人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市東部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)
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tanko 2016-2-27 15:30
 県南広域振興局が児童を対象に実施したILC絵画コンクールで、候補地の地元である奥州市内から応募が無かったことについて、小沢昌記市長は26日の市議会ILC特別委の席上、「今後このようなことがないよう、関係機関との連携にさらに力を入れたい」と述べた。
 同コンクールには同振興局管内と宮城県気仙沼市から96点の応募があった。しかし、奥州、平泉、西和賀の3市町から応募が無かった。
 市ILC推進室によると、同振興局から11月下旬に管内市町教育委員会を通じて各校に要項が配布された。一方、同推進室としての直接的な働き掛けはしてい無かったという。
 小沢市長は「浮き彫りになった反省点を受け止め、綿密に連携ができるよう対応したい」と述べた。
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tanko 2016-2-27 15:20
 北上山地への国際リニアコライダー(ILC)誘致を見据えた奥州市の「ILCまちづくりビジョン」の素案がまとまり26日、市議会のILC誘致および国際科学技術研究圏域調査特別委員会(渡辺忠委員長、議長除く全議員26人で構成)に素案が示された。ILC誘致を契機として市民生活や地場産業などのさらなる向上のために期待できる取り組みを明示。対外的にも候補地の地元としての考えを示す資料として役立てる。本年度中の策定を目指し、近く市民意見を募る。
(児玉直人)

 奥州市はILCを生かした長期的な将来像を示すため、同ビジョン策定委員会(亀卦川富夫会長)を組織。市民意見を吸い上げるワークショップを開催するなどして素案を練り上げた。
 ビジョンの中心になるのが、市としての行動指針。「奥州から未来を創る」「時空を超えたつながり」「恵み豊かな自然・文化と共生」の将来像を実現するため、▽地域産業振興▽多文化共生の推進と快適な生活環境向上▽次代の人材を育成できる国際教育都市――の3分野ごとに方針を定めた。
 地域産業振興では、JR水沢江刺駅周辺へのイノベーション(技術革新)拠点形成や、研究施設内に地元農産物を使用したレストラン・産直を設けるなどのアイデアが盛り込まれた。多文化共生と生活環境に関しては、医療や公共交通の利便性向上などを掲げた。人材育成面では、研究機関で働けるような専門性の高い学科を高校に新設できるよう働き掛けたり、外国人研究者らを講師に招いた寺子屋を開催したりする構想も示された。ILC計画がきっかけとなり策定したビジョンだが、市は市民生活や地域産業のさらなる発展を目指す市政運営の根本理念に立脚した内容と強調する。
 今回のビジョンでは、基本的な指針を示し「期待される取り組み」を網羅した格好。あくまでアイデアの段階であり、実施時期や事業主体、場所、予算規模など具体的な部分は触れていない。国や世界の動向などILC誘致の進展状況に応じ、適切な対応が講じられるよう、基礎資料のような性格を持たせた。県や東北レベルでもILC関連の計画を検討しており、地元の考えとして同ビジョンを活用することも可能。候補地自治体の「やる気」を対外的に示す狙いもある。
 市は近く、同ビジョンに対する市民意見を募るパブリック・コメント(意見公募)を実施。必要な修正などを加え、年度内の策定を目指す。
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tanko 2016-2-25 12:00
 国際リニアコライダー(ILC)計画の普及啓発の一環として県南広域振興局(堀江淳局長)が実施した、本年度ILC絵画コンクールに、県南8市町と宮城県気仙沼市から計馥点の応募があった。24日、水沢区の奥州地区合同庁舎分庁舎で表彰式が行われた。
 作品は低学年(1〜3年)と、高学年(4〜6年)に分け、堀江局長や高エネルギー加速器研究機構(KEK)広報室の黒川かおり特別技術専門職、元中学校美術教師の武田成喜(しげき)・奥州市立若柳幼稚園長、県内を拠点に活動しているイラストレーター「たぐさん」の4人が審査した。
 低学年最優秀賞は、気仙沼市立鹿折小2年の松岡寧佳(しずか)さんによる「み来の気仙沼」。高学年最優秀賞には、北上市立江釣子小5年の鈴木美桜(みお)さんの「岩手にILCを!」が輝いた。胆江地区からは、金ケ崎町立金ケ崎小1年、児玉煌茉知(こまち)さんが描いた「ヒッグスくんにあいたいな」が、優秀賞に選ばれた。
 応募作品の展示会は、今月27〜28日に一関市大町のなのはなプラザ3階展示スペース、3月5〜6日には奥州市文化会館(Zホール)展示室で開かれる。

