人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市東部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)
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tanko 2017-1-13 16:10
 生母(せいぼ)地区放課後子ども教室の冬休み特別講座「サイエンススクール」は12日、奥州市前沢区生母の赤生津(あこうづ)地区コミュニティーセンターで開かれた。地元の小学生11人が科学遊びを通じて、空気の性質に理解を深めた。
 子どもたちに科学への関心を持ってもらおうと同教室運営委員会(千田敏彦委員長)が主催し3年目。講師は奥州市水沢区のNPO法人イーハトーブ宇宙実践センター・サイエンススクールリーダーの小野寺喜美男さん(70)が務めた。
 今回のテーマは「空気の力」。子どもたちは小野寺さんの指導の下、見えない空気の力や動きを調べた。
 段ボール箱に穴を開けて作った「空気砲」では、箱の中に煙を入れてから“発射”。子どもたちは空気砲から放たれて向かってくる煙の輪に、一斉に声を上げて喜んだ。
 小野寺さんは「空気砲から出た空気の塊は渦を巻きながらドーナツ状になって進む。渦を巻くことで形が変化せずに進むことができる」などと説明し、空気の動きの面白さなどを伝えた。市立前沢小3年の佐藤結菜さん(9)は、空気砲でビニールシートを揺らす遊びに夢中。「穴の大きさや数で出てくる空気の強さが変わるところが面白い」と笑顔を見せた。
 同実行委の鈴木真毅夫委員(70)は「学ぶことの面白さを感じるきっかけになってくれればうれしい」と、子どもたちの様子に目を細めていた。

写真=段ボール箱の空気砲から放たれる「空気の輪」に見入る子どもたち
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tanko 2017-1-9 11:10
 「研究者だけでなく、いろんな人たちが携わっているのが分かった」
 国際リニアコライダー(ILC)と関係が深い、高エネルギー加速器研究機構(つくば市)を訪れた奥州市内の中学生の一人が取材にこう答えてくれた。
 北上山地が最有力建設候補地となっているILC計画もまた研究者だけなく、さまざまな人たちが関わり、誘致実現へ大きなうねりになっているのだと思う。立場や職種の違いはあっても、一つのプロジェクトが縁で出会った大切な仲間である。
 年末年始にかけ、そんな“ILC仲間”が相次いで他界した。一大プロジェクトの行く末を一緒に見届けられなかったことが悔やまれてならない。
(児玉直人)
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tanko 2017-1-6 10:40
 奥州市教育委員会が主催する「中学生科学体験研修」に参加している奥州市内の中学生31人は、6日までの日程で学術研究施設が集積する茨城県つくば市を訪問している。5日は、高エネルギー加速器研究機構(KEK、山内正則機構長)を訪問。北上山地が有力候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)とも関連性が高いさまざまな実験施設を目の当たりにし、最先端科学やILC実現へのイメージを膨らませた。(児玉直人)

 旧水沢市時代から続く研修事業。最先端科学の研究現場を直接見たり、そこで働く人たちの姿に触れたりしながら、科学への興味関心を高めてもらう狙い。奥州市内各区の中学2年生が対象で、昨年11月から12月にかけて事前学習を重ね、つくば市での研修に臨んでいる。
 一行は、4日朝に奥州市水沢区大手町の市役所本庁前をバスで出発。初日は宇宙航空研究開発機構(JAXA)の筑波宇宙センターを見学し、2日目はKEKを訪問した。
 KEKは日本を代表する素粒子物理学の研究拠点。物質の成り立ちや宇宙誕生の謎に迫るため、世界各国から研究者たちが集まりノーベル賞級の研究を繰り広げている。また、北上山地への誘致が期待されているILCの実験装置の開発も行われている。
 生徒たちはKEKの概要などを紹介する動画を観賞した後、敷地の地下に設置されている1周約3kmの円周加速器「KEKB」や、KEKBで加速した電子、陽電子を衝突させ、その反応を調べる巨大測定装置「Belle検出器」などを見て回った。
 素粒子が駆け抜ける加速空洞が円周状に配置されたKEKBに対し、ILCは直線状に加速器が配置されるものの、基本的な構造や実験の方法は同じ。生徒たちは、KEK内の実験施設を目の当たりにしながら、コンピューターグラフィックス(CG)などでしか目にしていないILCの姿やそこで行われる研究のイメージを膨らませていた。
 市立衣川中の元島樹(もとじま・たつき)さん(14)は「最先端の技術をこの目で確かめたくて参加した。細かい部分までよく考えて実験していることや、研究者だけでなく技術者など多くの人たちが携わっていることも分かった。ILCではビッグバン(宇宙誕生時の大爆発)直後の様子を再現するといい、今は分からないことが解明されるようになれば」と話していた。
 一行は6日、つくばエキスポセンターを見学後、帰路に就く。今月25日には、市役所江刺総合支所で研修報告会を行う。

