人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市東部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)
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tanko 2016-7-31 21:41
 北上山地が有力候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)は、国民の認知の低さに直面している。日本初の本格的な国際研究拠点が構築される大型事業でありながら、計画の存在すらほとんど知られていない。その打開策の一つとして、日本生まれの人気キャラクター「ハローキティ」を用いたPR商品が登場。キャラクターの高い知名度と親しみやすさを生かし、浸透を図りたいというが、国民理解や世論の盛り上がりにしっかりつながるのか懸念する声もある。
(児玉直人)

■正攻法とは違った入り口
 キティとILCのグッズを販売するのは、産学連携のILC誘致組織である先端加速器科学技術推進協議会(AAA、東京都港区)。キティの著作権や商標権を持つサンリオ(東京都品川区)の協力を得て開発。めがねをかけた研究者コスチュームのキティがILCの加速器(クライオモジュール)に座り、背後には物理の数式を配した。Tシャツやクリアファイル、ボールペンなどにして8月15日に本県で先行販売する。
 AAAや研究者の国際組織リニアコライダー・コラボレーション(LCC)で広報業務を担当する、高エネルギー加速器研究機構(KEK)の高橋理佳氏は「ILCで行う素粒子物理の研究は、どうしても『難しい』とみられてしまう。正攻法で理解してもらうだけでなく、違う入り口からILCを知ってもらおうと考えた」と経緯を話す。
 数ある日本のキャラクターの中でも、キティは海外認知度が高く「むしろ大喜びされる」と高橋氏。「いつもと異なるキティの姿に『何これ? でもかわいい』と飛びついてもらい、そこからILC計画を知ってもらえたら」と強調する。

■異分野との交流も展開
 ILCの国民理解の必要性は、文部科学省の有識者会議においても指摘されている。巨額な事業費が必要なプロジェクトだけに、一部の声だけで推進するわけにはいかない。
 研究者らは、ノーベル賞級の研究成果が得られると訴える。ところが、ILC計画そのものがほとんど知られておらず、全国紙やテレビなど主要メディアで取り上げられる場面は少ない。
 AAAやLCCは、今回のPRグッズ発表に合わせ、芸術関係やファッション雑誌など、これまで素粒子物理学界とは接点が薄かった分野の関係者を招いたイベントを都内で開催。LCCの最高責任者のリン・エバンス氏、副代表の村山斉氏がILCの意義を説明し、交流を深めた。
 人気キャラクターの活用など、新たな切り口で周知が始まったが、プロジェクトを推進する中では真摯な対応も求められる。建設に伴う自然環境への影響、都市整備、人材確保など候補地の地元と膝を交え協議しなければいけない事柄は多岐にわたる。高橋氏は「候補地の皆さまとの対応についてはこれまで同様、しっかり取り組んでいく」と話している。

■「かわいい」だけで終わらないか
 海外に拠点を置く日本人研究者も、日本国内の周知不足を懸念している。東日本大震災被災地を中心に、科学やILCに関する講演活動を展開している斎藤武彦氏(ドイツ・マインツ大学教授)だ。
 今年6月、水沢区多賀の水沢学苑看護専門学校で講演。学生たちに「ILCの候補地は皆さんが今いる岩手、奥州なんです」と伝えると、「えー、知らなかった」「すごい」と驚きの声が飛び交った。
 斎藤氏は2013年、県内の大学に理系学部を設置すべきだと提言。今春、岩手大学の工学部が理工学部に生まれ変わった。自身とは異なる研究分野を扱うILCだが「被災地の子どもたちの将来のためになる」との思いで、ILCの意義を伝え続けている。
 「同じ岩手であっても、沿岸被災地に至ってはILCの認知度はまだまだ低く、地域のさまざまな取り組みと関連付けるような動きも目に見えてあるわけではない」と斎藤氏。「復興の象徴」と大々的に打ち出されているが、それを実感させるような雰囲気が乏しい。
 KEKの高橋氏と同様、周知不足を懸念している斎藤氏。だが、今回のPRグッズについては「違和感を覚える」という。
 「私の勤務する研究所もだが、ヨーロッパでは大型プロジェクトを進める際に、キャラクターやグッズを使って関心を呼び起こすようなことはしない。科学そのものの面白さを市民に伝えることに力を入れる」。正攻法で理解を求めているという。
 「聞き手である子どもたちや市民が一体どんなことを知りたいのか、何を伝えればそのプロジェクトを楽しいと感じるのかを重視してアピールする。科学者がそういう視点を持てば、理解も深まり周知されるはずだ。キャラクターグッズを用いたら、そのキャラクターへの関心だけで終わってしまう可能性もある」と指摘する。
 さらに斎藤氏は「周知活動はもちろん大切だが、沿岸復興への貢献をしっかり考えていくべきだ。東北の人たちが主人公として活躍できる体制づくりに一番力を入れてほしい」と切望している。