写真=上から順に、最優秀賞に選ばれた松岡寧佳さん、と鈴木美桜さん、優秀賞の児玉煌茉知さんの作品








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告知時期遅い? 内容が難しい?(候補地地元 奥州市応募数ゼロ)
 県南広域振興局が児童を対象に初めて開催した国際リニアコライダー(ILC)の絵画コンクールには96点の作品が寄せられた。しかし、胆江地区からの応募は金ケ崎町の1点にとどまり、候補地の地元として誘致活動に取り組んでいる奥州市からは応募がなかった。市のILC担当者は「出前授業など、場面を捉えて呼び掛けてはいたが……」と苦い表情。他市町では学校ぐるみで取り組んだところもあり、同振興局は「告知時期や呼び掛けの方法も含め考える必要がある」と話している。

 コンクールは、ILCの普及啓発活動を進める一環として、同振興局管内8市町と宮城県気仙沼市の教育委員会も共催する形で実施。同振興局は9市町の教育委員会に堀江淳局長名の募集告知文書を発送し、周知協力を呼び掛けた。
 集まった作品を市町別にみると、最も多かったのが一関市で43点。次いで気仙沼市が41点。以下▽北上市…8点▽花巻市…2点▽金ケ崎町・遠野市…各1点――。応募がなかったのは奥州、平泉、西和賀の3市町だった。結果的に一関、気仙沼が応募総数の8割以上を占めた。
 奥州市では独自に小中学校へのILC出前授業を展開するなど、未来の地域を担う世代への周知活動には積極的に力を入れている。今回の絵画コンクールの応募対象ではないが、中学生の科学体験研修ではILC関連装置を開発している高エネルギー加速器研究機構(KEK)を訪問。奥州宇宙遊学館内にはILC解説コーナーが設けられるなど、周知環境が極めて弱いわけではない。
 次代を担う子どもたちへの周知に力を注いでいたこともあり、まったく応募が無かった状況に、市のILC担当者はもちろん、県南局の担当者も「なぜ?」と、首をかしげる。「出前授業の際に声掛けをしたが、もう一押し足りなかったのか……」(市担当者)
 1点のみだった金ケ崎町は、ILCの建設想定エリアに直接該当していないため、奥州市や一関市ほど目立った誘致活動や推進体制を整えているわけではないが、国際化社会に備えた英語教育に力を注いでいる。金ケ崎小学校では、冬休み前に募集中の各種作品コンクール等の一覧を配布。その中にILC絵画コンクールも入っていた。
 今回の応募結果について同振興局の堀江淳局長は、「募集を呼び掛けた時期が冬休み間近の12月ごろだったこともあり、学校側への周知が遅かったのかもしれない。また、コンクールのテーマ自体が小学生には難しいのではという声も審査委員会の中であった。どうしてもある程度時間を割いて事前学習する必要がある。いきなり『ILCの絵を描いて』と言われても困るだろう」と振り返る。
 一方で、学校ぐるみで応募に積極的に取り組んだ例もある。同振興局によると、気仙沼市では学校長が集まる会議の場でコンクール開催を知らせたところ、ある学校の校長が関心を示し、まとまった数の応募をしてきたという。
 堀江局長は「告知時期を含め、募集する上での工夫が必要だ。検討し、次につなげたい」と話している。
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tanko 2016-2-17 11:00
 超党派の国会議員で組織するリニアコライダー国際研究所建設推進議員連盟(会長・河村建夫衆院議員)のメンバーや関係者一行が、米国ワシントンDCから帰国した。今回の訪米を機に日米の議会レベルが連携し合うことを確認。同行した東北や本県の関係者からは、一日も早い実現を熱望する思いが伝えられた。