写真=素粒子ビームの進行方向を曲げる「偏向磁石」の説明を受ける生徒たち
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tanko 2017-1-5 10:30

 胆江2市町は4日、仕事始め式をそれぞれ行い、両首長が訓示して2017(平成29)年が本格始動した。小沢昌記奥州市長は「市民ファーストで物事を思考し、いかに『成し遂げる』かを考え実行してほしい」、高橋由一金ケ崎町長は「世界情勢は大きく変わる節目の年。変化の胎動を感じながら、地方自治がどうあればいいのか考え、取り組んでいきたい」と訓示した。 
 奥州市の仕事始め式は市役所本庁講堂で行われ、各行政委員会の長や部課長級職員ら約90人が出席した。
 小沢市長は年度内に策定する第2次市総合計画に触れ、計画に盛り込む人口対策と国際リニアコライダー(ILC)実現の二つの戦略プロジェクトは「市の総力を挙げて取り組む」と決意。ILCは市の発展を支え「子どもたちや孫たちにつながる大きな希望の光」と強調した。
 日々の職務は「まちづくりのプロフェッショナルとして、市民ファーストで物事を思考し実行してほしい。『できない』ではなく、いかに『成し遂げる』かを考えてほしい」と職員に求め、「今年はさらにいい年にするとの思いを込めてきょうから始めよう」と呼び掛けた。
 金ケ崎町では、役場4階大会議室に職員約80人が整列。高橋町長は訓示で「第10次総合発展計画2年目。1年目に確認し進めてきた段取りや方向性をきちんと実行する年。計画に対する自分たちのポジションやセクターを確認し、今年どう取り組むか考えてほしい」と求めた。
 10次総計の中で、町まち・ひと・しごと創生総合戦略に位置付ける▽若者が暮らしたいまち▽女性に魅力的なまち▽活力と特色のある地域――をつくる3重点プロジェクトの確実な推進を掲げるとともに、人口減少社会の中で「今後は制度を見直し、どういう仕組みをつくるかが大事」と変革の必要性を強調。自治体経営検討チームを立ち上げ、地域経営改善の在り方検討に着手する考えを示した上で、「自分の仕事を通して業務改善を考えてほしい」と呼び掛けた。

写真上=「健康に留意し、さらにいい年に」と訓示する小沢昌記奥州市長
写真下=「物質的だけでなく心のサービスを」と業務改善を求めた高橋由一金ケ崎町長
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tanko 2017-1-2 11:20
 岩手県・県南広域振興局(堀江淳局長)主催の本年度ILC絵画コンクール入賞作品が決まった。ILC(国際リニアコライダー)誘致実現による地域の発展を描いた作品を中心に、前回の倍以上の応募があった。
 ILCの普及啓発活動を進める一環として、県南地域や宮城県気仙沼市の児童を対象に実施。胆江2市町を含む同振興局管内の8市町と、8市町教育委員会、気仙沼市と同市教委が共催した。
 初開催だった前回の課題を踏まえ、1カ月余りだった募集期間を3カ月半に拡大。候補地でありながら応募ゼロだった奥州市では、校長会での協力呼び掛けや市内全児童分のチラシを作成する独自の周知策を取った。その結果、前回を168点上回る264点(低学年饅点、高学年177点)の応募があり、半数以上の143点が奥州市で占められる大躍進。金ケ崎町は前回と同じ1点だった。
 胆江地区の入賞作品のうち、低学年優秀賞に輝いた胆沢第一小1年、佐々木美空さんが描いた「わたしの未来とILC」は、カラフルなデザイン。「トンネルのあるたのしいまちができていると思います」とコメントしている。
 表彰式(最優秀と優秀のみ)と入賞作品の展示会は、来年1月22日に水沢区佐倉河の市文化会館(Zホール)で行われる。展示は花巻市内と一関市内でも予定している。
 胆江地区の入賞者は次の通り。
【低学年の部】
▽最優秀賞…小椋郁也(花巻・矢沢3年)▽優秀賞…佐々木美空(胆沢第一1年)▽佳作…芳賀莉心(胆沢第一1年)▽審査員特別賞…千葉寿哉(衣里3年)菊池萌希(金ケ崎3年)
【高学年の部】
▽最優秀賞…小田島芽吹(北上・二子4年)▽優秀賞…菅原菜々瀬(黒石5年)利府奏(江刺愛宕6年)阿部壮大(若柳6年)千田春野(同)▽佳作…佐々木羊子(佐倉河4年)阿部蒼良(黒石5年)菅原瑞月(姉体6年)菊池凜(同)石川結己(同)石川美花(江刺愛宕6年)佐々木優美(胆沢愛宕6年)

