人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市東部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)
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tanko 2014-5-30 10:00
 国際リニアコライダー(ILC)誘致活動の一環として、奥州市は外国人の非常勤職員「国際化推進員」の採用を計画している。外国人研究者に対する情報発信や民間団体との連携などを円滑に進める役割を担う。関連予算が30日招集の市議会6月定例会で審議される予定で、可決されれば7月中に公募し、8月には採用したい考えだ。
 市ILC推進室によると、国際化推進員は非常勤特別職の位置付け。6月定例議会に提案される市一般会計補正予算内に、報酬など244万1000円を計上している。
 当面は、市が開設しているILC特設ホームページ(HP)の英語版作成業務が中心となるが、外国人市民らで組織するILCサポート委員会(ビル・ルイス会長)などとの連携業務も予定している。
 市ILC推進室の及川健室長は「本市は市民レベルのILC誘致や国際都市を意識した動きが非常に良く、強みでもある。関係組織との連携を強化していく上でも、国際化推進員の役割は重要になるだろう」と話している。
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tanko 2014-5-28 18:40
 県国際リニアコライダー推進協議会(谷村邦久会長)主催の「公開ILC講演会」は、6月26日午後1時15分から盛岡市の県民会館中ホールで開かれる。国際リニアコライダー(ILC)計画推進の最前線で活躍する幹部級研究者3人が講師を務め、研究意義や最新動向について解説する。
 ILC誘致実現の機運を高める県民大会を兼ねて開催。入場無料で聴講希望者(定員600人)は、事前にファクスまたは電子メールで申し込む。
 終了後、午後5時半からホテル東日本で懇談会も予定している。定員200人で会費5000円。講演会と同じ方法で事前に申し込む。会費は会場で支払う。
 申し込み、問い合わせは同推進協事務局の盛岡商工会議所(電話019・624・5880、ファクス019・654・1588、電子メールdaihyo@ccimorioka.or.jp)へ。
 講師と演題は次の通り。
 ▽村山斉氏(リニアコライダーコラボレーション副責任者)…宇宙の始まりに素粒子で迫る
 ▽駒宮幸男氏(リニアコライダー国際推進委員会委員長)…ILCの社会的役割
 ▽山下了氏(ILC戦略会議議長)…ILCの現状と未来に向けて
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tanko 2014-5-28 11:00
 東北ILC推進協議会(事務局・東北経済連合会)の代表・里見進東北大学総長と高橋宏明東経連会長らは27日、内閣府などを訪問。国際リニアコライダー(ILC)の北上山地建設に向け、誘致に関する方針を明確にし、国際調整を速やかに進めるよう要望した。

 要望活動には里見、高橋両氏のほか、岩手県ILC推進協会長の谷村邦久・盛岡商工会議所会頭らが参加。山本一太・内閣府特命担当大臣(科学技術政策担当)をはじめ、河村建夫元官房長官らILC超党派議連メンバーらの元を訪ねた。
 要望ではILC誘致について、安倍晋三首相が今年1月の施政方針演説で述べた「2020年『創造と可能性の地』としての新たな東北の姿」を実現する好機であるとともに、震災復興にも資するプロジェクトであることを強調。「東北は産学官一体となって研究者や家族の受け入れ環境整備、加速器関連産業の集積、国際性を持った人材の育成などに積極的に取り組み、最大限の努力をする覚悟がある」とアピールした。
 その上で政府や政界に対し「誘致検討方針を明確にし、資金の分担や研究参加に関する国際調整等を速やかに進めること」「早期に国内誘致を表明し、日本主導の国際プロジェクトとして進める国内体制を整えること」の2点を要望した。
 東北ILC推進協事務局によると、山本担当相は「要望の内容については承知している。文部科学省に設置された有識者会議で協議された内容を見ながら、検討していきたい」と話した。
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tanko 2014-5-26 16:40
 米国高エネルギー物理学諮問委員会(High Energy Physics Advisory Panel = HEPAP(ヒーパップ))の下部組織「P5(ピーファイブ)」は25日までに、国際リニアコライダー(ILC)計画に対する強い支持を明記した報告書をHEPAPに提出した。報告書は米国の素粒子物理学研究の将来戦略に大きな影響を与えるもので、米政府の今後の判断を待つことになるが、「ILC計画実現に向けた国際協議への大きなステップになる」と関係者は期待している。
(児玉直人)

