人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市東部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)
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tanko 2015-10-28 18:20

 北上山地への誘致が期待される素粒子研究施設・国際リニアコライダー(ILC)をPRしようと、岩手県内の誘致団体による「オリジナル年賀はがき」が、相次いで発売されることになった。本県など候補地に程近い地域を除けば、ILC計画自体がほとんど知られていない状況にある。全国に配られる年賀状を利用して、周知を図ろうとしている。(児玉直人)



 奥州宇宙遊学館=奥州市水沢区星ガ丘町=に事務局を置く、いわてILC加速器科学推進会議(亀卦川富夫代表幹事)は、はがき裏面下段にPR欄を設け、1万枚を水沢区内2カ所で販売する。
 初めての取り組みで、「ILC誘致と声を上げても、そもそも何をやる施設なのか、知らない人は全国にまだまだ多い」と亀卦川代表。PR欄には施設の概要を簡単な言葉にまとめた。背後の写真は、金ケ崎町西根和光の三角点展望台で撮影した北上山地からの日の出で、胆江日日新聞社が提供した。
 一方、県ILC推進会議(谷村邦久会長)も昨年度に続き、PR年賀はがきを2万8000枚販売する。
 県印刷工業組合と盛岡広域振興局、盛岡中央郵便局の協力を受け企画。料額印面部分(切手の位置)の下にILCのロゴを配置。「お年玉抽選番号」の中央部分には、県のイメージキャラクター「わんこきょうだい」とILCの加速器トンネルのイラストを描いた。
 研究者や候補地の地元、文部科学省の担当レベルでは誘致に向けた協議、市民に対する広報普及活動が盛んに行われているが、全国的な認知度は決して高くない。国内初の国際研究機関となり得る壮大なプロジェクトでありながら、国民に十分知れ渡っていないのが現状だ。
 それぞれのはがきの購入方法など、詳細は次の通り。
 【いわてILC推進会議版】 ▽購入方法…奥州宇宙遊学館(奥州市水沢区星ガ丘町、電話0197−24−2020)または、奥州市まちなか交流館(同区横町、電話0197−25−3001)で▽価格…1枚52円▽その他…なくなり次第終了。インクジェット紙ではなく普通はがきと同じ
 【県ILC推進協版】 ▽購入方法…県印刷工業組合(電話019・641・4483)か、同組合加盟印刷会社に問い合わせる▽価格…1枚52円▽その他…なくなり次第終了。インクジェット紙ではなく普通はがきと同じ

写真(上)=いわてILC推進会議の年賀はがき
写真(下)=県ILC推進協の年賀はがき
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tanko 2015-10-18 13:10
 「先端加速器科学技術推進シンポジウム2015in東北」(いわてILC加速器科学推進会議など主催)は17日、水沢区佐倉河の市文化会館(Zホール)で開かれた。北上山地への誘致が期待される国際リニアコライダー(ILC)の意義や、建設実現によってもたらされる効果について3人の有識者が講演。誘致関係者に加え、将来を担う中高生も多く聴講した。(児玉直人)


 約800人が聴講。次世代を担う世代にもILC計画の意義を知ってもらおうと、胆江地区を中心とした中学、高校生にも参加を呼び掛けたこともあり、一般市民に交じり若い世代の姿も目立った。小沢昌記市長をはじめ、戸田公明大船渡市長、青木幸保平泉町長らも駆け付けた。
 同区の認定こども園日高ななつ星・日高さくら木による「いわて国体ダンス」が披露され、和やかに開幕。園児たちの「みんなの希望ILC!」と元気のいいメッセージに、会場は大きな拍手に包まれた。
 講師として迎えられたのは▽山内正則氏(高エネルギー加速器研究機構長)▽山下了氏(先端加速器科学技術推進協議会大型プロジェクト研究部会長、東京大学准教授)▽増田寛也氏(日本創成会議座長、前岩手県知事)――の3氏。
 山内機構長は、素粒子物理学の基本的な話から研究者が解明しようとしている宇宙にまつわる「謎」について解説。山下氏はILCの構造や計画の推進状況を紹介した。
 前知事の増田氏は「もしILCが立地した場合、海外研究者の住環境をどう考えるかとなるが、失敗例が研究学園都市として整備されたつくば市だ。特別に何か身構えてしまう必要はない。地域と交流するという発想がなく、専用住宅を造るようなことをしてしまった」などと指摘。「空き家を少し手直しするなど、今あるものを活用し、地域に彼らを溶け込ませるような考えで進めたほうがいい。研究者に日本語を教えるようなボランティアがいてもいい。お互いの橋渡し役にもなる」と提唱した。
 聴講した県立水沢高校1年の菅原志保さん(16)は「(素粒子の話は)少し難しかった。ILC実現で外国人がたくさん居住すると聞き、自分も英語を覚えなくてはいけないと思っていただけに、増田さんが『身構える必要はない』と言ってくださったのは新鮮だった」。県立前沢高校1年の鈴木脩矢君(16)は「宇宙の話とかに興味があった。可能ならILCで働いてみたい」と話していた。
写真=(左から)増田氏、山下氏、山内氏