 訪米した同議連メンバーは、鈴木俊一副会長(衆院岩手2区)ら衆院議員3人。ILC計画を推進する素粒子物理学者や誘致団体関係者らも同行した。
 訪米の主目的は、日米先端科学技術フォーラムの開催。ILCを含む加速器を用いた研究やエネルギー、宇宙、スーパーコンピューターの4分野について、日米両国の議員が連携し推進する体制を構築する狙いがある。
 同行した県科学ILC推進室の佐々木淳室長は「11日(日本時間12日)のフォーラム当日は米国議会が長引き、出席予定の議員が欠席したが、両国の議員レベルで協議できる場(フォーラム)を開き、継続を確認できたのは一定の成果」。一般社団法人先端加速器科学技術推進協議会の松岡雅則事務局長は「フォーラム開催前には、『ジャパンスタディーグループ』共同議長のダイアナ・ディゲット氏や、ビリー・ロング氏(いずれも下院議員)と会談できた。ILCを含むビッグサイエンス事業を一緒にやっていくことを確認した」とそれぞれ話した。
 12日(日本時間13日)は、日米の議員と担当省庁とによる非公式の会談も行われ、今後の方向性について協議。引き続き開かれた公開の会合では、県ILC推進協の谷村邦久会長や東北ILC推進協の高橋宏明共同代表が、東日本大震災時の米国の支援に感謝しながら誘致への思いを述べたという。
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tanko 2016-2-14 19:24
 国際リニアコライダー(ILC)計画の国会議連メンバーら一行の訪米に同行している東北大学大学院の山本均教授は12日(日本時間13日未明)、ワシントンDCで開かれた米科学振興協会のシンポジウムに出席。パネルディスカッションで登壇した山本教授は、ILC計画の一般周知について「大事な時期にある」との見解を述べた。
 このシンポジウムは、国際的な大型プロジェクトに関して意見交換するもの。山本教授によると、事例報告後のパネルディスカッションで「科学的意義と波及効果を一般市民に十分伝えているか」「プロジェクトの国際化をどう進めるか」の2点の質問を受けたという。
 山本教授は「今は特にも一般市民に対するILCの理解が重要な時期にある。教授や研究員たちは、中高生や企業、一般市民への講演などに多くの時間を割いている」とした上で、「一般市民へのコミュニケーション技術を磨くセミナーを開くなど、できるだけのことをしているが、まだ十分ではない」と述べた。
 また「ILCは幸いにして、発案当初から国際プロジェクトで出発した。プロジェクトのすべての段階で国際的に運用するような関係が大切」との考えを示した。
 山本教授らは11日からワシントンを訪問。11日(日本時間12日未明)には、初の日米先端科学技術フォーラムが開かれた。日本からは、ILC国会議連の鈴木俊一副会長(衆院岩手2区)や県立大学の鈴木厚人学長らが参加。鈴木副会長は、ILC誘致を大震災後の東北復興につなげたいなどと述べたという。
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tanko 2016-2-13 6:30
 米国のカリフォルニア工科大学、マサチューセッツ工科大学などを中心とした国際研究チームが、重力波を世界で初めて観測した話題は世界中を駆け巡った。今回の観測は、二つのブラックホールの合体からもたらされたもの。ブラックホールの国際研究チームに所属する国立天文台水沢VLBI観測所の本間希樹所長は、「巨大ブラックホールがどのようにしてできたかなどを検証する上でも非常に大きな成果。物理学的にも天文学的にも意義がある」と強い関心を示している。
(児玉直人)