向こう5年間「何らかの形で関与」

 HEPAPは、米国のエネルギー省(United States Department of Energy = DOE)と全米科学財団(National Science Foundation = NSF)が合同で設置する諮問機関。米国の将来にわたる素粒子物理学研究の方針を協議し、DOEとNSFに答申している。
 HEPAP内に設けられた下部組織「P5」は、素粒子物理学優先順位付け委員会(Particle Physics Project Prioritization Panel)の通称。P5は米国が携わる向こう20年の素粒子物理研究の将来戦略などを協議し、その報告書を22日から2日間にわたりワシントンDCで開かれたHEPAPの会合で提出した。
 報告書の中でILC計画は「物理的な意義が強力である」と高く評価。米国政府の研究予算配分状況に応じた三つのシナリオが示されており、現状予算よりも配分額が増えた場合は「日本国内において実現するならば、米国はILC計画において世界をリードする役割を果たす」としている。
 一方、予算規模が従来通りであっても、研究開発などの分野で役割を果たすべきだとしており、向こう5年間、米国はILC計画に何らかの形で関与すべきだと指摘した。
 P5が作成した報告書は、HEPAPの正式承認を経てDOEに答申される。今後は、HEPAPや米政府が報告書をどう受け止め、判断を下すかに注目が集まる。
 ILC計画の最前線に立つ東北大学大学院の山本均教授は「ILCの科学的意義に対する熱烈な支持が、二度にわたり表現されている。今後5年間、米国はILCを見捨てないという姿勢も示されており、想定されるさまざまな予算状況にあっても『ILCに参加すべし』と言っている。非常に大きな前進だ」と歓迎する。
 ILC計画を推進する研究者らによる国際組織リニアコライダー・コラボレーション(LCC)も、ホームページ上にP5の報告概要などを紹介。米ブルックヘブン国立研究所のマイク・ハリソン教授らは「ILC計画実現に米国が貢献できるようになる第一歩だ」と評価している。
 日本国内では今月、文部科学省がILCに関する有識者会議(座長・平野真一名古屋大学名誉教授)を設置。誘致建設経費の全容と関係国と分担、人材確保、他の国家事業や諸学術分野に影響を及ぼさない予算の枠組みの在り方などを2、3年かけて検討する作業に着手している。
 山本教授は「米国はILCの活動を活発化させるために動いている。もし(報告書で示されている)5年のうちに誘致建設に向けた日本側のめどがつかなければ、日本でのILC実現は難しくなるだろう」と指摘している。
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tanko 2014-5-21 11:10
 市立中学全12校の2年生を対象に市が本年度初めて実施するILC(国際リニアコライダー)出前授業が20日、江刺区の田原中学校(川邊秀樹校長、生徒18人)を皮切りに始まった。同校では生徒7人が参加し、国立天文台の現役研究者や元エンジニアが指導した。12月中旬までに各校を一巡し、計35クラス・1147人が授業を受ける予定。市はILCをめぐる理解促進に加え、将来を見据えた人材育成にも期待する。
(若林正人)

 素粒子研究施設ILCの国内候補地が北上山地に一本化されたのを受け、市が出前授業を企画。NPO法人イーハトーブ宇宙実践センター(大江昌嗣理事長)が講師派遣を請け負っている。
 20日の授業は2時限を充てた。1時限目は国立天文台水沢VLBI観測所研究員の沢田聡子さん(44)が指導。電波望遠鏡で銀河を観測している沢田さんは「光も電波も同じ電磁波だが波の長さが違う」などと話し、ブラックホールの仕組みにも触れた。
 2時限目は同実践センターサイエンススクール講師の小野寺喜美男さん(67)が担当。光ファイバー製造技師として民間企業に長年務めた小野寺さんは、ILCでの研究内容を説明したほか、真空放電管や放射線を目視観察できる装置「霧箱」を使った実験も披露した。
 小野寺さんは「ILC建設後は1万人規模の研究者らが滞在する国際都市ができるので、おもてなしが必要」とし、雇用環境の拡充や教育水準の高まりも期待できると解説。「医療や国際交流、観光、行政などさまざまな分野の知識と技術が欠かせず、ILC計画に参加するのは理科系の人だけではない」と伝えた。
 授業を受けた佐藤美緒さん(13)は「学んだ成果を理科の授業に生かしたい」、梅原恭裕君(13)は「ILC建設で岩手の人口が増えるとうれしい」と述べた。
 沢田さんは次回の若柳中(胆沢区)での出前授業も担当する予定で、「何が興味を引いたかを意識し授業内容を濃くしたい」と意気込む。小野寺さんは「ILCの話は難しい面もあるが、授業内容はある程度理解してもらえた」と手応えを示した。
 大江理事長(73)は「この地域は世界に向けて門戸が開かれる可能性を秘めている。将来を担う子どもたちにますます伸びてほしい」と願っていた。