写真=上から順に、佐々木美空さん(胆沢第一・低学年優秀)、菅原菜々瀬さん(黒石・高学年優秀)、利府奏君(江刺愛宕・高学年優秀)、阿部壮大君(若柳・高学年優秀)、千田春野さん(若柳・高学年優秀)の作品
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tanko 2017-1-1 15:10
 北上山地が有力候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)を分かりやすく解説するシリーズPR動画「ILC科学少年団」の最新作が、インターネット動画サイト「You Tube(ユー・チューブ)」で公開されている。奥州市少年少女発明クラブや同市前沢区の千田精密工業などを紹介している。
 ILC誘致団体の先端加速器科学技術推進協議会(AAA)と、ケーブルテレビ(CATV)事業者の東京ケーブルネットワーク蠅制作。You Tubeや全国のCATVで放送し、ILCの周知を図っている。
 最新作は、3回にわたりILC誘致に向けた地元の盛り上がりに触れる内容の最終回。東北大学大学院の佐貫智行准教授が演じる「おじさん」の案内で、子役タレント3人が演じる「科学少年団」が出演している。
 同市水沢区大鐘町にある同クラブ活動場所を訪れた一行は、クラブ指導員3人から説明を受けたり、クラブ会員の児童らが製作した発明品を操作したりする様子が紹介されている。千田精密工業では、千田伏二夫社長が社内を案内。子役から質問を受ける場面もある。
 You Tubeで最新作を視聴する際は、同サイトの検索枠に「ILC科学少年団」と入力。表示された動画一覧の中にある「シーズン2第9話」を選ぶ。

写真=ILC科学少年団が発明クラブを訪れるシーン(動画サイト「You Tube」より)
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tanko 2017-1-1 13:10
 超党派国会議員で結成するリニアコライダー国際研究所建設推進議員連盟(会長・河村建夫衆院議員)の鈴木俊一副会長(63)=衆院岩手2区・自民=と、階猛幹事(50)=衆院岩手1区・民進=は、胆江日日新聞社の取材に応じ、ILCをめぐる動向や考えについて語った。両氏は、世界的に高まりつつある自国優先主義の風潮や、巨額コストに対する懸念を解消するためにも、国内外問わず積極的な取り組みが必要との認識で一致。鈴木氏は「政府判断が下されるここ2年が勝負どころ」、階氏は「地元の熱意が全国的な認知度の広がりにつながっていく」と強調している。

【“外堀”埋める作戦】
 文部科学省のILC有識者会議が見解を取りまとめ、政府が誘致判断を下すのは2017〜2018年度と見込まれる。
 有識者会議での議論が進む中、議連ではアメリカなど主要国議会との関係構築を推進。同時並行的に外堀を埋めることで、日本政府が抱く懸念材料を少しでも減らし、いつ「ゴーサイン」が出てもすぐに対応できるようにする作戦だ。
 鈴木氏は「日本では昔から『自分たちの中で物事を決めてから、相手に打診する』という風潮がある。同じような調子でやっていたら時間ばかり過ぎ、海外から見れば非常にじれったくて待っていられない」と説明する。
 昨年2月、鈴木氏ら日本の誘致関係者が訪米し、両国の議会レベルによる連携を確認。これがきっかけとなり、同5月には日米政府間の協議の場が設けられた。
 米国での下地が築かれると、ヨーロッパにも同様の働きかけをした。階氏は昨年10月31日、フランスで開催された放射線技術に関する国際会議「2016 IEEE NSS・MIC」に出席。招待講演に臨み、ILC計画に対する協力を呼び掛けた。
 「計画の意義については理解いただいたと思う」と階氏。「ヨーロッパでもさまざまなプロジェクトがあり、ILCにどれだけ予算を割けるかといった意見があるようにも感じたが、日本はLHCやITERといった、ヨーロッパが拠点の国際研究に協力してきた。ギブ&テイクの考えに基づき、協力してほしい」と願う。
 日米欧の連携構築を着実に進める中、自国優先主義の風潮が高まりつつある。議連が真っ先に働き掛けを行ったアメリカでは、「アメリカ・ファースト」を掲げる共和党のドナルド・トランプ氏が、次期大統領に就任する見通しだ。鈴木氏は「心配が全くないわけではないが、とにかく今までの関係が継続できるようにしたい」。階氏は「アメリカ自体も財政が厳しく、国際的な研究開発にどれだけ目を向けてくれるか。ILCで得られた成果は、アメリカの産業界にとってもプラスになると呼び掛け、積極的な参加を求めたい」と語る。

