人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市東部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)
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tanko 2013-8-31 13:20
 小沢昌記市長は29日、国際リニアコライダー(ILC)の国内候補地が北上山地に決まってから初めて、茨城県つくば市の高エネルギー加速器研究機構(KEK)を訪問。鈴木厚人機構長と会談し、市民理解構築を進めるための助言を求めた。
 KEKは日本における素粒子物理学の研究拠点。ILC関連装置の開発なども行われている。
 小沢市長が鈴木機構長と直接会談するのは今年4月以来。小沢市長は30日、胆江日日新聞社の取材に対し「鈴木機構長には、市民理解がますます進み盛り上がりを図れるよう頑張りたいとの決意を伝えた」と述べた。その上で、理解構築のために考えられる手法などについて助言を求めた。
 鈴木機構長は、ILC関連技術によって考えられる環境保護などへの応用などについて話し、一般向けに分かりやすい資料を製作中であることが伝えられたほか、当面のILC計画の大まかなスケジュールについても説明を受けたという。

 ◇9月1日、一関市大東町で講演会 国際リニアコライダー(ILC)の誘致活動などを長年続けている、東京都の一般社団法人国際経済政策調査会(高橋佑理事長)による講演会は、9月1日午後1時半から一関市大東町摺沢の大東コミュニティーセンター「室蓬(しっぽう)ホール」(JR大船渡線摺沢駅併設)で開かれる。
 講師は東北大と岩手大の名誉教授も務めている、高エネルギー加速器研究機構(KEK)の吉岡正和名誉教授で、演題は「東北ILC実現」。ILC国内候補地の選定結果が北上山地とされて以降、初の地元一般向け講演会となる。
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tanko 2013-8-29 6:20
 国際リニアコライダー(ILC)の国内候補地が北上山地に決まったことを受け、小沢昌記市長は29日、茨城県つくば市の研究施設・高エネルギー加速器研究機構(KEK、鈴木厚人機構長)を訪問する。
 国内の素粒子物理学者らで構成するILC立地評価会議は今月23日、ILCの国内候補地を北上山地とする評価結果を発表した。KEKの鈴木機構長は、同評価会議の一員でもある。つくばキャンパス内ではILC関連装置の開発が進められている。
 奥州市ILC推進室によると、地域としてILC誘致に取り組む熱意をあらためてアピールするとともに、地元として今後進めるべきことなどについてアドバイスを得たいとの思いから、急きょ訪問を決めたという。
 同市と同様にILC誘致に取り組んでいる一関市の勝部修市長は、立地評価会議翌日の24日にKEKを訪問している。
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tanko 2013-8-24 4:00
 素粒子物理学の実験施設・国際リニアコライダー(ILC)について、研究者で組織するILC立地評価会議(共同議長=山本均東北大教授・川越清以九州大教授)は23日、国内建設候補地を北上山地に選定したと発表した。強固な花こう岩岩盤帯の地質や周辺地形が、施設の拡張性や工期、コスト面で九州・脊振山地よりも優位と判断。委員8人が全員一致で結論を出した。研究拠点となるメーンキャンパスの位置については、東京・仙台へのアクセスや生活の利便性に考慮し、JR東北新幹線沿線への立地を強く求めた。今回の決定は世界に1カ所とされる建設候補地を実質的に絞り込んだことを意味するが、今後は国内外の政府機関も交えた交渉などを進める必要がある。建設費は約8300億円と膨大で、候補地の地元のみならず国民の幅広い理解を得るなどクリアすべきことは多く、建設実現までにはまだ時間を要する。日本政府がILCの意義を認め、誘致へ交渉のリーダーシップを発揮するのかどうか。その行方に関心が集まる。

