人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市東部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)
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tanko 2013-9-4 13:00
 市議会9月定例会は3日、一般質問で再開。佐藤郁夫(市民クラブ)加藤清(爽志会)菅原明(共産党)遠藤敏(創政会)佐藤克夫(同)の5氏が、国際リニアコライダー(ILC)や7月の集中豪雨被害などについて市当局の見解をただした。
 佐藤郁夫氏はILCの国内候補地決定後の取り組み状況について質問し、小沢市長は「これまで市が築き上げてきた関係者との人脈を十分に駆使し、情報収集と発信に努めたい」と答弁。「教育環境の充実や地域医療などの体制づくりに力を注ぎ、奥州市が十分な受け入れ用意があることを国内外に提案できるよう、しっかりと準備を進めていきたい」とも述べた。
 小沢市長は7月26、27日に発生した集中豪雨に伴う市内の農地・農業用施設の被害状況について報告。8月30日時点で、農地被害が373件(概算工事費1億4700万円)、農業用施設被害が279件(同1億7700万円)に上るとした。
 補助事業対象外の小規模な農地などの復旧については「支援が受けられるよう県に対し要望している。今後も他市町村と足並みをそろえながら要望活動を続けたい」と説明した。
 加藤氏は総合支所の空きスペースの活用について質問。小沢市長は「江刺、前沢、胆沢各支所に空きスペースがあり、大部分は上層階の旧議会関係の場所。有効活用するには相当程度の改修費用が見込まれる」とした上で、「空きスペースの有効活用は早期に実施したい。料金設定や減免基準、貸し付けに当たっての考え方を速やかに整え、地域の理解を得ながら積極的に進めたい」と述べた。
 4日も引き続き一般質問が行われる。
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tanko 2013-9-4 6:00

 「なぜ『時期尚早』という言葉だけが躍っているのか分からない」
 ILC戦略会議の山下了議長(東京大准教授)は不快感をにじませた。8月20日、国内候補地選定経過に関するマスコミ向け事前説明会で、日本学術会議の「ILCに関する検討委員会」(家泰弘委員長)の議論について感想を求められた場面でのことだった。
 山下議長は「学術会議については、われわれは最大のリスペクト(敬意)を払っているが、そもそも誘致の是非について、文部科学省からは諮問されていないはずだ」と強調した。

 学術会議が文科省から依頼された審議内容は、研究の学術的意義や、国民と社会に対する意義、そして計画実施に向けた準備状況と、建設・運営に必要な予算、人的資源の確保など4項目。山下議長の指摘通り、誘致の是非については見解を求められていない。
 検討委の議論では、研究そのものへの批判はなかった。しかし、他の基礎研究予算が削減されることへの懸念や膨大な建設費、人員確保などの課題がクローズアップされた。
 家委員長は8月6日、個人的見解として「現時点で国が誘致のゴーサインを出すべきではない」と述べた。主要メディアは「ILC誘致は時期尚早」と報道。以後、学術会議の見解を象徴する言葉のように使われた。本紙も「国内誘致・政府判断に暗雲」との見出しで報じた。

 その後、本紙はILC立地評価会議の共同議長の一人、山本均東北大大学院教授に話を聞いた。すると、あっさりとした答えが返ってきた。「悲観するほどのことではない。国際交渉でしっかり合意を得てから誘致を決定すべきだというのは、もちろんその通り」
 山本教授の話を聞きながら、時期尚早と指摘することが「ILC建設の最終判断」に対してのことか、「国際交渉の開始の判断」に対してのことかが、混同して伝わっている可能性があると察した。

 本紙は学術会議事務局を通じ、家委員長の見解を再確認。「政府が『ILCを日本に造ることを決める』というのがまだ早いということ。国際的な交渉を進めることは構わないという意味だ」との回答を得た。
 検討委の論点メモを見ると、現時点で本格実施のゴーサインを出すことに対し「時期尚早」としている。なお、検討委の相原博昭幹事(東京大大学院教授)が推敲した論点メモでは、十分な調査や交渉が行われた上で「最終的な決定が政府においてなされるべきだ」と表現されており、「時期尚早」の4文字はない。
 ILC戦略会議の山下議長は「『誘致』の言葉を軽く使い過ぎている」と指摘する。「2、3年の時間がかかることも、今の段階でゴーサインが出せないことも、私たちは最初から分かっている。いくつものステップを経て、誘致判断にたどり着く。それだけ重いことだ」
(つづく)

写真=日本学術会議のILC検討委。協議経過を伝える報道では「時期尚早」の言葉だけが際立った
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tanko 2013-9-3 6:00

