人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市東部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)
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tanko 2017-2-26 10:48


 奥州市水沢区羽田町の芦ケ沢自治会(佐藤徹会長)は25日、同町内の国道397号沿いに国際リニアコライダー(ILC)誘致をPRする看板を設置。道行く人たちにILC計画をアピールしながら早期実現を願った。

 芦ケ沢地区は30世帯123人が暮らす小さな集落。同区と江刺区の境界に接しており、地区内を通る国道397号は内陸と沿岸を結ぶ重要道路で、ILC誘致が実現した場合には、JR東北新幹線水沢江刺駅から実験施設までのアクセス路になる可能性も大きい。
 看板設置を提案したのは、同地区が地元で看板製作業(有)アトム工房=水沢区佐倉河字野田=を営む小野寺誠社長。小野寺社長が看板を寄付し、国道沿いにある佐藤自治会長の所有地に設置することになった。
 看板の大きさは横9.7m、縦1.5m。ILCのイメージ図や候補地の位置などに加え、「早期実現!! 私たちも応援します」といったスローガンも大きく記された。
 設置式には地元住民ら約40人が出席。乳幼児から高齢者まで幅広い年齢層が集まり、小沢昌記市長、佐藤建樹羽田地区振興会長らも駆けつけた。
 佐藤自治会長は「小さいけれど団結力が大きい集落から、ILCを応援しようという話となり実現した。最近のILCをめぐる動きはどうもトーンが下がっているように感じる。国道を通る他地域の人たちにもPRし、盛り上げたい」とあいさつ。
 来賓の小沢市長は「予定通り進めば2030年ごろには、多くの外国人研究者がやって来るかもしれない。今の小学生の皆さんが大人になるころなので、たくさん勉強して迎え入れてほしい」、佐藤振興会長は「早く『祝着工』の看板も取り付けられるよう、小さな地域から世界に向けて熱意を発信しよう」とそれぞれ呼び掛けた。
 市の担当者がILC計画の概要を紹介した後、出席者全員で「ILCを奥州市に誘致しよう」と声高く唱和した。

写真=設置したPR看板を前に、誘致実現のスローガンを唱和する芦ケ沢地区の住民ら
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tanko 2017-2-25 10:20
 奥州市の吉田政教育委員長は24日開会の市議会3月定例会本会議で、新年度の教育行政方針を示した。初年度となる教育振興基本計画の基本理念は「学ぶことが奥州市の伝統であり未来である」。「生涯にわたる学習の中で、市の伝統である『学ぶ』ことを常に念頭に置き、『知育・徳育・体育』の調和的な推進を図るとともに、未来を拓く人づくりを推進する」とし、教育施策の着実な展開を強調した。
 「『生きる力』を育む学校教育環境の充実」や「次代をつむぐ歴史遺産の保存と活用」を施策に挙げ、市総合計画のうち教育委員会所管分を述べた。
 学校教育の充実に関わっては、就学前教育の充実や確かな学力の保障、不登校・いじめの防止、特別支援教育の充実を掲げた。児童生徒減少に伴い、学校の適正配置計画の策定に向け検討。グローバル化に対応し、「ILC(国際リニアコライダー)実現に向けたまちづくりに貢献できる広い視野を持った人材の育成にも取り組む」とした。
 教育施設は、教育・保育施設再編計画や学校給食施設再編計画に基づき改築の実施設計に着手。耐震化にも引き続き取り組む。文化財施設の再編統合については「老朽化が進んだ施設の貴重な資料の適切な保存と効果的な公開活用を行うため、整理統合について検討を始める」と述べた。
 「教育はまちづくりを支える人づくりの基盤を成す」とし、市の目指すべき都市像を見据え、「子どもたちの健全育成を主軸に、家庭・学校・地域と一体となって教育に取り組み、その重責をしっかり果たす」と締めくくった。
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tanko 2017-2-25 10:10
 小沢昌記奥州市長は24日開会した市議会3月定例会の本会議で、2017(平成29)年度の施政方針を演説した。初年度となる第2次市総合計画の推進を掲げ、健全な財政運営や行財政改革へのまい進を強調。今年生誕160年を迎える先見の政治家後藤新平(1857〜1929)の「自治三訣」の精神が「協働の根幹」とし、「協働のまちづくりにより地域自治が確立され、さらに市民力、地域力の高まりが奥州市のさらなる発展につながる」と力を込めた。
(千葉伸一郎)

