人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市東部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)
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tanko 2016-11-20 19:30
 県市長会(会長・谷藤裕明盛岡市長)はこのほど、省庁や国政関係者へ国際リニアコライダー(ILC)誘致実現などを要望した。
 要望活動には、小沢昌記奥州市長ら12市長らが参加。復興庁や文部科学省、自民党本部などを訪問し、ILC誘致実現のほか、東日本大震災からの早期復興などを求めた。
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tanko 2016-11-20 19:30
 国際リニアコライダー(ILC)に関連した国際学会「リニアコライダーワークショップ(LCWS)2016」が12月に盛岡市で開かれるのに合わせ、県ILC推進協議会(谷村邦久会長)などは県民集会「ILCシンポジウムin岩手」を開催する。地元の熱意を全国や世界に発信する狙いで、同6日午後2時から盛岡市中央公民館で講演会やパネルディスカッションを実施。パネルディスカッションには、小沢昌記奥州市長らが登壇する。

 LCWSは、ILCなど直線型加速器を使った素粒子実験計画について、第一線の研究者らが集い協議する国際的な学会。開催国を変え毎年開催している。日本で行われるのは2013(平成25)年以来。ILC建設の有力候補地である江刺区東部を含む北上山地の近くで開催することもあり、参加者らによる候補地見学も予定されている。
 県推進協と東北PPP(公民連携)推進連絡協議会が主催のシンポジウムは、地元の熱意を広く発信しようと、LCWS2016の関連行事として企画。東北経済連合会、東北ILC推進協、いわてILC加速器科学推進会議が共催団体として名を連ねる。
 第1部では、県立大学の鈴木厚人学長が「ILC計画の現状と地域へのインパクト」と題し講演。続く第2部のパネルディスカッションは、「ILC実現に向けての各地の取り組みと展望」をテーマに意見を交わす。
 パネルディスカッションには、小沢奥州市長のほか菅原茂・宮城県気仙沼市長、佐藤光彦・盛岡市副市長、勝部修・一関市長、大平尚・岩手県政策地域部長が登壇。岩手大学と東北大学で客員教授を務める吉岡正和氏が司会進行を務める。
 シンポジウム聴講定員は300人。申し込み、問い合わせは県ILC推進協事務局(盛岡商工会議所内、電話019・624・5880)へ。
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tanko 2016-11-18 10:00
 精密な金属部品の加工を実現するための固定器具を開発したとして、江刺区愛宕字金谷のサンアイ精機の菊地晋也代表取締役(43)らにこのほど、本年度東北地方発明表彰中小企業庁長官賞が贈られた。同社は切削加工を施す金属材料を磁力によって固定する装置「強力マグネットチャック」を開発。既に自動車や電気製品など、高精度な部品加工が求められる製造現場で使用されている。

 同表彰は、公益社団法人発明協会(野間口有会長)が毎年実施している地方表彰の一つ。全国を8ブロックに分け、各地域で優れた発明品を完成した人たちや、その指導に携わった人たちをたたえている。今回、サンアイ精機が受賞した中小企業庁長官賞は文部科学大臣賞、特許庁長官賞と並ぶ上位表彰に位置付けられている。
 同社が開発・製造したのは、鉄鋼材料などを加工する際に使用する固定器具。高精度の切削加工では、材料が振動などで動かないよう、万力のようなもので挟んだり、ボルトで止めたりして固定している。
 しかし、強く固定しすぎると材料を変形させたり傷を付けたりする恐れがある。また、材料と固定器具が接している部分には加工装置が入り込めないため、材料を固定器具から一度取り外し、位置を変えて再度装着する手間が生じる。効率が悪いばかりか、再装着の取り付け位置がわずかにずれるだけで、精度の落ちた部品が仕上がってしまうという。
 こうした課題を解消しようと、同社は磁力で材料を固定する器具の開発に着手。県工業技術センターの目黒和幸主査専門研究員と共に試行錯誤を重ね、切削加工の振動などに耐えられる強い磁力と、材料の着脱がしやすい弱い磁力との切り替えが容易にできる固定器具を生み出した。
 磁力のオン、オフは専用のレバーを使ってスイッチを動かすだけで可能。電力は使用しておらず、熱も発しない。加工が終わるまで、固定器具に素材を付けたままにできるため、複数工程を経ても精度の狂いが生じにくくなるほか、器具の活用方法を応用すれば、作業の自動化や無人化にも対応できるという。
 中小企業庁長官賞は、開発に携わった菊地代表と目黒主査専門研究員の2人が受賞。同技術センターの斎藤淳夫理事長には実施功績賞が贈られた。
 菊地代表の父、菊地寛会長(67)は「時代の流れに私どもの製品がマッチングできた。ものづくりの先進国らしい、他と勝負ができるような製品づくりのお手伝いができれば」。菊地代表は「中小企業でもチャレンジすれば評価されることを実感できうれしい。今後は異業種からもさまざまなアイデアを頂き、大手だけでなく地元の中小企業の皆さんにも活用されるようなものを生み出したい」と話していた。