 立地評価会議は、地質などの「技術評価」と、住環境や交通アクセスなど「社会環境基盤評価」の二つの分野に分け、候補地の選定作業を実施。両分野の専門委員会を設け、データの精査と吟味、現地視察などを行ってきた。
 ILCの心臓部ともいえる、加速器が設置される地下の直線トンネルの延長は、将来の実験施設拡張を見据え50kmと定めている。北上山地は南北に細長く花こう岩帯が広がり、余裕をもった設計や建設が可能。地下トンネルまでのアクセストンネルの長さも脊振山地よりも短く、コストや工期面からも優位と判断された。脊振山地は、想定ルートの直上または近くにダム湖があること、都市部の下を通過することなどがネックとなった。
 一方、社会環境基盤では大都市・福岡市を擁する脊振山地が優位だったものの、技術評価で生じた差を覆すまでには至らなかった。
 東京大学で行われた記者会見で、立地評価会議の上部組織・ILC戦略会議議長の山下了東大准教授は「今回の評価については重い責務を感じている。評価に当たり両地域の方々には非常に多くの理解と尽力をいただいており、結果についての説明は十分に尽くしたい」と述べた。
 国際的な研究者組織「リニアコライダー・コラボレーション(LCC)」最高責任者のリン・エバンス氏(ロンドン・インペリアルカレッジ教授)のメッセージも読み上げられ、「日本にとって、リーダーシップを発揮し第一級の研究施設を設立できる素晴らしいチャンスだ。科学的意義のみならず、若い世代の夢をかきたて、人種や宗教にも左右されない真の国際研究所となるだろう」と期待を込めた。
(児玉直人)

国際リニアコライダー(ILC)
 物質の成り立ちや宇宙の起源などの研究を目的に、世界で1カ所だけに建設される素粒子物理学の実験施設。2020年代の完成を目指している。「リニア」は「直線の」、「コライダー」は「衝突型加速器」を意味する。肉眼では確認できない素粒子の一種「電子」「陽電子」を、地下の直線トンネル内で光の速度まで加速させ衝突させる。両方の素粒子を光速状態にする装置を「加速器」と言う。衝突地点には高さ14〜16mにもなる巨大な測定器を設置。衝突によって電子や陽電子以外の素粒子が生成され、その性質を調べることで、物質の成り立ちや宇宙誕生の謎などに迫る。

写真=ILCの地下直線トンネルと、その周辺に構築される研究都市のイメージ((c)Rey.Hori/KEK)
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tanko 2013-8-24 4:00
 ILCの国内候補地が北上山地に決定した。今後、詳細な設計が進められるとともに、政府間交渉などにも着手しなければ建設は実現しない。登山に例えるなら、途中の山小屋にたどり着き、ひと息ついたにすぎない。頂上はまだまだ「先」である。
 今回の候補地選定は日本に2カ所あった候補地を絞り込むものだったが、これまで海外に数カ所あった候補地は経済事情などの影響で、立ち消えとなった。国内候補地の決定は、世界で唯一の建設候補地の決定と同義だ。
 今後は、国際的な物理学の研究者組織リニアコライダー・コラボレーション(LCC)が中心となり、北上山地の地形や地理要件に合わせたILC施設の設計を始める。これまで架空の場所をイメージしていたが、より具体的な施設の姿が描かれることになる。
 一方、建設費用や国際研究所の設置などに関しては、世界の国々との政府間協議が必要となる。最終的な建設のゴーサインは、関係国間協議の行方にかかっているが、まずは日本政府が協議開始に向けた意思を示さなければ始まらない。そうした意味で、まだまだ頂上への道は続くのである。
 今回の評価結果の中にはこのような一文がある。
 「北上サイト(北上山地)における中央キャンパスは、仙台・東京へのアクセス利便性を有し、研究・生活環境に優れる新幹線沿線の立地を強く奨励する」
 ILCが建設される想定エリアの最寄り新幹線駅は水沢江刺と一ノ関。「国際研究所に二つも新幹線駅があるようなものだ」。北上山地への誘致を推進してきた関係者の一人はこう語る。
 1985(昭和60)年3月14日に開業した水沢江刺駅。住民の熱意によって生まれた請願駅が、世界最先端となる国際研究所の玄関口になり得る可能性を十分に秘めている。ILCの国際設計が進むのに並行し、地元レベルではILCを核とした地域ビジョンを描くことが求められてくる。
 地域住民と産学官がともにILCを核とした地域づくりに携わっていくことになる。しかもこれから描こうとする都市像は、外国人も居住する国際学術都市という、少なくともこの地域の多くの人が経験したことのない都市の姿だ。
 「本当に大変なのはこれからだ」。誘致関係者は口をそろえる。道半ば、頂上はまだはるか向こうだ。兜の緒は決して緩めてはいけない。
(児玉直人)
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tanko 2013-8-24 4:00
 国際リニアコライダー(ILC)の世界唯一の建設候補地に本県南部の「北上山地」が選定された。ILC計画の浮上から候補地選定に至るまでの経過を振り返る。(※写真番号は画面上からの登場順を意味します)