 小沢市長にとっては2期目の任期最終年度。新たな総合計画の着実な推進など市政運営の基本方針を述べ、主要な施策は同計画の大綱に沿って説明した。
 市の最上位計画となる総合計画は、目指すべき都市像に「地域の個性がひかり輝く自治と協働のまち奥州市」を掲げる。この都市像実現のため、人口対策と国際リニアコライダー(ILC)の2戦略プロジェクトに分野横断的に取り組む。
 また、新年度は奥州市の名を全国に発信する「奥州アピール」の年と位置づけた。「いわて奥州きらめきマラソン」や「カヌージャパンカップ」、「台湾をターゲットとした観光戦略」などでPRする考え。
 ほかに、新市立病院の2021(平成33)年度開院を見据えた基本構想・基本計画を策定。行政経営改革プランに基づく優先施策の選択と資源の集中投下により、「最少の経費で最大の効果を上げる行政経営の実現に努める」とも述べた。
 結びには、後藤新平の自治三訣「人のお世話にならぬよう、人のお世話をするよう、そしてむくいを求めぬよう」を引用。自治三訣の精神が協働の根幹と強調とし、「住んで良かったと思える」まちづくりに尽力すると決意を示した。

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ILC推進室を総務企画部内室に格上げ(奥州市)

 奥州市は、市総合計画2戦略プロジェクトの着実な推進に向け、4月から総務企画部政策企画課内に「人口プロジェクト推進室」を設置。同課内に設置していた「ILC推進室」を同部内室に格上げする。
 2020(平成32)年の公営企業法適用開始に向けた「下水道法適化準備室」を下水道課に、生活環境課には「空家対策室」を設置。北上川東部土地改良区の経営改善と世界農業遺産登録を目指し、農地林務課内には「農村保全推進室」を設ける。小沢昌記市長が24日の市議会3月定例会本会議の施政方針で述べた。

写真=施政方針を述べる小沢昌記市長
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tanko 2017-2-24 11:50
研究者の言葉に触れる

 高エネルギー加速器研究機構(KEK)は、つくば市中心部から北北西へ約8km、筑波山を望む郊外にある。
 生徒たちが訪れたのはKEKの本部機能や円形加速器「KEKB(ケックビー)」、放射光研究施設「フォトンファクトリー」、国際リニアコライダー(ILC)関連の研究施設などが集まる「つくばキャンパス」。敷地面積は153haで東京ドーム32個がすっぽり収まる。
 素粒子の衝突現象を捉える巨大装置「Belle検出器」、素粒子が光速に近い速さで駆け抜けるKEKBの加速器装置は、全て地下空間に配置されている。そのスケール感は、施設の中に入って初めて実感できる。
 「実物を見ることで受ける印象はとても大きい。そして、ノーベル賞を取った人がここの装置を使って仕事をしていたことも非常にインパクトがあること」。今回の研修で団長を務めた市立田原中学校の石川勝也校長は、長年継続してきたつくば研修の意義を再確認したようだ。
 施設見学後は、放射線の飛跡を視認できる簡易装置「霧箱」の製作と実験に挑戦した。スコットランドの物理学者チャールズ・ウィルソンが発明した装置で、ウィルソンはその偉業が認められ1927年にノーベル物理学賞を受賞している。
 「放射線は目に見えないが、何かが出ており怖さも感じる。しかし人類は100年余りで放射線の存在を目で確認できるようにし、素粒子物理学は一気に開花した。こうした努力は皆さんの地域が候補地になっているILCにもつながっていく」。製作実験の指導に当たったKEK計算科学センターの松古栄夫助教の説明に、生徒たちは真剣な表情で聞き入った。
 続く講義で登壇したのは、奥州市出身の小野正明・KEK名誉教授。本研修の講義を毎年引き受けている。小野さんは水沢緯度観測所(現・国立天文台水沢VLBI観測所)の木村栄初代所長と、ノーベル賞を受賞した小林誠氏、益川敏英氏との共通点として「若い時に一流の仕事をしていた」と説明した。
 「科学研究とは誰も知らないことを予言すること。洞察力が新事実を引き出す。基礎科学はすぐに実用できる成果を生み出しはしないが、究極の理論を得たいという思いは結果として応用発展を生み出すことに結び付く。よくわれわれの研究に対し『何の役に立つのか』と言われるが、そう簡単に答えられるものではない」
 小野名誉教授の言葉は生徒たちに対する熱いメッセージであると同時に、早急な経済効果や利便性を追求する流れにある世の中への警鐘とも言える。
(つづく)

