人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市東部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)
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tanko 2017-5-31 15:00
 北上山地が最有力候補地となっている素粒子研究施設・国際リニアコライダー(ILC)について理解を深める奥州市主催「中学校ILC出前授業」は30日、市立前沢中学校(菊地卓哉校長、生徒356人)で開かれた。中学校2年生を対象にした同授業は本年度、同校を皮切りに12月までの間、1021人が受講する予定だ。
 ILC計画が政府で正式決定され、スケジュールが順調に進んだ場合、おおむね15年後には研究施設が完成する見通し。奥州市ILC推進室では、そのころに地域社会の中核を担っているであろう中学2年生を対象とした出前授業を2014(平成26)年度から実施している。前年度までに3314人が受講している。
 同推進室では、奥州市内小学校高学年向けの出前授業も学校側の希望に応じて実施。小学生向けは同推進室職員が対応している。一方、中学生向けは、NPO法人イーハトーブ宇宙実践センターに授業の実施を委託。学校教諭やエンジニアとして活躍した人たちが講師を務めており、理数に関する基礎的な知識のほか、ILCがもたらす多様な波及効果にも触れてもらい、将来の進路や職業選択の参考となる内容になっている。
 本年度最初の出前授業会場となった前沢中では、4クラスを2クラスずつ午前と午後に分けて実施。午前中は1、2組の生徒が受講した。
 元高校教諭の高梨拓さんは、宇宙誕生時に起きたとされる大爆発「ビッグバン」や、それらを裏付けるさまざまな理論について解説。引き続き、工学博士の中東重雄さんがILCの仕組みや波及効果について説明した。
 農業実践者でもある中東さんは、ILCの研究には直接関係がない農林業について「研究者やその家族が長期間にわたり滞在する。そうした人たちに喜んで食べてもらう食材を考えるなど、非常に重要な役割を担う仕事だ」とアピール。このほか放射線や自然環境に関する影響の有無にも触れ、安全対策などに関する正しい知識を持ってもらった。
 授業を聞いた尾形玲奈さん(13)は「宇宙には自分の知らなかった不思議なことがたくさんあることを知った。ILCの仕組みについても理解できた」。那須川侑也君(13)も「ILC計画に自分たちも参加できるかもしれないと感じた。今日聞いたこと、感じたことを家族とも話し合ってみたい」と声を弾ませた。
 宇宙実践センターの大江昌嗣理事長は「専門的な部分はどうしても難しいので、今すぐ理解できなくても、将来的に何かの形で思い出してもらえたら」と話していた。

写真=宇宙の誕生やILCについて学習する前沢中の2年生たち
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tanko 2017-5-26 9:40
 県立水沢高校(立花起一校長、生徒715人)は24日、在札幌米国総領事館職員を講師に迎えた英語講演会を開き、2年生243人が国際語としての英語の役割や文化の違いなどを学びながら視野を広げた。
 文部科学省指定のスーパーサイエンスハイスクール(SSH)事業の一環。同総領事館広報文化交流担当領事のハービー・ビーズリーさんが「グローバル人材をめざすには」と題し、自身の日本でのホームステイ体験なども交え英語で講演した。
 世界銀行で働く日本人の友人の言葉を紹介し、「次のステップのための機会はいつ訪れるか分からない。それは目の前を通る電車のようなもので、準備が事前にできていなければ飛び乗ることはできない」と強調。「海外を知るだけでなく、自国の文化を知るのも大切」などと話す日本人の米国留学経験者のインタビュー映像も上映した。講演後、生徒たちは英語を活用して積極的に質問した。

写真=「皆さんも仕事で関わることになるかもしれない」と国際リニアコライダー(ILC)実現も期待し講演するハービー・ビーズリーさん
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tanko 2017-5-25 9:30
 北上山地が有力候補地の素粒子実験施設「国際リニアコライダー(ILC)」への地元企業参入を促進する、ILC技術セミナーが24日、奥州市水沢区佐倉河の市文化会館(Zホール)で開かれた。胆江地区では初の開催。ILCを建設し、運用する上で必要な技術について、参加者は自社の技術と照らし合わせながら情報を収集した。

