人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市東部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)
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tanko 2015-1-27 9:20
東北大へもアピール
 国際リニアコライダー(ILC)実現による波及効果を地域活性化に生かすため、奥州市はILCを意識したまちづくりビジョンの検討に着手する。研究者界と地元を結ぶ仕組みの構築や、各種機関・団体・組織・企業が果たすべき役割などを具体化できるよう、検討組織を年度内にも設置する。具体策を市民と共に実行すると同時に、メーンキャンパス(中央研究所)の構想を練っている東北大学にも地元の対応策として提唱したい考えだ。
(児玉直人)

 最先端の科学技術で宇宙誕生の謎を探るILC。その研究意義もさることながら、経済活性化や人口減対策、震災復興など多岐にわたる波及効果にも注目が集まる。
 ただ、研究施設が完成しても、それらの効果が自動的に生じるわけではない。奥州市ILC推進室の及川健室長は「例えば教育環境が充実するという期待もあるが、事前に研究者と教育機関との間で契約や講師派遣のような仕組みを設定しておかなければ、なかなか実行に移せない」と説明する。
 県レベルでは、製造系企業を対象にILC関連産業への参入に向けた取り組みを展開している。これに並行し、市は農業などの地場産業、医療や福祉、歴史・文化といった多様な分野をどう結びつけていくか模索している。
 既設の市ILC推進連絡協議会(会長・小沢昌記市長)にも、農業など幅広い分野の団体が加入している。波及効果を確実なものにするためには、各分野がILCを意識した経営や事業展開をどれだけイメージし、具体化できるかがポイント。しかし、分野によっては「自分たちの仕事や活動とILCが、どう関わればよいか」などの悩みを抱えているという。
 こうした現状を踏まえ、市はILCを意識した各分野の取り組みを具体化できるよう、検討組織を年度内に設置する予定。市推進連絡協には国際研究都市を形成する上で重要な医療福祉や運輸交通の関係機関・団体が加入していないことから、新たに参加を呼び掛ける。
 及川室長は「ILCを迎え入れようとしている今、それぞれの立場で何ができるか、これから何ができるかを考え、具体的な取り組みへと移行させたい。メーンキャンパスの構想案を練っている東北大学にも、地元の取り組みとして提唱できれば」と話している。
 ILCをめぐっては、国内外の素粒子物理研究者らが北上山地に特化した設計や実験装置の研究・開発を進めている。また、文部科学省が設置した有識者会議では、コストや人材確保について協議中。新年度中にはその結果がまとまり、日本政府としての誘致判断が下される見通しだ。


Outline of news (in English)

Oshu City to establish organization to investigate ripple effects of ILC, make proposals to Tohoku University

Oshu City is going to undertake an examination of the city growth plan with an eye to taking advantage of local revitalization when the International Linear Collider (ILC) is built. Within the fiscal year, the city plans to establish a study organization to create a system for researchers to cooperate with local people, and to determine roles for various groups, organizations, and businesses. The city will also advocate for local interests by making proposals to Tohoku University, which will be planning the ILC main campus.
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tanko 2015-1-25 14:30
[suze=large]To a Multicultural "Oshu": Foreign Residents and Mayor Ozawa Exchange Views[/size]
In English http://www.city.oshu.iwate.jp/htm/ilc/english/news.viewer.html?prm=2015012500

ILC建設や国際化視野

 多文化共生イベント「市タウンミーティング」が24日、水沢区吉小路の市水沢地域交流館(アスピア)で開かれ、市内在住の外国人市民と小沢昌記市長が膝を交えて意見交換。海外出身者も暮らしやすい街づくりを共に展望した。
 同ミーティングは市国際交流協会(佐藤剛会長)と市が主催し、外国人市民のネットワーク形成や国際リニアコライダー(ILC)建設を見据えた多文化共生社会構築を目指し5年前から毎年開催。外国人市民が日本で暮らす上での困りごとを聞き取り、行政サービスの向上に生かす狙いもある。
 市内では現在、約450人の外国人市民が生活している。この日はアメリカ、中国、韓国、フィリピン、ルーマニアなど外国出身の市民約20人が出席した。
 外国人市民が日本で生活していく上で一番のネックとなるのは、やはり言葉。昨年の同ミーティングでは「バス停留所などの標示や医療関係者の説明など言葉が分からない」といった意見もあった。
 この日参加した中国出身の男性も「日本に来て難しいことの一つが就職。言葉の壁があり職場でコミュニケーションが取れない」と吐露。「われわれから日本の文化に溶け込まなければならない面もあるが、日本人と外国人が共に活動できる場面がもっとあれば」と要望した。
 小沢市長は「国際交流協会が行う外国人市民向けの就職支援講座や市のサービスを効果的に利用してほしい。『こんなサービスがあるんだよ』ということを皆さんから他の外国人市民に広めてもらえたら」と呼び掛けた。
 他の外国人市民からは「飲食店や量販店が少ない」「子どもたちが遊べる大きな遊び場がほしい」「水沢駅通りが寂しい」などといった意見や要望が出され、小沢市長が一人一人の声に耳を傾け市の対策を説明しながら将来展望を示した。
 ILCについての勉強会も行われ、一大事業に理解も深めた。