写真=市のILC出前授業を受ける田原中の生徒たち
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tanko 2014-5-20 11:00
2011〜2032年度 長期見通し修正

 奥州市は19日、普通会計の長期財政見通し(2011〜2032年度)を修正した「見直し版」を公表した。扶助費の大幅増などに伴い2017〜2031年度の財源不足の累計額は旧見通しの118億円から126億円に増えたが、2016年度までに蓄えた基金を取り崩し、一連の行財政改革を推進する前提で2032年度に収支の黒字化が図られると試算した。(若林正人)

 旧財政見通しは、財政計画の策定に伴い2012年3月に作成されたが、人口推計や4月の消費税増額の影響、扶助費の大幅増などを踏まえ修正。市は「見直し版」を19日の議員全員協議会で示し、「財政運営や財政健全化の参考にしたい」と説明した。
 歳入では、景気回復に伴い市税を単年度7〜8億円上方修正。地方交付税を下方修正し、旧見通しに対し2017年度に8億円減、2022年度に2億円減、2027年度に1億円減と試算した。
 2015年度の合併特例措置終了後、地方交付税は段階的に削減され、本来の算定に戻る2021年度は現行水準に比べ単年度で約33億円の減額となる。しかし今回の修正では、合併特例終了後の新たな支援策として国が実施予定の「みなし支所経費」の加算分(単年度約6億円)を見積もり、「措置終了の影響は緩和される」(財政課)と見込んだ。
 地方譲与税・交付金は、地方消費税の増税により大幅に上方修正し、消費税率10%後に単年度で約11億円増。国県支出金も歳出扶助費の見直しに伴い上方修正し、単年度で9〜10億円増とした。
 歳入規模は人口減少に伴い縮小傾向にあるが、2032年度は修正前の395億円に対し、23億円増の418億円になると試算した。
 一方、歳出では社会福祉や生活保護、児童福祉などの経費に当たる扶助費を旧見通しに比べ大幅に上方修正し、単年度で約13〜19億円上乗せした。障害者への自立支援給付費や生活保護費、保育所への入所経費の増加などを勘案した。
 人件費は、第2次定員適正化計画に基づき再推計。単年度で4〜5億円前後を下方修正したものの、2032年度の歳出は修正前の393億円に比べ25億円増の418億円とした。
 2017〜2031年度に陥る財源不足については、2016年度までの収支黒字分を積み立てた財政調整基金を取り崩し対応。しかし市は一連の行財政改革を進めなければ2032年度までに累計約300億円の財政赤字が生じるとみており、「身の丈にあった財政規模」を目指すと主張。「将来へツケを回さない持続可能な行財政基盤の確立や、ILCなど緊急課題に対応可能な柔軟性を確保したい」とした。
 議員全員協議会では市議が「数字の説明だけでなく、行革後の明るい見通しも示すべきだ」などと提言した。
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tanko 2014-5-19 11:00

