人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市東部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)
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tanko 2017-8-25 14:50

 岩手県商工会議所連合会(会長・谷村邦久盛岡商工会議所会頭)は24日、奥州市水沢区東町の水沢グランドホテルで会頭・副会頭会議を開き、県知事や中央省庁への本年度要望5項目を取りまとめた。国際リニアコライダー(ILC)の国内誘致方針の早期決定を求める内容も盛り込まれた。
 県内9商議所の約50人が出席。あいさつで谷村会頭は、今月9日に中国広州市で開かれた国際将来加速器委員会(ICFA)で、当初計画よりも小さな規模からILCを段階的に整備、運用していく「ステージング」が支持されたことに触れ、「政府の早い決断を促す材料になる」と実現への期待を寄せた。
 本年度要望は▽復興・創生に向けた予算措置とインフラ整備の促進▽復興の先を見据えた産業支援▽中小企業の経営再建・さらなる自立に向けて▽主要プロジェクト等への対応▽2016(平成28)年台風10号災害からの復旧・復興――。
 ILCを巡っては、政府が国内誘致の是非を判断するまでのプロセスを具体的に示すよう要望する。資金分担などの国際調整を進め、国内誘致の方針を早期に決定するよう求める。
 インフラ整備では復興道路や復興支援道路の早期完成、産業振興につながる社会資本整備を要望する。具体項目には国道4号水沢東バイパスの早期完成、金ケ崎区間4車線化も盛り込まれた。
 中小企業の競争力強化や活性化への補助金制度の継続や、補助上限引き上げの必要性を訴えるほか、地域経済活動に密着した商工会議所への支援も求める。
 県知事要望は9月12日、中央省庁と県選出国会議員への要望は同20日を予定している。

写真=県知事、中央省庁への要望項目を了承した県内商工会議所会頭・副会頭会議
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tanko 2017-8-24 14:40
 素粒子物理学の国際研究施設「国際リニアコライダー」(ILC)の建設候補地に、北上山地が選ばれてから4年が経過。この間、まちづくりビジョンの策定やILC関連産業への参入セミナー開催、多文化共生社会形成に向けた事業など、多岐にわたる取り組みが進められてきた。ここ1年が誘致実現に向けた正念場と位置付けられているが、重要な協議は国際研究者組織や文部科学省の有識者会議の場で行われている。これら議論の舞台に直接参加ができない奥州市など地元自治体や地域の誘致関係者は、出前授業やPR活動などを地道に進めながら推移を見守っている状況だ。
(児玉直人)

 ILCは、物質の成り立ちや宇宙誕生の謎に迫るため、世界で唯一建設する国際研究施設。これまで示されているスケジュールから推定すると、2020年代後半から2030年代前半の運用開始が見込まれる。
 日本の研究者らによる「ILC立地評価会議」は、2013(平成25)年8月23日、北上山地を国内候補地とする評価結果を公表。政府機関ではなく「研究者による判断」ではあるが、事実上、世界でただ一つの候補地に選ばれた。
 現在、文科省のILCに関する有識者会議が、日本誘致を実現する上で解決すべき諸課題を検証している。
 研究者界では、今月9日に中国の広州市で開かれた国際将来加速器委員会(ICFA)とリニアコライダー国際推進委員会(LCB)の会議で、当初計画よりも小さな規模から段階的に整備、運用していく「ステージング」について協議した。
 本県や東北の誘致関係者らの間では、広州市での会議をもってステージングが承認されると見込んでいた。ところが実際には「支持」の段階で、11月にカナダで開かれるICFAの会合で正式表明する流れになった。
 このため、今月中に予定していた東北ILC準備室による地元受け入れ態勢の方針や、岩手県ILC推進協議会によるILC経済波及効果の公表は、11月のICFA会合後になる見通しとなった。両団体の担当者は「ステージングで示される中身は、協議してきた内容とどうしても結びつきがある。正式な承認を待ってからにしたい」と口をそろえる。
 文科省の有識者会議も、ステージングの正式表明を待ち、次の動きを取るという。同会議事務局を務める文科省素粒子・原子核研究推進室の担当者は、「今までの検証や議論の前提となっていた条件が変わるかもしれない。今後の協議の方向性や次の会議の日程を決めるにも、11月のICFAの結果を受けてからでないと判断できない」としている。
 ILC計画を巡る核心部分の動きは、海外や中央を舞台に行われており、候補地の地元自治体や誘致団体はその推移を見守るしかないが、PR活動など可能な範囲での取り組みに力を注ぐ。東北ILC推進協などは、9月に横浜市内で開かれる真空技術分野のビジネスイベント「真空展」会場内にPRブースを設置。特別講演も予定している。
 奥州市でも、出前授業やイベント会場でのPRを通じたILCの普及啓発を引き続き実施。ILC推進室の千田良和室長は「地元としてできることをしっかり進めながら、国や研究者界の動きを見ていきたい」と話している。