写真=小沢昌記市長(左)に要望を伝えるアメリカ出身のビル・ルイスさん
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tanko 2015-1-15 12:00
First Electromagnetic Horns Fully "Made in Japan": Chida Precision Products of Maesawa Ward
In English http://www.city.oshu.iwate.jp/htm/ilc/english/news.viewer.html?prm=2015011501


ILC関連産業参入の刺激に
 前沢区字五合田の金属加工業?千田精密工業(資本金8000万円、千田伏二夫社長)は大槌町の同社大槌工場で、高エネルギー加速器研究機構(KEK、茨城県つくば市、鈴木厚人機構長)向けの素粒子実験装置用アルミ部品「電磁ホーン」を製造した。同型部品の単独製造は国内初。国際リニアコライダー(ILC)の北上山地誘致を見据え、県内製造系企業では産学官連携で加速器関連産業参入を目指す動きがあるが、千田社長は「県内の同業者にも、いい刺激になるのでは」と期待している。(児玉直人)

 同社が製造した電磁ホーンは、KEKなどが運用する同県東海村の大強度陽子加速器施設「J−PARC」内で、素粒子の一種「ニュートリノ」の生成に用いられる。陽子からニュートリノへとビームが変化する過程の中で、砂時計のような形をした電磁ホーン内を通り抜ける。
 5年に一度交換するが、最初は米国製を使用。現在使用中の電磁ホーンは、日米共同で作られた。
 電磁ホーンは精密な切削加工と接合技術が要求される。これを実現したのが同社大槌工場の摩擦撹拌接合(FSW)専用機。変形の少ないアルミ溶接が可能だ。
 完成品は直径1.5m、長さ2.5mものと、直径1m、長さ2mの2台。今月末にはJ−PARCに送る予定だ。
 同社はILC誘致が盛り上がる前から、ニュートリノ実験装置の周辺部材などをKEKに納入していた実績がある。千田社長は「ILC計画があったからというより、これまでの付き合いもあって今回のチャンスをいただいた。社員もプレッシャーの中で互いに考え合って取り組んでくれた」と振り返る。「今になれば、ILCが来ることが決まれば『われわれ地元企業はこういうお手伝いができます』というPRになる」と語る。
 加速器産業への県内企業参入について、千田社長は「加速空洞のような心臓部の部品に限らず、企業それぞれに持っている優れた技術や特徴を生かせる仕事があるはず。研究者と企業とが、お互いの現状を見て語り合うことからアイデアは生まれる。人と人とのつながりがやはり大事だ」と強調していた。

写真=千田精密工業が大槌工場で製造した「電磁ホーン」


Outline of news (in English)
Metalwork business company : Chida Seimitsu Kogyo Co., Ltd. ( Iwate Pref. Oshu-city Maesawa-ward, Capital 80 million yen, president of Fujio Chida) was produced "electromagnetic Horne" in a this company's Otsuchi factory. This part made of aluminum. Using for an elementary particle experimental device at High Energy Accelerator Research Organization (KEK, Ibaraki pref. Tsukuba-city, Director General of Atsuto Suzuki). This is the first time that alone Japanese company made this parts.
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tanko 2015-1-14 9:20
 国際リニアコライダー(ILC)を推進する国際研究者組織「リニアコライダー・コラボレーション(LCC)」の最高責任者リン・エバンス氏(69)=ロンドン・インペリアルカレッジ教授=は13日、一関市内で会見し、文部科学省が進めている国内誘致をめぐる協議について「前向きな結果であることに期待したい」と述べた。エバンス氏らLCC幹部は同日、ILC関連部品の輸送環境を調べるため、宮城県気仙沼市の港湾施設などを視察。「機能的に大きな問題はない」と話していた。(児玉直人)