【1990年代】
 ▽国内素粒子研究者らが、大型加速器建設計画に関連し、北上山地の花こう岩帯に着目
【1995年】
 ▽岩手を会場に素粒子物理学の学会が開かれ、ILCの前身計画であるJLC計画が示される。県は庁内に「科学技術振興室」を設置、水面下の情報収集を開始
【1999年】
 ▽水沢出身の政治家・椎名素夫氏が代表を務めていた国際経済政策調査会(PSG)が「加速器科学研究会」を設置。情報収集や学習機会を設ける=写真1
【2003年】
 ▽日本国内の具体的候補地10カ所余りが国際会議などを通じて公表される
【2008年6月】
 ▽国内の産学連携組織「先端加速器科学技術推進協議会(AAA)」が発足
【2009年2月】
 ▽県議会一般質問での答弁で、達増拓也知事がILC計画に関連し北上山地の地質条件調査の実施や資料提供を明言。北上山地がILCの有力候補地の一つであることが公の場で示される
【2009年4月】
 ▽東北加速器基礎科学研究会が発足。産学官民連携による誘致活動の礎ができる
【2009年6月】
 ▽PSG加速器科学研究会を奥州市文化会館(Zホール)で初開催。高エネルギー加速器研究機構(KEK)の吉岡正和特任教授(当時)が講演。ILC有力候補地の地元で初めて、素粒子研究の専門家が一般市民に計画の全容を明らかにする。以後、同様の講演会が開催されるようになる=写真2
【2010年1月】
 ▽奥州商工会議所がKEKを初めて訪問し、ILC関連装置の開発状況などを視察=写真3
【2010年9月】
 ▽県と東北大学が北上山地地質調査を実施
【2011年5月】
 ▽3月11日の東日本大震災発生を受け、KEK鈴木厚人機構長が「ILCの推進活動は変わらない」と明言
【2011年6月】
 ▽県が国の復興構想会議で「TOHOKU国際科学技術研究」などの復興特区を提案。東北の誘致関係者はILCを「復興の象徴」と位置付けるようになる
【2011年7月】
 ▽ILC推進議連会長の与謝野馨経済財政担当相(肩書はいずれも当時)が「岩手県知事が(ILCを)率先してやりたい、日本はホスト国になるべきだとの考えを持っていることについては応援したいと思う」と述べる
 ▽東北加速器基礎科学研究会が初めて政府にILC誘致を要望
【2011年8月】
 ▽東京大の山下了准教授がZホールでの講演会で、地元熱意の必要性や政府間公式協議の早期実現を待望する姿勢をみせる
【2011年11月】
 ▽国が初めてILC関連の地質調査費として、5億円を第3次補正予算に計上
【2012年1月】
 ▽奥州市を拠点とした民間の推進組織「いわてILC加速器科学推進会議」が発足
 ▽ILC国際共同設計チーム(GDE)のバリー・バリッシュ氏らが北上山地を視察=写真4
【2012年2月】
 ▽県と県南8市町によるILC情報交換会が発足
【2012年4月】
 ▽市が、庁内にILC関連業務を担当する広域連携推進室を新設
【2012年5月】
 ▽国内の素粒子研究者が「ILC戦略会議」を設立
【2012年7月】
 ▽万物に質量を与える未確認の素粒子「ヒッグス粒子」とみられる粒子がスイスの欧州合同原子核研究所(CERN)で発見され、ILC建設への機運が高まる
 ▽市ILC推進連絡会議が発足
 ▽東北加速器基礎科学研究会が「東北ILC推進協議会」に移行。「ILCを核とした東北の将来ビジョン」を公表する=写真5
 ▽日本創成会議がILC誘致を契機とした国際都市創成の提言をまとめる
【2012年12月】
 ▽ILCの技術設計報告書(TDR)が完成し、東京で提出式が開かれる=写真6
 ▽国内候補地一本化のための地質調査が江刺区や一関市で始まる
【2013年1月】
 ▽国内候補地一本化作業の実施母体「ILC立地評価会議」をILC戦略会議内に設置