 重力波とは、質量を持った物体が動いた際、周囲の空間や時間に生じた「ゆがみ」がさざ波のように伝わる現象。物理学者アルベルト・アインシュタイン(1879〜1955)がちょうど100年前の1916年、一般相対性理論によって予測していた。
 理論上、地球や月、太陽など身近な天体のほか、人や車など全ての物質が「動く」と重力波が生じる。しかし、あまりにも微小な現象であるため、身近な物体や天体で直接観測することはできない。質量が大きい天体の合体や爆発など大規模な現象で「観測できるかどうか――」というレベルだが、これまでに成功例はなかった。裏付けを目指そうとしていた研究者の間では「アインシュタインの最後の宿題」とも言われていた。
 昨年9月、米国西部のワシントン州と南部のルイジアナ州に設置している巨大観測施設「LIGO(レーザー干渉計型重力波観測所)」が検出に成功。今月11日(日本時間12日未明)に正式発表した。
 LIGOが捉えた重力波は、太陽の29倍と36倍の質量を持つ二つのブラックホールが合体する過程で生じたもの。ブラックホールの研究を続けている水沢観測所の本間所長は、「重力波の存在の裏付けができた。物理学の分野でも金字塔ともいえるし、天文学の分野からみてもこれから先が面白くなる」と話す。
 本間所長が研究対象としているのは、今回の観察で得られた重力波の発生源とみられる二つのブラックホールよりも、はるかに大きな質量を持つ「巨大ブラックホール」。太陽の数百万から数億倍という桁外れの質量を持つ天体が、そもそもなぜ宇宙空間に存在しているのかも分かっていないという。
 「シナリオの一つとして、ブラックホール同士がくっつき大きくなるという説もあった。今回の観測で得られた成果は、巨大ブラックホールが生成される謎の解明にもつながっていくだろう」と期待を寄せる。
 さらに本間所長は、過去に予想された理論が100年の月日を経て証明された今回の研究スケールを踏まえ「学術研究は非常に息の長いものであると感じた。発表された論文を見ても、解明のために非常に多くの人たちが携わっていることが分かる」と強調。北上山地が有力候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)がもたらす成果や実現後の社会を想像する上でも「今回の出来事は、科学プロジェクトの在り方を知る上でもいい例」と話している。
 重力波観測事業は日本国内でも進行中。昨年ノーベル物理学賞を受賞した梶田隆章教授が所長を務める東京大学宇宙線研究所の主導で、国立天文台、高エネルギー加速器研究機構(KEK)が、岐阜県の神岡鉱山跡地内に観測装置「KAGRA」を建設しており、来月にも試運転が始まる。
写真=本間希樹所長
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tanko 2016-2-12 16:15
 北上山地が有力候補地となっている素粒子研究施設・国際リニアコライダー(ILC)の誘致を意識した「ILCまちづくりビジョン」について、奥州市は年度内にも取りまとめたい考えだ。原案には「地域産業振興」「多文化共生推進と生活環境向上」「人材育成できる国際教育都市」の3点に対する行動指針を掲げており、東北新幹線水沢江刺駅周辺にイノベーション(技術革新)拠点を形成する構想なども描く。今後、内容の調整や修正を加えた上で、来月上旬にも市民意見を募るパブリックコメントの実施を予定している。
(児玉直人)