写真=真剣な表情で講義に耳を傾ける生徒たち
写真=講師を務める奥州市出身の小野正明名誉教授
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tanko 2017-2-20 13:10

東西冷戦終結と失われた“特権”
 私が大学院生として米国に滞在していた1993年、米国議会はSSC(超伝導超大型加速器=Super-conducting Super Collider)の建設中止を決定した。
 SSCは超伝導加速器による周長86.6kmの陽子衝突型加速器で、スイスの欧州原子核研究機構(CERN)が運営する実験施設LHC(大型ハドロン衝突型加速器=Large Hadron Collider)の約3倍の規模、重心系衝突エネルギーを目指したものである。SSCのライバルだったLHCはその後、物質に質量を与えている素粒子「ヒッグス粒子」の発見(2012年)など、華々しい成果をあげているのはご存じの通りだ。
 SSC中止の最大の原因は、建設コストの増大である。当初5000億円(44億米ドル)だった建設コストは、最終的に1兆4000億円(120億米ドル)まで跳ね上がったといわれている。中止は建設開始後であり、すでに2000億円以上が支出され、トンネルも27km近くが掘削済みであったが、計画の中止とともに、すべて埋め戻された。
 計画中止の直接の引き金は建設費の問題であったが、より根本的な原因は、米国の物理学者スティーブン・ワインバーグが指摘するように冷戦の終結である。米国と旧ソビエトの冷戦は軍事力だけではなく、経済、科学、文化とあらゆる面で大きな影響を与えていた。自らの優位を示すために、あらゆる機会をとらえて、採算を度外視した投資がなされており、アポロ計画なども例外ではない。
 これは有名な話だが、米国フェルミ国立加速器研究所の初代所長ロバート・ウィルソン(1914〜2000)が、大型加速器建設予算について議会の公聴会に呼ばれたとき「加速器による研究の成果は、米国の防衛に貢献するのか」と問われた。彼は「残念ながら、加速器による研究の成果は米国と同盟国の防衛にはまったく貢献できない。しかし、米国は守るに値する国になる」と述べたといわれている。その後、フェルミ研究所の予算は無事承認されている。
 このように1960年代は、科学はある種の特権を持っていた。SSCの中止は、その特権がもはや無くなったことを明確に物語っていたのである。