写真=ILCの一般周知を図るために売り出されるグッズ。Tシャツを着用しているのは、LCCのリン・エバンス最高責任者(左)と村山斉副代表(LCC提供)
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tanko 2016-7-25 11:30
 北上山地が有力候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の研究や装置開発に携わっている研究者と地元中高生との交流会が24日、一関市大手町の同市図書館で開かれた。県立水沢高校の生徒ら8人が、第一線で活躍する研究者からILCの概要のみならず、研究者に求められる素質などについて興味深く聴き入っていた。
(児玉直人)

 交流会は、同市内で23日から26日まで開催している「加速器・物理合同ILC夏の合宿2016」に合わせ企画。全国の大学や関係機関から約60人の研究者が集まり、情報共有や共通認識の醸成を図っている。候補地の地元で開催するのは初めてで、多くの研究者が集まるせっかくの機会にと、県科学ILC推進室や研究者組織などが連携し、地元の中高生と研究者が語り合える場を設けた。
 研究者に求められる素質について講演した広島大学大学院の栗木雅夫教授は、「成績が良く公式を丸暗記している人が、研究者に向いているとは限らない。この公式はどうやって考えられたのか、本当に正しいのかと考えるような人が向いている」と指摘。「教科書は覚えるものではなく、理解するもの。考えることが快感になれば、研究者になれる」と持論を展開した。
 引き続き生徒たちは、5人の研究者とグループ形式で対話。水沢高校理数科2年の遠藤咲季さん(17)は、九州大学大学院の川越清以教授から、研究者になる上での学習や進路のポイントなどについて助言を受けた。「身近に研究者の仕事をしている人がいないので、遠い存在というイメージがあったが、たくさんの話を聞くことができて将来の進路を考える上で参考になった」と笑顔で話していた。
 当初、水沢高校からは5人の生徒が参加予定だったが、北上市内の東北本線で発生した踏切事故の影響で3人が会場入りできず、参加を断念した。

