人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市東部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)
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tanko 2017-4-13 9:50
 一般財団法人光科学イノベーションセンター(仙台市、高田昌樹理事長)が実現を目指している「東北放射光施設」の建設最適地に、同市青葉区の東北大学青葉山新キャンパス地内が選ばれた。同センターから建設地選定の諮問を受けていた外部有識者による委員会が11日、同センターに答申書を提出した。
 東北放射光施設は、ILCをはじめとした東北地方の加速器施設整備構想の一翼を担う施設。2011(平成23)年12月に岩手大学など東北の7大学により提案された。
 候補地は青葉山のほか、宮城県の松島町、大郷町、丸森町、青森県むつ小川原地区の計5カ所。諮問委員会は、放射光活用に関係性のある学部を有する東北大が近接し、交通アクセスも良好などの理由から青葉山を選定した。他の4カ所については、研究機関や産業集積に関する具体的ビジョンに課題があったことや、アクセス面で評価点が伸びなかった。
 放射光は、素粒子加速器の技術などを用いて発生させる。国内では茨城県のKEKや兵庫県の「スプリング8」が知られており、新材料の開発や創薬、貴重な文化財の非破壊調査、さらには犯罪で使われた毒物の特定なども可能という。
 東北放射光施設の建設費は約300億円。当初は国の復興予算で全額を見込んでいたが、財政面を考慮し公費活用は一部にとどめ、民間からの出資を募る方針に転換した。2018年度の着工、2020年度の稼働を見込む。
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tanko 2017-4-12 19:30

 奥州市水沢区佐倉河字東広町の県立産業技術短期大学校水沢校に本年度、開設3学科の総定員60人を上回る62人が入学。11日、同校で入学式が行われ、ものづくり業界の即戦力を目指した2年間の学生生活をスタートさせた。
 入学式で千葉則茂校長は「本校は今年で創立20周年を迎え、これまで技能五輪などさまざまな大会、コンテストで多くの賞を受けてきた。誇りをもって学んでもらい、明るい未来を切り開いてほしい」と式辞。入学生を代表し電気技術科の三浦大和さん(18)は「世界情勢は刻一刻と変化し、日本の産業界も多くの変化がある。岩手では自動車産業集積や国際リニアコライダー誘致を目指している中、チャレンジ精神を忘れずこれからの産業を支える技術者として成長していきたい」と決意を述べた。
 水沢校の本年度入学者は建築設備科25人、電気技術科20人、生産技術科17人の計62人。約6割が県南地域出身者で、奥州市出身が15人、金ケ崎町出身は2人だった。
 各学科の定員は20人だが、建築設備科は5人上回った。生産技術科では3人下回っているものの、在籍者が一桁台になる年度もあり、ここ数年の動向と比べれば多いという。同校は詳細な理由については把握できていないとしながら、各学科の課程に関係する職業への関心、理解が広がっているからではないかとみている。

写真=産業技術短期大学校水沢校の入学式。総定員を上回る62人が2年間のキャンパスライフをスタートさせた
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tanko 2017-4-12 19:30
 「英語教育の町金ケ崎」を推進する金ケ崎町に、新しい英語指導助手(ELT)2人が着任した。外国人講師4人を中心に、幼稚園・保育園から中学校までの英語活動を継続実施。町教育委員会には、県内の小学校教諭として初めて小学校外国語活動担当に位置付けられた指導主事が新たに配置されており、本年度も英語コミュニケーション力の高い人材の育成に向けた取り組みを進める。
(菊池藍)

