人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市東部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)
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tanko 2014-10-29 5:40
 国際リニアコライダー(ILC)の立地評価会議で社会環境基盤評価担当委員を務めた、中央大学教授の石川幹子氏(農学博士)は28日、仙台市内のホテルで講演し、ILC誘致に関連したまちづくりについて、「東北は受け入れ姿勢を積極的にアピールすべきだ」と強調。環境、社会、文化を意識した広域の将来都市構想を構築すべきだと訴えた。
 石川氏は東北ILC推進協議会が主催する講演会で登壇。本県や宮城県などのILC誘致団体や自治体、経済界の関係者約250人が聴講した。
 石川氏は宮城県岩沼市出身。環境デザインや都市環境計画が専門で、全国各地の都市設計などに携わっている。ILC国内候補地を選定した立地評価会議内に設置された、社会環境基盤評価部門の委員を務めた。
 ILC計画について石川氏は「1000年に一度の震災で深い悲しみを受けた東北にとって、いぶし銀のような文化を広く発信する上でもまたとないチャンスだ」とした上で、「残念ながらILCと合致する広域エリアの将来都市構想がない。東北が真剣にILCを受け入れようという気持ちで臨まなければいけない。待っているだけ、人任せにしているだけではいけない」と指摘した。
 都市形成の歴史的な流れに触れながら都市と自然とのかかわりの変化を紹介し、「まちづくりは資金の有無ではなく、『何を大切にすべきか』という哲学が重要。哲学のある無しによって町の姿は100年で差がつく。それが都市づくりだ」と強調。「環境、社会、文化の中心にILCを位置付けるようなストーリーを考えてほしい」と訴えた。
 同日は東北大学大学院教授の山本均氏が、ILCで行われる研究の意義や技術について解説。東北経済連合会常務理事の高玉昌一氏が、ILCを核とした加速器関連産業の育成や集積など産業面の効果について講演した。

写真=ILCとまちづくりについて講演する石川幹子氏(ウェスティンホテル仙台)
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tanko 2014-10-29 5:20
 国際リニアコライダー(ILC)の誘致実現を目指す奥州市は、教育や産業、都市整備関連部署など既存の庁内部署においてもILCを意識した独自事業を創出し、市組織全体で誘致関連の動きを強化しようとしている。ILC推進室を中心とした対応だけでは限界があるため、ILC関連事業を統括する組織を設置しながら、全庁的な取り組みを進める体制を構築したい考えだ。体制づくりの足掛かりとして小沢昌記市長や主要部課長級職員らは30日から2日間、茨城県つくば市の高エネルギー加速器研究機構(KEK、鈴木厚人機構長)などを視察する。
(児玉直人)

 ILC誘致に関して奥州市はこれまで、総務企画部内の同推進室が中心となり、県や国、関連団体との調整、市民へのILC周知事業などを進めてきた。
 ただ、ILCに関連する取り組みは多岐にわたり、ILCの建設が現実となった場合、同推進室だけで関連事業をこなすのは事実上困難。一言に「国際学術研究都市に向けたまちづくり」といっても、農業を含めた産業部門や都市計画担当部門、教育部門など庁内の既存部署が関与しなければならない場面は数多くある。
 同推進室以外の若手職員による「ILC計画応援チーム」はあるものの、各部署が独自にILCを意識した事業を計画し実行していく上では、確かな組織体制を構築していく必要があるという。同推進室の及川健室長は「各部署にどんどんILCを意識した事業をやってもらうためにも、全体を取り仕切る組織を構築するなどして体制を整えることが必要」と話す。
 同推進室は小沢市長を筆頭とするILC関連施設の視察を30日から実施。及川室長は「KEKなど最先端の研究現場を見たことがない職員は多い。ILCを実現しようとする現場や、先進例に触れることで、それぞれの部署が果たすべき役割や可能な事業を考えるきっかけとしてもらいたい」と視察目的を説明する。
 初日はILC関連装置の開発研究が進められているKEKを訪問。2日目は東京大学「柏の葉キャンパス」などがある千葉県柏市に足を運び、公・民・学の連携によるまちづくりの様子を視察する。
 21人参加するが、小沢市長は1日目のKEKのみ参加する。
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tanko 2014-10-27 11:50
 日本学術会議会長の大西隆氏は25日、岩手大学で開かれた同会議東北地区会議主催の公開学術講演会に出席。あいさつの中でILC(国際リニアコライダー)について触れ、国民の目線に立った議論の必要性を強調した。
 同会議は昨年、文部科学省の審議依頼を受け、ILCの日本誘致に向けて必要な取り組みについての見解をまとめた。ILCで行われる研究の意義を認めた上で、建設や運用にかかる経費や人材の確保など十分に協議、見極めた上で誘致を結論づけるよう回答している。
 あいさつで大西氏はILCの実現について「社会にどのような効果があるか、特に国民から見てどのような意味があるのか、十分に議論する必要がある」との見解を示した。
 大西氏は東京大学大学院工学系研究科教授などを経て、2011(平成23)年10月から日本学術会議会長に就任。都市計画や地域計画、社会システム工学などを専門分野としている。

