまざまな状況を踏まえると、結果的には最速の手段だと思う」と説明。全体的なタイムラグは生じるものの、「その間に技術が向上して、拡張時にはよりレベルの高い装置を導入することも可能だ」と強調する。

写真=ILC計画を巡る現状を語る東京大学の山下了特任教授
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tanko 2017-9-18 13:20
 国際リニアコライダー(ILC)の誘致に、奥州市が着ぐるみキャラクターを用意したという。せっかく作ったところに水を差すようだが、正直、違和感を覚えた。
 子どもたちが野球やサッカーなどに興味を持ち、自らも挑戦するのはなぜだろう。おそらく、プロ選手たちの勝負に挑む姿などに憧れ、自分を重ねているのではないだろうか。スポーツの本質が、子どもたちの心をつかんでいる。球団のマスコットキャラクターを見て「僕も野球をやる!」という子は、極めて珍しいはずだ。
 「科学は難しい。だから、親しみあるキャラクターで関心を引かせよう――」はどこか安易すぎる。ILCや科学、つまり「本質」で勝負してほしい。激励の意味を込めて。
(児玉直人)
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tanko 2017-9-17 16:20

 小沢昌記奥州市長の定例会見が開かれた15日の市役所本庁応接室に、「おうしゅうヒッグスくん」が姿を現し、会場を一瞬のうちに和ませた。国際リニアコライダー(ILC)実現に向けたPR活動に力を入れていくといい、愛嬌を振りまきながら記者たちに名刺を差し出してアピールした。
 素粒子の「ヒッグス粒子」は、2012(平成24)年にスイスの欧州合同原子核研究機構(CERN)で発見。おうしゅうヒッグスくんは、自分のルーツを探るILC計画が進行中と聞きつけて市にやって来たという。全身は鮮やかな青色でつやつやしているが、年齢は138億歳(推定)。市内での“初発見”は8月5日の水沢ざっつぁかまつりで、市職員の踊りの隊列に加わっていた。
 おうしゅうヒッグスくんから厚い信頼を受ける市ILC推進室の千田良和室長は「市民の皆さんにILCへの親近感や愛着をより強く持っていただき、ILC実現の機運を醸成したい」と話す。今後、学校の出前授業や各種イベントなどに派遣する予定だ。
 同室によると、同種のヒッグスくんは国内外で数体発見されており、きょうだいの可能性がある。県内では一関市にもいるらしい。

写真=ILC応援団長(自称)のおうしゅうヒッグスくん

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