 一関市などを訪れたLCC幹部はエバンス氏のほか、ILC担当責任者のマイク・ハリソン氏(65)=米ブルックヘブン国立研究所、測定器・物理担当責任者の山本均氏(59)=東北大学大学院教授=ら7人。高エネルギー加速器研究機構(KEK)や県、奥州市、一関市などのILC担当職員らも同行した。
 今回の視察は、海外などで作られたILC関連部品の輸送環境把握や、東北の産学官誘致関係者との交流が主な目的。気仙沼市では菅原茂市長と会談したほか、港湾機能を現地視察。その後、測定器などが設置される「中央衝突点」の想定地である一関市大東町内の山間部にも足を運んだ。
 視察後、一関市内で記者会見したエバンス氏は「気仙沼港の復興状況に感心した。道路も特に問題ないだろう」とした上で、「コンテナの陸揚げ設備が整っていない。(気仙沼だけでなく)他の港からの陸揚げについても想定したい」と述べた。
 ILCの国内誘致実現については、文部科学省が有識者会議(座長・平野真一名古屋大学名誉教授)を設置。さらに二つのワーキンググループを設け、技術やコスト面などを詳細に調査している。エバンス氏は「文科省は真剣に取り組んでおり、その結果が出るのを見守っている」との考えを示した。
 同日、一関市内では夕食会もあり、達増拓也知事や小沢昌記奥州市長らも出席した。
 エバンス氏らLCC一行は14日、仙台市内で村井嘉浩宮城県知事との面会などに臨む。
 
写真=視察を終え一関市内で会見するリン・エバンス氏(中央)
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tanko 2015-1-11 5:40
「話題に関心」9割近く
 奥州市国際交流協会(佐藤剛会長)が昨年11月から12月末にかけ、水沢区吉小路の水沢地域交流館(アスピア)で実施した国際リニアコライダー(ILC)に関するアンケートによると、回答者の87.2%がILC誘致に対する話題に「関心がある」と答えた。一方、ILC関連の講演会などに「参加したことがない」と答えた人は53.2%。地域活性化に期待する声が多かったのに対し、受け入れ態勢や環境や治安に対する不安も挙げられた。

 同協会はアスピア玄関ロビーの一角に、ILC誘致に携わる研究者や有識者の見解などをまとめたパネルを展示。アンケート用紙も備え、施設利用する一般市民からILC計画に対する考えを調査していた。
 展示したパネルは、昨年11月3日から2日間、水沢地区センターで開かれた第3回「おらが地区センターまつり」の特別企画「みんな集まれILC奥州展2」で使用したもの。同まつりに協力した胆江日日新聞社が記事中で取り上げた研究者らのコメントを抜粋し作成。さまざまな立場の人たちがILC計画に対し考えを持っていることを伝えた。
 同協会は、昨年12月28日までの回収分を集約。47人(男性17人、女性27人、未記入3人)が回答した。住まい別では水沢26人、江刺9人、胆沢2人、前沢2人、金ケ崎2人、未記入6人。年代別では10代3人、20代4人、30代8人、40代9人、50代7人、60代5人、70代2人、80代1人、未記入8人だった。
 「ILCに関する新聞記事やニュースに興味があるか」との問いに、41人が「とてもある」「ある」と回答。ILC計画への関心の高さをうかがわせた。
 一方、行政や誘致団体などが主催する講演会に「参加したことがない」と答えた人は25人で、回答者の半数余りという状況だった。
 ILCに期待することとして、最も多かったのが地域活性化や経済への効果。人口減問題の対応につながると認識している人も少なくない。国際化による異文化交流の促進や教育レベル向上、雇用促進に対する期待も多かった。
 「ILCが実現することで不安に感じること」については、英語をはじめとする外国語対応や一般市民のコミュニケーションといった部分を挙げる人が目立った。また、施設建設に伴う環境負荷や放射線対策、機器トラブルなど安全面に対する懸念も。治安や外国人配偶者の雇用の問題を指摘する人もいた。
 「世界的に本当に必要とされているのか」「国や海外からの支援は本当に期待できるか」などILC計画そのものに対する疑問もあった。
 自由意見では「一生懸命になっているのが、一部だけのような気がして残念」「文系の人間にとっては認知度が低い」「若い世代が興味を持てるイベントが必要」など、理解普及へ努力を求める声が多数を占めた。首都圏に直結するJR水沢江刺駅周辺のグランドデザインの必要性を求める意見もあった。