写真=岩手大学を会場に開かれた講演会で、あいさつする日本学術会議の大西隆会長
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tanko 2014-10-26 11:50
 国際リニアコライダー(ILC)誘致への期待が高まる中、ILCにも用いられる加速器技術の利活用をテーマにした講演会が25日、盛岡市上田の岩手大学で開かれた。東北地方ではILCをはじめ、先端科学技術を集結させる構想が進められており、同大学を含む東北地区7国立大学は「東北放射光(ほうしゃこう)施設」の誘致実現に向けた共同提案をしている。講演では、同施設の概要や医療への応用可能性などについて有識者が解説。聴講者の関心を集めた。
 日本学術会議(大西隆会長)の東北地区会議が主催、胆江日日新聞社などが後援した。「加速器科学が未来を拓く」をテーマに一般市民にも公開した学術講演会で、高校生や大学生も含め100人余りが来場。同学術会議の大西会長も出席したほか、奥州市からも市議や市ILC推進室、奥州商工会議所職員らが聴講した。
 放射光は電子や陽電子を加速させた際、磁力によって進行方向を曲げられた時に放出される光。特にも目に見える「可視光線」以外の光を取り出し利用することで、さまざまな物質の構造や性質の解明が可能といい、新製品開発や医学、農業、犯罪捜査など幅広い分野に利活用できることで知られる。
 ILC誘致を契機に放射光施設も東北地方に建設し、産業や医療など一般市民の生活により身近な分野への貢献を図ろうとする動きが高まっている。
 この日は、東北大学電子光理学研究センターの浜広幸教授が「加速器科学の発展と東北放射光施設計画の概要」と題し基調講演。加速器の歴史のほか、放射光の性質などを説明した。放射光は物質構造解明や創薬のほか、バイオリンの名器として知られる「ストラディバリウス」の美しい音色の謎を解析するなど、芸術分野の研究にも使われているという。
 浜教授は「加速器は自然や宇宙の理解のためだけでなく、産業や医学にも使われるようになるなど多様化している。全国の皆さんと連携を図りながら、東北放射光施設の実現を目指したい」と述べた。
 
写真=東北放射光施設について説明する浜広幸教授(岩手大学工学部テクノホール)
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tanko 2014-10-19 10:40
Hope for More Visitors: "Mountain Map" at Ahara-Yama Highlands Observation Area
In English http://www.city.oshu.iwate.jp/htm/ilc/english/news.viewer.html?prm=2014101900

 奥州市江刺区の伊手振興会(佐藤絢哉会長)は18日、同区伊手の阿原山高原展望広場に、見渡すことができる山々を示す「方位盤」を設置した。360度の大パノラマを楽しめる景勝地だけに、同振興会は来訪者の増加に期待を掛ける。
 同高原はかつて宮沢賢治らが訪れ、その絶景を楽しんだとされる場所。また誘致を目指す国際リニアコライダー(ILC)の建設予定地が同高原近くにあり、今後来訪者が増えると見込まれることから方位盤の設置を決めた。総工費は約85万円。市の協働のまちづくり交付金を充てた。
 方位盤の原図は、県内外の山々に詳しい及川慶志さん(76)=水沢区佐倉河字佐野原=が担当。同高原から見渡せる主な山々46座のうち21座をピックアップし、起こした図面を基に直径50cmの青銅製の方位盤を作製した。御影石製の高さ95cmの台座に固定し、台座側面には現地の標高・緯度・経度が英語と日本語で表記されている。
 及川さんによると、同高原からの展望は5月の雨上がりや山々に雪が降る時期が最高という。「方位盤が、遠くは秋田駒ケ岳や姫神山まで一望できる眺めを楽しむ一助になればうれしい」と笑顔を見せる。
 立案した同振興会監事の男沢健さん(82)は「ILCができれば海外からこの場所を訪れる人も増えることを考え、英語の国際表記を用いた。賢治も堪能したこの眺めを、より多くの人たちに味わってほしい」と願っている。

写真=設置された方位盤を参考に周囲の山々を眺める男沢健さん(左から2人目)ら
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tanko 2014-10-15 10:00
 海外来訪者や外国人市民の救急医療対応をスムーズに行える環境整備を目指そうと、市国際交流協会(佐藤剛会長)は全5回の日程で医療通訳者研修会をスタートさせた。国際交流事業で訪れた人が体調不良を訴えた事例を踏まえ、国際リニアコライダー(ILC)実現に伴う地域の国際化を見据えた取り組み。初回の11日は市民ら29人が通訳者としての基本的な注意点などを学んだ。来年2月14日の最終講義で実施する試験に合格した受講者は、同協会の医療通訳者として登録される。