 物理学者でドイツ・マインツ大学教授の斎藤武彦氏(43)を招いた講演会は18日、市役所江刺総合支所多目的ホールで開かれ、国際リニアコライダー(ILC)の魅力や物理学の楽しさを伝えた。ユーモアあふれる斎藤氏の話に、子どもを含む市民約130人が宇宙や科学の世界を身近にした。
 市と市ILC推進連絡協議会(会長・小沢昌記市長)が主催。同協議会総会に合わせて開かれた。
 斎藤氏はドイツ在住で、ヘルムホルツ重イオン科学センターにも所属する原子核の研究者。2012(平成24)年5月から被災地復興支援の一環で、本県などの幼稚園や小中高校で科学の特別授業を展開している。ILCの東北誘致に賛同し、各地でILCの意義と誘致効果の大きさを解説している。
 冒頭、宮城県出身の知人がきっかけとなり被災地での授業を始めたことなど、これまでの活動経緯や内容を紹介。当初は「科学で子どもたちに夢を持ってもらう。世界に目を向けてもらう」ことをテーマにし、ILCは取り上げていなかったという。
 ところが、被災地の子どもたちは「目の前の地元のことで頭がいっぱい。とても世界に目を向けられない」状況にあることに気付き、「世界が岩手にやってくる」というILC誘致の新たな価値を見いだした。「ILCが岩手に来れば、地元にいながら世界と触れ合える。岩手が世界一になり、さまざまな夢と機会が子どもたちに残せる。ILCには長所と短所があるが、それは大人にとってのもの。子どもにとって悪いことは一つもない」
 講演では「子ども向けのILC授業」も繰り広げ、アニメキャラクターなどを用いてILCが解明する宇宙の謎などを楽しく説明。「ぼくたちは宇宙にある地球の中の日本に住んでいる。つまり日本人であり、地球人でも宇宙人でもある」と斎藤氏。「みんなが古里の奥州市のことを勉強するのと、宇宙のことを勉強するのは同じこと。その宇宙の始まりを解読するのがILC」と説いた。

写真=ユーモアを交えながら分かりやすくILCの有用性などを話す斎藤武彦教授
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tanko 2014-5-18 10:50
 国際情勢を中心とした講演会事業を繰り広げてきた水沢日本外交協会(亀卦川富夫会長)は今年、設立30周年を迎えた。17日には100回目となる記念講演会が市文化会館(Zホール)で開かれ、市民ら約200人が渡辺利夫・拓殖大学総長の講演に耳を傾けた。

 同協会は一般社団法人日本外交協会(池浦泰宏理事長)の地方支部的な位置付けで、1984(昭和59)年に発足した。
 日本外交協会は、「憲政の神様」「議会政治の父」と呼ばれた尾崎行雄(尾崎咢堂)の指導の下、戦後間もない1947年に民主外交協会として設立。国際社会に対する知識や外交感覚を養ってもらおうと、講演や出版活動などを展開してきた。
 1974年、水沢出身の政治家、故・椎名悦三郎氏が会長に就任し日本外交協会に改称。その後、椎名氏が水沢に帰郷した際、当時の水沢青年会議所の会員らに「国際社会を学ぶような機会を設けるべきだ」と提言し、水沢日本外交協会が設立された。
 初回の講演会は1984年3月20日、水沢出身で現共同通信社国際戦略本部幹事の山口光氏を講師に迎えて開催。その後、現役政治家やメディア関係者、地元首長、大学教授ら多彩な顔ぶれを招いた。
 講演内容も国政から地域行政、学術など多岐に及んだ。「その時々の話題や時事問題に沿った講師や演題をお願いしている」と亀卦川会長。北朝鮮による拉致問題の国民的関心の高まりを受け、北朝鮮情勢に詳しい重村智計・早稲田大学教授を招いたこともある。
 最近では国際リニアコライダー(ILC)誘致に関連し、素粒子研究者や天文学者らによる講演も開催。基本的には会員向けの小規模な講演が多いが、節目の記念講演などでは一般市民にも公開している。
 100回の節目となる講演では、拓殖大学の渡辺利夫総長を講師に迎えた。中国とベトナム、フィリピンが南シナ海を舞台に繰り広げている領有権争い、日中韓との間の領土問題など緊張感高まる昨今の東アジア情勢などを話題に取り上げた。
 亀卦川会長は「今後も身近な話題から世界情勢も含め、地域や日本がどう歩むべきか、じっくり考えられるような講演会を企画していきたい」と話す。
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tanko 2014-5-18 10:20
外国人市民組織が水沢で意見交換

 外国人市民の有志組織「インターナショナルILCサポート委員会」(ビル・ルイス委員長)は17日、ドイツ・マインツ大学の斎藤武彦教授を招いた意見交換会を水沢区の奥州市水沢地域交流館(アスピア)で開いた。国際リニアコライダー(ILC)の誘致を見据え、外国人研究者を受け入れる国際的なまちづくりに必要な支援体制を多様な視点から探った。