写真=九州大の川越清以教授からアドバイスを受ける生徒たち
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tanko 2016-7-22 11:50
 国際リニアコライダー(ILC)の実現を目指し、国内の若手研究者らが交流する「加速器・物理合同ILC夏の合宿2016」が、23日から4日間の日程で一関市内を会場に開かれる。24日には、県立水沢高校をはじめとする県内の理数系学科設置高校の生徒らが、合宿に参加する研究者や技術者と交流する場も設定。講演やグループ対話を通じ、科学と研究職を身近に感じてもらう。
 県科学ILC推進室などによると、同合宿は2011(平成23)年から毎年この時期、国内で会場を変えながら実施。加速器科学者と素粒子物理学者間の情報共有や共通認識の醸成、ILC実現を見据えた若手研究者間の交流を促す目的で、関係研究機関や大学の教授らが組織委員会をつくり開催している。
 今年は、ILC建設候補地の北上山地周辺での開催に向け準備を進めていた。約60人の研究者らが参加を予定。県立大学の鈴木厚人学長がILCに対する地方の取り組みについて紹介するなど、ILC実現に向けた動向や関係する技術について理解を深める。
 24日には、合宿に参加する研究者や技術者と県内の高校生らとの交流会が一関図書館で開かれる。ILCに対して理解を深めるだけでなく、研究者や技術者になぜなったか、なるために必要な努力は何かなど、進路選択の参考になる話題にも触れる。参加生徒の募集は既に締め切られている。
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tanko 2016-7-18 11:50
 英国の国民投票で欧州連合(EU)からの離脱派が勝利したことと、国際リニアコライダー(ILC)など素粒子物理学の大型プロジェクトに与える影響についての解説記事がこのほど、国際研究者組織「リニアコライダー・コラボレーション」(LCC)に掲載された。記事では「英国の研究機関にとっては明るい話題ではない」としながら、ILCなど線形加速器の国際プロジェクトに、英国は今後も貢献していくだろうとしている。
 記事を執筆したのは、オックスフォード大学ジーザス・カレッジのフィリップ・バロウズ教授。バロウズ教授は、欧州合同原子核研究機構(CERN)が中心となり計画している小型線形加速器実験施設「CLIC」の調査副責任者などを務めている。
 バロウズ教授は「CERNは独立した国際組織で、欧州経済共同体(EUに機能継承し2009年廃止)が発足する3年前に誕生した。英国は創設時からのメンバーで、今回のEU離脱の投票結果と、CERNに参加し続けることに影響はない。CERNのメンバーになっていないEU加盟国もあるし、その逆もある」と説明。欧州内だけでなく、日本や米国などの国々とも連携していることも紹介した。
 その上で「確かに英国の研究者たちはEUを通じ、毎年多額の研究資金を調達している。EU離脱が現実のものとなるかどうか、今後もEUの研究基金から資金を得られるのかどうかについては、まだ疑問の余地がある」とした。
 EUに加盟していないノルウェーやスイスは、EUが実施している科学研究事業に対し、資金拠出を含めた協力をしているという。「英国も同じような道を歩むかもしれない」とバロウズ教授。「英国の研究者界にとって、EU離脱は決して明るい話題ではないが、これからも国際的な連携をとり貢献したい。この貢献の中には、(ILCやCLICなどの)線形加速器プロジェクトも含まれる」と強調した。
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tanko 2016-7-12 16:10
 前岩手県知事の増田寛也氏(64)は11日午後、東京都庁で会見し、東京都知事選(14日告示、31日投開票)に出馬することを正式表明した。子育てや高齢者の不安解消、東京五輪の成功などを公約に掲げ、東京と地方の共栄を目指し「両者が抱えている課題の解決に当たる」と意欲を示した。都知事選には、元防衛相の小池百合子氏(63)ら数人がすでに出馬を表明している。
 公費の不適切使用が問題となり辞職に追い込まれた舛添要一氏(67)の後任を決める今都知事選。候補者擁立をめぐる動きは混迷を極めた。
 増田氏は東京都出身で、東京大学法学部卒業後、旧建設省に入省した。1995(平成7)年、当時新進党幹事長だった小沢一郎生活の党代表の後押しを受け、岩手県知事選に出馬し初当選。その後、小沢氏の影響力から距離を置きながら2007年まで3期12年務めた。
 知事退任後は総務大臣を務めたほか、東京大学公共政策大学院客員教授、野村総合研究所顧問、日本創成会議座長なども歴任している。近年は、本県が建設候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)誘致にも積極的に関わっている。
 父は前沢区出身で参院議員を3期務めた故・増田盛(さかり)氏。同区三日町で商店を営む三浦清司さん(79)は「地元住民とすれば、増田さんは身近な存在。人口の東京一極集中を懸念し地方分権を進めてきた増田さんが、どのような政策を打ち出すのか」と期待を寄せる。
 いわてILC加速器科学推進会議代表幹事で、元県議の亀卦川富夫さん(76)=水沢区大町=は「今回の件で真っ先に脳裏に浮かんだのは後藤新平の存在」と語る。新平は、現在の都知事に相当す「東京市長」を務めた。市職員や議員の汚職が相次ぎ、市長が引責辞任する事態にまで発展し、新平が急きょ後任に推挙された。
 増田氏に対しては、岩手県知事時代の事業投資によって膨れ上がった債務への責任を問う声がある。さらに「東京一極集中の是正」の考え方にも批判的な見解がある。このことに亀卦川さんは「決して東京をないがしろにすることではない。地方と都市との役割分担、均衡ある発展がなければ、いずれ東京にも影響が生じる」と指摘する。
 小沢昌記奥州市長は11日の定例記者会見で、国際リニアコライダー(ILC)誘致に絡めて増田氏に期待を込めた。
 小沢市長は、東京一極集中の是正が持論だったため、出馬への疑問を呈す意見は一般論として把握しているとしながら、「賢明な方であり、もし都知事になられたら、全体としての東京の在り方と、東京は東京としての在り方を政策的にはお考えになると思う」とし、「候補者の中で最もILCについて知っているのが増田さんであり、このことについては大いに期待している。実務の経験があり、行政手腕のある方だ」と述べた。

写真=都知事選出馬を表明した増田寛也氏(2015年7月にZホールで開かれたILCシンポジウムで)
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tanko 2016-7-8 19:30
(1)からのつづき















 高橋金ケ崎町長 うまくいけばあと2年で建設準備とのことだが、お互いに勉強し、やるべきことを考え取り組まないと、夢で終わってしまう危険性がある。
 シンポジウムには工業団地内企業の経営者も来ているが、現在、この地域には開発部門がない状況だが、ILCとうまく結びついた産学連携をしていかなくてはいけない。
 ILCでは16万kWの電力を必要とするそうだが、それをどのようなエネルギーで供給するかも検討されることだろう。私は今、LNG(液化天然ガス)について勉強をしているが、LNGのパイプラインが新潟から仙台まで来ている。当地域まではまだ来ていないが、低コストのエネルギーが安定的に供給できるだろう。太陽光や風力による発電もあるが、LNGのパイプラインが延伸されれば、地域のインフラ環境も変わってくるだろう。
 企業誘致に関しては従来、場所を用意したり税金を下げたりといった対策を講じていたが、大きなメリットにはなっていないと思う。それよりも、人材やエネルギー、物流環境が整っていれば企業は来る。ILCを通じたインフラ整備によって、そのような環境も整備できるのではないかと思う。
 教育面では「ILC専門学校」のようなものができないものかと想像する。国際色豊かな環境の中で、子どもたちが成長していけたらと思う。
 何もかも「いいな」と思う一方、実はこれらの整備や費用の負担を誰がするのかという問題がある。役割分担をうまくやならなければ実現性は薄くなる。