写真=開発した強力マグネットチャックを手にする菊地晋也代表。表面に加工部品を乗せ、側面中央の穴にレバーを取り付けスイッチを入れると、強力な磁力が発生し部品が固定される
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tanko 2016-11-12 9:50
 世界最大の電波望遠鏡(FAST)が、稼働を始めた。中国の話だ。南西部貴州省にある山中に建設された電波望遠鏡は、巨大な球面型で口径500mの大きさで、面積はサッカー場約30個分に相当するという。構想から20年あまりをかけて完成。これに伴って、周辺住民約1万人が強制的に移転を余儀なくされたらしい。
 電波状態の環境確保、電磁波の影響を考慮し、望遠鏡から半径5km圏内の住民が移転したのだそうだ。日本円で、一人当たり約20万円の補償。望遠鏡設置の総工費は約180億円といい、移転費用とつりあうのだろうか。日本では簡単にいかないだろう。ともあれ、プエルトリコにある直径305mのアレシボ天文台の望遠鏡を超え、世界一になる。
 極めて弱い電波も受信できるため、天体観測のほか、地球外の生命体の探査も期待される。習近平国家主席は、世界の科学技術強国の建設に意欲を示したと伝えられた。そんな中国の動きで憂慮されるのが、国際共同事業である国際リニアコライダー(ILC=直線加速器)だ。
 北上山地への設置が待たれるが、なお計画は凍結中で、進ちょく具合が見えてこない。1兆円を超す建設費が一つの課題であり、経済への波及効果も明確ではない。
 中国では、円形加速器計画がある。すでに設計を終え、2021年から2027年にかけて建設する計画のようだ。1周50kmで始め、次いで70kmとする超巨大円形加速器。壮大な計画には、世界の研究者たちに開放する意向のようでもある。
 ILCは、1990年代に高エネルギー加速器研究機構(KEK)が提案し、構想が生まれた。凍結が長引けば、中国に後れを取る懸念がある。世界の研究者たちは、中国へと目を向けることにならないか。科学分野においては、各国とも友好的のようにも見えるが、逆手に取って利用されることが心配だ。人類の有史以来、覇権をめぐる争いは続くからだ。

(風)
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tanko 2016-11-4 9:50

 フランス北東部の都市、ストラスブルグで開催している放射線技術に関する国際会議「2016 IEEE NSS・MIC」で、国際リニアコライダー(ILC)に関する講演が行われ、ILC議連の階猛氏(衆院岩手1区)や県立大学の鈴木厚人学長らが登壇。ヨーロッパの科学技術関係者ら対し、ILC実現に向けた協力関係の構築を求めた。同会議会場には、東北ILC推進協議会(事務局・東北経済連合会=東経連)によるPRコーナーも設置された。
(児玉直人)

 IEEEはアメリカに本部を持つ電気・電子工学技術の学会。毎年、放射線を利用した基礎研究に関するシンポジウム「NSS(Nuculear Science Symposium)」と、医療系分野への放射線利用に関する会議「MIC(Medical Imaging Conference)」の2分野を合わせた国際会議を開催している。ILCで行われる研究や波及効果は両分野に関連性があり、世界的に権威があるとされる同会議は、絶好のプレゼンテーションの場となった。
 10月29日から11月5日までの会期中、階氏らの講演は10月31日に行われた。同行した東北大学大学院の山本均教授や、東経連の西山英作・産業経済部長によると、鈴木学長はILCの概要やこれまで日本が参加してきた国際研究の実績を紹介。「日本にはILCを実現するための加速器技術力がある」などとアピールした。

 続いて登壇した階氏は、東日本大震災に対する支援へ感謝を伝えながら、「北上サイトはILC建設に適している」と強調。ILC議連のメッセージとして、コスト削減などについて話し合う日米間の協議グループが立ち上がっており、ヨーロッパにもその輪を広げたいと伝えた。さらに新渡戸稲造(盛岡出身)の言葉「願わくは、われ太平洋の橋とならん」を引用し「ILCにとってのこの“橋”は、今は日米間に形成されつつある。次のステップはユーラシア大陸に日本とヨーロッパをつなぐ道を築くこと」と述べ、協力を強く求めた。
 会議会場には企業等による展示スペースも設けられ、東北ILC推進協もPRコーナーを開設。西山部長によると、多くの会議参加者の関心を集めたという。

