人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市東部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)
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tanko 2014-9-29 10:00
 奥州市国際交流協会(佐藤剛会長)は、医療通訳者の育成研修を、10月11日から5回日程で実施する。国際リニアコライダー(ILC)実現による在住外国人の増加も見据えた取り組み。同協会は来年度以降も研修会を開催しながら、市内での医療通訳システム構築と運営を目指す。(渡辺学)

 同協会によると、病院などで医師と外国人患者の通訳をする医療通訳は、結婚などを機に市内で暮らしている外国人に需要があるほか、海外姉妹都市から交流事業で奥州市を訪れる人など短期滞在者で必要になるケースを想定する。
 ILCの研究者や家族など将来的な需要の可能性も踏まえ、同協会は本年度、これまでの医療通訳研修の内容を充実させ、県外から講師を招き全5回日程で開催する。
 研修会で対象とする言語は英語、中国語、韓国語、タガログ語、インドネシア語。受講対象は、日本人はこの5言語のいずれかが話せる人、外国人の場合は5言語のどれかが母国語で日本語が話せる人になる。
 研修では医療通訳の倫理や多文化に関する知識、患者の心理、日本の保険制度や治療費、病院で使う言葉、感染症対策・予防接種の知識、コミュニケーションスキルなどについての座学のほか、後半2回は模擬通訳練習、医療通訳が可能かを判定するレベルチェックが行われる。
 講師は、多文化医療サービス研究会代表の西村明夫さん=神奈川県在住=や、同研究会所属の各言語の医療通訳者ら。10月から来年2月まで毎月1回、水沢区吉小路の市水沢地域交流館(アスピア)を主会場に開催する。
 同協会は、来年度以降も研修会を開催しながら医療通訳ボランティアを募り、通訳が必要な人にボランティアを派遣する仕組みの構築を図る。
 問い合わせ、申し込みは同協会(電話0197-22-6611)へ。
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tanko 2014-9-23 9:50
 世界中の物理学者たちは、北上山地周辺の暮らしに何を望んでいるか――。今月上旬、水沢区内で開かれた国際リニアコライダー(ILC)関連の国際会議「ILDミーティング2014」では、街づくりに関する意見交換会が組み込まれた。配偶者の仕事や子どもの教育面の充実などを求める外国人研究者たち。地方財政が厳しい中、地域振興や交流人口増加のメリットも意識しながら、いかに理想の国際学術研究都市を築くか。受け入れ側の知恵と工夫する力が試される。議論の様子は国際研究者組織リニアコライダー・コラボレーション(LCC)のホームページ上でも紹介され、世界中の研究者の目に触れられている。
(児玉直人)

 ILDミーティングに参加した80人余りのうち約半数が外国人研究者。彼らにとって北上山地は、30年以上も練り続けてきた計画が実現するかもしれない場所。その地で初めて開催することもあり、理系の話題だけで終始するいつもの会議とは違った意味合いも込められていた。
 会議の現地世話人代表を務めた東北大学大学院の山本均教授は「私が知る限り、この分野の国際会議でまちづくりや暮らしをテーマにした議論を繰り広げたのは初めてだ」と振り返る。
 意見交換会では研究者の代表や地域に住む外国市民らが発言した。県若者女性協働推進室の国際交流員アマンダ・クリプスさん(米国出身)は、地域に住む日本人市民の多くは、外国人や多様な文化と接する機会や経験が少ないと説明。「例えば肉類を食べない『ベジタリアン』の概念を日本人が完全に理解しているわけではない。どう対応すればよいか分からないのが実情だ」と述べた。
 単身赴任の概念が存在しない外国人は、一家そろって移住してくる。配偶者の仕事に関しては、現に国際的な研究所が立地する地域でも常々問題になっている。
 水沢区で20年以上生活している米国出身のビル・ルイスさんは、自身がスーパーの従業員として働いたことに触れ「来日した当初は日本語をほとんど話さなかったが、仕事を通じて日本のことをいろいろ学んだ」と回想。配偶者らが地域で仕事を持つのは、地域コミュニティーの中に溶け込む絶好の手段になることを示唆した。
 今回の会議には、妻子を連れて参加した研究者もいた。チェコ科学アカデミーのラシュトヴィチカ・トマースさんは、妻と2歳の息子を連れ来日。会期中に開かれた夕食懇談会の場で胆江日日新聞社の取材に応じ、「長期であろうと短期であろうと、家族と一緒にここに住みたいと感じた。そのためにもインターナショナルスクールは非常に大事だ」と強調した。さらに「素晴らしい自然に囲まれているので、私たちもそこへ気軽に行きたい。運転免許がスムーズに取得できればうれしい」と希望していた。
 外国人研究者の意見に、岩手県科学ILC推進室の千葉彰室長は「彼らの考えを最大限尊重しつつ、いろいろな方策を見つけることが重要だと思う。国際研究都市を形成する上での課題は把握できているので、どのような方法で対応できるか、民間活力をどこに参入させられるかをしっかり考えていきたい」と話している。

