人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市東部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)
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tanko 2013-10-16 9:30
 【東京=報道部・児玉直人】素粒子物理学の国際的な研究者組織「リニアコライダー・コラボレーション(LCC)」最高責任者のリン・エバンス氏(インペリアル・カレッジロンドン教授)は15日、東京大学で開かれたシンポジウムで、大規模研究施設、国際リニアコライダー(ILC)の国内候補地に選定された北上山地について、「非常に良い候補地だ」と明言。日本でのILC実現に期待を込めた。

 シンポジウムはLCCなどが主催し開催。エバンス氏のほか、米ブルックヘブン国立研究所のマイク・ハリソン氏、NPO法人J―Win理事長の内永ゆか子氏、宇宙飛行士の山崎直子氏、東京大学カブリ数物連携宇宙研究機構機構長の村山斉氏が登壇し、ジャーナリストの池上彰氏が司会を務めた。
 ILCの国内候補地は当初十数カ所挙げられていたが、その後、地質や都市環境などの面で優位な北上山地と九州北部の脊振山地の2カ所が残っていた。
 ILCは世界に唯一の大型研究施設となり、世界中から研究者とその家族が集まることや関連施設、産業が集積することが見込まれている。このため北上、脊振両山地の地元自治体や経済団体などが熱烈な誘致活動を展開してきた。
 国内の素粒子研究者らで組織する同評価会議は8月23日、北上山地が最適とする結果を公表している。
 シンポジウムでエバンス氏は「北上山地は何時間もかけて協議し、多くの専門家が非常に良好な候補地だと判断した。私もそう思う」と述べながら、欧州合同原子核合同研究機構(CERN)とILCとが同時に研究を進めることが科学界にとって「非常に有意義」と強調。日本での建設実現に期待を込めた。
 司会の池上氏が「東北にこれを造ろうという点でも非常に意義があるのでは」と問い掛けると、内永氏は「もう日本にはこの種のビッグプロジェクトは当分こないかもしれない。しかも、東京や大阪など都市部ではない東北の北上山地でやろうという点は非常に意義深い」と応じ、震災復興の観点などから見ても魅力あるプロジェクトであることを訴えた。
 この日登壇したエバンス氏、ハリソン氏、村山氏らは17日、国内候補地選定結果公表後、初めて北上山地を訪問する。

写真=「北上山地は良好な候補地」と話すリン・エバンス氏(東京大学伊藤国際学術研究センター)
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tanko 2013-10-16 9:20
 国際リニアコライダー(ILC)計画の学術的意義や科学技術立国への新たな道筋について考えるシンポジウムが15日、東京大学で開かれた。ILC実現には幾多のハードルが控えるが、海外研究者らがILCがもたらす計り知れない効果について触れ、あらためて日本への建設実現に期待を込めた。会場には、ILC向けに設計された「超電導加速空洞」の試作品も展示され、来場者の注目を集めた。

 8月に北上山地がILC国内候補地に決定して以来、初めて開かれるシンポジウム。「宇宙の謎に迫れるか! 国際リニアコライダー計画」をテーマに、学術的意義や産業面からの期待などについて理解を深めた。
 前半は東京大カブリ数物連携宇宙研究機構長の村山斉氏と、三菱重工取締役会長の大宮英明氏が基調講演した。
 村山氏は、難解にとらわれがちな素粒子物理学や加速器研究について、「宇宙はどうやってできたのか、私たち人類はどこからきたのという子どもが思うような素朴な疑問をターゲットにしている」と切り出し、加速器を使った実験やノーベル物理学賞で話題となった質量を生み出す素粒子「ヒッグス粒子」について分かりやすく説明した。
 大宮氏が会長を務める三菱重工はILCに使用する「超伝導加速器空洞」の開発に携わっている。大宮氏は「ILCはさまざまな分野の工学、土木業種の力を必要とする」などと述べ、日本の産業界が大きな役割を果たすことになると強調した。
 ILCは電子と陽電子をほぼ光速の状態に加速し、その衝突現象をとらえる精密実験措置。電子、陽電子が駆け抜ける通り道が「超電導加速空洞」で、シンポジウム会場には同社が手掛けた試作品が展示され、来場者の注目を集めていた。
 ILC実現に向けては今後、国際間交渉による費用分担や人材確保などの課題を2、3年かけて協議、解決していく流れ。国際交渉が順調に進んだとしても建設までに約10年の歳月が必要となる。
 パネルディスカッションで登壇した宇宙飛行士の山崎直子氏は、国際宇宙ステーションの構想から建設、完成までにも相当の年月を要したことを例示。その上で「ILCには科学だけでなく産業や外交など幅広い分野が関わる。いろいろな可能性を秘めた事業だ」と期待を込めた。
(児玉直人)