【国内での理解形成】
 東日本大震災から5年の節目となった昨年3月11日、仙台市内で開かれたシンポジウムの席上、当時の復興庁事務次官がILC計画を「金食い虫」と表現。後日の報道を受け、階氏は衆院の大震災復興特別委で「万感の怒りを込めて、この次官の物言いには我慢ならない」と批判した。高木毅復興相(当時)は「不適切な発言であった」と陳謝した。
 当初計画期間の総額で1兆円超と言われるコスト。過去の国際プロジェクトの事例をみると、半分は建設国(ホスト国)が負担し、残りを参加国で分担するのが一般的だ。「よくよく分析してみると、ILCは決してべらぼうに高い負担を日本が背負うものではないと感じる。その辺をわれわれもしっかり訴えなければいけない」(階氏)
 鈴木氏も「数字が独り歩きし『こんな金額つぎ込めるか』『他分野の研究予算が無くなる』との批判につながってはよろしくない。もちろん、日本の負担が5000億円に収まればそれでいいという話ではない。可能な限りのコストダウンをして、精査する作業は欠かせない。この辺についても、日米欧の協議において検討していくことになるだろう」
 国際研究者組織リニアコライダー・コラボレーション最高責任者のリン・エバンス氏=ロンドン・インペリアルカレッジ教授=は、昨年12月に盛岡市で開かれた国際会議「LCWS2016」で、施設の段階的建設によってコスト削減を図るアイデアを披露している。

【効果の提示が大切】
 コストに見合うだけの効果をどれだけアピールできるかも重要だ。
 鈴木氏は「お金の損得に限らず、地場の中小企業育成や教育文化の振興もメリットに含まれる。同じ国際協力事業でも、国際宇宙ステーションは宇宙飛行士にならない限り、現場を直接見て感じることはできない。しかし、ILCは身近な場所に建設され、そこで研究している人たちと直接対話もできる。次世代の育成には、非常に有意義な施設だ」と力説する。
 予算面への影響を懸念している他の学術分野への波及効果も、もっと示していく必要がある。「がん治療の新技術や核種変換技術もその一例だ。特に放射性物質の半減期を短縮させる核種変換技術は、福島第一原発事故への対応にも大きく関係してくる」(鈴木氏)
 階氏は、岩手にとって大きな課題である「人口減」への効果を期待する。「少子化による自然減、都市部流出による社会減の『ダブル減』が起きている。これを食い止めるには、若い人たちが地元に希望を持てるプロジェクトが必要だ。自分たちもILCに加わり、能力を高めたいという思いが岩手のためになるし、人口減の歯止めにもつながるだろう。人口減に悩む岩手だからこそ、ILC誘致をやらなくてはいけない」

【国民周知の方法】
 研究者、政界、経済産業界、そして候補地の地元。それぞれにILC誘致を見据えた動きを展開しているが、現実問題としてILC計画の存在が広く知れ渡っているわけではない。本紙を含む地元メディアでは大々的に取り上げられても、全国的な広がりは乏しい。
 このことについて階氏は「ニュースでよく取り上げられる東京オリンピックやリニア新幹線が、最初から『オールジャパン』の雰囲気でやってきたかというと、必ずしもそうでもない。今は確かに東北以外の人たちからすれば、自分たちには関係ないという雰囲気が強いかもしれないが、地元から『やろう!』という熱意を示すことで、他地域にだんだんと広がっていくのでは」とみる。
 鈴木氏は、ノーベル賞の話題と結び付けるのも一手法だと語る。「毎年のように日本人が受賞しており、そのたびに受賞者の皆さんは『基礎的研究の大切さ』を訴える。もしこの先、基礎科学のネタが尽きてしまえば、科学分野での日本人受賞は遠のいてしまうかもしれない。そうならないようにするためのいわば代表選手がILC計画だ」
 さらに鈴木氏は、気持ちの面だけでなく目に見える対応でのオールジャパン体制構築が検討されていることを明かした。国内候補地の最終選定に残った脊振山地がある九州に、ILCのデータ解析センターのよう関連機能を設置する案だ。「北上山地だけでなく、日本各地にILC関連機能を持たせるのは、一つのいいアイデア。オールジャパンでやっていく姿勢を崩してはいけない」