 ILC誘致の実現を目指し、国際研究都市の形成へ市民レベルでできることを考えようと企画。同委員8人が出席した。
 斎藤教授は、ILCの誘致で海外から訪れる研究者は2〜5年滞在する若手研究者と、博士を目指す学生が大半を占めると推察。「何十年も長くいるわけではなく、入れ代わり立ち代わりで多くの関係者が来る。ずっとサポートしていく体制が必要となる」と説明した。
 ドイツやアメリカでは研究施設内には「外国人局」機能を持つ部署があり、ビザの更新から住居探し、子どもの教育までサポートする。加えて、仲間の外国人研究者の多くが相談に乗ってくれるという。
 「これは既に多くの外国人研究者がいて、一種のコミュニティーが形成されているからできること。本県に誘致が期待されるILCの場合、そもそものコミュニティーがないので、誰かがサポートしなければならない」と斎藤教授。行政だけでなく、民間レベルでの支援の必要性を説いた。
 参加者からは「英語だけの対応で大丈夫か」「ドイツでは各国の宗教に対してどのように対応しているか」など具体的な質問も相次いだ。
 斎藤教授は「奥州市に多くの研究者が居住するためには、多くのサポートが必要。そうでないと東北大学のある仙台に留まり、通うようになってしまうだろう」と指摘。県南地域での異文化に対する理解醸成やサポート体制の構築に期待した。
 斎藤教授は、18日午後2時半から市役所江刺総合支所で開かれる市ILC推進協議会総会に招かれ、「子どもたちに伝えたいILCの魅力」と題して講演する。
写真=インターナショナルILCサポート委員と意見を交換する斎藤武彦教授(左)
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tanko 2014-5-16 10:10
連載企画・ただいま準備中より 「ILC出前授業」

 北上山地への建設が期待される素粒子研究施設・国際リニアコライダー(ILC)。順調に建設計画が軌道に乗れば、十数年先には実現しているかもしれない。奥州市はILC実現の将来を見据え、市内の中学2年生全生徒を対象に、ILC出前授業を実施する。“先生役”を務める関係者は、ILC計画のPRにとどまらず、これからの地域を担っていく生徒たちの活躍を願いながら準備を進める。
(児玉直人)

 出前授業の“先生”は、NPO法人イーハトーブ宇宙実践センターのサイエンスコンダクターや、国立天文台水沢VLBI観測所の研究スタッフら。子どもの理科離れが叫ばれている昨今、中学生に対し、理系の大学院生レベルに匹敵する研究プロジェクトをどう伝えるか……。関係者はさまざまな方法を考えた。
 同NPO理事長で、国立天文台名誉教授でもある大江昌嗣さん(73)=同区川端=は、冒頭部分に科学界に偉大な功績をのこした偉人たちの生い立ちを盛り込むことにした。
 「万有引力の法則を見つけたニュートンの伝記を最近読んだが、幼少期は体もさほど丈夫じゃなかったらしい。両親をめぐる環境に恵まれず、母親への反発から『放火して殺す』と、脅したこともあったそうだ」
 大江さん自身、子どもの頃は決して体は丈夫ではなかった。一方で、けんかっ早い性格でクラスメートとも「よくやり合って、先生に怒られた」という。やがて天文の世界に興味を抱き、研究者としての道を歩むことになった。
 ニュートンら、科学界の偉人の人間臭い面に触れているうちに、自分の人生がなんとなく重なって見えた。
 「ものすごい功績をのこした偉人であっても、深い悩みや苦労、決して褒められないような行動をして悔いるようなこともあった。今、何かの悩みにぶつかっている生徒さんがいるかもしれない。『この先、まだまだいろんな道が開けるんだよ』ということを伝えた上で、自然科学やILCの魅力や意義を示せたら」と話している。

写真1=宇宙線などの放射線を目視観察できる装置「霧箱」。ILCで素粒子反応をとらえる検出器の原理を紹介する際に用いる予定だ
写真2=科学の楽しさを伝えながら、ILCへの関心を高めたいと奮闘する大江昌嗣さん(右)

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