写真=シンポジウム会場に展示された「超電導加速空洞」を興味深げに見入る来場者ら
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tanko 2013-10-10 9:10
 国際リニアコライダー(ILC)計画を推進する国際的研究者組織「リニアコライダー・コラボレーション(LCC)」最高責任者のリン・エバンス氏(インペリアルカレッジ・ロンドン教授)や幹部研究者ら8人が、17日に北上山地を初めて視察する。LCCは候補地の地形に準じたより詳細な国際設計を進める予定で、今回の視察はそのステップになるとみられる。北上山地が事実上、世界唯一のILC候補地に選ばれて以来、重要ポストに位置する国内外の研究者が現地視察するのは初めて。

 現地入りするLCC幹部は、エバンス氏と▽村山斉氏(東京大国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構長)▽マイク・ハリソン氏(米ブルックヘブン国立研究所教授)▽スタイナー・スタプネス氏(ノルウェー・オスロ大教授)▽山本均氏(東北大大学院教授)▽ブライアン・フォスター氏(英オックスフォード大教授)▽ハリー・ウィーツ氏(米アルゴンヌ国立研究所)――に、秘書担当者を加えた計8人。
 村山氏はLCCの副代表、ハリソン氏はLCC内のILC部門代表、山本氏は物理・測定器部門の代表をそれぞれ務めている。オックスフォード大教授のフォスター氏を除く6人は、8月に発表された国内候補地の選定作業または、評論(レビュー)にも携わっている。
 関係者によると、LCCのエバンス氏らは8月の国内候補地一本化直後から「いち早く北上山地を訪れたい」と希望していたという。今月�t日、東京大学で開かれるILC国際シンポジウムにエバンス氏やハリソン氏、村山氏が登壇。翌�u日には、ILC建設候補地として北上山地が最適とする評価結果が文部科学省に提出されることもあり、このタイミングでの現地視察となった。
 視察を受け入れる県によると、一行は一関市や江刺区内を視察後、水沢区内のホテルで記者会見に臨む。LCC幹部のほか、リニアコライダー国際推進委員会委員長の駒宮幸男氏(東京大素粒子物理国際研究センター長)、ILC戦略会議議長の山下了氏(同センター准教授)らも同行。記者会見には達増拓也知事も同席する。
 LCCは今年2月に発足。建設候補地が北上山地に絞り込まれたことで、LCCは今後、現地の地形や地理要件に合わせたILC施設の設計に着手する。これまで架空の場所をイメージしていたが、より具体的な施設の姿が描かれる。
 
写真=リン・エバンス氏(C)KEK
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tanko 2013-10-10 9:00
 国際都市をつくる人材に必要なのは「能力」と「やる気」――。元岩手県知事で日本創世会議座長の増田寛也氏は9日、市文化会館(Zホール)で講演し、国際リニアコライダー(ILC)の北上山地建設実現に伴う国際研究都市の形成や人材育成について「子どもたちの得意分野を伸ばすことと、前向きな方向へと進むやる気が掛け合わさることが重要」と強調。「いい地域づくりを実現できるかは、前向きなやる気次第だ」と訴えた。

 講演会はILCの地元推進団体「いわてILC加速器科学推進会議」(亀卦川富夫代表幹事)が主催。増田氏のほか、高エネルギー加速器研究機構(KEK)の吉岡正和名誉教授も講師に招かれた。
 増田氏は「ILCで築く地域の未来」と題し、ILCをめぐる直近の政財界の動向にも触れながら持論を展開。ILC誘致とオリンピック誘致の違いについて「オリンピックは既に定めたルールに基づき開催都市が決定する。一方、ILCは、費用負担も含めたルール作りからスタートしなければいけない」と説明した。
 「日本が国際的なルール作りの先頭に立ち、2015年ぐらいまで真剣に交渉する必要がある。だが、日本にとっては初めてのことであり、多少苦手な部分かもしれない」と指摘。今後の日本政府の動きに注目が集まるが、「特に主担当となる文部科学省に対しては、理解して動いてもらう環境が必要。そのうねりを岩手、宮城両県がつくってほしい」と要望した。
 地域づくりに関しては、自然や文化など地域固有の資源を生かすことに加え、そこに生きる人材の育成について言及。「(能力×やる気)+つながり力」という独自に考えた方程式を示した。つながり力は、人脈やネットワークを意味するという。
 「子どもたちがそれぞれ持っている魅力、得意分野を引き出していくことで能力はゼロではなく100へと近づく。しかし、能力があってもやる気がゼロであれば、プラスにならない」。さらに「後ろ向きな姿勢は、やる気をゼロどころかマイナスにしてしまう。実際に各地を視察する中、せっかくの良い話も、足を引っ張られて頓挫した――という事例をよく聞く。やる気次第で、いい地域づくりにつながるし、決してマイナスにしてはいけない」と強調した。
 吉岡氏は、ILCの研究意義やがん治療への発展などについて解説した。