 小沢奥州市長 奥州市は今年4月に「ILCまちづくりビジョン」を策定した。今やること、ILC建設が決定してからやることなどを指針としてまとめた。市民と関係者が一緒になり、でき得ることから進めたい。
 花巻空港と台湾との間にチャーター便が運航されている。えさし藤原の郷や、偉人の記念館がある当市へどう観光誘客をつなげるかも考えなくてはいけない。
 それから、インターネットを使用する上で必要なWi-Fi(ワイファイ)スポットも整備しなくてはいけない。Wi-Fiは「情報の入り口」。観光客だけでなく、地元住民にとってもメリットがある。
 こうした方向性をビジョンの中にまとめた。本年度は総合計画の策定年。より具体的な計画や事業は、実行計画の中にしっかり掲載し、予算付けしていきたい。
 一番のポイントは、国家プロジェクトとして「ILCがここに必要だ。ここに造るんだ」という思いを示し、国民理解を促していく努力をしていかなければいけない。これが当面の課題だろう。外部への情報発信をしっかりしていきたい。

 吉岡教授 ここまでの話を聞いて、鈴木学長や佐々木室長にコメントをお願いしたい。

 鈴木学長 そろそろILCに「枕ことば」が必要だと思う。例えば「自然と文化と共存するILC」といった、特色を生かしたキャッチフレーズをつけてみてはと思う。
 ILCには、いろんな国からさまざまな人たちが集まってくる。その人たちは、互いに相手の存在を認め合うだろう。その姿を世界に示せないかと思う。これこそ世界平和の一つの例だと思う。

 佐々木室長 ILCは世界に触れ、世界に出会い、世界に発信する機能を持つ場所になり得る。一種のショールームのようなもので、建物や暮らしぶりなどの情報も世界に向け発信されるだろう。もし現状の悪い点があれば指摘をされる。それはそれで改善へとつながる良いことだ。
 第1次産業との関連性について、ILC関連施設の内外で直接的に地場産品を扱うのもいいが、海外マーケットにつなげることも考え、視野を広げることも大切だろう。その過程では食品の保存・保冷技術といったものも発達する。次の世代に何を残すか努力し、チャレンジしてほしい。
 今、ILCの話をこうしてできるのは、この地域にしかないアドバンテージ(優位性)だ。子どもたちが素粒子物理学とかILCを知っているような地域はなかなかない。大人から子どもまで携わる過程そのものが、ILC計画がもたらす「世代を超えた地域の振興の在り方」を示すことになる。
 そう考えると、これまでは推進する側の一方的な説明に終始していたような気がする。1次、2次、3次産業のそれぞれの立場において、ILCとはどういうものか、どんな関係が自分たちにあるのか、分かりやすく説明しなくてはいけないと反省している。この点については積極的にやっていきたい。

 吉岡教授 会場の皆さんからは、何か質問はありませんか。

 聴講者1 ILCが来ることによるビジネスへの展開に協力したいと考えている。進捗状況を示していただき、こういうことが可能だというのを知らせてもらいたい。
 外国人がたくさんやって来る点についてだが、岩手県民はおもてなしの心は持っているが、ファーストコンタクト(最初の接点)に対する気持ちの壁が高い。金ケ崎町の中学生たちによる英会話キャンプの様子を見たが、最初はどうしてもモジモジしている。ファーストコンタクトのハードルを下げることにも協力してほしい。

 吉岡教授 ILCは東北にできるのではなく、東北が造るILCだと思う。もちろん世界からメーカーは来るが、実際に働くのは現地の人たち。私も東北の企業を回っている中で、この地域の企業が集まれば何でもできることが分かった。その上で、もっと情報を伝えなくてはいけないと感じた。

 鈴木学長 言葉についてだが、研究所内での使用言語は英語だが、居住地域では日本語で構わないと思う。実際、スペイン人やロシア人の子どもたち、奥さんたちは英語が分からない。「日本にいるんだから日本語を勉強しなさい」ということになる。主の言語は日本語とし、どうしても分からない部分は英語でカバーするというのが良いと思う。

 高橋金ケ崎町長 共通言語となり得る英語は、お互いを高める上でも必要かなと。日常会話のちょっとぐらいは学習を進めてはどうかと思う。先日開催した金ケ崎マラソンでは、日本語と英語両方でご案内した。そんなことを通じて違和感なくコミュニケーションが取れればと思う。

 聴講者2 あと1、2年で誘致に関していろいろ決まってくるとの話だが、中央衝突地点は一関市の摺沢の辺りではないかと聞いている。コメントをいただきたい。

 鈴木学長 環境保全や道路アクセスなど、専門的な観点から決めなくてはと思う。場所についてのうわさはいろいろ出ているかもしれないが、今の段階でどこにというのはない。ちなみに、北上山地か九州の脊振山地かを決めるときにも、200人ぐらいの専門家が集まって決めた。

 聴講者3 ILCには、大きな期待を寄せている。一関市の工業クラブの者だが、ILCを切り口としたまちづくりについて検討している。今後とも支援をよろしくお願いしたい。