【地元がやるべきこと】
 政府判断を待ちわびる研究者や候補地の地元関係者。鈴木氏は「地元の皆さんからもILC実現に関する陳情をたくさん受けている。いずれ、ここ2年のうちに政府判断の時期が来る。そういう状況下なので、例えばILCだけに特化した国政要望があってもいいのでは。それくらいの強い意気込みをぜひ示してほしい」と語る。
 階氏は「自分もそうだが、他の文化や地域の人たちと交わるまでに時間が掛かるという人が少なくない。しかし、ILCによるメリットを得るには、そのような壁を乗り越えなければいけない。ILCが来ると、国際研究都市が形成され、海外からも多くの人たちがやって来る。岩手県は現在、台湾など海外からのインバウンド観光に力を入れているようだが、こうした取り組みを通じて日ごろから外国人との交流を深めてほしい。その経験は、ILCが来た時に役立つはずだ」と、地域の取り組みに期待を寄せている。

写真上=「ここ2年が勝負どころ」と強調する鈴木俊一氏(自民党本部内の財務委員長室で)
写真中=地元の熱意が全国的認知度向上につながると語る階猛氏(衆議院第二議員会館内の事務所で)
写真下=記者会見でコスト削減策を説明するLCCのリン・エバンス氏(昨年12月)
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tanko 2017-1-1 12:10
 昨年12月、盛岡市で開かれた国際会議「リニアコライダー・ワークショップ(LCWS)2016」で、県内外の加速器関連企業などによる企画展が開かれた。
 奥州市江刺区愛宕字金谷のサンアイ精機は、粒子ビームの偏向装置を提案。同社は、精密加工する金属部材を固定する器具「強力マグネットチャック」を製品化しており、本年度の東北地方発明表彰中小企業庁長官賞に輝いた。
 強力な磁力で金属部材を固定し、精密加工時の誤差や部材損傷を最小限に食い止める。電力は使用せず、熱も発生しない。スイッチ一つで磁力発生のオン・オフが可能。この特性を利用し、加速器装置で必要となる粒子ビームの進行方向を操作する部品を試作した。
 とはいえ同社の菊地寛会長は、最初から加速器本体部分への参入を狙っているわけではない。地元には大手にはできない仕事があるという。
 「例えば『この部分を少し削ってもらえないかな』というような日常的なメンテナンスは、時間やコストのことも考えると、現場に近いところでやったほうが断然いい。まずは『うちは、こういうことができる会社だ』というのを示したい」
 高エネルギー加速器研究機構(KEK)への素粒子実験装置部品を手掛けた実績を持つ千田精密工業=奥州市前沢区五合田=も企画展に出展した。千田ゆきえ取締役は「何ができるか手探り的なところもあるが、このような場に参加してアンテナを高くしていく必要はある」と話す。


写真上=試作したビーム偏向磁石を手にするサンアイ精機の菊地寛会長
写真下=LCWS企業展会場には、加速器の内部を研磨する装置のモデルも展示された
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tanko 2017-1-1 11:00
 国際リニアコライダー(ILC)計画が、一般市民に知られるようになり今年で8年。「あと2年程度がILC実現への最後の機会」(東北大大学院・山本均教授)と言われる中、候補地の地元自治体や産業界などは受け入れ態勢の構築を進めている。「待つだけでは、波及効果は得られない」と、誘致関係者はあの手この手で地元熱意をアピールしている。しかし、北上山地への建設を確定付ける日本政府の判断が示されていない状況で、巨額予算に対する国民理解が得られるかも未知数。東京五輪問題に象徴されるような新たな課題への対応と方針の見直し、自国優先主義やさまざまな外交課題が山積する世界情勢などが日々伝えれる状況もあり「期待はしているが、本当に想定通りになるのか実感が乏しい」という本音が見え隠れする。(児玉直人)