 同町では、国の教育課程特例校指定を受け、2014(平成26)年度から町内全ての小学校全学年で英語活動を実施している。全授業にELTを配置し、外国人講師が中心となり授業を進めるのが特徴。中学校では1週間を通してELTを配置しているほか、町内全ての幼稚園・保育園にもELTを派遣している。
 英語教育の町を推進するに当たり、大きな役割を果たしているELTは2015年度から4人体制。本年度は、転任したELT2人に替わり、コリン・ティースさん(26)=米ミネソタ州出身=とカリッサ・ドブソンさん(23)=米ニューヨーク州出身=が新たに着任した。英語指導員(町職員)のダニエル・デグラスさんとELTの瀧澤クリスティンさんと共に指導に当たる。
 ティースさんは「日本で経験を重ね、アメリカで教師になりたい」と語り、「あいさつに行った時に会った金ケ崎の子どもたちはみんな元気。授業で会えるのを楽しみしている」。
 ドブソンさんは「得られたものを次の人に返していくという日本の文化が好き。自分が持っている英語の力を子どもたちに与えたい」と意欲的。「新しい地域を知り、文化を学ぶことが楽しみ。金ケ崎のいろいろなイベントに参加したい」と話し、アスパラダンスに興味を示していた。
 ティースさんは中学校と町内3保育園、ドブソンさんは中学校と南方幼稚園、西小学校を受け持つ。研修も行いながら、新年度授業の本格化とともに指導の中心的役割を担っていく。
 新任ELTを加え、新たな体制となる本年度は、次の学習指導要領改訂を見据え、小学校高学年の学習内容に第3名詞や過去形を加えるなど、指導内容を一部見直し。また、県内で初めて小学校外国語活動の担当に位置付けられた瀬谷圭太指導主事が、町教委事務局に配置となり各校での活動をサポートする。学校での教育活動のほか、中高校生への英語検定料助成やイングリッシュ道場(中学生対象)、グローバルキャラバン(小学生対象)も継続していく。

写真=新たに着任した、右からカリッサ・ドブソンさんとコリン・ティースさん、瀬谷圭太指導主事
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tanko 2017-4-11 20:10
 北上山地が有力候補地になっている素粒子実験施設「国際リニアコライダー(ILC)」の実現を見据え、加速器関連産業への地元企業参入に向けた取り組みが、産学官連携の下で進められている。熱心に情報収集する企業はあるものの、自社との関連性がイメージできず、人手不足に直面する現状もあって、積極的な動きに至らない“様子見感”も漂っている。十分な資金力や研究開発環境がない中小企業が多い地域にあって、いかにして参入しやすい環境や体制を構築し、やる気を引き出すことができるか。ILCを契機とした地域活性化、産業振興を望むとするならば、関係機関がより一層力を込めて取り組む必要がある。
(児玉直人)

 東北ILC推進協議会東北ILC準備室、いわて加速器関連産業研究会は昨年度、4回にわたり「ILC技術セミナー」を開催。高エネルギー加速器研究機構(KEK)の現役研究者らを講師に迎え、ILCの目的や施設概要、使用される装置の仕組みや必要な技術、関連するコンピューター技術などについて解説した。4回のうち2回は北上市と一関市で開かれた。
 県内企業の技術力向上や取引機会拡大を狙った開催だが、宮城や秋田といった隣県はもとより、東京都や長崎県といった遠方からの参加企業関係者もいた。
 セミナーの運営を担当した公益財団法人いわて産業振興センターものづくり振興部の今健一ILCコーディネーターは、「東北一円からの参加があると感じる」と話す。一方、多くの地元企業の参加を呼び掛けているが「様子見といった雰囲気は感じている。うちでやっている仕事とどう結び付くのか分からないという印象なのかもしれない」。
 各企業の製品や技術が、ILCや関連施設のどういった場面で使えるか――。今コーディネーターは、東北大と岩手大で客員教授を務める吉岡正和・KEK名誉教授らと、地元企業を訪問するなどして地域に潜在する“ものづくり力”を洗い出そうとしている。
 「今すぐに仕事に結び付くわけでもないし、ILCに対するイメージからハードルが高い仕事と思われがち。しかしながら、元気のある会社はすでに動いている。とにかく企業側と私どもとキャッチボールをしながら関係を築きたい。いきなり製造し商売するのではなく、『とりあえずセミナーに来てみた』というところからだと思う」(今コーディネーター)
 奥州市胆沢区小山の機械メーカー?東洋工機の佐々木洋日児会長は、ILCと地元企業の現状について、企業側は何をしたらいいか分からず、参入を推進する側も地元企業とどう関係を構築したらよいか手探りしているように見えるという。「ILCの設備や加工方法に精通しており、地元の企業の技術や設備、キャパシティーなどのデータベースを持ち得た人を専任に置き『この技術ならA社、この作業ならB社が得意』というように、2者間をインキュベート(育成・支援)できるよう調整すべきだと思う」と語る。