 東北ILC準備室(室長・鈴木厚人県立大学長)と、いわて加速器関連産業研究会(会長・藤代博之岩手大理工学部教授)が主催。岩手県や奥州市などが共催した。会場のZホール展示室には、製造系企業の関係者ら90人余りが詰め掛けた。
 同セミナーは昨年度まで一関市や北上市、滝沢市で開催。5回目となる今回は、初めて胆江地区での開催となった。
 冒頭、県の大平尚企画理事は「加速器装置を段階的に拡張することで、初期投資コストを抑制するアイデアが示された。日米の担当者レベルの議論が始まっているほか、ヨーロッパでは次期加速器研究計画の検討に入ろうとしており、そこにILCを書き込むかどうかという状況。総じてまさに今年が正念場。実現を見据え、加速器空洞の製造に限らず多様な技術が必要で、ぜひ多くの方々に参加してほしい」とあいさつした。
 同日は、ILCの最重要部品となる加速器空洞の内部を研磨する技術と、空洞を組み立てる際などにほこりの侵入を防ぐために必要な「クリーンルーム」の技術について取り上げた。ILCの国内研究母体となっている茨城県つくば市の高エネルギー加速器研究機構(KEK)の専門家2人が講演したほか、岩手県立大客員教授も務めるKEKの早野仁司教授が概要を解説した。
 電子や陽電子がほぼ光の速さで駆け抜ける加速器空洞は、溶接面の段差や突起を無くすため、電解研磨の技法で内部表面を滑らかに仕上げていく。さらに、空洞内部にほこりが入らないよう、空洞の取り付けや接続作業はクリーンルームで行われるという。
 早野教授は「連結前に接続面をふさいでいたカバーのねじを外す場面も含め、クリーンルーム内で行われる作業は細心の注意が必要。加速器を組み立てる工程の中では、クリーンルームの重要度は非常に大きい」と強調した。

写真=ILCの建設や運用を支える上で欠かせない技術や設備に関する説明に耳を傾けるセミナー参加者たち
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tanko 2017-5-23 11:50
 米カリフォルニア州の素粒子物理学研究施設などを訪問した県立水沢高校(立花起一校長)の理数科3年生11人は22日、研修成果を市内の国際リニアコライダー(ILC)誘致関係者らの前で報告した。生徒たちは海外の国際的な研究施設の視察で感じたことと、ILC誘致の動きを関連付けながら「候補地の地元として、地域住民に正しい理解をしてもらうことが必要」と強調。ILCと自分たちの暮らしとの関係性をより多くの人たちが考えることが、実現に向けて機運が高まると述べた。

 研修報告は、江刺区大通りの市江刺生涯学習センターで開かれた、市ILC推進連絡協議会総会に合わせて開催。研修に参加した織田耀大さん、小野寺菜々子さん、金子瞬さん、菅野純大さん、菊池萌々さん、後藤朋華さん、高橋恵さん、千葉萌々香さん、千葉めぐみさん、羽生田愛瑠さん、本庄真宙さんが訪問先での様子を紹介した。
 当時2年生だった11人は、韓国の仁川空港経由でサンフランシスコ入り。ILCと同様に素粒子物理に関して研究している「SLAC(スラック)国立加速器研究所」や、カリフォルニア工科大学などで研修した。SLACの様子については「日本人研究者もいたが、自分の研究への誇りと愛着心が大きく、表情が生き生きとしていた。さまざまな国の人たちが研究に携わっており、国籍の壁を感じなかった」とした。
 SLACで感じたことを踏まえ、ILC誘致に向けた見解も。「ILCが実現すれば各国の研修者たちが地域に定住し、文化面の交流も期待できる。地域活性化などにもつながるだろう」と期待を寄せた。その上で「(ILC候補地の)地元住民の理解が必要。理数系や科学に関心がある人でも難しい内容だと思うので、一般の皆さんは不安や疑問を感じるかもしれない。研修で得たことを基に、私たちが正しい情報を発信できたら」と述べた。
 住民向けの情報発信に関し、聴講者からは具体的な考えを尋ねる質問も。生徒の一人は「(加速器は)放射線が出る装置なので、福島第一原発のようにならないか、大丈夫なのかという思いもあるだろう。研究内容とともに、正しく伝えることができたら」と話していた。

写真=米国研修の成果やILC誘致に対する考えを述べた水沢高校理数科の生徒たち
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tanko 2017-5-22 12:00
 奥州市内三大マラソンを統合し新設された「いわて奥州きらめきマラソン」は21日、前沢区の前沢いきいきスポーツセンターを発着点とする日本陸上競技連盟公認コースで行われた。目玉のフルマラソン(42.195km)を含む3部門に、全国各地や台湾から4034人(エントリーは4701人)が出場。強い日差しに大粒の汗を流しながら、炎天下の奥州路を激走した。この日は今年初めて最高気温が30度を上回る「真夏日」に。ランナーにとって厳しい暑さとなったが、沿道の大きな声援を力にゴールを目指した。