CERNに見る科学と平和構築
 SSCが中止された一方で、ISS(国際宇宙ステーション=International Space Station)や前述したCERNのLHCは、巨額な予算にもかかわらず推進されている。その差は何なのだろうか。ISSには将来の宇宙開発の利益に対する期待があるが、LHCは純粋な基礎科学で、利益には結びつかない。
 CERNは1954年に設立された国際機関で、欧州を中心としたメンバー国の支出により運営されている素粒子物理学の研究所である。その設立趣旨は、戦争により荒廃し立ち遅れた欧州の物理研究を復興し、戦勝国と敗戦国の科学者が協働する場所をつくり、それにより地域の平和を構築することにある。"Science for Peace"(平和のための科学)がCERNの基本理念であり、浅薄なナショナリズムなどとは異なる原理でCERNは運営されている。
 1954年の当時と様相はかなり異なるが、欧州、そして世界は、決して平和にはなっていない。1990年代の軍事専門家が指摘したように、戦争は国家間の争いから、地域のより細分化された紛争の多発という新しい位相へと移行したように見える。CERNの存在意義は、むしろ強まっているとも言える。
 ELI(Extreme Light Infrastructure)という大強度レーザー開発プロジェクトがEU(ヨーロッパ連合)の主導で進められている。ソビエト消滅の影響により沈滞する東ヨーロッパ地域の研究の振興と、進展著しいレーザーをはじめとする光源開発を戦略プロジェクトとして推進することを目的としている。科学による地域振興という手法は、欧州では普通のことである。
 東京大学カブリ数物連携宇宙研究機構の機構長・村山斉氏(素粒子理論)は2014年10月、国連本部での演説で次のように述べている。
 「私たちは地球という名前の小さな岩の上に住み、その岩は太陽と呼ばれるごくごく平均的な星の周りを公転し、太陽は天の川銀河の中心から2万7000光年離れた田舎にあり、天の川銀河は観測可能な範囲の宇宙にある1000億個の銀河の一つだ。大きな目で見ると、われわれの間の違いはとても小さく見える。新聞で毎日のように読む戦争、紛争、悲劇、貧困、疫病について、違った見方をさせられる。この小さな岩の上に住む私たちヒトという生物は、手を取り合って行動することができるはずだ」
 村山氏は人間の可能性を論じるとともに、CERNをはじめ中東ヨルダンで建設中の放射光施設SESAME(Synchrotron-light for Experimental Science and Applications in the Middle East)などでは、現実に敵対する地域の研究者が協働し、平和の構築に向けた力になっていることも説いた。
 さらに「世界にはCERNのような場所がもっとあるべきだ。個人的には、アメリカや日本がこうした基礎科学のための国際組織をホストしてほしいと思っている。特に子どもたちを含め、近辺の住民がグローバルな視点を持つようになる。このように科学が、惑星地球の平和と発展に貢献できるよう、私も努力していく」と、国際的な研究拠点の必要性を強調している。

ILC誘致の根本的な意義
 広島は原爆が実際の戦闘で使用された初めての地であり、私が所属する広島大学は世界平和構築への貢献をポリシーとしている。
 基礎科学は直接的には平和とは何の関係もなさそうに見えるが、物理、そして広く科学の価値観とは、ユニバーサル、すなわち世界は単一であるとする考えであり、実は平和を希求する精神そのものである。その目で世界を見渡してみれば、いまだに米国は古いパワー・ポリティクス(権力政治、武力政治)から抜け出せておらず、少なくとも巨大科学の分野では存在感を急速に減らしている。それに対し、存在感を相対的に増大させるのが欧州である。
 現在、日本は国際リニアコライダー(ILC=International Linear Collider)という国際科学プロジェクトの建設候補地となっており、私も日本政府が正式にこの計画に乗り出すことを心待ちにする一人である。この計画は、全世界が協力して推進している次世代の素粒子物理学の大型加速器であり、それが実現すれば、CERNに匹敵、いやそれを上回る研究施設となる。世界から研究者が集結する拠点は、ユニバーサルな文化を醸成し、日本や地域の発展のみならず、村山氏が述べるように平和構築にも貢献できるはずだ。
 かつて東アジア共同体が提案された時期もあったが、最近は領土問題や軍事問題など、きな臭い話題がこの地域には多い。しかしかつての欧州は、それを上回る反目、敵対、惨禍に満ちており、現在のようなEUによる統合など夢物語であったろう。
 欧州にできて東アジアにできないという理由はどこにも無い。科学がその嚆矢となることができれば、これ以上の社会貢献があるだろうか。

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 くりき・まさお=1968年、東京都豊島区出身。1996年、東北大学大学院理学研究科原子核理学専攻博士後期課程修了。東京大学原子核物理研究所研究員、高エネルギー加速器研究機構(KEK)助手、広島大学大学院先端物質科学研究科准教授などを経て、2009年から同科教授。研究分野は加速器科学。日本加速器学会誌編集長。ILCを推進する国際研究者組織リニアコライダー・コラボレーション(LCC)では、粒子源グループ副リーダーを務める。趣味は鉄道と登山、ランニングで、5月開催の「奥州きらめきマラソン」にも出場予定。