 ▽下村博文文科相が「今年前半にはILCについて関係諸国に働き掛けたい」との意向を表明
 ▽KEK鈴木機構長が「ここ1年が日本誘致に向けた勝負のとき。世界中が盛り上がっているときこそ、日本政府は動くべき」と早期の誘致表明を求める
 ▽欧州高エネルギー物理学将来構想案発表。ILC建設地として日本を支持。日本からの提言に期待
【2013年2月】
 ▽県ILC推進協が九州・脊振山地などを視察
 ▽各国の素粒子物理研究者らが新組織「リニアコライダー国際推進委員会(LCB)」と「リニアコライダー・コラボレーション(LCC)」を立ち上げ。政府間交渉に向け準備に入る
【2013年3月】
 ▽金ケ崎町もILC誘致に本腰
 ▽奥州市国際交流協会が主体となり、外国人市民だけで構成する「インターナショナルILCサポート委員会」を立ち上げ、外国人市民受け入れ時の課題などについて協議を開始=写真7
 ▽LCC最高責任者のリン・エバンス氏が来日し安倍晋三首相を表敬
【2013年4月】
 ▽市が、広域連携推進室をILC推進室に組織改編
 ▽経済同友会がILC実現に向けた意見書を発表
 ▽安倍首相が国会答弁で、ILC誘致について「研究者レベルの国際的な設計活動の進捗状況を見定めながら検討したい」と述べる
 ▽小沢昌記市長ら本県誘致関係者がスイスの素粒子研究施設CERNを視察
 ▽県内市町村議会がILC誘致推進議連を立ち上げ
 ▽ワシントンD.C.で政産官学連携・日米先端科学シンポジウム開催。ILC議連の河村建夫会長、下村文科相、日本創成会議座長の増田寛也氏(元岩手県知事)が講演
【2013年5月】
 ▽東北ILC推進協が都内でILC誘致シンポジウム開催=写真8
【2013年6月】
 ▽東北ILC推進協が省庁要望
 ▽日本学術会議が文科省の審議依頼を受け、ILCに関する検討委員会を設置。他研究分野への予算的影響などを懸念する声が出る=写真9
 ▽東北大が江刺区伊手で実施した地質調査結果を報告。北上山地の地盤がILC建設に適していることが裏付けられ、国内候補地絞り込み作業を担当するILC戦略会議に調査結果を提出
【2013年7月】
 ▽ILC立地評価会議が国際レビュー(海外の研究者論評会合)に提案する候補地を決定。CERNでレビューを実施し、後日、承認される
 ▽日本学術会議の協議動向を踏まえ、国内候補地選定結果発表が遅れる見通しが高まる
【2013年8月】
 ▽日本学術会議検討委の家泰弘委員長が第5回会合の終了後、報道陣に「ILCの日本誘致は時期尚早」とする見解を示す(その後、家委員長は胆江日日新聞社の取材に対し「誘致の最終判断時期は早いが、諸課題について国際交渉することは構わない」と答える)
 ▽日本学術会議検討委は、第6回会合でILCの研究意義は十分あるとの見解をまとめる。予算面や人材確保などの諸課題解決のため、政府間での予備交渉を開始するよう求め、その上で日本誘致を最終判断すべきとした
 ▽ILC立地評価会議が、候補地選定結果を委員全員一致で最終決定
 ▽国内候補地を「北上山地」とする選定結果を公表
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tanko 2013-8-24 4:00
 国際リニアコライダー(ILC)の国内候補地に北上山地が選定されたことを受け、地元となる奥州市内でも喜びの声が聞かれた。科学的研究の意義もさることながら、地域振興や教育面への効果に期待を膨らませる市民も。一方で、北上山地同様に誘致活動に力を入れていた九州・脊振山地の関係者の心情を思いやりながら、「共にILCの実現に向けて頑張っていく関係を築かなければ」と話す人もいた。