 医療通訳は滞在の長短にかかわらず、緊急的な医療処置を必要とする外国人来訪者や外国人市民と、医師など医療機関側との間に入りコミュニケーション面を支援する役割を担う。
 同協会は、ILC実現に伴う地域社会の国際化に対応しようと取り組んでいる。医療面のサポート体制も重要事項の一つと位置付け、市の補助を受けて通訳者の養成研修を企画した。
 初回は29人が受講し、このうち15人が海外出身者。多文化医療サービス研究会の西村明夫代表を講師に招き、医療通訳者として特に必要な知識や心構えを習得した。
 医療通訳者は単に外国語が堪能なだけでは務まらない。他者の健康や暮らしといったプライバシーに踏み込むため、知り得た情報は決して口外しないほか、患者である外国人の出身国の文化や信仰している宗教の戒律などにも十分な理解が必要。保険制度といった事務的な手続きはもとより、患者と医師との関係に対する認識も国によって異なることも念頭に対応しなければならない。
 同協会は、医療通訳が実際に活躍する場面として突発的または緊急性の高い症状の事案発生を想定しており、まずは胆江地区の救急医療の中核を担う県立胆沢病院(松本登院長)と協力体制を築いていく方針。その上で、市当局を交えながら開業医を含めた医療機関との医療通訳システムの構築を検討していきたいという。

写真=市国際交流協会がスタートさせた医療通訳研修会
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tanko 2014-10-4 9:30
 岩手県の首席ILC推進監を兼務する県南広域振興局副局長の佐々木淳氏は2日夜、水沢区内のホテルで開かれた水沢日本外交協会(亀卦川富夫代表)主催の講演会で、ILCと地域のかかわりについて持論を展開。「ILCと自分たちの暮らしや仕事が関連することは何か、ぜひ想像してほしい」と呼び掛けた。
 佐々木氏はILCの概要や科学的意義については簡単に解説し、地域や産業、教育面への効果に重点を置いて話を進めた。
 ILCに関する各種部品を地元から調達することで、地域企業の活躍の場が生まれることはこれまでも言われているが「それだけではない」と佐々木氏。研究施設のメンテナンスや研究者の生活サービス、見学者への対応などに関して、さまざまなビジネスが必要になることを紹介した。
 農業分野を一例にしながら「産直などを通じて地場産の新鮮な食材を提供することも考えられる。よい食材、おいしいものに対して反応が良ければ、世界中にその情報が伝わる。外国への販路拡大を進めようとする際にも、身近な場所に外国人がいるので市場調査も容易だ」と説明した。
 また、最先端科学が用いられるILCと平和思想を礎とする平泉文化遺産、自然の美しさと厳しさを目の当たりにできる三陸海岸の3要素を結び付けることで、「世界の子どもたちに誇れる教育拠点になるのでは」とも主張した。
 「岩手はILCというアドバンテージ(優位性)を持っている。『科学の研究施設だから』『最先端の技術が必要だから』といって距離を置かず、自分自身の仕事や生活との関連性をぜひ想像してほしい」と呼び掛けた。
写真=「ILCがもたらす多様な可能性を想像してほしい」と訴える佐々木淳氏
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tanko 2014-10-2 12:20
 素粒子実験施設「国際リニアコライダー(ILC)」の誘致を目指す奥州市は1日付で、米オレゴン州出身のアンナ・トーマスさん(29)=矢巾町在住=をILC国際化推進員(非常勤特別職)として任命した。国際研究都市を目指す上で必要な情報収集や外国人研究者との人的ネットワークの構築、市職員向けの英会話研修の講師などとして活躍してもらう方針だ。

 トーマスさんは、オレゴン州にある米国西海岸最古の歴史を誇るウィラメット大学を卒業。大学では社会学を専攻するとともに、副専攻として日本語を学んでいた。「小学校のころ自宅が日本人学生のホームステイ先になったことがあり、それから日本に興味を持ち始めた」という。在学中の2006年には東京国際大学に半年間留学していた。
 2010年5月から日本で生活。大都市だと英語を話せる外国人が身近にいすぎるため「かえって日本語を覚えなくなる」とあえて地方での生活を希望。英会話教師の仕事もあった岩手に来るきっかけにもなった。英会話教師を3年ほど務めた後は、岩手県の国際交流センターでのアルバイトやリゾートホテルの接客業務などの仕事をしてきた。
 奥州市は今年、ILC誘致を見据えた地域と行政の国際化を強力に進めるため「ILC国際化推進員設置規則」を定め、英語を母国語とした非常勤職員を募集。当初は8月の採用を見込んでいたが、条件に見合う人の応募が無く、県内の外国人市民らのネットワークを頼りに人材を探していたところ、トーマスさんの紹介があり面接などを経て採用を決めた。
 任命期間は今月1日から16年3月31日までだが、すでに9月上旬に水沢区内で開かれたILC関連の国際会議で夕食会時の通訳を務めている。
 辞令を交付した小沢昌記市長は「職員の英語力向上のためにも力を振るってもらいたい」と激励。トーマスさんは「国際交流センターにいた時からILCの話は聞いていたが、まさか自分がそれに関する仕事に携われるとは思わなかった。どのようにしたら地域の国際化を進められるか、他の事例も見ながら研究していきたい」と意気込んでいる。

写真=ILC国際化推進員として採用されたアンナ・トーマスさん

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