写真=昨年7月に一関市で開かれた地元中高生とILC研究者との交流会で講演する筆者(右)
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tanko 2017-2-19 12:10
 奥州市立水沢図書館(及川一康館長)は、国際リニアコライダー(ILC)誘致実現後の国際化を見据え、利用案内表示の一部を英語化した。奥州市国際交流協会(佐藤剛会長)のアドバイスを踏まえ、英語版の利用案内チラシを用意。書棚側面の表記も2カ国語に一新させた。新年度も同協会と連携し「在住外国人も利用しやすい図書館」を目指す。

 2013(平成25)年度に策定した同図書館利用推進計画の一環。「多文化交流」関連のコーナー新設へ向け、同協会メンバーに助言を求めたところ、「利用案内表示の多言語化を」「トイレの洋式化が必要」など館内の改善点を指摘された。
 同図書館は「分かりやすさ」「見つけやすさ」「使いやすさ」の3本柱を掲げ、2014〜2016年度に指摘箇所を順次改善。無線LANアダプターの整備を皮切りに障害者用トイレの洋式化、書架サインの英語表記を進めた。
 奥州市ILC国際化推進員のアンナ・トマスさんが翻訳協力し、昨年末に英語版・利用案内チラシの配布を始めた。同図書館利用パンフレットをはじめ、市内5館共通の利用券の使い方、貸出期間や冊数などを英語で表記。イラストも交え、在住外国人にも分かりやすい内容にまとめた。
 英語版チラシは、同図書館1階カウンターで配布している。全館共通の利用案内チラシは順次、各館に配置する段取り。新年度も同協会と連携しながら洋書のラインアップを見直し、蔵書の充実に努めるという。
 同図書館主査の及川浩子さんは「ILC誘致に関係なく、普段から外国出身の人たちが調べ物をしたり、情報を得たりする際に図書館を気軽に利用できるよう、段階的に環境を整えていきたい」と話している。

写真=水沢図書館カウンターで配布中の英語版利用案内パンフレット
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tanko 2017-2-18 13:40
 岩手県立水沢高校(安藤泰彦校長)理数科の2年生11人は20日から8日間、アメリカのカリフォルニア工科大学などで国際的な視野とコミュニケーション能力の向上を目的とした海外研修に臨む。出発を前に生徒たちは17日、奥州市役所本庁に小沢昌記市長を訪ね、充実した研修にすることを誓った。
 文部科学省のスーパーサイエンスハイスクール(SSH)の指定を受ける同校初の海外研修。生徒たちは、それぞれのテーマで課題研究に取り組んでおり、校内でも研究成果を英語で発表するなど国際的な視点を広げている。
 海外研修に挑むのは男子4人、女子7人。理数科の志願者から選抜試験を実施して選ばれた。教員2人が引率する。
 小沢市長の表敬には参加生徒のうち6人が訪問。小沢市長は「気負わず失敗を恐れず見聞を広めて幅広い知識を身に付けてきてほしい。ILC(国際リニアコライダー)についても理解を深めてもらえたら」とエールを送った。
 生徒たちは「ILC誘致の力になれるようたくさん学んできたい」「普段体験できないことを吸収して、先進国の技術を体感したい」などと力強く決意を表明した。
 生徒たちは、20日に水沢江刺駅から仙台空港へと向かい、韓国・仁川空港経由でアメリカへ。カリフォルニア工科大では、生徒たちが取り組んだ課題研究の成果を英語で発表する。
 SLAC国立加速器研究所やスタンフォード大学なども訪問。ILC誘致の一助となれるよう、加速器の意義や建設地のまちづくりなどにも目を向ける。26日にロサンゼルス空港を発ち、27日午後の帰国を予定している。

写真=小沢昌記市長(中央)を表敬訪問し、海外研修への意気込みを伝えた水沢高校理数科の生徒ら
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tanko 2017-2-17 11:40
「ノーベル賞」が及ぼす力