 「実験でちゃんと本当の考えと、うその考えとを分けてしまえば、その実験の方法さえ決まれば信仰も化学と同じようになる」
 詩人で童話作家の宮沢賢治(1896〜1933)の名作「銀河鉄道の夜」には、このような一文がある。ILCの建設想定エリアである江刺区伊手の阿原山や米里地区は、科学分野にも造詣が深かった賢治が足しげく通った地の一つだ。
 「かつてこの辺りの山を賢治が地質調査した。長い時を経て、ILCの国内候補地となったことに強い縁を感じる」と、米里地区振興会・山崎勝会長(70)は感慨深げ。伊手地区振興会の佐藤絢哉会長(73)は「地域に明るい展望ができた。今から子どもたちへの関連教育を丁寧にやっていくことが大切」と話す。
 ILCに興味を抱く中高生の一人、県立水沢高校理数科3年の軍司啓宏君(17)は「素粒子の世界に関心がある。かなうならば、ILC関連の仕事に携わってみたい」と笑顔をのぞかせた。
 ILC計画自体は10年以上も前からあったが、候補地間での過激な誘致合戦を防ぐため、長らく水面下で検討が進められてきた。そうした経緯を知る一人が「いわてILC加速器科学推進会議」の代表幹事で、元県議の亀卦川富夫さん(73)=水沢区大町。「大きな夢を実現するための一歩を踏み出せた。今後はハード、ソフト双方の現実問題に対応することになるが、受け入れの地元として解決に向け協力したい」と語る。
 一般市民がILCという言葉に触れたのは、ここ数年のこと。市内各地にのぼり旗やポスターが掲げられ、講演会が相次いで開かれるなどして、少しずつ周知されてきた。
 水沢区桜屋敷の主婦菅原由香里さん(50)は「候補地選定はうれしいことで、市も活気づくと思う。一日でも早く建設が正式決定してほしい」。同区中上野町の市臨時職員加藤順子さん(32)は「ILCは大人でもちょっと難しくて分かりづらいと思う。どういうものか簡単に説明してくれれば、子どもたちもより身近に感じられるのでは」と注文する。
 一方、福岡県と佐賀県にまたがる脊振山地周辺の関係者も、同様に誘致へ力を注いできた。だが、ILC計画を前進させる上で避けて通れなかった候補地選定。国立天文台名誉教授の大江昌嗣さん(72)=水沢区川端=は「九州の皆さんも一生懸命活動してきただけに『悔しい』というのが本音であろう」と思いをめぐらす。
 その上で、「工業力やそこで得られたノウハウなど、東北に勝るものが九州にもある。そういう面からも、今後は一緒になってILC計画を推進しなくては。東北の関係者はすぐにも、九州をはじめ日本全国にILC実現への協力関係構築を働き掛けるべきだ」と提言する。
(児玉直人)
写真=市役所本庁の正面玄関に建設候補地の正式決定祝う横断幕を掲げる市職員