 開会式で、同マラソン実行委員会実行委員長を務める小沢昌記市長は「フルマラソン参加者のみの特典だが、北上川に架かる桜木橋の進行方向右手に、雪が残る焼石連峰が大変きれいに見える。ぜひ橋の上から奥州の山並みなども楽しみ、完走していただければ。きょう一日大いに楽しんで」とあいさつ。
 ゲストランナーの那須川瑞穂さん(37)=水沢区真城出身=も「記念の大会で地元に帰ってくることができうれしい。笑顔でゴールできるよう、皆さんと一緒に頑張りたい」と呼び掛け、国内外から集結したランナー一人一人の健闘を祈った。
 地元胆江地方はもとより、全国各地から多くのランナーが参戦。炎天下のレースに苦戦しながらも、自己ベスト更新を目指した。海外からは台湾のマラソン愛好家たち16人が出場し、完走した。
 台湾のランナーたちは全員、日本各地のレースに出場した経験はあるが、本県で開かれるマラソン大会出場は今回が初めて。「奥州市初のフルマラソン大会を盛り上げたい」という思いと「地方の観光を楽しみたい」との期待から参加。大会前日は宮城県の松島を観光したという。
 いずれも健脚ぞろいで、フルマラソンに13人、10kmに3人がエントリー。フルの部に出場した台中市出身の陳傅男さん(63)は、「10kmぐらいまでは風があって涼しく感じたが、時間が経過するにつれてずっと太陽に照らされ暑かった」と炎天下のレースを振り返った。「岩手は初めて来た。前沢牛を食べるのも目的で来たので、夕食は前沢牛をおなかいっぱいになるまで食べたい」と笑顔を広げた。
 林煥超さん(52)は、はだしでフルマラソンを完走。「マラソンはいつもはだしで走っているけれど、さすがに暑くて大変だった。奥州のコースは田園風景が広がってのどかで奇麗だった」と充実の表情を浮かべた。
 台湾ランナーたちは、ゲストランナーの那須川瑞穂さんと記念撮影をしたり、出店の料理を味わったりと奥州のマラソン大会を満喫していた。
 炎天下、地元や県外から参加した選手たちも健闘した。3kmの部親子ペアで1位に輝いた宮城県七ケ浜町の加藤昇さん(37)嬉来さん(8)親子は、「いさわ焼石マラソン時代に2度出たことがあり、今回新たな第1回大会とあって出場を決めた。平たんなコースで走りやすく、とても楽しめた」と笑顔で大粒の汗を拭った。
 奥州市江刺区岩谷堂の看護師伊藤直樹さん(40)は、10年ぶりに出場したフルで見事完走。「仕事の合間にランニングを重ね、1年がかりで練習してきた。10年前よりもさらにタイムが縮まり、年齢に負けず頑張れるものだとうれしくなった」とにっこり。「沿道からの拍手や声援が背中を押してくれて最後まで走り切れた。地域一丸となったいい大会。心地よくゴールできた」と振り返りながら「ぜひ来年も出たい」と意欲を新たにしていた。
 広島大学大学院教授の栗木雅夫さん(49)は、国際リニアコライダー(ILC)誘致に携わる第一線の研究者ながら、各地のマラソン大会に参加するアスリートの一面も。ILC建設候補地近くの大会に「コースは予想通り高低差が少なく、走りやすかった」と話していた。