 旧水沢市が中学生科学体験研修をスタートさせた2003(平成15)年、ILCはまだ一般に知られていない「水面下」のプロジェクトだった。当時、旧水沢市教育長を務めていた岩井憲男・奥州市社会福祉協議会長はこう振り返る。
 「小柴昌俊さんの講演会が水沢で開かれた時、同行した吉岡正和さん(現・KEK名誉教授)から『水沢の子どもたちをつくばに連れてきたらどうですか』と言われた。市長ら幹部職に限られてはいたが、ILC計画の存在は知っていた。子どもたちにとっても、いい刺激になるはずだと思い実施した」
 ちょうどそのころ、水沢市教委は米国との交流研修を検討していた。しかし、同時多発テロの影響を受け頓挫。科学研修実施の流れが一層強まった。
 いずれにせよ、ノーベル賞受賞者の小柴氏の講演や関係者の働き掛けがなければ、中学生が高度な科学を学ぶという全国的にもまれな研修事業はスタートしていなかった。
 KEKでは、小林誠氏と益川敏英氏による「小林・益川理論」の証明や、イスラエル人女性のアダ・ヨナット氏によるリボソーム(細胞内でタンパク質合成する微小器官)結晶化など、重要な研究成果に結び付く実験が行われてきた。小林、益川両氏は2008年、ヨナット氏は2009年にそれぞれノーベル賞を受賞。「ノーベル賞と縁がある研究所」と言っても過言ではない。
 KEKを訪れた生徒たちが最初に通された常設展示ホール「KEKコミュニケーションプラザ」には、小林、益川両氏の功績を紹介するコーナーがあり、ノーベル賞メダルのレプリカも置いてある。2氏の理論を即理解することはできなくても、ノーベル賞と聞いただけでその研究の価値や影響力の大きさはおおよそ想像でき、生徒たちの関心を集めた。
 コミュニケーションプラザには、宇宙から飛来する放射線「宇宙線(ミュー粒子)」を雷のように目視できる装置「スパークチェンバー」や、体の中をどれだけの宇宙線が通り抜けたか表示される「宇宙線ラボ」など、難解な素粒子物理学の世界を少しでも分かりやすく伝えるため、目で見て分かるような模型や体験装置が多い。
 ILCの周知活動を見ると、計画段階の施設であるためか、コンピューターで制作した画像や動画で見せることが中心。常設のPRコーナー設置の必要性も求められているが、県南では奥州宇宙遊学館内のパネル展示やJR水沢江刺駅の動画コーナー、JR一ノ関駅コンコースの模型ぐらいだ。
 手の込んだ常設施設は予算的な問題も絡む上、政府判断のゴーサインが出ていない現状では尚早との指摘があるかもしれないが、日本誘致が決定し、実現の運びになった場合には、いずれこのような施設は必要になってくるだろう。
(つづく)

写真=生徒たちの関心を集めたノーベル賞メダルのレプリカ=KEKコミュニケーションプラザ
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tanko 2017-2-15 10:00
 奥州市江刺区東部の北上山地が有力候補地となっている「国際リニアコライダー(ILC)」の早期実現を求めるため、岩手県議会のILC建設実現議員連盟(会長・田村誠議長)は14日、関係国会議員や文部科学省を訪れ、要請活動を実施した。誘致関係者の間では「ここ1、2年が勝負」との空気が漂うが、米国のトランプ政権発足や文科省の組織的天下りあっせんなど、関係する国や省庁で大きな動きや問題が相次いでいる。誘致活動にどのような影響を与えるか――。
(児玉直人)