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県内外関係者の談話
【達増拓也知事】
 政府においては今回の判断を受けて、諸外国との協議や立地に向けた調査など、日本誘致に向けた取り組みを進めるようお願いしたい。県も関係者などと引き続き緊密な連携を図りながら、ILCの受け入れ態勢の整備等に全力で取り組んで参りたい。

【小沢昌記・奥州市長】
 東北や奥州市の将来を考える上で、まさに歴史的な出来事。ILC計画が実現に向けて大きく前進した。世界に敬愛され、人類の発展に貢献する日本を目指し、これまで以上に関係者と一丸となって取り組んでいく。広くご支援とご協力を賜りたい。

【高橋由一・金ケ崎町長】
 北上山地を評価いただいたことは、当地域にとって大きな前進。ただし、今回の評価結果は最終決定ではないことから、今後とも政府への働き掛けや受け入れ態勢の整備など、岩手・宮城両県や関係市町村・団体と一体となって取り組んでいきたい。

【千葉龍二郎・奥州商工会議所会頭】
 東北全体が一丸となって取り組んだ大きな成果であると認識している。今後とも関係団体などと連携し努力していくが、日本政府が早期に誘致を決断し、東北復興のシンボルとしてのILCが一日も早く実現することを期待したい。

【長谷川閑史・経済同友会代表幹事】
 今後は脊振山地との役割分担を含めて、日本全体としての対応を早急にとりまとめ、関係者一丸となってオールジャパンでの誘致を推進すべき。そのためには研究者や候補地の関係者だけではなく、政治のリーダーシップが不可欠である。

【高橋真裕・岩手経済同友会代表幹事】
 ILCの国内候補地として北上山地が決定したことは、本県ひいては東北にとって大変喜ばしいこと。今後は、わが国としての誘致決定に向け、国内外の多くの方々に日本誘致の意義を理解してもらえるよう努力しなければいけない。
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tanko 2013-8-24 4:00
  市役所本庁4階、ILC推進室のある総務企画部のフロアで、職員20人余りが候補地選定組織の記者会見の模様を伝えるネット中継に見入った。
 後藤新吉副市長はじめ、同部の職員が固唾をのんで見守る中、午前9時半すぎ、「東北」が国内の建設候補地として正式に示されると、職員らは一斉に拍手。「良かった」「決まりましたね」などと声を掛け合い、笑顔で握手を交わす姿も見られた。
 職員は決定直後、本庁の正面玄関に「祝・東北がILCの建設候補地に決定」と記した横断幕を掲示。各フロアにも同じ文言のポスター計約10枚を掲げた。
 正式決定を受け、ILC推進室の及川健室長は「まずはほっとしている。今後はILCを地域として受け入れられる下地づくりに向け、市民への周知活動に一層力を入れたい」と話していた。

写真=建設候補地の正式決定を拍手で祝う市職員
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tanko 2013-8-23 5:10
 素粒子物理学研究施設「国際リニアコライダー(ILC)」の実現に向け、世界唯一となる建設候補地が本県南部の北上山地になるとの見方が濃厚になった。同山地は活断層が無く、良好かつ広範囲の花こう岩岩盤帯が広がっており、研究者らは早い段階から着目。選定組織の委員全員が一致し最終結論に至った状況から、「北上山地に決めた可能性は高い」という関係者もいる。22日は北上山地に一本化したとの一部報道もあったが、地元自治体のILC担当職員は「あくまで正式発表を待ちたい」との姿勢だ。選定組織による結果発表は、23日午前9時半から東京大学で行われる。