写真=アスピア玄関ホールに展示しているパネル。ILC誘致関係者らのコメントを紹介するとともに、来館者アンケートも実施した

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市民理解の構築 従来手法にとらわれず
 【解説】 奥州市国際交流協会が国際リニアコライダー(ILC)に関するアンケート結果をまとめた。市人口に対しサンプル数は少ないものの、ILCに対する期待の大きさだけでなく、肌身で感じるような全市的な盛り上が実感できないという声も多かった。より工夫を凝らした周知方法が求められる。
 20〜40代の青年層、子育て世代の回答者が多く、その半数以上がILC関連の講演会などに「参加したことがない」と回答した。
 数年前から研究者らを招いたILC講演会は、胆江地区でも数多く開かれている。その出席者をみると企業や経済団体の代表や担当者、行政職員、町内会役員などが多い。年齢層も比較的高めだ。講演会とは別に、次世代育成の観点から中高生向けの出前授業なども実施している。
 今回のアンケートは水沢地域交流館(アスピア)に来館し、かつ、パネル展示を見て積極的に自分の考えを表明した人の集約結果。つまり、ILCに興味・関心がある人でさえ、半分以上は講演会には参加したことがないことを示している。
 これまでの講演会参加者の顔ぶれなどを加味すると、講演会に参加したことがないという20〜40代は、潜在的にさらにいることが推測される。
 ILCの運用が始まるのは10〜20年後とされる。そのころになると、現在の20〜40代は企業や地域をけん引するリーダー的な立場となり、さまざまな決断や対応を求められる。仕事や家事に追われるこの世代に対し、講演会など従来手法以外で関心を高めてもらう対策が必要だ。
 ILCに期待することの大半は、地域活性化や経済・雇用の改善、教育レベルの向上など市民生活に身近な分野。研究者らが強調する「宇宙誕生の謎解明」など、科学的な意義に対する反応は少数だった。「内容が難しい」「認知度が低い」と感じる回答者もいたことから、市民の関心事や生活に身近な話題とILCの意義とをうまく結びつける工夫も大切だ。
 期待と不安の相反する質問の中で、共通して出てきた要素が「国際化」。国際色豊かな特徴性ある地域づくりに夢が膨らむが、国内他地域や海外から多くの人が滞在・来訪することによって、地域コミュニティーや治安に影響を与えないか――との懸念もあった。
 このほか、自然環境や放射線の影響を心配する意見も。放射線に関しては、福島第1原発事故のような事象は、ILCで起きないと研究者らは強調している。だが、予期せぬ事故やトラブルの可能性や安全対策については、市民の信頼を得る上でも「研究の意義」以上に丁寧な説明を繰り返すことが欠かせない。
 13日には、国際研究者組織「リニアコライダー・コラボレーション」の幹部らが、一関市や宮城県気仙沼市を視察する。研究者サイドはILC実現への下準備を着々と進めているが、日本政府は誘致判断をまだ表明していない。
 「一生懸命になっているのは一部だけ」「いつ具体化なるのか」「本当に世界が必要としているのか」という疑問や指摘は、こうした中ぶらりんの現状を反映しているものと思われる。そんな中で、いかに市民理解を高めていくかが、誘致関係者の腕の見せ所と言える。
(児玉直人)

写真=昨年11月、水沢地区センターで開かれた「みんな集まれILC奥州展2」。高エネルギー加速器研究機構の藤本順平講師(左)が、目で見える分かりやすい実験で、一般市民にILCの仕組みを解説。楽しみながら市民理解を得る工夫が今後ますます求められる
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tanko 2015-1-10 19:40
Setting About in Earnest to Get Local Businesses into ILC market: Prefecture to Propose Starting an Industry Research Society
In English http://www.city.oshu.iwate.jp/htm/ilc/english/news.viewer.html?prm=2015011000

 国際リニアコライダー(ILC)に使われる加速器本体や付随装置などの製造に地元企業参入の可能性を探る県は来月、仮称・いわて加速器関連産業研究会を設立する。ILC実現による地域産業界、経済界への波及効果を確実なものとするための態勢づくりに本腰を入れる。
(児玉直人)