写真=一斉にスタートを切るフルマラソンの部。青空の下、ランナーの長い列がコースを埋めた
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tanko 2017-5-19 11:50
 江刺工業団地企業誘致推進委員会(会長・小沢昌記市長)は本年度、自動車関連企業を重点に誘致に取り組む。江刺フロンティアパーク=奥州市江刺区岩谷堂=は残り13区画9.1ha(分譲率58.58%)まで分譲が進んでおり、関係機関の連携による情報発信や企業訪問などで立地につなげる方針だ。
 自動車や半導体製造装置の関連企業を中心に動きが活発化し、2016(平成28)年度の市内企業立地は好調に推移した。同パークと同区愛宕地内の空き物件に計2社が新規立地。既存企業の事業拡大を合わせた同パークの分譲(賃貸含む)は4件と前年度ゼロから飛躍した。市内9工業団地のうち、現在分譲されているのは同パークのみ。
 同推進委は、市や県、中小企業基盤整備機構、金融機関や奥州商工会議所などで構成。本年度総会が17日、江刺区のホテルニュー江刺新館イーズで開かれ、事業計画などを決めた。
 本年度は、東北で集積が加速する自動車関連企業を誘致の主なターゲットに設定。首都圏のほか、自動車関連企業が集積する愛知県豊田市など三河地区を対象に各種情報誌掲載といった広報活動に取り組む。
 関係機関との連携による情報収集、既立地企業の本社・親会社などに対するフォローアップ活動も継続する。市主催「おうしゅう首都圏産業交流会」(東京都、10月)など各種イベントの開催・参加も予定。企業の設備投資動向の調査のほか、国際リニアコライダー(ILC)誘致実現に備え、加速器関連産業誘致に向けた情報収集なども計画に盛り込んだ。

写真=本年度事業計画などを決めた江刺工業団地企業誘致推進委員会
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tanko 2017-5-13 10:00
 東北ILC準備室(室長・鈴木厚人県立大学長)と、いわて加速器関連産業研究会(会長・藤代博之岩手大理工学部教授)が主催する本年度第1回「ILC技術セミナー」は、24日午後1時半から奥州市水沢区佐倉河の奥州市文化会館(Zホール)で開かれる。加速器空洞の電解研磨や組み立て場所となるクリーンルームなど、加速器装置を支える周辺設備とその技術を中心に解説する。加速器関連産業やILCに関係したものづくりに興味のある企業関係者らを対象に参加を呼び掛けている。聴講無料だが、終了後の交流会は会費制(4500円)となる。

 素粒子研究施設ILC(国際リニアコライダー)誘致を見据え、地元企業の加速器関連産業参入を促進する目的で昨年度に引き続き開催する。盛岡市や一関市、北上市を会場に実施していたが、奥州市では今回が初めて。
 当日はILCに関する基本情報について、高エネルギー加速器研究機構(KEK)の早野仁司教授が紹介。続いて、KEK特別技術専門職の沢辺元明氏が加速器空洞内の電解研磨技術、KEKの阪井寛志准教授がクリーンルーム技術についてそれぞれ講演する。
 ILCの心臓部とも言える加速器空洞は、ほぼ光の速さの状態で電子や陽電子の粒子が加速する蛇腹状の筒。ニオブと呼ばれる希少金属を使い、超電導状態にして粒子を加速させるが、内部にわずかな突起やほこりがあると実験に支障を来す。電解液を用いて微細な突起を取り除く電解研磨のほか、「クリーンルーム」で加速器を組み立てることで、内部にほこりが入るのを防いでいる。
 加速器本体や衝突現象を捉える検出器など、メーンとなる装置に注目が集まりがちだが、加速器の運転や建設、メンテナンスにも多様な技術が必要。地元企業がそれぞれに得意とする分野をILCに注ぎ込む狙いもあることから、これまでセミナーやILC関係の講演などに参加したことがなかった企業も含め、多くの聴講を呼び掛けている。
 定員は100人。申し込み、問い合わせは19日までに公益財団法人いわて産業振興センターものづくり振興部(電話019・631・3825、電子メール
kenkyu@joho-iwate.or.jp
)へ。

資料写真=クリーンルーム内で行われるILC加速器空洞の組み立て作業(茨城県つくば市のKEK)
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tanko 2017-5-13 9:50
 奥州市内小学生を対象にした素粒子研究施設「国際リニアコライダー(ILC)」の本年度出前授業が12日、奥州市江刺区の市立大田代小学校(高橋正好校長、児童16人)を皮切りに始まった。児童たちは、身近な地域が候補地になっている国際的ビッグプロジェクトに触れながら、ILC誘致実現後の地域の姿や自分たちの将来について想像をめぐらせた。