 LCCのホームページは
http://www.linearcollider.org/
上部メニューの「NEWS LINE」内で意見交換の様子を英文で紹介している。

写真=まちづくり意見交換会で議論を交わす外国人研究者たち(奥州市役所本庁3階講堂)
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tanko 2014-9-18 9:40
 ビッグプロジェクトを迎え入れる地方自治体の現状と課題は――。中央大学法学部3年の野尻友紀さん(21)=埼玉県出身=は、奥州市内で繰り広げられている国際リニアコライダー(ILC)の誘致活動の実態を調べようと、同市を訪れている。19日まで市内の関係団体や市担当職員に話を聞き、実情や課題、今後の展望を探る。調査結果は本年度中に報告書としてまとめる予定だ。(児玉直人)

 野尻さんは、同学部の中沢秀雄教授(地域社会学・政治社会学)が開講するゼミナールを受講。中沢教授は毎年、3年生向けの課題として特定の自治体を対象とした総合的調査を学生たちに実践させている。
 東日本大震災直後、同大学の被災地支援活動を統括していた中沢教授は、学生らの滞在拠点を奥州市に置き、沿岸被災地との間を往来していた。その縁があり、今年は同市を調査対象に定めた。
 19日までの現地調査には、野尻さんを含め14人の学生が参加。観光や福祉など、ゼミ生それぞれが調査テーマを設定する中、野尻さんはILC誘致を取り上げた。
 野尻さんは今年3月、事前学習のため、他のゼミ生と一緒に奥州市役所などを訪問。その際、庁舎のあちらこちらに掲示されたポスターやのぼり旗、横断幕に大書きされた「ILC」の3文字が気になった。
 「最初は一体何なのか全く分からなかった。帰ってから調べると、とてもすごい計画だということに気付いた」と野尻さん。同時に「前例のないまちづくりをどのように進めるのか」「市民理解をどうやって得るのか」「外国人の受け入れ対応は大丈夫か」という疑問も湧いてきた。
 ILCの基本知識、日本誘致の意義や課題を知るため、6月23日に都内で開かれた日本学術会議主催の「ILC学術フォーラム」を聴講。さらに、本紙のILC関連記事から誘致に向けた地元の取り組みを調べるなど、情報収集に努めてきた。
 市内滞在期間中は、中学生向けILC出前授業を県や市から委託されているNPO法人イーハトーブ宇宙実践センターや市国際交流協会、市ILC推進室の関係者から話を聞く。野尻さんは「地域住民と外国人が共に生きていく上で、どのような対応が必要になるかも聞いてみたい」と意欲的だ。