 県と公益財団法人いわて産業振興センター(熊田淳理事長)は昨年10月、「加速器関連産業参入セミナー」を開催。高エネルギー加速器研究機構(KEK)の研究者を招き、ILCで行う素粒子実験に使用される加速器の製造工程や必要な技術、設備機器など学び、県内企業の加速器産業参入の可能性を模索している。
 さまざまな波及効果が列挙されているILC計画だが、関連装置の一部を地元で生産することで地場産業の振興やそれに伴う地域経済の活性化につながるとの期待がある。ただ、ILCに使われる加速器や付随装置は高い精度を要求される。胆江地区を含めた本県内陸部には、ものづくり企業が数多く立地しているが、中小規模の事業所が多いこともあり、加速器関連産業参入を実現するには、事前の態勢整備をはじめ企業同士や研究機関、大学、行政などとの連携が欠かせない。
 県科学ILC推進室の千葉彰室長は「初回のセミナーには約30社参加したが、『自分たちの技も磨けるチャンスだ』と反応はとてもよかった。一方で専門性の高い分野であり、現状の自社設備で対応できるか、参入するにしても投資はどれほど必要かなど見極めているようだ」と話す。
 ILC実現による地元産業の活性化を確実なものとするため、県は2月16日に盛岡市内で開く第2回セミナーの席上で、仮称・いわて加速器関連産業研究会の設立を提唱する方針。地元産業界としての態勢を整える。
 セミナーではKEKの宮原正信氏(特別技術専門職)と山本明氏(ILC計画推進室長)が土木・施設工事の現状や全体の準備状況について講演する。その後、いわて産業振興センターが県内企業の加速器産業参入可能性調査の結果を報告した上で、研究会設立を県側が提案する運び。
 千葉室長は「セミナーには、製造企業のほか土木工事企業の関係者の出席もある。機器製造だけでなく、土木分野の地元参入についてもどう対応していくか、出席者の意見を聞きながら研究会の中身を固めていきたい」と話している。
 セミナーは、加速器関連産業への参入や産学官連携よる共同研究に関心のある企業関係者であれば参加できる。定員150人で参加費無料だが、終了後の交流会は会費制(4000円)。
 申し込み、問い合わせは2月9日までにいわて産業振興センターものづくり振興グループ(電話019・631・3825)へ。

写真=ILC向けに試作された超電導加速空洞(資料)
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tanko 2015-1-6 10:30
Making Strenuous Efforts to Educate Global Human Resources: Kanegasaki ALT Daniel Degrasse.
In English http://www.city.oshu.iwate.jp/htm/ilc/english/news.viewer.html?prm=2015010600

 文部科学省の教育課程特例校指定を受け、本年度から全小学校の全学年で英語活動に取り組む金ケ崎町。物おじせず、外国人の講師らに話し掛け、関わりを持とうとする子どもたちの姿は、頼もしくもある。「まちづくりはひとづくり」を基本とする同町が、周辺自治体に先駆けて取り組むグローバル人材の育成。ダニエル・デグラスさん(29)はその主軸として、2人の外国語指導助手(ALT)と共に汗を流す。
 2011(平成23)年8月にALTとして同町に赴任。本年度、英語指導員として町職員に採用された。ALTのウイリアム・ストロングさん、プレストン・ベイカーさんと一緒に、町内の幼・保育園、小学校、中学校で英語を教える。
 「明るい子たちで、英語への関心が高い。小さいころから身近に感じているので、英語を使うときに緊張感がない」とデグラスさん。「活動を公開すると、保護者だけでなく地域のみなさんも多く足を運んでくれた。関心の高さを感じた」。英語教育への期待感をひしひしと感じる。
 ALT間の指導レベルの差をなくすため、互いの授業を録画し研究。各クラスに合った授業の展開を目指し担任教諭との打ち合わせ時間を設けるなど、文科省指定を受けた本年度から新たな指導充実策を打ち出した。
 「赴任当初と比べ、先生方の英語力も格段に上がっている」。英語を使う機会を増やそうと、教諭らが自由参加できる英語サークル「CAKE(クラブ・アスパラガス・カネガサキ・イングリッシュ)」も立ち上げた。
 活動を通して親睦を深め、幼・保育園や小中学校間が連携する素地を育てていく狙いもある。「先生同士の交流があれば、学校間の連携もスムーズに進む。同じ目的に向かってつながっていくための橋を架けていきたい」と熱を込める。
 北上山地に国際リニアコライダー(ILC)が建設された場合、「英語の必要性を一番感じるのは、ILCに関わる日本人。子どもたちに、しっかりと英語教育を受けさせたいと考えるのではないか」と分析する。加えて、「日本と欧米は文字文化が違うので、話せることが大事。英語でのコミュニケーション力の高い地域は、外国人にとっても魅力的」。
 グローバルな人材の育成を目指す同町の英語教育は、地域の魅力を高めることにもつながっていく。「平和国際交流の町」を掲げる同町の職員として、町の未来もしっかりと見据える。
(菊池藍)

写真=「『気』元気よく金ケ崎町の子どもたちのために」と印字した名札を胸に、熱のこもった授業で児童らを引き付けるダニエル・デグラスさん
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tanko 2015-1-1 12:40
他地域からの移住者増→ILC見据えたまちづくり