 勝部一関市長 産業界の方々が一生懸命取り組まれていることに感謝申し上げたい。
 一関市内の学校の先生の話では、将来「科学者になる」と言う子どもが増えてきたそうだ。
 ILCに関連する仕事はたくさんある。研究者だけでなく技術者も働いている。CERNにはホテルも幼稚園もある。郵便局、銀行もある。

 佐々木室長 東北全体で、ILCに関心のある製造業の方々と研修会をやっており、地域としてILCの技術を一緒に取り組んでいく。「地元の企業でILCを造る」という方向で何とか向かっていきたい。

 吉岡教授 東経連(東北経済連合会)の方もいらしているので、よろしければコメントを。

 大江修・東経連専務理事 東経連ではこのほど創立��周年記念し、鈴木学長とキャロライン・ケネディ駐日米国大使を招き講演会を開催した。ケネディ大使は講演の中で、初めてILC計画について触れた。ILCについて話すことの影響力について、大使も意識されたのだろうと思う。
 地元の方々の熱意が米国の関係者にも影響を与えている。今年2月のILC議連訪米時には、岩手県ILC推進協議会の谷村邦久会長も同行し、地元の熱意をスピーチし、大きな感銘を与えた。
 これからさらに大人も子どもも巻き込み、東北全体、日本全体で盛り上げていくことで、ILC誘致実現に近づくことができるだろう。

 聴講者4 私はさまざまな企業経営者の方々とお話をするのだが、皆さんILC計画を知らない。この会場にいる皆さんの間では盛り上がっているようだが、勝部市長が指摘されたように、情報発信が全くと言っていいほどなされていない。国民レベルで「ILCはいらない」という意見なのであればそれでも構わないが、科学技術立国を目指す日本の国民がまるっきり知らないというのは私たちの努力不足だと思うが、どうか。

 鈴木学長 津々浦々までILC計画の周知ができていないのは、われわれも感じている。九州や神戸、広島、大阪、東京、そして岩手や宮城で、年に2回ぐらいILCの技術関係の会議はやっているものの、産業界の方々とお話をする場面はなかった。
 国のお金以外に何らかの、国民自らサポートできる仕組みはできないか考えている。1円でもいいから寄付してもらい、「ILC友の会」のような組織をつくり、情報を流せないだろうか。
 「国民レベルの議論がないと、なかなか難しいのでは」と、いろいろな人たちに言われている。今いただいたご意見も取り入れたい。

 吉岡教授 トリプルエー(AAA)の事務局長さんもいらっしゃるので、一言お願いします。トリプルエーとは、一般社団法人・先端加速器科学技術推進協議会のことです。

 松岡雅則・AAA事務局長 私たちはILCの誘致を目指す産学官連携の組織として活動している。やはりマスコミの力を活用しなくては広がらないと考えている。国際協力が重要となるプロジェクトなので、全国紙レベルで情報を伝えないといけない。ぜひ期待してもらえれば。

 吉岡教授 岩手県推進協の谷村会長からも。

 谷村邦久・県ILC推進協会長 今年の�q月、盛岡市でILCの国際会議「LCWS2016」が開かれる。日本や海外に、ILC実現に向けた情報発信ができる絶好の機会。しっかりと、地元の熱意を発信したい。

 吉岡教授 2市2町の首長と鈴木学長、佐々木室長の声に加え、客席からも有益な質問や意見があった。正式決定を実現するためにも、引き続き努力していきたい。
(おわり)

写真=左から吉岡正和教授、佐々木淳室長、鈴木厚人学長
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tanko 2016-7-8 9:10
 文部科学省の国際リニアコライダー(ILC)に関する有識者会議(座長・平野真一名古屋大学名誉教授)の第5回会合は7日、東京都千代田区の同省3階特別会議室で開かれ、ILCに携わる人材の確保・育成に関する課題などについて協議した。委員からは研究や建設の中心的な部分に携わる人材以上に、研究や企業の間でマネジメント(管理)するような人材の育成が急務だとする意見も出された。また事務局の同省研究振興局からは新たに検証すべき課題として、建設地自治体による費用負担を含めた貢献、地理的・地質的条件、建設の際に留意すべき法規制などが示され、今後、内容によっては新たな作業部会を設置し検討していくことを確認した。
(児玉直人)