写真=ILCの誘致活動や市民理解の実態調査に臨んでいる中央大3年の野尻友紀さん
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tanko 2014-9-13 11:30
 国際リニアコライダー(ILC)を見据えた地域づくりについて、水沢青年会議所(水沢JC、千田將智理事長)と若手の市担当職員が意見を交わす会合が11日夜、水沢区東町の水沢商工会館5階中ホールで開かれた。参加者は、国際都市を担う人材の育成や地元企業とILCとの関わりについて議論。新規のハード、ソフト事業だけにとらわれず、地域の魅力を生かした国際研究都市を築いていくべきだなどの声が上がった。
 水沢JCでは、ILCに関連した学習会や視察活動などを展開してきた。行政、学術、民間の垣根を越えた連携が必要との観点から、まちづくりや地元企業の関わりについて同世代同士で意見を交わす場を設けようと、今回の会合を企画。市ILC推進室所属職員と若手市職員による「ILC計画応援チーム」のメンバーら計12人、水沢JC会員約40人が意見を交わした。
 取り上げたテーマは人材育成と企業経営。4つのグループに分かれ議論を交わし、集約した意見や提言を発表した。
 教育関係では「家庭、地域、行政、学校とが連携して子どものうちから英語に親しむ環境が必要」「英語寺子屋みたいなものができないか」といった意見が出された。
 企業経営については、中小企業が多い地域実情を受け「専門性が高く、すでに大手が参画しているILC本体の研究設備に地元企業が関わるのは難しいのでは」「研究に直接関連することより、インフラ整備や生活関連ビジネスの面で関わったほうが、取っ掛かりやすい」との声も。「大学の出先機関のようなものを設置し、研究者と地元企業のパイプ役を果たしてくれたら、地元企業の参入はスムーズにいくのでは」とする意見もあった。
 このほか、地域づくり全般については「外国人ばかりでなく、他地域に住む日本人が訪れることも予想される。新たに何かを作るのではなく、今ある魅力や資源を生かすことが重要ではないか」との提言も出された。
 千田理事長は「ILCを迎える上で、まずは地域の人たちが地元の魅力はどこにあるか気づくことが重要ではないかと思う。外国人研究者やその家族がストレスなく過ごせる最低限の環境整備は必要だが、ゼロから何かの施設をつくろうとせず、地域にある資源やその土地の文化を生かすことが大切ではないか」と話している。
 
写真=ILC誘致を見据え人材育成や企業経営について意見を交わす水沢JC会員と若手市職員ら
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tanko 2014-9-10 11:10
 国際リニアコライダー(ILC)に関連した国際会議「ILDミーティング2014」を主催した大型測定器「ILD」の研究者グループで、共同代表を務めるティエズ・ベーンケ博士(ドイツ電子シンクロトロン研究所=DESY)は、市や県が実施している中学生向けのILC理解普及活動などについて「非常に素晴らしい取り組みだ」と評価。「この地域がILCに最も適した場所だ」と太鼓判を押した。
(児玉直人)

 ベーンケ博士は、8日夜に開かれた夕食会でスピーチ。その中で、会議場の入り口に設置された中学生出前講座の様子を紹介するパネルについて触れた。「彼らこそがILCを造り上げてくれる人材だ。彼らは科学的な事柄だけに興味を持っているわけではなく、国際的なプロジェクトであることに非常に注目している。ILCは子どもたちの創造力をかき立ててくれるだろう」と述べた。
 夕食会に出席した小沢昌記市長に対して「地元の人たちがどれだけILCを歓迎しようとしているか、その気持ちが非常によく分かった」と感謝の意を伝えながら「この地はILCを迎えるのに最も適した場所だ」と主張した。
 さらに、参加した研究者らには「ILCに必要なのは、しっかりとした立地環境、地元の人々の理解、それから科学者だ。今回から加わった新たな仲間もいるが、一緒に実現に向けて歩んで行こう」と呼び掛けた。

写真=ILCの理解普及に向けた地元の取り組みに感銘を受けたと話すILDグループ共同代表のティエズ・ベーンケ博士
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tanko 2014-9-10 9:10
 国際リニアコライダー(ILC)に関連した国際会議「ILDミーティング2014」は9日、水沢区東町の水沢グランドホテルで総括質疑などを行い、全日程を終了した。前日の8日夜には、同区佐倉河のプラザイン水沢で夕食会が行われ、外国人研究者らは日本料理に舌鼓を打った。
 夕食会には会議に出席した研究者のほか小沢昌記市長、県の担当職員らも同席。小沢市長は「滞在中の感想や気に入ったことなどをぜひ伺い、国際的なまちづくりへのヒントにしたい。会議を終え、国に戻られた際には同僚の皆さんやご家族に、奥州市の宣伝をしてもらえたら」と呼び掛けた。
 夕食会は「和」を強調した内容。会議の現地世話人責任者を務めた東北大学大学院の山本均教授は、ホテル側に日本料理で勝負してほしいと要請していたという。「この地域には二つの世界遺産がある。それは、平泉と日本料理。参加した海外の方々には、向こう3年は『水沢で体験したあの夕食会は最高だった』と広められるような場になってほしかった」と語る。
 この日は「中秋の名月」。会場入り口にはススキや月見団子が供えられる粋な演出も。各テーブルには和紙を使った手作りのしおりや、折り鶴の箸置きを用意するなど、細かなところまで日本らしさにこだわった。宴席の途中では、江刺区稲瀬に伝わる「金津流石関獅子躍」が披露された。