写真1=IEEE主催の国際会議で講演する階猛氏(左) 東北大大学院・山本均教授提供
写真2=会議会場に設けられたILCのPRコーナー 東経連・西山英作部長提供
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tanko 2016-11-4 9:50
 奥州市は、国際リニアコライダー(ILC)実現で想定される在住外国人増加に向けた取り組みの一環として、「多言語情報紙」の発行を始めた。英語と中国語、振り仮名付きの日本語により市内生活情報を中心に掲載。毎月1回、郵送または電子メールで希望者に無料配布し、暮らしをサポートする。
 情報紙の掲載内容は、予防接種や奥州金ケ崎休日診療所の紹介、粗大ごみ収集や税納付、各種イベント開催予定など。広報おうしゅう本号、お知らせ版の内容をまとめる。
 この取り組みは、奥州市政策企画課ILC推進室と市地域づくり推進課が連携。市ILC国際化推進員を務めるトマス・アンナさん=米国出身=が英訳、多文化共生推進員の曽穎さん=中国出身=が中国語訳を担当する。
 すでに市内400人超の在住外国人に情報紙の希望の有無を尋ねるアンケート用紙を送付した。11月から毎月上旬の発行を予定している。奥州市ホームページに掲載するほか、市国際交流協会にも提供して役立ててもらうという。
 アンナさんは、在住外国人に活用してもらうことで「安全で健康に、楽しみながら奥州市で暮らしてほしい」と願う。

写真=市ILC国際化推進員のトマス・アンナさん。市は多言語情報紙の発行で在住外国人の暮らしを応援する
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tanko 2016-11-1 11:50
 北上山地が建設候補地となっている素粒子研究施設・国際リニアコライダー(ILC)の巨大ジオラマ模型がこのほど、東京都港区の「東京ミッドタウン」にお目見えした。建築家の長坂常氏=スキーマ建築計画代表=がデザインしたもので、全長は15m。ILC計画は国民理解を得る前段として、計画そのものの認知度を高める必要があるだけに、関係者は異分野との連携による周知拡大に期待を寄せている。展示は6日まで。
(児玉直人)

 巨大模型は、海外で高い評価を受けている日本人デザイナーや企業にスポットを当てるイベント「サローネ・イン・ロッポンギ(Salone in Roppongi)」のメーン展示物として制作された。
 同イベントは、毎年何らかのテーマを設け「日本のデザイン力」を発信している。今回はILCをデザインの力で分かりやすく伝える試みに、建築から家具まで幅広いデザインを手掛けている長坂氏が挑戦。ILC計画を推進する国際研究者組織「リニアコライダー・コラボレーション(LCC)」が協賛、誘致団体の「先端加速器科学推進協議会(AAA)」協力した。
 茨城県つくば市の高エネルギー加速器研究機構(KEK)を訪問するなどしてILCの全体像をつかみ、構想を練った長坂氏。北上山地のILC建設想定エリアを地中から切り抜いたような模型を設計した。
 製造には、寺院などを取り囲む土壁を作る際に行われていた日本の伝統工法「版築」を用いた。板で作った型の中に土を押し込み、何層にも踏み固めて壁を築く手法で、衣川区の国指定史跡・長者ケ原廃寺跡の築地壁を作る時にも使われていた。
 試作を経て、10月28日から2日間にわたり会場で制作。美術大生のほか、ILC推進に携わる東京大学の山下了特任教授らも作業に参加した。
 模型の上面には北上山地の衛星写真を基に、山々の起伏や集落を再現。また、模型本体の一部は切り抜かれていて、地中に加速器がどのように配置されるのかが一目で分かる。側面に設けられたのぞき窓からは、電子と陽電子の衝突現象をイメージした映像を見ることができる。
 長坂氏は「『知らないことを知れる』いい機会になると思い興味をそそられた。あまりにも巨大な設備と、(素粒子のような)あまりにも小さなマクロの世界であり、両方とも建築の世界が入り込むこと自体難しい領域だが、そこに踏み込んでみたいと思った」とコメントしている。
 LCCの広報業務を担当するKEKの高橋理佳さんは「奥州市から上京中の人が偶然にも通り掛かり、『こんなところで、ILCのPRをしているとは思わなかった』と喜んでいた。ILCもさることながら、加速器という言葉を知っている人が想像以上に多かった。ぜひ候補地の岩手でもこのような参加型イベントを開催できたら」と期待を寄せていた。

写真=東京ミッドタウンに出現したILC建設予定地をイメージした巨大模型 (C)A.KONDO

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