 少子高齢化、人口減少は、住民に最も身近な地域コミュニティーの在り方にも大きな影響を与えている。従前の取り組みを継続するだけでは対処しきれない状況にある。
 こうした問題に対処すべく、胆江各地でさまざまな取り組みが展開されている。もともとは高齢化対策や新旧住民の交流促進のために計画したものだが、地域商業の活性化や国際リニアコライダー(ILC)誘致に関係した将来都市ビジョン策定にもつながる大きなヒントを与えてくれる。
 さまざまな課題を克服し、今まで以上に地域を輝かせようとする人たちの姿を追った。(菊池藍、佐藤和人)

新旧住民つなぐ「子ども」
 「東北復興の柱」と県が位置付けている国際リニアコライダー(ILC)の誘致。ILCが誘致された場合、国内はもとより世界各国から研究者とその家族が胆江地区などに暮らすことが予想される。さまざまな出身地の新住民が急増したとき、地元住民はどう対応し地域づくりを進めるのか――。金ケ崎町では、新たに開発された分譲地やアパートに、他地域から引っ越してきた新住民が住むようになっている。そんな中、都会でみられるような「人間関係の希薄化」に陥らないよう、新旧住民一体となった地域づくりを進めている自治会がある。これらの取り組みは、ILCを見据えた国際都市の姿を考える上で、よいヒントになるかもしれない。


宅地造成機に人口増/祭りなどで交流促進(矢来自治会)
 JR金ケ崎駅周辺をエリアとする矢来自治会(坂田裕之会長)。近年、宅地が造成され新しい住宅が建ち並ぶようになった。駅前広場を活用した夏祭りの開催などを通じ、新旧住民の交流を深めている。
 自治会内の人口は、2010(平成22)年は286人だったが、昨年は約1.26倍増え360人に。子育て中の若い世代が引っ越してきたこともあり、高齢化率は34.97%から29.44%に下がるなど、自治会内の年齢構成も大きく変化した。
 現在体育部長や班長として自治会活動に汗を流す斉藤和博さん(60)も、移住3年目の新住民。行事参加を呼び掛ける際、回覧だけでなく戸別配布や訪問を重ね、地域内の顔をつないでいった。子育て世代は、子どもと一緒に地域の清掃活動に参加してくる。「もともと参画意識が高い人たちが住んでいる。新しい住民の『ちょっと先輩』として、従来から住む人たちとのつなぎ役になれれば」と心をくだく。
 子ども会育成会の会長などを務めてきた高橋牧子さん(43)は、「今でこそ子どもが多いが、少ない時期もあり、役割を分担しながら活動する中で必然的に自治会との関わりが増えた」という。「大変だったけれども、関わり続けることが大事。つながり続けていれば、何かあった時にも心強いかな、くらいの気持ち」と振り返る。
 これまでの活動の積み重ねの上にあるのが、2012年度から新たに導入し、駅前イベント広場で開いた「やらい絆まつり」。新たな住民間のつながりを生むきっかけにもなっている。
 高橋さんの長女・涼香さん(22)は「新しい家が建ち、顔が分からない人もいたが、祭りに来た子どもたちとの交流を介して、お互いの顔が分かるようになってきた。顔見知りが増えれば、他の行事へも参加しやすくなる」という。
 「住民がそれぞれ勤務時間も異なり、全ての行事に参加というわけにはいかないが、徐々に参加が増えている」と自治会の坂田会長(62)。まつり開催を通して生まれた新たなつながりは、通常の自治会活動へも好循環を生み出し始めた。
写真=みずき飾り作りなど、日ごろから世代や組織を横断しての交流事業を実施している矢来自治会。新しく家を建てた住民と地域との融合を図っている