写真=日本酒や日本料理を味わい、水沢での一夜を楽しむ外国人研究者たち
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tanko 2014-9-9 12:00
 「ILDミーティング2014」に参加した研究者の中には、日本の施設で実験活動を経験した外国人も少なくない。オーストリア科学アカデミーのヴィンフィールト・ミタロフ博士は、茨城県つくば市の高エネルギー加速器研究機構(KEK)で研究に従事した経験があり、東北を訪れるのも今回で2度目だという。
 ILC計画に携わり始めたのは1991(平成3)年のこと。大型測定器ILDのプロジェクトリーダーなどを歴任した。
 今回、現地視察などを通じてより一層、ILCの実現をサポートしたいとの気持ちを強くした。「ILCができれば、そこで行われる実験に興味を持った人材が集まり研究をしていく。まさに科学教育の場になるだろう」と語る。
 ミタロフさんは、多くの若者たちにILCに興味を持ってほしいと願う。
 「科学を学ぶことが、社会にどんな意義を与えるのか考えてほしい。新しい技術はさまざまな問題を起こしかねないと考える人は、ヨーロッパにも実際にいる。東北では福島第1原発事故も起きたばかりだ。だが、そのような時だからこそ、東北の子どもたちにはさまざまなことに興味を持ってもらいたいし、心を開いて物事にチャレンジしてほしい」

写真=若い人には特にILCへの関心を持ってもらいたいと語るミタロフ博士
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tanko 2014-9-9 11:00
 国際リニアコライダー(ILC)に関連した研究者らによる国際会議「ILDミーティング2014」は、9日で終了する。最終日前日の8日も、水沢区東町の水沢グランドホテルを会場に、国内外の物理学者らが装置の開発方針などをめぐって研究成果を発表したり議論を深めたりした。会場の入り口には、ILCの理解普及へ取り組む地元の様子を紹介するコーナーがお目見え。ILCの仕組みを簡単に再現した学習用模型は、研究者の人気を集めていた。
 参加者は6日に候補地周辺を視察し、7日から会議を本格化させた。ILCに設置する大型測定器「ILD」でどのような物理の成果を得られるのか、ILCを実現する上でILDはどのような役割を果たすのかといった点や、今後の組織などについての発表や質疑が行われた。
 8日、地元で取り組んでいるILCの理解普及活動の様子を紹介するコーナーが会場入り口にお目見え。中学生向けのILC出前授業の様子を紹介する写真や、授業を受けた生徒の感想のほか、市立水沢中学校2年生による手書きの歓迎メッセージも掲げられ、休憩時間に研究者らが立ち寄っている。
 特に研究者の注目を集めているのが、ILCの学習用模型だ。県や市から出前授業の委託を受けているイーハトーブ宇宙実践センターの大江昌嗣理事長が製作。電子や陽電子に見立てた金属球を衝突させ、加速させた小さな粒子をタイミングよく衝突させることの難しさを体感できる。
 衝突が見事成功すると、研究者たちは子どものように大喜び。中には「ヒッグス粒子が見えたぞ!」と笑いを誘う研究者もいた。ドイツ電子シンクロトロン研究所(DESY)のティエズ・ベーンケ博士は「模型はとても面白い。地域の人たちがILCを学ぶことは非常に重要なことだ」と話す。
 同日夜には、プラザイン水沢で小沢昌記市長らが出席しての夕食会が開かれた。9日は総括質疑などを行い、全日程を終了する。
(児玉直人)

写真=研究者たちの人気を集めているILC学習模型。背後には出前授業を受けた中学生の感想や写真なども掲示している
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tanko 2014-9-7 5:10
 国際リニアコライダー(ILC)に関連した研究者らによる国際会議「ILDミーティング2014」が6日、水沢区を会場に開幕した。国内外の物理学者ら85人が9日までの間、ILCで用いる大型測定器「ILD」について議論を交わすが、参加者のもう一つの関心事が奥州市など候補地周辺における生活環境。6日は現地視察のほか、まちづくりに関する意見交換会も実施され、誘致関係者にとっても国際研究都市を目指す上でのヒントを得られた。
(児玉直人)