写真=ILC計画に絡め、地域づくりと人材育成について持論を述べる増田寛也氏(Zホール)
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tanko 2013-10-8 5:20
 NPO法人イーハトーブ宇宙実践センターの大江昌嗣理事長(72)=国立天文台名誉教授=は、国際リニアコライダー(ILC)で行われる素粒子衝突実験を説明するための模型「ミニチュアILC」を製作した。実物の1万分の1に相当する全長5mの装置。両端から加速された素粒子が、中央の空間で衝突する状態を再現した。11月3日から3日間、水沢区聖天の水沢地区センターで開催される「おらが地区センターまつり」の特別企画展で披露される。

 同地区センターは、ILC実現への機運を盛り上げようと、毎年開催している同まつりの中で、特別企画展「みんな集まれ『ILC応援展』」を実施することに。企画展検討委員会(三浦光章委員長、委員6人)が、大江理事長をはじめ有識者らの助言を得ながら準備を進めている。
 目玉の展示物になる大江理事長の模型装置は、ILCが最大規模に拡張された際の全長(50km)の1万分の1に相当。両側に傾斜のついた2.3mの直線ガイドレールがあり、電子と陽電子に見立てた直径1.7cmの金属球を転がし、中央で衝突させる――という仕組みだ。
 実際のILC加速器は、大がかりな電気装置やマイナス271度の液体ヘリウムなどを使用して電子や陽電子を加速させる。模型では、物質の加速を簡潔に再現するため、身近な部材で傾斜を作り、地球の重力によって電子などに見立てた金属球を加速させている。
 「1.7cmの金属球でさえ、タイミングやガイドレールの位置がちょっと狂えば衝突しない。目には見えない電子、陽電子ともなれば、とてつもなく難しい。そんな高度な技術を要求される実験が、北上山地で行われるという点を実感してもらえたら」と大江理事長。企画展では、背景に北上山地の山並みの写真などを配置し、来場者にイメージを膨らませてもらう。
 これまでのILCの周知活動では、コンピューターグラフィックス(CG)動画や印刷物に頼る部分が多かった。東北ILC推進協議会事務局でも「ILCを説明するような模型装置を自作した例は、東北の誘致関係者の中では少なくとも聞いたことがない」と話す。
 企画展ではこのほか、地質調査で採取した花こう岩のサンプルや関連新聞記事などを展示。科学実験の体験や講演会も予定する。三浦委員長(69)は「大江理事長らの協力で充実した企画展になりそう。市民の多くにILCに対する理解の輪が広がれば」と期待を込める。

写真=大江昌嗣理事長が製作したミニチュアILC。手前と奥の傾斜から金属球を同時に転がすと、衝突点に見立てた中央の空間で金属球がぶつかる
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tanko 2013-10-1 10:20
 日本学術会議(大西隆会長)は30日、文部科学省に国際リニアコライダー(ILC)計画に関する所見を提出。学術会議の家泰弘副会長(東京大学物性研究所教授)が、文科省の吉田大輔・研究振興局長に手渡した。
 学術会議は今年6月、ILC計画の学術的意義や実施に向けた準備状況などに関する審議依頼を文科省から受けた。家副会長を委員長とする検討委員会(委員10人)は、ILC計画を推進する研究者らから説明を聞くなど、7回の会合を開いた。
 所見によると、ILCで予定されている研究自体には学術的意義を認める一方、巨額の財政負担や国民理解などの諸課題が存在すると指摘。2〜3年かけ集中的な調査・検討が必要であるとし、政府において調査経費などを措置することや、海外主要国とも国際分担などに関して協議するよう提言している。

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