【宇宙の大きな謎とILC=山内正則氏(KEK機構長)】
 宇宙は素粒子でできているとはいうものの、それは宇宙全体の4%にすぎない。残り馥%は人類の知らないものだ。宇宙のことはほとんど知らない。�|%を暗黒物質や暗黒エネルギーが占める。これらの全体像を明らかにしようというのが素粒子物理学の大きな役目だ。
 宇宙の謎を解くため、日本にはいくつかの研究計画がある。茨城県東海村のJパークや、同県つくば市の高エネルギー加速器研究機構(KEK)にあるBファクトリーという装置を使った研究だ。
 そのほかに、海外ではスイス・ジュネーブの欧州原子核研究機構(CERN)のLHCという装置を使った実験をしている。最終的には日本にILCを誘致したいと考えている。
 科学の流れにとって重要なのは経験の積み重ね。宇宙の大きな謎を発見していきたいと思う。
 ILCを実現するため、KEKではナノビームという小さなビームを作るための施設を造り、練習している。また、長い直線加速器が必要なのでその研究も進めている。
 サイエンスと技術を高め、結集してILCにつなげていきたい。

【日本初の国際研究所を=山下了氏(東京大准教授)】
 ILCの特徴は世界の研究所という点。日本だけで造れるものではない。人も予算も各国が持ち寄る。今、日本には国際研究所がないので、非常にいいチャレンジになる。
 既にILCの研究所が目指すもの、建設場所、製造技術がそろっている。政府内での検討もスタートし、一部では海外の政府間との議論も始まっている。
 建設時は、今ある環境を十分に生かして造らないといけない。そこへ国際的都市として必要な要素を付け加える形だ。
 ユーロ誕生前の紙幣を見ると、フランスフランはキュリー夫妻、ドイツマルクは数学者のガウスだった。ヨーロッパでは文化の中に科学や数学が根付いていた。そのような雰囲気が息づく地域を日本の中につくれると本当に素晴らしい。
 ILCを誘致するというこの機会を使い、日本全体で教育、技術、科学、文化・ブランドなどを考えてもらいたい。
 単にILCの建設計画を作るだけではいけない。ILCをいかに地域や日本全体のために生かしていくのか、皆さんと一緒に考えていきいたい。

【決して身構える必要ない=増田寛也氏(日本創成会議座長)】
 今地方創生が言われているのは、人口が地域を維持できないくらい減っているからだ。これを何とか変えていきたいという狙いがある。「経済を良くする」ということだけでは不十分。次世代、次々世代までを見据えて、この地域で安心して生活し、希望があるならば結婚し子どもを産み育て、学べる地域にしていくことまで考えなければいけない。これまでの「地域振興」とは違う。
 今日は多くの高校生がいらっしゃっているが、自らの夢や希望をかなえられる地域を見通さないといけない。
 ところが、全国で出来上がろうとしている地方創生の総合戦略を見ると、どれもアイデア不足だ。
 一方で、この地域はILCという可能性を持っている。多国籍の研究者が家族を含め多い時で1000人が地域に溶け込む。その効果は絶大で、このような可能性があるのはこの地域だけだ。
 政府を含め、着々と準備が進んでいるので、研究者の居住環境などを含め、どんな準備が必要か考えてもらいたい。だが、決して身構える必要はない。今ある資源や環境を活用してほしい。
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tanko 2015-10-16 9:20
 国際リニアコライダー(ILC)計画を推進している高エネルギー加速器研究機構(山内正則機構長、茨城県つくば市、KEK)はこのほど、米国エネルギー省(DOE)と、「高エネルギー物理学分野における研究協力に関する事業取決」を締結。北上山地が有力候補地となっているILCを含む次世代加速器や検出器などの研究・開発をめぐり、日米間のさらなる協力を推進する。
 同取決の締結は、東京都港区の駐日米国大使公邸で行われた。KEKの山内機構長と来日中のDOE高エネルギー物理学部長ジム・シーグリスト氏が同取決に署名。文部科学省の下村博文大臣(当時)、キャロライン・ケネディ駐日米国大使も立ち会った。
 KEKによると、同取決はDOEと文科省の間で結ばれている「エネルギーおよび関連分野の研究開発における日米協力に関する実施取極」(2013年4月13日締結)に基づくもの。素粒子物理学分野の研究に欠かせない次世代加速器や検出器の開発をめぐる日米の協力を推し進める狙いがある。
 具体的には高エネルギー物理実験やビーム技術、粒子測定器開発、実験用データ処理に関する両国間の技術協力などを進める。KEKは「高エネ研究分野全体における協力のための締結で、ILC関連のみを推進するものではなく包括的な協定だ」と強調。ただ、ILCを推進する関係研究者らは「ILCにとって(今回の協定が)良いものであることは明らか」と歓迎。国際協力体制の形成進展に期待を寄せた。
 KEKのホームページには、署名式でケネディ大使が「高エネルギー物理学における日米両国の協力が長年続けられてきたことを喜ばしく思う。科学技術分野における日米両国の連携は非常に重要。ぜひ将来の世代へと伝えていきたい」とあいさつしたことが紹介されている。