 ILC計画をめぐっては今年6月、国内外の物理学者らで構成する組織「リニアコライダー・コラボレーション」(LCC)が本格稼働。ILCの国際設計などを担当する。
 今までのILCの姿は、架空の場所をイメージしてデザインしていたが、今後は場所を特定し、LCCによってより具体的な設計が進められる。ここで避けて通れないのが、複数ある候補地を1カ所に絞り込む作業だ。
 ILC候補地は世界にも数カ所あったが、経済事情や過去の国際プロジェクトでの失敗などを理由に立ち消え。日本の北上山地と脊振山地(九州)の2カ所が最後まで残っていた。
 LCCの本格稼働時期を見据え、国内の研究者で組織するILC戦略会議(議長=山下了東京大准教授)は今年1月、選定評価の実施母体となるILC立地評価会議(共同議長=山本均東北大教授・川越清以九州大教授、委員8人)を設置。技術的観点と社会環境的観点から評価を行い、今月17日、委員全員の一致で最終結論を出し、評価書署名も完了させた。
 一連の選定作業の流れは今月20日、同評価会議が開いた報道機関への事前説明の場で明らかになったが、中でもキーワードとなったのが「委員全員一致の最終結論」だ。
 ILCは安定した地盤に建設することが絶対条件だが、北上山地の南部に広がる花こう岩岩盤帯の質の高さに、研究者らは早い段階から着目。昨年11月から5月にかけ実施した地質調査でも、良質な岩盤であることが証明されている。これまでの北上山地の地盤に対する評価など、さまざまな経緯を踏まえ「全員一致ならば北上山地に決めた可能性が高い」と確信する誘致関係者は少なくなかった。
 さらに22日には、脊振山地は活断層の影響が懸念されるとして北上山地に絞り込んだことや、研究者側が九州の誘致関係者に東北に絞り込んだ旨を伝えたとの一部報道もあり、北上山地決定の色合いが一気に増した。
 ただ、県や奥州市のILC担当職員は「さまざまな情報は流れているが、23日の正式発表の時まで待ちたい」との姿勢だ。奥州市の小沢昌記市長は、胆江日日新聞社の取材に対し「有力筋ではないが、23日の発表で北上山地になるとの情報は聞いている」と答えた。
 ILC戦略会議などが開く23日の会見後には、今後のILCの国際設計を担当するLCCの幹部会議が同大学で開かれる。選定された国内候補地が、そのまま世界に一つだけの建設候補地として位置付けられる予定だ。

写真=北上山地の選定が濃厚との情報が流れる中、正式発表の時を待つ市ILC推進室の職員ら
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tanko 2013-8-21 5:30
 【東京=報道部・児玉直人】 国際リニアコライダー(ILC)の国内候補地選定作業を進めていた、国内の素粒子研究者組織「ILC戦略会議」(議長=山下了東京大准教授)は20日、東京大学本郷キャンパスで、候補地選定経過などを報道陣に説明。選定結果は23日に同大学で開く記者会見で公表される。選定作業は同会議内に設置したILC立地評価会議(共同議長=山本均東北大教授・川越清以九州大教授、委員8人)が中心となり進めていたが、今月17日に委員全員一致で候補地を最終決定しており、発表を待つばかりとなっている。

 同日の説明会は、候補地選定の経過や評価項目などについて、事前に報道関係者に理解してもらうことを目的に開催。山下准教授、山本教授、川越教授が対応したが、どちらの候補地に選定したかや、それらを推測させるようなコメントは一切なかった。
 ILC候補地の検討は、15年以上前から国内外で慎重に進められてきたという。国内に関しては99年ごろから調査が始まり、03年には10カ所余りの具体的な候補地が国際会議を通じて公表。その後、さらに詳細な検討が行われ10年には岩手県南部の北上山地、福岡県と佐賀県にまたがる脊振山地に絞り込まれた。
 ILC計画をより具体化する上で、建設候補地を定め、国際設計に着手する必要がある。国際設計を担当する国際的な研究者組織リニアコライダー・コラボレーション(LCC)が6月に本格稼働したが、これを見据え、1年ほど前から国内候補地の絞り込みに向けた準備に着手。今年1月にILC戦略会議内に立地評価会議を設立し、ILCの設計仕様に合致した最適な候補地やそのルートの検討を進めてきた。
 候補地選定は、技術評価と社会環境基盤評価に分けて実施。両評価それぞれに、立地評価会議委員8人全員に各分野の専門家を交えた専門委員会で作業を進めた。
 技術評価は地質や地形、資材運搬機能などについて評価。北上、脊振それぞれの地元からILCの建設想定ルートを二つずつ、中央キャンパスの候補地を最大二つまで提案してもらった。
 社会環境基盤評価は研究者やその家族の生活に関して評価。専門委員による評価のほか、外国人3人による意見聴取も行ったという。
 立地評価会議は、評価方法やその判断の妥当性について、海外の研究者らの論評(国際レビュー)を得るために7月13日までには、候補地を大筋で決定。同23、24日にスイスのジュネーブで国際レビューが行われ、同29日までに承認が得られた。
 候補地の決定作業が大詰めを迎えていたのとほぼ同時期、日本学術会議では、文部科学省からの依頼を受け、ILC計画の意義などを審議。当初は7月末と考えられていた候補地選定結果の公表タイミングは、学術会議の審議動向を注視しながら見計らっていた。
 海外の候補地に関しては、経済事情や過去の国際プロジェクトでの失敗などによる信用失墜でほぼ立ち消えとなっている。山下准教授は「今回の国内候補地決定が、事実上のILC候補地決定とみていい」と話す。
 23日の選定結果発表記者会見は午前9時半から。会見の様子は、インターネットの動画配信サイト「Ustream」で生中継される。立地評価会議共同議長の山本教授は「日程は調整中だが、両候補地の関係者への直接説明も後日予定している」と話している。
写真=国内候補地の選定経過について説明する山本教授、川越教授、山下准教授(左から)