写真=奥州市役所本庁に掲げられたILC誘致実現を呼び掛ける横断幕。北上山地が事実上「世界唯一の候補地」に選ばれてから4年が経過した
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tanko 2017-8-13 10:30
 幼いころ、父親に連れられ北上川に架かる藤橋の近くで満天の星空を眺めていた。「こうした体験の影響も少なからずあって、宇宙や自然科学に興味を持つようになった」。
 きれいな星空に加え、国立天文台水沢VLBI観測所も身近にある。宇宙大好き少年が育つには申し分のない環境だ。
 小学生の時は宇宙少年団水沢Z分団で活動。中学時代は市の科学研修で茨城県つくば市を訪問した。一関高専1年生だった5年前は、同観測所の電波望遠鏡を使い、天体観測を体験する「Z星研究調査隊」に参加。新天体を発見する貴重な経験もした。「星の動きを知るには物理を学ばなければ」と思い立ち、今年4月、東京理科大学理学部物理学科の3年生に編入学した。
 大学に通い始めた直後、書店で巨大ブラックホールに関する一冊の本を何げなく手にした。「面白い本だなあ。一体誰が書いたんだろう……」。筆者のプロフィルを見たのは、一通り読み終わってからだった。
 〈現在、国立天文台水沢VLBI観測所教授〉
 「マジかっ!」。なじみある観測所の名前が目に飛び込んできて思わず驚いた。筆者は同観測所長でもある本間希樹氏。「本間先生の研究に触れるにはどうしたらいいか」。いろいろ探して見つけたのが、水沢観測所も実施会場となる総合研究大学院大学のサマースチューデントプログラムだった。
 今月30日まで郷里に滞在。期間中、かつて参加した「Z星」も開催され、高校生たちに5年前の自分の姿を重ねた。「この中から、研究者が出てくれたら」と期待する。
 理論物理学者を目指しているといい、やはり気になるのが、北上山地への誘致が期待されている国際リニアコライダー(ILC)。ILCは素粒子物理学の研究施設だが「決して素粒子の世界だけにとどまらず、天文学などあらゆる分野に結びついていると思う。『自分はこれだけやればいい』というようではいけない」と、垣根にとらわれない幅広い視点を持つことの大切さを強調する。
 「宇宙のこともやりたいし、ILCが実現したらそっちも携わってみたい」と胸の内を明かしながら、生まれ育った奥州の地で研究活動ができる日が来ることを夢見る。「ご当地アイドルならぬ“ご当地物理学者”になってみたい」
(児玉直人)

 星空を見て育っただけに「明るすぎる東京の夜空は、ちょっとストレス」。今月19日に、同天文台で開催される「いわて銀河フェスタ」でも会場案内などに携わるという。「関係者だけで盛り上がるのではなく、一般市民の皆さんが気軽に訪れ、自然科学の世界を楽しむ雰囲気はとてもいい。同期の仲間にも見てもらいたい」と語る。実家は水沢区姉体町字水ノ口前。
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tanko 2017-8-9 10:20
 国立天文台(本部・東京都三鷹市、林正彦台長)が、水沢区星ガ丘町の同天文台水沢キャンパス敷地内に設置しているスーパーコンピューター(スパコン)「アテルイ」は、機器更新に伴い本年度で運用終了となる。19日に同キャンパスで開かれる「いわて銀河フェスタ2017」は、一般市民がアテルイの姿を見られる最後のチャンス。後継のスパコンは引き続き水沢に設置されるが、愛称は未定という。
(児玉直人)