山内機構長ら3氏(17日、水沢でシンポ)
 いわてILC加速器科学推進会議(亀卦川富夫代表幹事)などが主催する「先端加速器科学技術推進シンポジウム2015in東北」は、17日午後1時半から奥州市水沢区佐倉河の奥州市文化会館(Zホール)で開かれる。市民や次世代を担う中高生らにILC計画の意義を伝える。
 「ILCによってもたらせるもの」と銘打ち、KEKの山内正則機構長、東京大学の山下了准教授、日本創成会議座長の増田寛也前岩手県知事の3氏が話題を展開する。入場は無料。
写真=シンポジウムのポスター
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tanko 2015-10-8 18:50
 地域の魅力を知り尽くした運転手がおもてなし――。来年の希望郷いわて国体・いわて大会や国際リニアコライダー(ILC)誘致を見据え、「奥州・金ケ崎観光ガイドタクシー乗務員」の24人が誕生した。タクシー業界がスクラムを組んだ地域観光の振興策として期待される。
(千葉伸一郎)


 本県では初の試みで、同観光ガイドタクシー運営委員会(委員長・小野幸宣県タクシー協会胆江支部長)が認定書を交付。同支部加盟の6社24人が1期生となった。
 認定乗務員は、6月からの養成研修の全課程修了者。接遇研修や、高齢者・障害者の介助向上のためのユニバーサルドライバー研修を修了し、地元の歴史を学ぶ「奥州おもしろ学」講座と初級以上の試験をパス。地理研修も受けた。無事故無違反3年以上などの基準も設けられた。
 認定証書の交付式が7日、水沢区羽田町の市鋳物技術交流センターで行われた。運営委の小野委員長は「乗務員としてレベルアップした形で国体を迎えられる。この取り組みを機にお客さまに喜んでいただき、業界の発展と社会貢献につながることを願う」とあいさつ。伊藤博幸副委員長(NPO法人奥州おもしろ学理事長)が一人一人に認定証書を授与した。認定は3年間有効で更新があり、次年度以降も新たな乗務員を養成する。
 認定乗務員を代表し、(株)北都交通の渡辺和村さん(57)が「学び得た知識、おもてなしの心を大切にし、切磋琢磨しながら郷土愛を忘れず、親近感に満ちあふれる奥州・金ケ崎ガイドタクシーとなるよう精進する」と誓った。
 「奥州・金ケ崎観光ガイドタクシー乗務員」の愛称を募集している。詳しくは同支部(電話0197-23-3714)へ。

写真=郷土愛を携え、観光客を迎える「奥州・金ケ崎観光ガイドタクシー乗務員」
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tanko 2015-10-7 18:50

 岩手県立大学の鈴木厚人学長は6日、奥州市水沢区龍ケ馬場の県立水沢高校(安藤泰彦校長、生徒722人)で講演。北上山地への誘致が期待される素粒子実験施設・国際リニアコライダー(ILC)について、「素粒子研究以外の分野でも活躍できるチャンスがある。ぜひ貢献してほしい」と呼び掛けた。
 同校が文部科学省のスーパーサイエンスハイスクール(SSH)の指定を受けていることで実現した講演会。ILC計画を推進するリーダー的存在の鈴木学長の話に、生徒たちはじっくりと耳を傾けた。
 鈴木学長は、物質の最少単位である「素粒子」を調べることが、巨大な宇宙が誕生した謎を探ることにつながる点など、素粒子物理学が目指していることを解説。5日からノーベル賞の各賞が順次発表されているが、「素粒子分野ではこれまで36人が受賞しており、そのうち6人は日本人」と述べ、日本の素粒子研究が世界トップクラスであることを紹介した。
 「ILCが東北、岩手に来れば『地域からの開国が進む』と言える。素粒子研究以外にも、いろいろな仕事に関与できるチャンスが出てくる」と強調。「研究施設を迎える上で、近代的な建物を次々設置しても40年、50年と持たない。ILCは100年も続くプロジェクト。今あるインフラを十分に生かし、不足分を作る程度にしないといけない」と指摘した。
 このほか、地中深度や構造などからILC施設が核廃棄物処分施設に転用される心配がない点や、加速器運転で生じる熱を有効利用する「グリーンILC」と呼ばれる取り組みが進められていることも紹介した。
 生徒からは「研究者にとって大切なことは何か」との質問も。鈴木学長は「今ある課題をどんどんこなすことで、失敗したとしても自信が付いてくるし、達成感も味わえる。徹夜の作業や研究もあるので、体力もぜひ付けてほしい」とアドバイスした。
 
写真=県立水沢高校で講演する県立大の鈴木厚人学長

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