 奥州市はILCを生かした長期的な将来像を示すため、同まちづくりビジョンの策定作業を昨年夏ごろからスタート。▽まちづくり・地域生活支援▽産業振興▽福祉医療・教育――の3分科会や市民意見を吸い上げる目的で開催したワークショップでの声を原案に反映させた。地域産業振興に関しては、ILC建設候補地最寄りの東北新幹線水沢江刺駅周辺にイノベーション(技術革新)拠点を形成する構想を盛り込む。
 今月9日、同ビジョン策定委員会(会長・亀卦川富夫いわてILC加速器科学推進会議代表幹事)に原案が示され、意見を交わした。亀卦川会長によると、出席者からは「水沢江刺駅周辺へのイノベーション拠点構想は重要な視点。地元の歴史や文化など奥州市らしさを感じる要素があっても良いのでは」との意見があったという。
 また、北上山地が候補地に選ばれた理由や、水沢緯度観測所時代から天文台が所在する地域特性と科学との歴史的な歩みも盛り込んではとの声も。今後、必要な修正を加えてパブリックコメントを行う。
 ILC誘致を見据えた地域ビジョンの策定は東北広域レベルでも進行中で、東北経済連合会や東北大学が中心となり作業を進めている。
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tanko 2016-2-9 16:10
 岩手県科学ILC推進室と県ILC推進協議会(会長・谷村邦久盛岡商工会議所会頭)はこのほど、ILC実現時の経済波及効果など調査する「イノベーション・経済波及効果調査委員会」を発足させた。委員長は、県立大学の鈴木厚人学長が務める。
 同委員会は、ILC実現により生み出される経済波及効果を算出。日本政府の誘致決断への弾みとする。算出の実質的な作業や取りまとめは、委員会内に設置する作業部会が担当する。
 2012(平成24)年に東北ILC推進協が公表したビジョンでは、建設投資や関係者の消費支出などにより発生する生産誘発額は30年間で約4.3兆円に上るとの試算が示されている。
 また2013年には、公益財団法人日本生産性本部が日本産業界に起きる30年間のイノベーション効果額を試算している。ILCに関係する装置の製造や施設建設など、直接的な効果額は12兆1300億円。ILCのために開発された先端技術の利用による派生効果額は32兆6000億円とし、合計で44兆7000億円の効果額が期待できるとしている。
 今回発足した委員会では、より多面的な効果額を算出する予定。具体的な調査項目は今後の委員会で検討していくという。
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tanko 2016-2-9 14:40

 県立大学の鈴木厚人学長の「2016年基礎科学物理学ブレークスルー賞」受賞記念の特別講演会は8日、盛岡市内のホテルで開かれた。鈴木学長は、ニュートリノ研究施設の建設で、過去に釜石市の鉱山跡地を活用する計画が二度あったことを明かし、「どれも失敗した。北上山地への誘致が期待されている国際リニアコライダー(ILC)は、三度目の正直で成功させたい」と話した。
 米国アップル、グーグル、フェイスブックの各IT関連企業の首脳らが創設した「ブレークスルー賞財団」が、顕著な科学研究に対して贈る同賞。授賞式は昨年11月、米国サンフランシスコで行われた。
 今回の受賞は、素粒子「ニュートリノ」に質量があるかを確かめる実験に対するもので、鈴木学長のほか、ノーベル物理学賞を受賞した東京大学宇宙線研究所長の梶田隆章教授ら5グループによる共同受賞となった。
 新潟県出身の鈴木学長は、東北大学大学院を経て、同大学院付属ニュートリノ科学研究センター長、同大学副学長、高エネルギー加速器研究機構長などを歴任。昨年4月から県立大学長に就任した。
 鈴木学長が研究対象としていたニュートリノは、あらゆるものの最小単位「素粒子」の一種。宇宙で最も豊富な素粒子だが、電気を持たないために他の物質と反応せず、人体も地球も通り抜けてしまうため、その存在を捉え、性質を調べることは容易なものではなかった。
 鈴木学長は、東北大が岐阜県の神岡鉱山地下を利用し立ち上げた実験施設「カムランド」で、原発や地球内部の核反応に由来する反ニュートリノの検出に成功した。
 特別講演会には、ILC誘致関係者や小沢昌記奥州市長、高橋由一金ケ崎町長ら420人が出席。鈴木学長は「神岡の地でニュートリノを追う そしてILC」と題し、ニュートリノ研究の歩みや得られた成果を紹介した。
 鈴木学長は、神岡鉱山へのカムランドや前身施設「カミオカンデ」を建設する際、釜石市の鉱山跡地が候補に挙がったことを明らかにした。「最初は鉱山を所有する会社の合併があって『それどころではない』と断られ、二度目のチャンスは文部省(当時)に予算化を断られた。今度はILC。県立大学長として岩手にやっと着地できた」と笑いを誘い、ILC誘致実現への思いをあらためて示した。
 同日は東京大学素粒子物理国際研究センター長の駒宮幸男教授、同センターの山下了特任教授も講演。講演後は受賞祝賀会も行われた。

写真=ニュートリノ研究や将来計画されているILCなどについて解説する鈴木厚人学長

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