 「九州大学で教育、研究活動をしているわが身としては、今回の評価は非常につらいものであった」
 8月23日、東京大学山上会館での国内候補地発表会見。ILC立地評価会議共同議長の一人、九州大学大学院の川越清以教授は「北上サイト(北上山地)を最適と評価する」と発表した直後、自身の思いを一言一言かみしめながら語り始めた。
 北上、九州・脊振両候補地での機運の高まりとともに、避けて通れない候補地の一本化。素粒子研究者たちは、研究分野への注目と支持に感謝しつつも、懸命な活動を続けてきた両地域のいずれかに、非情な結果を伝えなければならなかった。

 ILC計画が浮上し20年近くになるが、北上山地周辺の地域住民への周知活動が始まったのは09(平成21)年ごろ。現在の「東北ILC推進協議会」の前身である「東北加速器基礎科学研究会」の設立がきっかけだ。
 ただ、その動き方は「慎重対応」という言葉がふさわしかった。
 東京へのオリンピック招致活動も近く最大のヤマ場を迎えるが、それに比べれば、注目度や派手さは欠ける。当初から「計画の意義に対する理解を深めること」に重点が置かれた。
 慎重にならざるを得なかった理由の一つは、過激な誘致合戦に発展するのを防ぐためだった。素粒子研究者らは、学術的意義よりも地域事情や政治的な利益、感情などが前面に出る状況を最も避けたかった。岩手県の担当者も、研究者側から念を押されていたという。
 地域挙げての動きが本格化したのは東日本大震災後。達増拓也知事が国の復興構想会議で「TOHOKU国際科学技術研究」などの復興特区を提案してから。政府関係への要望活動が活発になったのも、ここ数年の話だ。

 九州、特にも福岡と佐賀両県も、東北の岩手、宮城両県と同じように誘致活動に情熱を注いだ。地元の企業経営者らが音頭を取って署名活動を展開。署名総数は35万余りに達した。東北同様、講演会などを通じた市民周知も実施した。
 ILC対応のため4月から東北経済連合会に駐在している、岩手県政策推進室の細越健志特命課長は「特に昨年末ごろから九州の取り組みは急激に盛り上がってきた」と話す。「東北vs九州」と、選挙の一騎打ちのような構図で報じたメディアもあった。
 細越特命課長は「どうしても『誘致合戦』と捉えられてしまう向きはあった。しかし、九州の皆さんの取り組みに対抗しよう――ということはなかった。地元の皆さんの理解構築や研究者側からの求めに必要な対応をとってきた。まさに、わが道を信じて行くという感じだ」。心の支えになったのは、これまでの調査でも明らかにされていた北上山地の良質な地盤だった。

 国内候補地の公表は当初、7月末という見解もあった。同月の参院選を控え、両候補地の誘致活動は5月から6月にかけてがピークとなった。
 その真っただ中の6月21日、ILC戦略会議の山下了議長(東京大准教授)は奥州市文化会館(Zホール)での講演で、こう述べた。「いつまでも北だ南だとは言っていられない。オールジャパン体制をつくり上げ、後押しできるかが大切だ」。二つを一つに絞る苦しい立場にいるからこそ、両候補地に向けて一番伝えたかった思いであろう。
 今後は日本にILCを誘致できるかどうかに関心事が移る。「これからが本当に大変」。研究者のみならず、北上山地の誘致関係者も口々に話す。
 選定結果を受け、誘致に携わった東北、九州の地元関係者は今後どのような行動をとるのか。
 先日、世界的に権威がある学術雑誌「ネイチャー」のネット版に、北上山地への選定結果が紹介された。優秀な頭脳を持つ世界中の研究者は「Japan」「Tohoku」「Kitakami」の動向を見守っている。それだけではない、将来ILCで活躍するかもしれない、児童や生徒も「大人たちの行動」をじっと見つめているはずだ。

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 ILC国内候補地が北上山地に決定した。決定までの道のりを振り返りながら、建設誘致へ向けて今後取り組むべき事柄や課題などについて5回にわたり連載します。(児玉直人)