思いは「ネジ1本でも……」
 奥州市水沢区羽田町で精密機械部品加工や治工具の設計製作などを手掛けている(有)テクニス精機の千葉智弘社長は、ILC技術セミナーに何度か足を運んだ。内容に疑問を抱く場面はあったが、一定の収穫も得られたという。
 「最初に出席したときは『これは、ものすごい資金力がある大手でなければできない』という印象を抱いてしまった」という。関連装置や付属施設に、どんな技術が求められるのかなど、具体的なイメージを描ける話が乏しかったといい、期待していたものではなかった。しかし、2回目に参加したセミナーでは、加速器関連産業参入の先進企業の話があり、具体事例や体験談など経営者の視点に立った講演は、とても参考になったという。
 「知人の経営者は『ネジ1本でもいいから関わってみたい』とつぶやいていた。おそらく似たような思いは製造に限らず、あらゆる業種、分野に携わる人たちが抱いているかもしれない」と千葉社長。「より具体的に、より掘り下げた内容が分かれば、もっと関心を示してくれるのでは」と注文する。
 ただ、地元中小企業の多くは、さまざまな課題に直面している。特に人手不足の問題は深刻。どんなに技術があり、資金的支援が講じられたとしても、技を継承すべき担い手がいなければ意味がない。千葉社長は「地元企業がILCに携わるという“夢”を語る以前に現実的な重要問題だ」と強調する。
 胆江地区を拠点に活動している民間誘致団体「いわてILC加速器科学推進会議」で顧問を務める、NPO法人イーハトーブ宇宙実践センターの大江昌嗣理事長(国立天文台名誉教授)も、セミナーに参加し情報収集。3月23日に開かれた昨年度最終の第4回セミナー(会場・県立大学)では、ILCに関わるコンピューター技術について取り上げられたといい、「ようやく具体的な話に入ってきた」と感想を述べる。
 研究結果の予測や解析にとどまらず、巨大な装置を動かす上で、ILCとコンピューターは切っても切れない関係。電子、陽電子が駆け抜ける加速器は「ILCの心臓部」に例えられているが、コンピューター装置は神経に匹敵するほど重要で、ILCに関わるあらゆる設備や仕事と結びつく。
 加速器関連産業への地元企業参入はこれまで、部品や機械装置など目に見える「モノ」への注目が高かった。だが、コンピューターシステムを動かすソフトウエアのように、形として存在しないものも作り上げていかなければならない。「ILCを作るにはあらゆる知恵が必要であることをあらためて実感させられた」と大江理事長。セミナーで示された技術等に関連性がある地元企業に声を掛け、情報提供を積極的に行い機運の醸成を図っている。
 ILC技術セミナーは本年度も継続する見通しで、大江理事長によると、奥州・金ケ崎エリアで開催したいとの意向が主催者側にあるという。
 大江理事長は「この地に生まれた偉人は、誰もやらないことをやってみせ、その名を歴史に残した。そういう気概が息づくまちであると思いたい」と期待している。


写真上=県立大学で開かれた第4回ILC技術セミナーの様子(大江昌嗣氏提供)

写真下=加速器関連産業や同産業への参入を考える企業が集まって開かれた企業展示会=昨年12月、盛岡市のいわて県民情報交流センター(アイーナ)で

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