 スパコン「アテルイ」は1秒間に約1000兆回の足し算や掛け算をするくらいの処理能力があり、天文学専用としては世界最速。これまでの観測成果や物理学の理論などを反映させながら、さまざまな天文現象の解明に貢献している。
 かつては三鷹の同天文台本部に設置されていたが、リスク分散や機器冷却コストを踏まえ、2013(平成25)年度から同天文台最北の施設である水沢キャンパスに移設。古代東北の英雄「アテルイ」にあやかった愛称も付けられた。
 数多くの成果を挙げてきた「アテルイ」だが、機械更新による“引退”の時期が迫ってきた。管理・運営を担当する同天文台シミュレーションンプロジェクトの広報担当者は「現在の機材での運用は本年度で終了するが、来年度はまた新しい機材を水沢キャンパスに導入する予定だ」と説明。愛称については未定という。
 19日に開催の銀河フェスタでは午前と午後合わせて13回の見学機会を設ける。所要時間は1回15分。当日午前9時45分から整理券を配布するが、見学時間を選ぶことはできない。1回当たり定員は10人。詳しくは同プロジェクトのホームページ
http://www.cfca.nao.ac.jp/pr/20170819
を参照。


ILCの関連企画も(19日の「銀河フェスタ」)

 「いわて銀河フェスタ2017」は19日午前10時から、国立天文台水沢キャンパスで開かれる。開場は同9時半で、キャンパス敷地内に駐車場が設けられる。
 同天文台水沢VLBI観測所や奥州市、NPO法人イーハトーブ宇宙実践センターで組織する実行委員会が主催。胆江日日新聞社などが後援する。
 特別講演会は3人が登壇。このうち午前11時からは同観測所の本間希樹所長が巨大ブラックホールの最新研究について紹介する。
 スパコン「アテルイ」や20m電波望遠鏡など一部の施設見学、体験には整理券が必要となる。午後7時からは星空観察を行う(荒天中止)。
 県南広域振興局主催の小学生向けサイエンス教室「国際リニアコライダー(ILC)って何?」も同時開催。同1時半からILCに関する紙芝居の上演や実験などを予定。定員は20人で、希望者は9日までに申し込む。
 銀河フェスに関する問い合わせは、奥州宇宙遊学館(電話0197・24・2020)。サイエンス教室申し込みは、同振興局企画推進課(電話0197
・22・2812)へ。

機器更新のため本年度で運用終了する天文学専用スパコン「アテルイ」
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tanko 2017-8-8 10:10

 早稲田大学公共経営大学院のフィールドワーク(夏季集中講座)が奥州市内で繰り広げられている。奥州市の行政課題の調査・研究に毎年取り組んでおり、今回のテーマは「奥州市に縁がある人物とのコラボレーションによる市のPR戦略」。院生らが各種調査や資料収集・分析を進め、10日に政策提言する予定だ。
 奥州市が調査・研究に協力し8年目。奥州市にとっては政策への提言を得られるほか、公共経営が専門の大学教授や全国から集まる院生との情報交換の機会になっている。
 今年は院生7人と教員が6〜10日の5日間の日程で奥州入り。市職員2人も加えテーマを追究する。
 開講式が7日、奥州市役所本庁で行われた。小沢昌記市長は講義で、「仲間と一つの目標に向かって知恵を寄せ合い、解決策を見いだすトレーニングは、今後の活動のための重要な経験になる」と院生らを励ました。
 本年度を「奥州アピール」の年と位置付け、初開催した「いわて奥州きらめきマラソン」と「カヌージャパンカップ」、「台湾をターゲットとした観光戦略」などで市の名を発信。市を含む北上山地が国内建設候補地とされている国際リニアコライダー(ILC)についても紹介した。
 院生らの「政策提言発表会」は、市役所本庁講堂で10日午後1時半から開かれる。

写真=市長の講義に耳を傾ける早稲田大学公共経営大学院の院生ら

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