 
 写真=山本一太科学技術担当相(左)にILC誘致への理解を求める東北推進協代表の里見進東北大学総長(左から2人目)。国内候補地一本化で、誘致活動は「日本自体への誘致」を実現させる新たなステージに入る(今年5月31日)
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tanko 2013-9-2 7:32
 国際リニアコライダー(ILC)国内候補地が北上山地に決定後、最初となる一般市民向け講演会が1日、一関市大東町摺沢の室蓬ホールで開かれた。講師の高エネルギー加速器研究機構(KEK)の吉岡正和名誉教授は、医療分野やものづくり産業への波及効果に触れ、「じっとしていては何も起きない。産学官連携によるネットワークを構築するなど、攻めの姿勢で取り組んでほしい」と呼び掛けた。
 東京の一般社団法人国際経済政策調査会(高橋佑理事長)が主催。国内の素粒子物理学者らによるILC立地評価会議が、国内候補地を北上山地に決定して以降、最初となる候補地での一般向けの講演会で、胆江・両磐地区の地域住民や勝部修一関市長、菅原正義平泉町長も出席した。
 吉岡名誉教授は「東北ILCの実現」と題し、最近の経過などを説明。日本学術会議のILC検討委の中で、コスト評価への信頼性に対する疑問があったことに触れ「コスト評価は国際的組織で検討し、さらに厳しいレビュー(評論)をクリアしたものであり非常に信頼性が高い」と述べ、ILC計画の国際的協議過程への理解不足が後ろ向きな見解につながっていると指摘した。
 北上山地に設置される見通しのILC本体の地下トンネルは、標高にして100mから110mの位置に設置される。北上川周辺の都市部よりも高い位置に造られるため、トンネル内で排水が生じた場合には自然流下が可能。周辺よりも低い場合だと、排水ポンプが必要となる上、停電時のリスクを想定しなくてはいけないなどコストにも影響してくる。
 トンネル設置の標高に付随し吉岡名誉教授は「よく『核廃棄物の処理場にするはずだ』との声を聞くが、構造や技術的にそのよう施設とは全く異なる。そもそもILCは国際研究施設であり、目的外使用を世界の国々が許すわけがない」と述べ、理解を求めた。
 地域が着目する波及効果については、吉岡名誉教授が筑波大学で取り組んでいる「いばらきBNCTプロジェクト」などを例に紹介した。BNCTは「ホウ素中性子捕捉療法」のこと。ホウ素と中性子の反応を利用し、切開手術などをせずにがん細胞のみを選択的に破壊する。難治性がんに対する次世代のがん治療法として期待されている。
 吉岡名誉教授は「私も研究施設に勤め退職した身だが、社会貢献の思いで取り組んでいる。ILCも同じように、そこで育った人材がこのような形で活躍することも十分あり得る。重要なのは、攻めの姿勢。受け身にならず、新たなビジネスを起こすつもりで、さまざまな分野とのネットワークづくりと、それをコーディネートする人を置くことが大切だ」と強調した。

写真=ILCの波及効果を得る上でのポイントを語る吉岡正和・KEK名誉教授(一関市大東町)
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tanko 2013-9-1 10:00
 世界的に最も権威ある総合学術雑誌として知られるイギリスの「ネイチャー」は、インターネット上で公開している週間ニュースの中で、ILCの日本国内候補地に北上山地が選ばれたことを紹介している。  同誌は世界中の多くの研究者が購読。さまざまな学術論文や、科学界の出来事などが掲載されている。  国内候補地に関する情報は、ネット版の週間ニュース(8月23〜29日分)コーナーで報じられており、研究者サイドが国際交渉を開始できるよう、日本政府に働きかけていることなどが紹介されている。
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tanko 2013-9-1 9:50
 市国際交流協会(佐藤剛会長)は、協会事務局がある水沢地域交流館(アスピア)内に、国際リニアコライダー(ILC)関連の企画展示コーナーを設けた。国内候補地が北上山地に決定したことで、地域に住む外国人市民にもILC計画をより深く知ってもらおうと、英語版の資料などを取り寄せるなどして、理解普及に努めている。
 展示コーナーは、事務室近くの廊下の壁面を利用して設けられた。▽ILCとは?▽外国人市民の活躍▽今後の課題――の3テーマで構成されている。
 ILCの研究開発を進めてきた国際共同設計チーム(GDE)が作製した英語、中国語、韓国語版のパンフレットを用意。市のILC計画紹介パンフレットは、日本語版と英語版の両方を展示しており、持ち帰りもできる。
 「外交人市民の活躍」については、同協会の呼び掛けに応じた外国人市民有志が設立した「インターナショナルILCサポート委員会」(ビル・ルイス委員長)の活動を新聞記事などで紹介している。「今後の課題」は、北上山地が国内候補地に決まったことに触れながら▽建設費確保▽他の学術分野に影響を及ぼさない予算枠の設定▽国際的な経費分担の交渉▽建設・運用に必要な人材確保――の解消が求められることを説明している。
 ILCが実現した場合は、外国人研究者とその家族の受け入れ態勢も重要になってくる。インターナショナルILCサポート委員会では、実際に地域に生活している外国人市民の意見などを集約し、市に提言している。

写真=アスピアに設けられたILC展示コーナー

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