「都市化」防止へ行事工夫/増えるアパート転入(谷地下自治会)
 国道4号・金ケ崎バイパス沿いをエリアとする谷地下自治会(西久雄会長)も、アパートなどに転入してくる住民が増え続けている。同自治会は、新住民と従来から同町に暮らす住民との交流を図るため、子育て世代を意識した取り組みを展開。住民同士の関係が希薄になる「都市化」のような状態を防ぐ努力をしている。
 かつては田園地帯だった谷地下地区。バイパス開通とともに国道沿いが商業地域となった。金ケ崎小学校や町立図書館、中央生涯教育センター、金ケ崎駅などの公共施設もあり、工業団地へのアクセスが良いことからアパートが増えた。
 町内でも利便性が高い地域とあって、地区内の人口は年々増加し、1979(昭和54)年は439人だったが、昨年は1189人に。世帯数も107世帯から444世帯に増えた。このうちアパート暮らしの住民は235世帯と、全体の半数近くを占める。
 自治会では、子どもたちを巻き込んだ▽感謝祭▽班対抗運動会▽盆踊り大会――の3大事業を1991(平成3)年から展開するようになった。子どもが参加できる行事ならば自然と保護者もついてくる。
 行事ばかりではない。同自治会は、新生児誕生の祝い金贈呈制度がある。自治会の予算の中から地区内で子どもが生まれた世帯に1万円を贈り、子どもの育成にもつなげている。これらの取り組みを通じ、新旧住民間の関係が希薄にならないよう努めている。
 「地域活動は『人と人を結びつける』大切な事業。ややもすると自治会役員らは任期を全うするだけになりがち。活動もマンネリ化する傾向がある」と西会長(69)は語る。
 自治会では、多方面の意見を聞く場として「谷地下地域づくり協議会」を設置。現役員や歴代会長、民生児童委員らが集い、自治会事業の見直しや新規事業などを模索する。
 一連の活動成果が認められ、2009(平成21)年に「県の元気なコミュニティー100選」の認定を受けたが、今もいくつかの課題に直面している。その一つが、リーダーとなる後継者の不足。西会長は「住民は多くいるが『リーダーをやりたい』という人がどれだけいるか。仕事をしながら地域づくりに関わるのは困難との声も多い」と現状を話しながらも、「この地域には鳥海柵や戸隠神社など古くから伝わる歴史と文化がある。昔の人の思いを大事にしながら地域活性化につなげていきたい」と前向きだ。

写真=アパート世帯増加を踏まえ、アパート火災を想定した防災訓練を実施(谷地下自治会)
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tanko 2015-1-1 12:20
今昔の大事業 関連性語る

 水沢江刺駅の実現に携わった、奥州市水沢区大町の亀卦川富夫さん(74)。市議や県議を経て、現在は素粒子物理学の実験施設「国際リニアコライダー(ILC)」の誘致団体代表として奔走する。ILC実現への期待が高まる中で迎える駅開業30周年。二つのビッグプロジェクトの「密接な関係」について語ってもらった。(児玉直人)



 私が所属していた水沢青年会議所(水沢JC)が新幹線駅誘致に取り組み始めたのは昭和46年。閣議決定するも国鉄の財政難やオイルショックの影響があって、結局昭和60年3月14日に開業した。駅開業に至るまでは苦難の歴史。あれから30年になろうとしているが、本当にあっという間だなと感じる。
 私や仲間の皆さんは何度も東京に足を運び陳情や関係者との折衝に臨んだ。当時、われわれの声に耳を傾けてくれた元衆院議員椎名悦三郎さんのメモが、1979年の死去後に見つかった。その中に駅誘致に対する思いが記されていた。
 「胆江両郡(胆沢郡と江刺郡)を一つにまとめて新時代に向かわねばならぬ。新水沢駅(現・水沢江刺駅)構想がその所産だ。江刺平野を取り入れ、胆江一丸として岩手県南の開発を招来することが次の時代の目標だ。(中略)開発は人なり。新幹線を食い物にしてはならぬ。これを最高度に活用するのだ」
 私たちの市民運動に対する理解だけでなく、私利私欲に走ってはいけないという政治家として心構えも示しており、深く感銘した。

 ◇  ◇  ◇

 30周年の節目は、人口減少時代という状況下で迎える。私たちは「孫子の時代に悔いを残すな」を合言葉に駅誘致を進めたが、もう一度この観点から新幹線駅の存在意義をみんなで考えるべきではないかと思う。つまり、ILC計画と新幹線駅との関係についてだ。
 北上山地が事実上のILC建設予定地になった。国の誘致決断を待っている状況にあり、駅開業��周年となる今年が、大きなヤマ場になることは間違いない。
 水沢江刺駅は、ILC中央衝突地点想定ポイントから最も近い場所にある新幹線駅だ。国内候補地の選定結果でも、新幹線駅に近いところにメーンキャンパスを設けるべきだと言っている。それを考えると、水沢江刺駅の立地条件はすごくいい。国内外の研究者やその家族、見学訪問者らを迎え入れる機能を配置するなど、駅周辺はさまざまな用途に活用できる。