 同有識者会議はILCの日本誘致を実現する上で解決すべき課題などを検証。政府判断の参考材料にする。会議内には科学的意義などを詳細に協議する部会に加え、昨年6月の第4回会合で人材確保に関する部会を新たに設置した。
 同部会がまとめた報告書によると、ILC建設には相当量の人材が必要になるものの、国内の現状では質・量とも圧倒的に不足。国内の加速器関連事業を継続する上では、ILC計画の実施可否を問わず、人材育成・確保は必要だと指摘した。その上で、必要な人材は建設作業の進捗状況などによって変化することから、育成した人材が次のステージへと進める環境を確保することの必要性も示した。
 このほか、海外からの人材供給も想定する中、住環境や各種生活のサポート、一緒に暮らす家族への生活支援については、建設地の地元協力を得つつ整えることが重要だとした。
 出席委員からは「大型プロジェクトのマネジメントについては、大学でもなかなか教えていないし、そういった役割をする人材への評価もしてこなかった」との指摘も。研究者と企業、あるいは企業同士を結び付けるような能力を持った人材の育成が急がれることが課題として浮き彫りになった。
 報告された同部会の検証結果については、一部文言の修正を平野座長と担当委員、事務局の間で行った上で、最終的な報告書としてまとめることで了承を得た。
 同日は、今後検討の必要が見込まれる事項について事務局側が提示。建設の際に留意する必要がある法規制との関係や地理的・地質的条件、地元地域や企業の貢献などを列挙した。
 地元による貢献に関しては、ILC関係装置の搬送に必要なアクセス道路の建設やまちづくりなどについて、費用負担の在り方も含め検討するという。
 この日挙げられた検討事項については、その内容によって新たな作業部会を設置して協議することにした。

写真=ILC建設に必要な人材の育成・確保などについて意見を交わした第5回有識者会議(文部科学省)
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tanko 2016-7-7 20:10
 今年12月、盛岡市を会場に開かれる国際リニアコライダー(ILC)関連の国際会議「LCWS2016」のポスターが完成した。宮沢賢治の童話「銀河鉄道の夜」や岩手山など、岩手らしさをモチーフにしたデザインで、すでに国内外の研究者に対してお披露目済みという。
 LCWSは、ILCなど直線型加速器を使った素粒子実験プロジェクトについて、世界各国の素粒子物理学者らが集い、協議する国際会議。開催国を毎年変えて開催しており、日本が会場となるのは東京大学で実施した2013(平成25)年以来、3年ぶり。ILCの有力建設候補地である北上山地に近い盛岡市での開催とあって、本県の誘致関係者は地元の熱意を伝える絶好の機会と捉えている。
 本年度会議の現地実行委員会議長を務める岩手大学理工学部の成田晋也教授によると、研究者らに開催を知らせるポスターは、同大学の職員がデザインした。
 葛飾北斎の「富嶽三十六景・凱風快晴」をほうふつとさせる赤色に染まった岩手山の上部に、銀河鉄道に見立てた加速空洞(クライオモジュール)を配置。加速空洞から飛び出したビームの延長線で雪の結晶が飛び散っている様子は、ILCで行われる電子、陽電子の衝突実験をイメージした。会議開催時期が12月であることから、雪の結晶や白鳥のデザインを用いて、厳しくも美しさをみせてくれる冬の東北、岩手の自然をアピールしている。
 今年5月30日から6月5日まで、スペイン北部のサンタンデールで開かれた欧州リニアコライダー会議の席上、出席した研究者らに対しLCWS2016の開催が案内され、ポスターも披露された。
 LCWS2016は、12月5日から5日間の日程で盛岡駅西口のいわて県民情報交流センター(アイーナ)などを会場に開かれる。

写真=盛岡市で開催する「LCWS2016」のポスター

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Poster Full of Iwate Flavor (Poster for LCWS 2016 to be held in Morioka)

The poster has been completed for the international ILC conference “LCWS 2016” to be held in Morioka City this year in December. The design focuses on an Iwate theme, including Mount Iwate and the Kenji Miyazawa children’s story “Night on the Galactic Railroad,” and the poster has already been shown to researchers inside and outside Japan.

LCWS is an international conference where particle physics researchers from all over the world gather to discuss particle physics experiments using linear colliders including the International Linear Collider. It’s held in a different country every year, and it has been three years since the last time it was held in Japan at Tokyo University in 2013. Holding LCWS in Morioka City, which is close to the Kitakami mountains ILC candidate site, is seen a perfect chance for those involved in attracting the ILC to show local enthusiasm.

According to Iwate University Faculty of Science and Engineering Professor Shinya Narita, who is serving as the head of the local exectuive committee for the conference, the poster was designed by an Iwate University employee.

Above Mount Iwate bathed in red light reminiscent of Hokusai’s “Thirty-Six Views of Mount Fuji” sails a cryomodule made to resemble the Galactic Railroad. The snowflakes falling from the beams extending from the cryomodule represent the experimental collisions between electrons and positrons for the ILC. Because LCWS will be held in December, the design emphasizes Tohoku’s severe but beautiful winter and Iwate’s nature with its snowflakes and swans.

The researchers participating at the European Linear Collider Workship in Santander, Spain from this May 30th to June 5th were told about LCWS 2016 and the poster was also shown.

LCWS 2016 will be held for five days starting on December 5th in venues including Aiina just west of Morioka station.

