人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市東部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)
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tanko 2015-9-24 13:10
 北上山地への大規模素粒子実験施設「国際リニアコライダー(ILC)」誘致機運を高める「先端加速器科学技術推進シンポジウム2015in東北」は、10月17日午後1時半から水沢区佐倉河の市文化会館(Zホール)で開かれる。高エネルギー加速器研究機構(KEK)の機構長に今春就任したばかりの山内正則氏がILC候補地を訪れ、初めて一般向けに講演。将来の地域を担う中高生を中心に、数多くの市民の聴講を呼び掛けている。

 ▽いわてILC加速器科学推進会議(亀卦川富夫代表幹事)▽岩手県ILC推進協議会(谷村邦久会長)▽東北ILC推進協議会(里見進代表、高橋宏明代表)▽国際経済政策調査会(高橋佑理事長)▽先端加速器科学技術推進協議会(西岡喬会長)――の5団体が主催。KEKや県、胆江2市町、胆江日日新聞社などが後援する。
 講師の一人、山内氏は鈴木厚人氏(現・県立大学長)の後任として今年4月、KEK機構長に就任。専門分野は素粒子原子核実験で、長年にわたりKEK素粒子原子核研究所で研究活動を続けてきた。�o年には、優れた研究業績を挙げた研究者を顕彰する平成基礎科学財団の「折戸周治賞」を受賞している。
 ILC候補地の地元で講演するのは今回が初めて。「加速器で解き明かす四つの謎」と題し、素粒子研究の意義などを説明する。このほか、東京大学准教授の山下了氏が「ILC計画の現状と将来に向けて」、日本創成会議座長で前県知事の増田寛也氏が「ILCが築く豊かな未来」と題し講演する。
 いわてILC加速器科学推進会議の亀卦川代表幹事は「当日は未来を担う地元の中高生たちを中心に聴講を呼び掛けている。また、地域の基幹産業である農業分野の方々にもぜひ聴いてもらいたい」と希望している。
 入場無料。聴講の申し込み、問い合わせは奥州市ILC推進室(電話0197・24・2111、内線415)へ。
 
写真=山内正則氏(C)KEK
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tanko 2015-9-23 13:00
 前沢区の千田精密工業(千田伏二夫社長)は本年度、前沢工場を増築し精密洗浄事業部を立ち上げる。22日、同区五合田の現地で上棟式が行われ、関係者が工事の安全を祈った。増築建屋は11月中旬にも完工予定。千田社長は国際リニアコライダー(ILC)誘致を見据えた形で新事業に乗り出すとし、「社員の技術力を磨き、いつでも対応できるようにしておきたい」と話す。
 本社と併設の同前沢工場は、本杉工業団地内に立地。増築に向け同社は今年3月、同工場に隣接する約4700平方メートルを市から買い入れた。現工場の南側に増築する建屋は、鉄骨造平屋で延べ床面積776.56平方メートル。精密機械用のクリーンルームとし、大型精密洗浄装置など関連設備を備える。
 同社は現在、自社製の半導体製造装置部品を関東や関西方面に運び洗浄しているが、今回の事業部新設に伴い、製造から洗浄までの工程を自社で一貫して行えるようになる。経費削減に加え、品質管理の徹底を図る。
 先月17日に着工しており、11月20日の完成を目指す。設備投資を後押しする県の補助を受け、同社の投資額は土地購入費を除き約2億円。精密洗浄事業部の新設で、従業員5、6人の新規雇用も検討している。
 上棟式には、工事関係者や従業員ら約60人が出席。神事後に千田社長が「新事業で幅を広げ、夢のILCが来たなら自社の仕事を結び付け、安定した形で社員の生活を守れる企業に成長したい」とあいさつした。

写真=関係者約60人が出席した千田精密工業前沢工場の増築工事上棟式
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tanko 2015-9-10 10:00
 文部科学省の「国際リニアコライダー(ILC)に関する有識者会議」が今年6月、「これまでの議論のまとめ」と題し、ILC誘致をめぐる提言や諸課題を公表したのを受け、「国際将来加速器委員会(International Committee for Future Accelerators=ICFA(イクファ))」は、「まとめ」に対する見解を文書にし、年内にも有識者会議に送付する意向だ。東京大学素粒子物理研究国際センター長の駒宮幸男教授が今月3日、研究者組織「リニアコライダー・コラボレーション(LCC)」のホームページに掲載した解説記事(英文)の中で伝えた。
(児玉直人)

 ICFAは、高エネルギー物理学界で影響力のある世界主要加速器研究所の所長や研究代表者で構成。ILCのような高エネルギー加速器の建設や運用に関する国際協力体制などを協議している。2009〜2011年までは、当時、高エネルギ加速器研究機構(KEK)の機構長だった鈴木厚人・県立大学学長が議長を務めた。
 駒宮教授によると、8月19日にスロベニアの首都リュブリアナで開かれたICFAの会合後、ヨアキム・ムニック議長=ドイツ電子シンクロトロン研究所理事=は、有識者会議の平野真一座長(名古屋大学名誉教授)宛てに手紙を書いたという。
 手紙では、今年6月25日に同会議が示した「これまでの議論のまとめ」の内容をICFAとして協議した旨を報告。「ILCコミュニティーにとって励ましになる」などと、謝意を伝えた。
 有識者会議は「まとめ」の中で、(1)国際的な経費分担と、巨額投資に見合う科学的成果への見通しを得ること(2)LHC(欧州合同原子核研究機構が運営する実験施設)が2017年末まで計画している実験の結果に基づき、ILCの性能や得られる成果を見極め、技術課題の解決やコスト面のリスク低減を明確にすること(3)国民や他の学術界の理解と合意形成を図ること――の3点を提言している。日本語版のほか、英訳版も作成され公表している。
 提言は文科省に対するもので、ICFAが公式に回答を求められたわけではない。ただ、英訳版が作成されたことなども踏まえ、指摘された課題の整理や必要な解決策をICFAとして明確にすることで、有識者会議の議論にフィードバックを掛ける狙いがあるとみられる。
 ムニック議長は、ICFAの見解を文書にまとめ、年内に送付する用意があると伝えた。さらに、有識者会議で必要な情報があれば、ICFAは随時応じることも付け加えた。
 解説記事の中ではこのほか、駒宮教授が「まとめ」が意図することなどを説明。「(ホスト予定国の)日本がゴーサインを出さない限り、各国が参加表明できないのは分かる。しかし、今必要とされているのは参加の確約ではなく、各国の政府高官がILCの重要性や研究者界の熱意を理解しているという点だ」とし、日本政府に各国の動きが見えるよう、海外の研究者が自国の政府担当者に積極的な情報提供をするよう呼び掛けた。
 駒宮教授は胆江日日新聞社の取材に「ILCのような国際プロジェクトは、国内だけでなく他国の研究者との協力が当初から必須となる。他国政府や関係省庁がILC計画をきちんと認識し、国際交渉に参加できる基礎固めをしなければいけない」と話している。