 初日に実施した現地視察には、会議に参加表明している85人のうち60人ほどが参加した。
 水沢市街地のホテルを出発した一行は、同区星ガ丘町の国立天文台水沢VLBI観測所を訪問。亀谷收助教の案内で天文広域精測望遠鏡(VERA)など観測施設を見学した。このほか、えさし藤原の郷やILC建設候補地である北上山地、一関市街地、平泉町の中尊寺なども視察した。
 視察後は奥州市役所本庁で、まちづくりに関する意見交換会に臨んだ。外国人研究者5人が代表でそれぞれの考えを発表。特に目立ったのが配偶者の仕事や子どもの教育、公共交通機関に関すること。「研究者には長期滞在者と短期滞在者がいる。それぞれに適した対応が必要だ」などと話していた。
 会議の現地世話人代表を務める東北大学大学院の山本均教授によると、ILCの実現を想定し、候補地周辺に居住することをすでに意識している研究者が、外国人研究者にも相当いるという。
 当初、今回の会議は仙台市を会場にする計画だったが、山本教授は「候補地周辺にはどんな店があるか、外国人に対する教育や医療体制はどうなっているかなど、生活環境に対する関心は非常に高い。仙台でやらずに、こちらで開催することになった理由はそこにある」と説明。受け入れ人数の関係で参加者を85人で打ち切ったが、ILC候補地の地元で初めて開かれる会議に参加したいという研究者は、もっといたという。
 参加者の一人でフランス国立科学研究センター(CNRS)に所属するブードゥリー・ビンセントさんは「この地域はとても景観が美しい。ILCがここに建設されれば、日本の科学技術にとって良いことだし、国際社会にもいいアピールができる」と話していた。
 会議は水沢区東町の水沢グランドホテルを会場に、7日から本格化する。
写真=国立天文台水沢VLBI観測所を見学する国内外の研究者ら
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tanko 2014-9-7 5:00
 水沢区を会場に始まった国際会議「ILDミーティング2014」。国際リニアコライダーの略称「ILC」と一字違いの会議名称とあって、報道記事や歓迎ポスターなどを見ると、一瞬戸惑ってしまいそうだ。そもそもILCとILDは何が違うのだろうか?
(児玉直人)

 ILCは、国際リニアコライダー(International Linear Collider=インターナショナル・リニア・コライダー)の略。「国際」「直線の」「衝突型加速器」という三つの英単語の頭文字で、胆江地区など候補地周辺地域では、ある程度定着している。
 これに対し、今回の国際会議で取り扱う「ILD」とは、ILCで行う電子と陽電子の衝突実験を測定する装置の名称だ。「International Large Detector=インターナショナル・ラージ・ディテクター」の略だという。
 ILCにはILDのほか、「SiD」と呼ばれる測定器も設置する。こちらは「Sillicon Detector=シリコン・ディテクター」の略だ。
 通常、アルファベット表記の略称は、何らかの単語の頭文字を取っている。その単語一つ一つを和訳すれば、何を意味する名称なのか、だいたい理解できる。SiDの場合「Si」は半導体の材料となるシリコンを指す。半導体センサーを用いた測定器であることが分かる。
 一方、ILDは日本語に直訳すると「国際大型測定器」となる。ILDは「ガス飛跡検出器」によって、衝突して散らばった粒子の飛び方を調べるが、略称にはセンサーの種類などを表す言葉はない。「大型」という言葉の「Large」が入っている。実際、ILDのほうがSiDより大きい。
 とはいえ、人間のイラストを交えた完成予想図を見て分かるように、どちらも巨大な装置であることには変わりない。また、複数の国の研究者が協力し合って開発している点も一緒だ。
 高エネルギー加速器研究機構(KEK)によると、測定方法が違う2台の測定器を用いることで、実験結果信頼度を高めることができるという。

写真=右下がILD測定器(ガス飛跡検出器タイプ)、左上がSiD測定器(半導体検出器タイプ)の完成予想図。矢印部分に描かれた人間のイラストから装置の巨大さが想像できる((C)Rey.Hori/KEK)

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