(Translation by Oshu city ILC Promotion Division)
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tanko 2016-7-7 10:50
 国際リニアコライダー(ILC)の誘致実現を目指す奥州市は、JR東北新幹線水沢江刺駅構内にある「南岩手交流プラザ」の一角に、ILCのPRコーナーを整備する。10月開催の「いわて国体」までには完成させる方針。来訪者がILCの姿をイメージしやすいよう、加速器の模型を設置することも視野に展示内容についての内部検討が進められている。

 同プラザは、待合室やレンタカー案内機能などを兼ね備えた観光・物産PR施設。もともと旧水沢市が「南岩手物産館」の名称で1985(昭和60)年3月の駅開業と同時にオープンした施設で、展示内容の見直しなどを経て現在の姿に至っている。
 奥州市ILC推進室によると、PRコーナー設置場所は改札口側の入り口から入り、すぐ右手にあるいろり付近を想定している。展示内容の詳細は協議中だが、ILC計画の基本概要を紹介するパネルやパンフレットなど、既存の資料類に加え、実験装置の様子などが分かる模型の導入も検討している。
 水沢区の奥州宇宙遊学館内にもILC関連の展示物が常設されているが、同駅を使った常設のPRコーナーの設置を求める声は数年前からあった。市内外の多くの人たちが利用する場であることに加え、有力候補地である北上山地の「最寄り駅」という立地環境も注目されているからだ。
 北上山地を最適地とした研究者らによる「ILC立地評価会議」では、ILCの中央キャンパス(研究所)の設置に関して「仙台・東京へのアクセス利便性を有し、研究・生活環境に優れる新幹線沿線の立地を強く推奨する」としており、新幹線駅とILCとの関連性は非常に重要。市が策定した「ILCまちづくりビジョン」でも、同駅周辺にイノベーション(技術革新)拠点を形成する構想が盛り込まれている。
 同推進室の朝日田倫明室長は「これまでもさまざまな方面の方々から、水沢江刺駅でのPRについて提言を受けていたが、今年に入って具体的な話に入ってきた。国体開催までに何とか形にできたら」と話している。
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tanko 2016-7-6 19:30
北上山地への国際リニアコライダー(ILC)誘致実現と地域社会の展望について意見を交わしたシンポジウムが先月、水沢区佐倉河の市文化会館(Zホール)で開かれた。素粒子物理学研究やILC計画に長年携わっている県立大学の鈴木厚人学長の基調講演に引き続き、「わがまちの未来絵図とILC」をテーマにパネルディスカッションが繰り広げられ、会場からも有益な質問や意見が寄せられた。討論の要旨を2回続きで紹介する。

【登壇者】
小沢昌記氏(奥州市長)、高橋由一氏(金ケ崎町長)、勝部修氏(一関市長)、青木幸保氏(平泉町長)、鈴木厚人氏(岩手県立大学長)、佐々木淳氏(県科学ILC推進室長)
【司会】
吉岡正和氏(岩手大・東北大客員教授)


 吉岡教授 まずは2市2町の現状とILC計画に対する考えを聞きたい。

 勝部一関市長 ILCが実現することを前提にまちづくりを考えており、施政方針にもそのことは盛り込んでいる。
 当市の政策では「中東北」という言葉を使っている。北東北、南東北というのがあるのだから、中東北があってもいいと考えた。平泉を中心に、通勤通学エリアや医療圏、文化も一緒という所がまとまれば、地域の力はかなり発揮できる。この圏域については宮城県北の栗原市、登米市も含めて考えている。
 ILCが実現した際、当市の大きな施策の柱として「資源エネルギー循環型のまちづくり」をしようと考えている。燃やして灰を埋める方法から脱皮し、焼却熱を活用するなど新しいエネルギー源を生み出すため、具体的な動きをしたい。
 平泉の世界文化遺産登録から5年を迎えたが、今度は奥州市前沢区、平泉町、一関市の北上川東側地域の「世界農業遺産」登録を目指しており、ぜひ実現させたい。

 青木平泉町長 言うまでもなく平泉は世界遺産のまち。ILCと平泉の文化遺産がどのようにリンクし、地域の発信力になっていくか。わが町にとっては大きな命題であり課題だ。
 世界は今、テロの脅威にさらされている。怨恨から復讐が行われ、さらに新たな怨恨を生むという、果てることがない状態だ。中東地域の人々の中でたまった怨恨は、ヨーロッパ諸国にも広がりをみせている。このままでは、21世紀は「怨恨の世紀」になってしまう。
 平泉を開いた人たちは、聖人でも君子でもなかった。彼らの中には肉親を殺され、殺した相手を憎む者もいただろう。しかし、彼らは戦いで敵を復讐する道ではなく、平和を築く道を選んだ。その結晶こそが平泉だ。先人の高貴なる心の営みを発信する責任が平泉町にはある。
 平泉の文化遺産は自然との共生、生きとし生けるもの全ての平等と平和が表れている。ぜひこの理念を世界各地から集まった科学者たちに知っていただき、それぞれの国に持ち帰ってもらえたらと考えている。