 奥州市ILC推進室が2015(平成27)年度から取り組む事業。希望のあった小学校に職員が出向き、ILC実現後の地域社会の一翼を担う子どもたちに、計画の目的や研究内容、実現後の地域イメージなどを伝えている。これまでに1097人の小学生が受講しており、本年度は同校を含め12校の5、6年生584人が受講を予定する。
 同日は、同推進室の渡辺浩太郎主任と後藤舞主任が訪問。5、6年生6人が授業を受け、県が制作した子ども向け解説動画やクイズなどを通し、楽しみながらILCの概要をつかんだ。
 「研究が始まるころには、今の大谷翔平選手ぐらいの年齢になっている」と説明を受け、ILC実現後の将来を身近にした児童たち。6年の熊谷流星君(11)は「パソコンが得意。ILCができた時、プログラミングなどの仕事に就いてみたい」。阿部美結羽さん(12)は「つくる系が好き。建物の設計をしていると思う」と目を輝かせ、「ILCができると岩手にたくさんの人が来ることが印象に残った」と話していた。
 高橋校長は「身近な地域が持っている良さを感じ、自分たちが将来関わっていくイメージを描くことができれば」と願っていた。

写真=クイズなどを楽しみながら、ILCについて理解を深めた大田代小の児童たち
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tanko 2017-5-13 9:50
 ILCの有力候補地である北上山地周辺地域の産業や生活環境を把握しようと、ドイツの高エネルギー加速器・物理学研究所「ドイツ電子シンクロトロン(DESY)」から2人の研究者が12日、金ケ崎町や北上市の企業を訪問した。
 本県を訪れたのは、クラウス・ジンラム博士とトーマス・ショーナーサデニウス博士の2人。クラウス博士はILCで行う電子、陽電子の衝突現象を捉える大型検出器「ILD」の設計に、トーマス博士は欧州合同原子核研究機構(CERN)での実験にそれぞれ携わっている。
 一行は盛岡市の県工業技術センターに集合後、北上市村崎野の東北精密などを視察。金ケ崎町内については、訪問先名も含め非公表扱いとなった。夕方には盛岡市内のホテルで生活環境の整備も含めた意見交換会に臨んだ。
 県科学ILC推進室によると、今回の訪問は北上山地周辺の加速器関連企業などを視察し、地域の産業や技術の状況を把握するのが狙いという。
 意見交換会は、外国人研究者の受け入れ環境の整備など、日常生活に関わる部分についても取り上げた。県のほか、建設想定エリアに該当する奥州市や一関市の担当者らも出席し、研究者側のニーズ把握に努めた。
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tanko 2017-5-10 14:47
ネックは「PB黒字化目標」

 経済評論家の三橋貴明氏(47)は8日夜、水沢青年会議所(阿部由起男理事長)の創立��周年記念講演会で、北上山地への誘致が期待される素粒子実験施設「国際リニアコライダー(ILC)」について、日本のデフレ経済脱却の起爆剤になると主張した。その上で、ILC実現のネックになっているのが、国の基礎的財政収支(プライマリーバランス=PB)黒字化目標だと指摘。「財務省はPB目標を盾に、ILC計画をつぶそうとしている。これを破棄させるには、皆さんが声を上げて国会議員を動かさなければいけない」と主張した。

 会場となった水沢区佐倉河の市文化会館(Zホール)には、市民ら約450人が集まった。三橋氏は経済の入門知識を説明しながら、デフレ状態が長引く日本経済の現状を解説した。
 「バブル崩壊を機に、人々は夢や希望を失い、将来への投資をせず、目先のことしか考えなくなった。とはいえ、民間や家庭に投資しろと言っても現実的には難しいので、本来であれば政府が公共投資をしてデフレから脱却しなくてはいけない。だが、実際には何もしないどころか、むしろ削ってしまっている」と指摘。ILCの実現は、デフレ脱却に必要な有効需要を創出する上で格好の事業であることを強調した。
 デフレ脱却以上に重要な効果が、技術力の向上。「ILCを造ることは決して容易ではないが、困難を解決することで技術力は高まる。ILC建設によってこの地域は『知の中心』となる。もちろん、新しいまちが生まれ、雇用創出やインフラ整備も進む。このような事業をやらない手はない」と主張した。
 さらに三橋氏は、ILC日本誘致の前に立ちはだかる問題として国のPB黒字化目標を批判。「何らかの大きな事業をするときには、支出に見合う税収でイコールにしろという考え方だ。東日本大震災の復興のために創設された復興税がいい例。ILCも同様で、もし誘致するなら他の何らかの予算枠を減らすか『ILC税』のようなものをつくるという理論になる。PB目標を破棄できれば、ILC実現の可能性は大いに高まる」と述べた。「PB目標を破棄させるには、皆さんがしっかり知識武装して、政治の側にどんどん声を上げていくことが大切だ」と呼び掛けた。

写真=デフレ脱却や日本の技術力向上のためにILC計画は意義があると訴えた三橋貴明氏

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