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 人口減少は日本で一番の課題。今までは、新幹線で都会へ人が出ていった。しかしILCが実現すれば新幹線で人を呼び込むことになる。国が地域創生を進めようとしている中、ILCを中核とした地域社会づくりは非常に意義があるプロジェクトであり、その中で水沢江刺駅が果たす役割はとても大きい。
 「なぜ、在来線と一緒の場所に駅がないのか」という人もいたが、今度は「よくぞここに新幹線駅があったなあ」と思われるようになるかもしれない。そのためにも早急に都市や地域の将来構想(ビジョン)を作るべきだ。
 国鉄が水沢江刺駅建設を正式決定する前から、駅予定地になるであろう羽田地区では、区画整理事業を先行実施した。それと同じように、地元の熱意を行動で示さなければいけない。
 駅構内には待合室機能を兼ねた観光PR施設「南岩手交流プラザ」がある。ILCや県南、沿岸広域圏の将来ビジョンを紹介する常設展示コーナーに活用できないだろうか。近年、北上山地視察や国際会議のため、国内外の研究者たちが降り立っている。そういったPR機能が駅にあってしかるべきではないか。
 3月14日を機に水沢江刺駅とILC、地域創生とを関連付けた具体的な取り組みをもっと考えないといけない。



 きけがわ・とみお 水沢区出身。立教大卒。椎名悦三郎、素夫両衆院議員の秘書を経て、旧水沢市議を1983(昭和58)年から5期20年、2003(平成15)年から岩手県議を2期8年務めた。理事長も経験した水沢JC会員時代に、新幹線駅の誘致運動に携わった。現在はILC誘致の官民連携組織「いわてILC加速器科学推進会議」の代表幹事、水沢日本外交協会会長、国際経済調査会理事などを務める。74歳。

 
写真=新幹線駅誘致運動のために作成したパンフレットを手に、当時を回想する亀卦川富夫さん


新幹線駅設置決定を知らせていた在来線(東北本線)水沢駅前の広告塔。今はILCの誘致実現をPRしている
投稿者 : 
tanko 2015-1-1 12:10

水沢出身の後藤新平は、初代鉄道院総裁で広軌論(新幹線規格による線路敷設)の提唱者でもあった。ボーイスカウトの少年との立像は2007年秋、駅東側の羽黒山から移設された。乗降客やさっそうと行き交う列車を見守る



 「この駅は南いわての新たな発展を願い 住民の熱意と協力により建設されたものである」

 奥州市水沢区羽田町の東北新幹線水沢江刺駅。その正面口脇の岩にはめ込まれた銘板の一文には、十数年に及んだ駅誘致運動の苦労と開業の喜び、将来へ向けた希望が込められている。
 同駅は今年3月14日で開業30周年を迎える。新幹線駅の誕生はビジネスや観光、そして人々の暮らし、地域社会の姿にさまざまな変化をもたらした。

 日本初の請願駅で、建設費は全額地元負担。粘り強い要望活動、署名運動、募金集め……。「おらほの駅」を実現させたいという強い思いが、当時を知る人の話や各種資料などから伝わってくる。
 月日が経過し、駅誕生の経過を知らない世代も増えてきている。水や空気のごとく、あって当たり前のような存在となっているが、「新幹線駅誕生」に情熱を注いだ人たちのの努力を今一度見つめ直してみたいものだ。

 高速交通網の発達による「ストロー効果」を指摘する見解も少なくない。都市と地方との時間的距離の短縮によって、最新のモノや情報があふれ、華やかさ漂う都会へ行きやすくなった。地方経済にも影響を与えた。若い人材も流出し、地方のマンパワーは著しく低下している。今、地方には都会にない魅力の創出が求められている。

 「中央キャンパスは、仙台・東京へのアクセス利便性を有し、研究・生活環境に優れる新幹線沿線の立地を強く推奨する」
 素粒子実験施設・国際リニアコライダー(ILC)の国内候補地を北上山地に選定したILC立地評価会議は、ILC中央キャンパス設置場所について「新幹線沿線」という要件を付した。人口流出、地方衰退という現実に直面する中、国際研究施設の最寄り駅になる可能性が十分にある。

 地域住民のための駅でありつつ、国際学術研究都市のターミナルとしての役割も――。新時代到来を願いながら、節目の年を迎える。



最高時速320kmで東京へと向かう「はやぶさ・こまち」号。新幹線路線網は2016年春、津軽海峡を越え北海道・函館に達する(水沢江刺駅と水沢区羽田中心部を望む高台から)


駅開業までの道のりは長く険しかったが、粘り強く住民署名や要望活動などを重ねた


開業当日、関係者は万感の思いを込めてテープカットした


水沢江刺駅に対する思いが記された銘板。駅正面口脇にある

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