※23日の動画配信サイトのアドレス http://www.ustream.tv/channel/ilc-eng
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tanko 2013-8-17 15:30
 国際リニアコライダー(ILC)の国内候補地選定結果について、素粒子研究者らで組織するILC立地評価会議は16日、今月23日に東京大学本郷キャンパスで発表することを明らかにした。江刺区東部などをエリアとする北上山地か、福岡県と佐賀県にまたがる背振山地のいずれかに、国内候補地が絞り込まれる。

 目には見えない電子と陽電子を光の速さに近い状態で衝突させることで生じる現象を調べることで、物質の成り立ちや宇宙誕生の謎に迫ろうとするILC。世界の国々が出資し共同運営するプロジェクトとして、素粒子物理学者の間で考案され、現在は実現に向けた政府間協議の開始が待たれる状態にある。
 候補地は日本のほか、スイスや米国、ドイツ、ロシアなどの名も挙げられているが、各国の研究者の間では、日本への建設を有望視する声が急激に高まっている。
 その日本国内の候補地は、北上山地と背振山地の2カ所。日本の素粒子研究者らで組織する「ILC戦略会議」の内部に設置した「ILC立地評価会議」が、地質などの技術的評価と住環境や交通アクセスなど社会環境的評価を実施。学術的な観点から、日本としての候補地をどちらかにするか選定していた。
 候補地選定作業が進むさなか、首相直轄の特別機関・日本学術会議では、文部科学省の審議依頼を受けILCに関する検討委員会が設置された。検討委は、ILCの研究意義は認めながらも、費用負担や人材確保、国民理解など解決すべき課題を指摘。海外の政府関係機関なども交えた予備交渉などを進め、計画の見通しをより明確にするよう求めている。
 素粒子研究者サイドは、こうした学術会議の協議動向を見ながら発表のタイミングをうかがっていた。このため、当初の「7月末」という予想から3週間余り遅れての公表となる。
 ILC計画の情報が一般に知れ渡るようになって以来、北上、背振両山地の地元では、国際研究都市構築による波及効果などにも着目し、熱烈な誘致活動や理解普及の取り組みが進められてきた。
 一方、ILC戦略会議の議長を務める東京大の山下了准教授は今年4月に仙台市内で行った講演の中で、「国内候補地が一本化されたら『オールジャパン態勢』を取らなければいけない。誘致ができた、できなかったの結果はどうであれ、日本全体で知恵を出し、ILCを支えていくという姿勢がなければ成しえない」と訴えている。
 23日の発表は、ILC立地評価会議共同議長を務める東北大の山本均教授、九州大の川越清以教授が評価結果を報告。国際研究組織「リニアコライダー・コラボレーション(LCC)」の最高責任者リン・エバンス氏と、LCCの監督機関「リニアコライダー国際推進委員会(LCB)」の駒宮幸男議長らも参加する。
(児玉直人)

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