【農林業との結びつき】
 岩手県職員時代からILC計画に関わってきた一関市の勝部修市長は、農林業とILCとの関係構築を主張している。昨年6月、奥州市文化会館(Zホール)でのシンポジウムでは「例えば研究施設や文化ホール、国際会議場は県産材で造るといった考えもある。これは、(県立大学の)鈴木厚人先生が提唱する『グリーンILC』にもつながる」と、具体的な話も示した。
 外国人研究者が喜ぶような新しい野菜の作付けの可能性も視野に入れている勝部市長。スイスのCERN(欧州合同原子核研究機構)のレストランを視察した際の話を織り交ぜ「ILCの場合も、各国の研究者が大勢やって来ることが想定される。施設内の食堂で使う食材は、全て地元のものでやりたい。地元の農家も希望が見いだせるし、雇用にもつながる」と強調する。CERNのシェフを招いて、一関や岩手、東北の食材を使ったメニュー考案会を開くといったアイデアも披露した。
 昨年12月、勝部市長は盛岡でのシンポジウムでも農林業とILCの関係を再度強調。計画性をもって取り組む必要はあると前置きしつつ、「ILCが来るのを待つという状況から脱却しなければ」と呼び掛けた。

【期待しているが…】
 奥州市ILC推進連絡協議会副会長を務める、JA岩手ふるさと経営管理委員会の門脇功会長。「もちろん夢のある話であり、実現すれば関係者が滞在する。来訪者、定住者が増えれば必ず『食材の提供』が生じ、地元農業の振興にも結びつく。放射能対策に関わるような研究発展も期待したい」と願う。だが、地域農業とILCとの具体的な取り組みを検討、着手するという段階にはまだ至っていない。
 政府判断が正式に出ていないこともあるが、門脇会長は胆沢ダムの発電用利水を例にILCに対する認識を語った。
 ダム堤体直下には、電源開発(Jパワー)が運営する「胆沢第一発電所」がある。門脇会長によると、発電用水の調整などの制御は現地ではなく、埼玉県川越市のJパワー施設で行っているという。「つまり、ILCも同じように『ここ』以外のどこかに多くの研究者がいて、遠隔操作するという方法を取ることもあり得るのでは――と思ってしまう。今の時点では、本当にどれくらいの数の研究者や家族らが住むのかも分からない」

【どこまで「確実」か】
 これまで公表された各種ビジョンでは、研究拠点となるメーンキャンパス(中央研究所)や研究者らの居住地域は、ILC本体近くに整備するような青写真が描かれている。外国人を含む研究者とその家族が約3000人住むともされている。
 しかし、これらはあくまで計画通り、想定通りに事が進んだ場合の話。政府判断が示されておらず、関連するデータ、ビジョンも推測や希望論が中心の状況であるため、具体的な一歩を踏み出しにくい。
 仮に日本政府がゴーサインを出したとしても、多様な外交問題が起きている中、世界の主要国が本当に同意してくれるかも見えない。産学官の高度な交渉努力が求められる。
 地域全体が本腰を入れるようなレベルまで、機運を高められるかも気に掛かる。東京五輪をめぐっては、競技会場がある東京都以外の自治体に対し、仮設施設の費用負担を求める可能性が浮上。「後出しじゃんけん」のごとく、後になって想定外のコスト負担が地元に求められるような事態も懸念される。
 こうした現実に起きている問題が、ILCでも起こり得るのではという一種の疑心暗鬼のような心情を駆り立て、熱意高揚を妨げている可能性もある。
 農林業に限らず、地域が持つ潜在的な力をILCに生かすための具体的な一歩を踏み出すには、現実味のある雰囲気をいかに示せるかが重要なポイントとなる。県ILC推進協議会や東北ILC準備室といった関係組織では、より踏み込んだ経済効果額の算出や実現のために必要な具体対応を整理しており、なるべく早い段階で提示したい考えだ。
 誘致活動に直接携わったり、国内外の研究者らと接触している関係者にとっては、取り組み状況の把握や互いの熱意を共有しやすい。一方で、そのような機会が少ない地元産業関係者や一般住民にとって、ILC計画はまだまだ現実味や具体性が感じにくいプロジェクトと言っても過言ではない。
 誘致の旗振り役となっている研究者や自治体、経済団体などが、地元企業や一般市民の心をどれだけつかめるのか。ILCの賞味期限が切れぬうちに、講じなければいけない手だては山ほどある。

写真上=農林業とILCとの結びつきについて持論を述べる一関市の勝部修市長(昨年12月、盛岡市中央公民館)
写真下=ILC誘致に対す考えを語るJA岩手ふるさとの門脇功会長

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