 高橋金ケ崎町長 当町の人口は、自然減が進む中で一定規模の社会増がある。とはいえ、全体的には1万6000人を割っている。どこの市町村も同じだが、生産年齢人口の減少を懸念している。さまざまな構造変化が起きている。
 金ケ崎は工業、商業、農業のバランスが取れている点が特色。「ILCの中心部の隣の自治体」という立場で、どんな役割を果たしていくかが大きな将来課題になる。岩手の製造業の中心地として、また農業の面でもILCとのいろいろな関わりが期待できる。また、高速道路のインターチェンジ近くに青果市場や鮮魚市場がある。食料を供給する物流の面からも発信できる強みがある。
 地域で育ち、地域で仕事をするという観点からすれば、2市2町がお互いの特徴、機能を補完し合って全体の産業振興につなげていくことが望ましい。

 小沢奥州市長  人口減、少子化、不況といった問題を地域は抱えている。個人消費も伸び悩んでいる状況だ。昔は考えられなかった問題が、当たり前になっている中、ここに住んで良かったと思えるまちづくりを進めていきたい。
 産業革命が生産性を飛躍的に伸ばし、IT革命で世界中のどこにいても情報のやりとりができるようになった。科学文明の力によって、便利な生活ができるようになった。しかし一方ではさまざまな課題もある。
 21世紀から22世紀にかけて、人類がどんな形で生き残っていくかとなったとき、大きなイノベーションが必要。その基になるのがILCだと考えてもらいたい。分からないものが分かる、できないことができる。こうした一つ一つが大きな連携を持ち、新しい時代、価値観を見いだしてくれる。そんな研究施設だ。
 当市には国立天文台水沢VLBI観測所がある。生活に直接関係なさそうな研究をしていると感じるだろうが、天文学によるアプローチで宇宙の謎に迫ることで新しい技術や知識が生まれてくる。そんな地域に、さらにILCが来るとなれば、その瞬間から私たちを見る世界の目線が変わってくる。
 今すべきことは、ここに住む人だけでなく、世界から来る人にも受け入れられるようなまちをつくっていくことだ。課題山積だが、ぜひともILCを誘致し、日本や世界を変えていくぐらいの意気込みを持ってしっかり取りくみたいと思う。

 吉岡教授 人口減少は各地域に共通した話題だと思う。その中にあって、勝部市長や高橋町長の話にもあったように、互いの特徴を持ち寄り、協力し合うことが大切といった趣旨の話があった。それでは次に、ILCの実現を各産業においてどう生かしていくか、具体例も踏まえてお示ししてほしい。

 勝部一関市長 農林業とILCとの連動がうまくいけば相当の雇用創出につながるし、期待できる。例えば研究施設や文化ホール、国際会議場は県産材で造るといった考えもある。これは、鈴木厚人先生が提唱する「グリーンILC」にもつながる。
 メーンキャンパスには、各国の研究者が大勢やって来る。その方々が昼時間に食堂に来ることになるが、食材は全て地元のものでやりたい。食材利用にも期待している。地元の農家も希望が見いだせるし、雇用にもつながる。
 スイスのCERN(欧州合同原子核研究機構)に行った際、レストランのメニューの豊富さに驚いた。例えばCERNのシェフを招いて、一関や岩手、東北の食材を使ったメニュー考案会のようなものをやってみてはどうか。CERN近郊では朝市もすごかった。やはりこれも第1次産業との関連性がある。
 ただ、最初から何でもかんでも整備するのではない。いきなり研究者と家族が来るわけではないので、しっかり計画性を持たせてやらないといけない。
 もう一つ、ILC実現の熱意を地元だけで終わらせてはだめだと強く感じる。このシンポジウムが地元紙にいくら取り上げられても、東京の人たちの目に届かない。何とかして、地元の盛り上がりを中央のほうに発信してほしい。情報発信は非常に大事。戦略的に取り組まなければいけない。

 青木平泉町長 2市2町の枠組みの中には、世界に誇れるものがいっぱいある。リンゴや前沢牛、工業団地にはトヨタの拠点があり、衣川は星空日本一、そして平泉の世界文化遺産もある。これだけの魅力が凝縮されている地域はほかにはない。
 先ほども話に出たが一関、奥州、平泉の北上川東部地域を「世界農業遺産」に登録しようと協議している。このエリアは、平泉の景観を支えてもらっている。長い間、景観を保てたのも、地域に住む方々のおかげで、農業や食文化を通じ大事にしながら守り伝えてきた。
 ILC建設により、自然景観に与える影響はどうなるのかという声も聞こえる。ILC誘致を目指しているときだからこそ、こうした景観や心を大事にし、守って伝えていかなければいけない。

8日付掲載の(2)につづく

写真=左から勝部修一関市長、青木幸保平泉町長、高橋由一金ケ崎町長、小沢昌記奥州市長

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