 同日要請に参加したのは田村議長(大船渡選挙区)のほか、県議会議連副会長の工藤大輔副議長(九戸選挙区)、千葉伝氏(八幡平選挙区)、飯沢匡氏(一関選挙区)、五日市王氏(二戸選挙区)の計5人。県市議会議長会会長の菊田隆・盛岡市議会議長と、県町村議会議長会の昆暉雄・山田町議会議長も同行した。
 県科学ILC推進室によると、国会のILC議連会長を務める河村建夫氏(衆院山口3区)、副会長の鈴木俊一氏(衆院岩手2区)の事務所と文科省を訪問。文科省では戸谷一夫事務次官が対応した。
 要請活動後、胆江日日新聞社の取材に応じた飯沢氏や同推進室の熊谷郁夫・ILC推進課長によると、河村氏、鈴木氏とも情報収集を進めながら実現に向けた努力をさらに重ねるといった趣旨の発言をしたという。
 飯沢氏は「河村会長からは、5月の連休中に渡米して枠組みなどの確認をするとの考えが示された」。一方、文科省訪問時には「(天下りあっせんの)不祥事問題でそれどころではないという感じがした。米政府の新しい科学担当ポストも未決定で先行きは不透明だといい、これといった新たな展開はなかった」としながら、「振り出しとまではいかないが、トランプ政権に変わったことによる仕切り直し作業は結構かかる雰囲気を受けた」と話した。
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tanko 2017-2-11 9:50
 岩手県は10日までに、歳入歳出それぞれ9797億3300万円とする2017(平成29)年度一般会計当初予算案を発表した。東日本大震災による津波で甚大な被害を受けた沿岸部を中心に進められていた復興事業が進展した関係で、震災以降に編成した当初予算としては初めて1兆円を下回った。震災関連の予算を除いた「通常分」に限って見ると、2007年度から2011年度にかけての当初予算の平均レベル。同予算案は16日招集予定の県議会2月定例会に上程し、審議される。

 2017年度一般会計当初予算に対し、県は「未来につなげる復興ふるさと振興予算」と名付けた。大震災や昨年の台風10号被害からの復旧、復興を最優先で取り組む一方で、「いわて国体・いわて大会」の開催によって培われたスポーツ・文化面の振興をより良い形で発展、継承。外国人観光客誘致や海外市場への岩手ブランド発信、多文化共生などの国際的な取り組み、若者・女性の活躍支援、国際リニアコライダー(ILC)誘致実現など未来を見据えた「ふるさと振興」を推進する。
 県予算は大震災発生翌年の2012年度以降、一般的な行政運営や全県を対象とした事業に投じられる「通常分」と、震災復興に関連した「震災分」に大別している。
 2017年度の通常分予算は、歳入歳出それぞれ6754億300万円。一般会計全体に占める割合は68.9%で、金額の前年度当初比は1.5%増。これに対し震災分予算は3043億2900万円で、割合は31.1%。金額の前年度当初比は24.0%減少した。震災分の減少は復興関連事業の進展に伴うもので、当初予算の歳入歳出総額が1億円を下回った主要因となっている。
 通常分予算の詳細をみると、歳入のうち自主財源は2758億2800万円で通常分総額の40.8%に相当。このうち県税は、法人事業税などの伸びにより、前年度から41億円増加した。
 依存財源は3995億7600万円で、通常分の59.2%を占める。地方交付税は国の地方財政対策などを基に推計した結果、前年度より2億円減少。一方、県債は、療育センター整備事業や河川改修事業など普通建設事業費の増加で飫億円増加している。
 歳出は、人件費などの義務的経費が3111億3300万円で、前年度比1.0%の微減。主な内訳は人件費が1794億2000万円、借金の返済に充てる公債費が1196億1300万円となっている。
 普通建設事業費と災害復旧事業費で構成される投資的経費は906億6600万円で、同比26.8%増。台風10号により被災した河川の改修事業への対応が要因に挙がる。
 補助費や貸付金などを含むその他経費は2736億400万円。前年度は「いわて国体開催準備費」があり、その反動減などにより同比2.2%減少した。
 主な新規事業を見ると、馬事文化を観光資源として誘客を図る「馬事文化プロモーション推進事業」に950万円。盆・彼岸向けのリンドウ出荷増を目指す「優良品種緊急新植事業費補助」に410万円。米政策の見直しに対応した仕組み作りを支援する「水田農業構造改革対策費」に1050万円。
 このほか、継続事業として東北道奥州スマートインターチェンジや国道107号江刺区梁川周辺の整備などを含む「地域連携道路整備事業費」が379億7230万円。ILC誘致に関連した「プロジェクト研究調査事業費」に7100万円を投じる。
 新年度に新設する「文化スポーツ部」に関する予算は27億530万円で、東京五輪関連の取り組みやスポーツ競技力向上、障害者芸術の魅力発信などの事業を展開する。

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