写真=ムニック議長と駒宮幸男教授
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tanko 2015-9-7 10:50
 6日投開票が行われた岩手県議選奥州選挙区(奥州市、金ケ崎町)の投票率は61.17%で、4年前の前回選を6.46ポイント下回った。定数5に8人が立候補する激戦区となったものの、有権者の関心は高まらず大幅低下につながった。知事選が無投票となり、県議選の陣営関係者を中心に「投票率は落ち込む」との観測が広がっていた。県全体の投票率は52.81%で、前回選の60.60%から7.79ポイント低下し、過去最低を更新した。

 胆江2市町をエリアとする奥州選挙区の当日有権者数は11万3528人。投票者数は6万9445人で、棄権者数は4万4083人に上った。
 胆江各地の投票所では6日、朝から家族連れらの姿が見られた。投票をするのは「国民の義務」「参加しない選択肢はない」「私たちの代表を選ぶのだから」との意見がある一方、午後から雨となった天候も少なからず影響し、投票率は伸びなかった。
 「何をやっても変わらないと諦めているのではないか」。投票率の低下には有権者の無力感があると推し量るのは、前沢区山下の会社員男性(40)だ。有権者の中には「県議に期待しても仕方がない」(水沢区の60代男性)、「具体的に期待することはない」(金ケ崎町の40代女性)とのつぶやきも漏れた。
 医療や社会保障、少子・人口減対策をはじめ、国際リニアコライダー(ILC)誘致や環太平洋経済連携協定(TPP)など地域住民の暮らしに直結する課題が山積する。
 江刺区の団体職員女性(34)は、少子化とILCを今回選の“重点項目”と捉え、「争点が見えにくい中で公約に自分の願いが重なる候補者に票を入れた」。水沢区高屋敷の会社員男性(60)は「地域医療体制の充実を望む」と期待した。
 前回選より1人多い8人が攻防を繰り広げた選挙戦に、「こんなに迷った選挙はなかった」との声も。同区上町の保護司女性(74)はそれぞれの公約を吟味し、「子や孫の代まで平和な暮らしが続くように」との願いを1票に託した。
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【補足】
 任期満了に伴う岩手県議会議員選挙は、6日投票が行われた。奥州選挙区(定数5)には現職5人、新人3人の8人が立候補した。
 人口問題や医療福祉など身近な問題に加え、ILC候補地の地元ということでILC誘致実現や関連産業の参入、教育の質向上などを公約に掲げた候補者も目立った。
 奥州選挙区開票結果は次の通り。

当選 千田 美津子(ちだ・みつこ)    61歳 共産・新人 10,767票
当選 佐々木 努 (ささき・つとむ)   50歳 県ク・現職   10,341票
当選 郷右近 浩 (ごうこん・ひろし)  50歳 生活・現職  9,971票
当選 渡辺 幸貫 (わたなべ・こうかん) 69歳 無所属・現職 8,482票
当選 菅野 博典 (かんの・ひろのり)  38歳 生活・新人  8,114票
   後藤  完 (ごとう・まこと)   69歳 生活・現職 7,865票
   菅原 勝一 (すがわら・しょういち)49歳 自民・新人  6,753票
   及川 幸子 (おいかわ・さちこ) 68歳 生活・現職  6,403票
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tanko 2015-9-4 9:20
 胆江2市町(奥州市・金ケ崎町)の有権者を対象にした県議選世論調査では、争点として高齢者福祉や社会保障、地域医療、子育て支援への対応を求める声が上位を占め、国際リニアコライダー(ILC)誘致実現は下位にとどまった。人口減少社会が進展し、地方経済全体に明るい兆しが見いだしづらい不安要素が多い中、安心して古里で暮らしたいという有権者の願いが表れた。
 このほか、争点で上位に挙がったのは震災復興で、早期対応を求める意見が目立つ。
 政府の安全保障法制に対しては反対が多く、賛意を示す声は少数だった。環太平洋経済連携協定(TPP)では、締結によって営農への悪影響を懸念する声が圧倒的だった。
 前回選を1人上回る8氏が立候補し、激戦となっている今回選。投票する際の基準は「同じ区に住む候補者」が最多の3割を占め、「候補者の人柄」を含めると5割を超えた。
 「政策」を基準に挙げたのは2割を割り込んだ。複数の陣営は「農業振興、人口減少対策、福祉充実などのスローガンだけみると、候補者ごとの違いは見えてこない」と認めつつ、「時間がない中、有権者に政策の細部まで訴えるのは難しい」と悩む。

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